年間BEST 2012

2012bestsongs

2012年 BEST SONG 20

第01位:Light Bearer / Celestium Apocrypha; Book Of Watchers
第02位:exlovers / Starlight, Starlight
第03位:Alcest / Autre Temps
第04位:Milanku / Le Chute
第05位:MONO / Nostalgia
第06位:Anathema / Untouchable, Part 1&2
第07位:DOIMOI / 誓い
第08位:Cloud Nothings / Wasted Days
第09位:ROVO / D.D.E.
第10位:Caspian / Waking Season
第11位:Whirr / Junebouvier
第12位:DEAD END / 夢鬼歌
第13位:cali≠gari / 娑婆乱打
第14位:Vampillia + Attila Csihar / dottrue
第15位:The Black Heart Rebellion / Crawling Low and Eating Dust
第16位:Anrietta / thaw
第17位:Lotus Plaza / Jet Out of the Tundra
第18位:ハイスイノナサ / 地下鉄の動態
第19位:摩天楼オペラ / 落とし穴の底はこんな世界
第20位:Old Man Gloom / The Forking Path

 前年のベストアルバム第1位に選出した『Lapsus』に引き続き、Light Bearerはやっぱり別格であったと思わせる新曲を送り込んできた。この21分にも及ぶ新曲を今年は、ネオクラストからNeurosis、envy、Sigur Ros、GY!BEまでを飲み込むポストメタル最新型の実力を示している。今聴くべきバンド、機会があればぜひ体感してみてほしい。ちなみにこの曲は、Northlessとのスプリット作に収められているが、あえてベストアルバムには選出しなかった。

 続くexloversのこの曲は本当によく聴いたし、Alcestの『Autre Temps』は今年一番聴いた曲じゃないかなと思う。また、Milankuの「Le Chute」はenvy好きにオススメしたいドラマティックな楽曲。MONO「Nostalgia」はフジロックで初披露されたけど、オーケストラともに演奏されたのを生で体感していて鳥肌がたったのをよく覚えているし、新作では一番よく聴いている曲になる。これ以下の紹介は省略するが、機会があればチェックしてみて欲しい。

[youtube width=”350″ height=”280″]http://www.youtube.com/watch?v=r2waABKG57M[/youtube]

Light Bearer / Celestium Apocrypha; Book Of Watchers


2012年間BEST ALBUMS 55

Shepherds & Angels

第55位 Iroha 『Shepherds & Angels』

ジャスティン先生の友達であるAndy Swan(ex-Final)を中心とした、バーミンガムのシューゲイズ・メタル・バンドの2作目。相変わらずのJesu節で貫き通す白銀の轟音ウォール・オブ・サウンドに恍惚とさせられる人も多いのでは? 聴いてると前作同様にほぼJesuなんだけども(笑)、本家よりもVo.は甘めでさらに灰色がかった感じが個人的にはするかな。なかでも、とろけるようなエレクトロ・シューゲイズ・メタル#3「Legacy」がかなり良いですね。

itstartshear.com

第54位 Peter Broderick『http://www.itstartshear.com』

ポストクラシカル・シーンの代表格といえる存在にまで上り詰めたPeter Broderickの歌もの新作。彼のポストクラシカル系統の作品は眠くなる事が個人的に多いんだけど(失礼)、今回のは彼の滋味深い歌が体中に染みわたっていくようで素敵だ。その繊細にして優美なポストクラシカル・サウンドからモダンなフォーク、牧歌的なアコースティック、アンビエント~ポストロック要素を巧みに反映した曲調はとても豊か。しっとりとしたピアノの旋律、幽玄なストリングスの調べに哀愁のアコギ、アップライト・ベースの丸みのある低音、メロディカや鉄琴などが彩る見事な作品に仕上げている。#6「Colin」なんてシガー・ロス級の楽曲で結構聴きました。

Trimurti

第53位  LOW-PASS 『Trimurti』   

京都のインストゥルメンタル・ロック・トリオのデビュー作。PeleやGhosts & Vodka、初期のtoeを思わせるインスト・ポストロックで、透明感のあるメロディを巧みに振りまきながら、変拍子やタッピング、スラップ等の小技を存分に挟み、さらに軽やかな疾走感と共に駆け抜けていくのが良いですね。こういう系統が好きってのはあるけど、難解でテクニカルな要素を強く反映している割に、ストレートでキャッチーな音に昇華しちゃってるので聴きやすい。インストへの入口としても活躍してくれそうな作品だと個人的には思います。

Departure Songs

第52位 Hammock 『Departure Songs』   

2枚組で全19曲約110分というボリュームもさることながら、その幻想的なハーモニーにうっとりとしてしまうハンモックの新作。アンビエントからドリーミーなエレクトロニカ、シューゲイズを行き来し、美麗なサウンドを徹底追求したその音像は、ただただ心地よいですね。柔らかなフィードバック・ギターに綺麗なシンセの音色が混じり合い、優雅なストリングス、ウィスパー・ボイス、グロッケンやホーンといったアレンジも冴え渡る。職人がもたらす美しく安らかなひととき。

Serenity

第51位 BVDUB 『Serenity』

今年も別名義含めて5作品ほどを世に送り出したBVDUBさん。こちらは今年2枚目となる作品になるわけですが、美麗アンビエン・テクノは、洗練を続けながらどこまでも続きます。作風としては『Then』に近いシューゲイズ・テイストを交えた仕上がりで、恍惚の桃源郷へと6曲77分かけて導きます。まあ、大きな変化はないけれども、聴いてるとやっぱり満足感と心地よさが得られるから、結局いいんだよなあ、この人の作品は。どこか儚くて、それでいて安らぎとホンの少しの快楽が癖になる。EAST OF OCEANSという名義ではもっとビートが効いた感じでノせ、Earth House Holdもなかなか良い感じでした。

Sequitur

第50位 Steve Hauschildt 『Sequitur』

Emeraldsのシンセサイザー奏者によるソロ・ワークス、1年ぶりの2作目。音楽的には大きな変化はなく、アナログシンセやドラムマシーンを基調に、美しい星空やオーロラが広がっていくようなアンビエント~シンセポップである。AshraやClusterを思わせながらも、そのキラキラと有機的な響きが演出するコズミックな空間は、ただただ気持ちイイ。また、実験的でありがらも絶妙なポップのさじ加減はさすがですね。本隊の方の新作はそこまで良くなかったと個人的には思うんで、こちらを推奨。Emeraldsってセルフタイトルのアルバムが一番いいんだよなあと感じますね。

tesa4

49位  Tesa 『Ⅳ』   

バルト三国・ラトビアの秘宝、Tesaのタイトル通りの4枚目。レーベルメイトのRekaやYear Of No Light等に影響を受けた激情型ポストハードコア/ポストメタル・スタイルが特徴的で、インスト・パートに重きを置いて、より冷気と哀感がこもった音作り。重量感バッチリのポストメタル・スタイルで押し切る#1「Ⅰ」、冷たい旋律のリフレインからノイズ爆撃に見舞われる#2「Ⅱ」、そして荒涼とした雪景色が広がる18分超の「Ⅲ」という3曲を収録し、その存在感を示している。

Held

第48位 Holy Other 『Held』

昨年の5曲入りEP『With U』に続く待望の1stフルアルバム。リリースは前作に引き続いてTri Angleからで、音楽的にもEPからの継続・強化路線のポスト・ダブステップ~ウィッチハウスの要素を強く感じさせるものである。重心の低いビートに深いリヴァーヴが視界を歪め、艶のあるR&Bっぽい歌とあどけない少女の声のヴォイス・サンプリングが軽やかに揺らめいて、海の底へ底へと徐々に引きずり込む。エレガントなシンセも散りばめられ、果てはゴシックな陰性の妖しさや幻想的なアンビエントも内包。それらがゆっくりと昂揚させ、甘い毒となってジトジトと効いてくる。

Pasiflora

第47位 Constants 『Pasiflora』

いきなりシューゲイザー化したボストンの轟音トリオの5枚目。マイブラの「To Here Knows When」を強烈に意識した美しさを放つ#5「Beautiful」を聴いたときは、本格的なシューゲへの転身だと本気で思った。でも、いきなりってわけではないか。これまでもJesuを継承してきたような感じだったし(しかも前作はジャスティンがプロデュース)。もっと激しくエモーショナルに!と感じる部分はあるけれど、新境地へと突き進むシューゲイジング・オンパレードの本作で生まれ変わったConstantsを体感できる。

Oshin

第46位  DIIV 『Oshin』

Beach FossilsのCole Smithが率いるギター・ポップ・バンドのデビュー作。タイトルとジャケがかなりふざけておりますが、中心に据えたクリーンなギターと蒼いメロディが全編に渡って冴えわたっていて、心地よい疾走感と共に眩いメロディが明滅する#2や美麗なギター・フレーズとどこか懐かしい感性も加味した#5に特に心掴まれた。あとは、前のめりな勢いがいい#12とかね。ネオアコ~ギターポップ~インディーロック的な感触は強いが、その中でサーフ・ロック的な懐かしさやシューゲ風のノイズもさらっと表現。全体的に風通しも良い。初夏を思わせる感じがあって、実際に夏ぐらいによく聴いてた。

Valtari

第45位 Sigur Ros 『Valtari』

前作で聴かせた煌びやかさと華やかさ、そして躍動感はヨンシーのソロへと引き継がれ、4年ぶりとなる本作では、原点回帰は言いすぎかもしれないけど、シガー・ロスらしい部分が詰まってますね。アンビエント方面に再び寄せて、穏やかな静謐を基調としつつも轟音を挟みながら哀しみと歓びが押し寄せる。作品としては、「()」や「Takk…」辺りに近い印象なんだけども、前作の「残響(邦題でスマン)」やヨンシーのソロを経ているからか、ポジティヴな温かさも浸透。別世界にでも連れられたかのような至福が本作でも味わえる仕上がりになっていると思う。#3「Varuo」は、本作でも特に良い1曲。

Dream Demon Analyzer

第44位 DEAD END 『Dream Demon Analyzer』

夢の続き。2年半ぶりとなる復活2作目(通算6枚目)。今年はCreature Creatureの新作も後半で発表しており、眠りから覚めたMORRIE先生の活躍ぶりが光る。個人的には前作の方が衝撃的ではあったが、それをダークに妖艶にメロディアスに深めてきた本作もなかなか。HR/HM要素を軸にしてゴシックかつシアトリカルに染められる楽曲たち、そのなかでもシングル三部作最後を飾った#8「夢鬼歌」が陰影のあるメロディラインの美しさとストーリーが素晴らしく、かなり聴いた曲。DEAD ENDならではの不思議な毒気と独特の世界観にやはり惹かれる。

Lilacs & Champagne

第43位 Lilacs & Champagne 『Lilacs & Champagne』

Grailsから、Emil AmosとAlex John Hallによる新ユニットのデビュー作。本家と共振しつつも違った色を出す事に成功した作品で、自らのサイケデリック要素を研ぎ澄まし、薄靄のかかった世界を陰鬱であるが豊かな曲調と共に案内していく。サンプリングや電子音を上手く用いながら、異国情緒、古めかしいホラー映画風の質感などの彼らならではの深みと渋みが本作でも行き渡っている。インスピレーションを刺激し、ゆるやかにその世界に心身を取り込んでいくような感覚を持つ本作は極めて独創的。

体温の行方

第42位 NINGEN OK 『体温の行方』

今年のフジロックのルーキー・ステージにも登場した金沢の轟音インスト・デュオの待望の1stフルアルバム。デュオって書いたけど、大半の曲でキーボードの女の子が参加していますので、トリオとして捉えた方がいいかも。歪んだギターと精微なドラムが激しくぶつかり合い、さらにはキーボードが彩を添えていく強烈なインスト曲ばかりが揃っていて、ボディブローのように効いてくる。マスロック風の複雑さからダイナミックな展開まで自由自在で、なおかつこの尋常じゃない爆発力が強み。ただ、ライヴだとこの数十倍は凄いです。ぜひ体感してみてほしいバンドの一つ。

Angels of Darkness Demons of Light 2

第41位 Earth 『Angels of Darkness Demons of Light 2』

ヘヴィ・ドローン/パワー・アンビエントからアメリカーナへと移行した巨匠が描く雄大な風景。去年のPart.1に続く後編は、古代芸術のような品位と思わず身構えてしまうような厳格さがあり、太古から現代へと通じていくような悠久の時の流れも感じさせる。Earthは繊細にしてダウナーな物語を本作でも創り上げた。穏やかに凪いだ音がどうしてこうも重く拡がり続けるのか。達観したものが奏でるサウンドはやはり業深い。 ついに行われた初来日公演も、ただただ渋かった。そして、意外とフレンドリーであった。

Justice

第40位 摩天楼オペラ 『Justice』

Versaillesと並ぶヴィジュアル系メタル・バンドのメジャー・デビュー作。シンフォニック・メロスピを標榜しつつ、ヘヴィに大仰にチューンアップした楽曲が多く、出足のタイトルトラックの「Justice」から獰猛耽美にツインギターが咲き乱れ、荘厳なオーケストレーションやストリングスが絡む。多様なヘヴィメタルの因子を所々で撒き散らしながら、コンセプトでもある耽美世界をしっかりと描き出しており、華やかで美しく、かつ激しさを伴って聴き手を魅了してくれる良作。個人的には#1「Justice」から#4「Helios」までの流れが聴きどころかなと思う。

genjitsu

第39位 nonrem 『現実と交差する何か』

Tokyo Jupiterコンピへの参加や欧州ツアーなどで鍛錬し続けてきた、吉祥寺を拠点に活動する激情ハードコア4人組、nonremの4曲入り約30分の1st EP。envyやheaven in her armsに代表されるような感性、それに轟音ポストロック的なアプローチや欧州のソリッドな激情HCの要素までを上手く昇華した作風が持ち味でかなり良い。深遠なアルペジオや掠れ気味の声が光と希望を追い求め、劇的なストーリーを綴り、感情を揺り動かす激しいサウンドが畳み掛ける。揺るぎない自信に満ちた4曲が揃っているが、なかでも#2「無呼吸」があまりにもドラマティックで素晴らしい。

Spooky Action At A Distance

第38位 Lotus Plaza 『Spooky Action At A Distance』

Deerhunterのロケット君のソロ2枚目。当然、本隊のように柔らかなサイケデリアを広げていくなかで、軽やかなリズムで突き進み、メロディはさらにキラキラとした光沢がある。リヴァーヴのかかったギターが緩やかな波のように押し寄せては独特の浮遊感を生む中で、ロケット君のソフトな歌が甘く溶け込んでいく。現代的サイケデリアを表出させつつも、彼のバック・グラウンドの広さやソングライティングの確かさがこのソロ・プロジェクトではしっかりと表されているように感じる。涼やかでメロウなギターロック#7「Jet Out of the Tundra」が特にお気に入りの1曲ですね。

Parallax II: Future Sequence

第37位 Between the Buried and Me 『Parallax II: Future Sequence』

こいつらの音楽に底はなし。12曲72分の”ブルータル・プログレ・ワンダーランド”。本作は前年のミニアルバムからの続きとなる作品だが、高い技術と豊かな創造性が生み出す世界は、これまでの作品を聴いてきた方なら納得するだろう。静動、速遅、強弱が自由自在にコントロールされ、知的な構築力とともにコンセプチュアルな作風を貫く12曲約72分。もはやラスボス並の貫禄。ただ、11月上旬の来日公演は良かったけど、トリなのになんであんな時間短いんだよ(怒)。

acohs

第36位 Trachimbrod 『A Collection Of Hidden Sketches』

メンバー全員が1990年代生まれというスウェーデンの激情エモーショナル・ハードコア5人組の1stフルレングス。EITS~MONO系の壮大な轟音ポストロックだったこれまでからの変化として、ソリッドに激情ハードコア化。同郷のSuis La Luneを思わせる哀切メロディと蒼き感情が迸る絶叫が胸に刺さり、熱くする。繊細なアルペジオを中心とした美旋律で引き込む辺りは、前作から通じているものだが、鼓膜をぶち抜くような荒々しいパートが表面化してきたのは頼もしい。エモ~ポストロック~ハードコア界隈を越えて引き込んでいけるメロディの良さも強み。特に#3「Through Walls, Floors and More」があまりにドラマティックな展開で泣ける。

DRUGORBASEBALL

第35位 マクマナマン 『DRUGORBASEBALL』

福岡に超プログレッシヴな人たちが隠れていた模様。というわけでDaymareの姉妹レーベル、Sleepwellからの刺客でございます。福岡のNATSUMENとも呼ばれるらしいが、そこ通り越して歌なしのMars VoltaとかSleeping Peopleだとかよぎる難解さ。超人的なアンサンブルでひたすら畳み掛けてくるので、もう飲み込まれる他ないですね。フジロックのルーキーで見たときは、本当に一糸乱れぬという感じで言葉が無かった。圧倒されたなあ・・・。

Memoraphonica

第34位 Anrietta 『Memoraphonica』

東京のドリーム・ポップ5人組のデビュー作は、安らかなる癒しを持った美しい音像を構築しつつ、ポップスとしての機能性の高さも見せつける秀逸さ。北欧ポストロック系からの影響を強く感じるサウンド・デザインの中で、オーケストラルなアレンジと優美な女性ヴォーカルが天上へと案内していくわけだが、これがとても心に響いてきます。絵本のようなファンタジーから普遍的なポップ・ミュージックまでの魅力を鮮やかに提示する本作は、多くの方に届いて欲しいと願う一枚だ。しかし、9月にまさかの解散・・・。本当に驚いたよ・・・。

 De Vermis Mysteriis

 第33位 High on Fire 『De Vermis Mysteriis』

クトゥルフ神話に登場する魔導書「妖蛆の秘密」からタイトルを拝借した6枚目。前作のできを葬り去るような猛々しい粗暴さ、痺れるような重低音が合致しており、オープニングの#1「Serums Of Liao」から過去最高の破壊力を持って暴れ回り、#3「Ferile Green」まで全てを豪腕に薙ぎ倒しながら突っ走る。ドゥームからスラッシュまでを横断する自在のリズムはたくましく、漢泣きのギターソロも存在感を示し、マット・パイクの歌にしても迫力が違う。”4thアルバム『Death Is~』の実験性と3rdアルバム『Blessed Black Wings』が持つすさまじい邪悪さを合体させたような作品”とマット自らが語るほど。あるゆる面で過去を上回るハイパーな轟きが本作には封じ込められている。

 the primitive world

 第32位 Vampillia + Nadja 『the primitive world』

カナダの神秘アンビエント・ドローン・ドゥーム男女デュオNadja、そして常に新しき&おもしろきを創造し続ける国産先鋭ロック・バンドVampilliaのコラボレーション作品。”異形+異形”がここに組み合わさる。全身を浄化し、脳髄を揺さぶり続けるNadjaの壮大な轟音を基軸に進み、Vampilliaが耽美・狂気・悲哀・歓喜といったあらゆる情緒を織り込んでいく。どちらかといえばVampilliaは控えめな印象で、Nadjaの気宇壮大な作風を大きくふくらますように助力している感じか。といっても彼等が持ち込むピアノやデスヴォイスといった様々なエレメントがNadjaにとっては新しい色彩と感情をもたらしている。今年初頭の両者の共演は、今もなお色濃く記憶。いいにおいでの再来日をぜひ期待したいところだ。

 動物の身体

 第31位 ハイスイノナサ 『動物の身体』

これまでもその独特な音作りで評価されてきたハイスイノナサの待望の1stフルアルバム。メンバー脱退を経てのリリースとなるが、まるでマイナスに左右することなく、音での空間掌握とデザイン力が光る。ミニマルミュージック~ポストロック~現代音楽を巡りつつ、独自の美学に裏打ちされた楽曲の数々。それが静かに心の内を溶かしていく。時に慈愛のように、時に人工的な感触をもたらす女性ヴォーカルが特徴的ではあるが、強固なアンサンブルは予想以上にダイナミック。特に#3「地下鉄の動態」は舌を巻くほどの完成度(MVは必見!)。次世代を担うバンドの期待以上の1stアルバムであると思う。

 Moth

 第30位 exlovers 『Moth』

“UKのPains of Being Pure at Heart” とも評されるexloversの1stアルバム。彼等に関しては、#1「Starlight, Starlight」でもう胸を撃ち抜かれてしまいまして、アルバムを結構聴きました(その曲は今でもよく聴いてる)。甘美さ、瑞々しさ、そしてナイーヴな歌心が結晶化する楽曲群に、ときめきを覚えるわけですよ。甘酸っぱい青春の煌きが音になったような感じ。マイブラやスマパンやエリオット・スミス等の影響をうまく溶け込ませながら、ノスタルジックで清涼感のあるサウンドを生みだしている。シューゲイザー・リバイバル的に語られることは多そうだが、今を生きるバンドとしての個性は十分に発揮しているはず。万人に勧められる良作。

 Waking Season

 第29位 Caspian 『Waking Season』

新世代轟音ポストロック・バンドの3作目。エレクトロ・サウンドを少し取り入れたりもしているが、大枠は彼等らしい。#1に代表されるようなドラマティックな静動の揺れ動きと、珠玉の轟音バースト。理屈抜きで結局これが最高なんです。Explosions In The SkyやMONOとも比肩するインストゥルメンタルがここにある。本作は特に#1「Waking Season」~#3「Gone In Bloom and Bough」の流れがとても良い。中国までは行ってるんだから、来年辺りに日本の池を踏んで欲しいものですね。

 Olgoi Khorkhoi

 第28位 AUTORA 『OLGOI KHORKHOI』

コア・メンバー2人に森雄大(neco眠る)+砂十島NANI(BOGULTA)が参加したバンドセットで録音された2ndアルバム。きめ細かくデザインされた電子音による世界紀行は、ギターとドラムの加入でまた違ったバンドとしてのエネルギーを持つようになった。特に”和”の要素が強く感じられるようになったのは、森雄大のneco眠る感丸出しのギターによるところが大きいかな。それでもダンスミュージックとしての側面は強化されており、#3「MAMBA WALK」等を中心に踊らな損損な昂揚感を得ることができる。石棺型特殊ジャケットで1000枚限定リリースというパッケージへのこだわりもおもしろい。

Skylight

第27位 Atoma 『Skylight』

Slumberというデスメタル系バンドの解散に伴って、同メンバーが中心になって結成した新バンドのデビュー作。リフやリズムの刻み方にメタルっぽさを感じますが、全体のサウンド・デザインはシンセを多用したアトモスフェリックなものとしてまとめているのが印象的。轟音ギターやキラキラと瞬くシンセが非常に効果的。また、Anathemaを思わせる耽美なピアノ、淡い女性コーラスも情緒を膨らませていく。ポストロック~シューゲイザー方面から影響が大きいだろう空間的な音像、そしてそれに伴った浮遊感や恍惚感が際立っている。Jesuを華美に演出したかのような印象さえ受けるし、AnathemaとJuniusが合体したかのようなイメージも浮かぶ。各地で評価されているのも頷ける、多くの人を巻きこむだけの感動を有した佳作。

1973

第26位  Seirom『1973』

Gnaw Their Tonguesをはじめとして数多くのプロジェクトで活動するMaurice De Jongによるさらなるプロジェクト。 Gnawとは違い、目指す先は天界。アンビエントやシューゲイザーの要素が強く、”ドリーム・ノイズ”とも表現したくなるような壮麗な音塊に包まれていく。神々しく広がるシンセの音色、優美なヴォイス・サンプルが圧倒的なノイズ・ギターに巻き上げられ、異様なまでにドラマティックに展開。ブラックメタル風の激速ビートも各所に配置されており、スリリングさが煽る昂揚感も予想以上だ。Nadjaの荒涼とした世界に、シガー・ロスが表現する天上界のエモーショナル、さらにはWolves In The Throne Room辺りのポスト・ブラックメタルの要素が絶妙な融合を果たしている。改めて彼の才能を思い知る佳作。

In Focus?[限定盤]

第25位 トクマルシューゴ 『In Focus?』

国産ポップ・マエストロ、トクマル君の約2年半ぶりの新作。華やかでユーモラス、なおかつ凝った音作りもしているけどポップを貫く様は相変わらず。数十種類の楽器から飛び出す多彩な音色、そしてトクマルシューゴの透明感のある歌声によって生み出される美しいハーモニーと魔法の時間に酔ってしまう。先行シングルの「Decorate」から#5「Call」への流れは何度聴いても惚れ惚れ。変幻自在のポップ・ミュージックの溢れんばかりの魅力が詰まっている。

Advaitic Songs

第24位  Om 『Advaitic Songs』
   
各地の年間ベストにはいまいちあがってきてないが、深い瞑想に入れるのはここ数作で一番じゃないか。達観した仙人の域にまできた感のあるex-Sleepのアル・シスネロスとGrailsのエミル・エイモスによるデュオの5作目。僕のような頭の悪い人には、この古代思想を理解するのは不可能ではあるが、もはやロックとかドゥームという範疇では括れない涅槃音楽にゆるやかに侵食されていく。読経のごとき歌、ベース、ドラムの反復による酩酊/半覚醒状態への誘い。初期から脈々と受け継がれるヘヴィ・サウンドに軸足はあるが、Grailsや近年のEarthのようにオリエンタルな嗜好、宗教的でスピリチュアルな要素をさらに深く追求しており、悟りの音楽とも言うべきレベルにまで至っている。

 Harmonicraft

 第23位 Torche 『Harmonicraft』

いつのまにか4人体制に戻ってた剛力ストーナー/スラッジ・ポップ、Torcheの4年ぶりの新作。相変わらず男らしい汗臭さ、そして馬力のあるサウンドに異様にポップな歌を乗せるという妙な技が今回もバッチリと決まっております。がっちりとタフなヘヴィネスを下地に、ストーナーの煙たさやブルージーな泥臭さを混ぜつつ、口ずさめる歌メロが強みにまで昇華している点は素直に良い。陽気さと爆裂さを備えた仕様で、今回も笑顔で頭を振れる力作です。

 Maserati VII

 第22位 Maserati 『Maserati Ⅶ』

故ジェリー・フュークスの後任にCinemechanicaのドラマーを迎えて制作された通算5枚目。前々作の3rdアルバムからクラウトロックを参照にしながら自らの音楽的幅を広げてきたが、精微で力強い演奏がもたらす躍動感や煌くエレクトロとの調和が前作以上に堂に入っている。美麗&サイケなツインギターに強靭なビート、そしてコズミックなシンセが添えられ、有機的なダイナミズムを生み出していく。”クラウトロック×コズミック×ダンサブル” をさらに高みへと引き上げた1枚。

 Pipe Dreams

 第21位 Whirr 『Pipe Dreams』    

カリフォルニア州オークランド出身のシューゲイザーバンド、Whirrの1stフルアルバム。 吹き抜ける春風のように温かく爽快な疾走感、青春の甘酸っぱい響き、そして轟音ノイズによる甘美な陶酔感。そのサウンドからは、胸がキュンとなるような時が幾度となく訪れる。作品としては正直、1st EP『Distressor』の方が好みなんだけども、よりエモーショナルでポップなサウンドに寄せたことで多方面にアピールできるようになっていると思う。7inchシングルとして先行で発表の#2「Junebouvier」を筆頭に、この甘く蒼く眩い音の洪水には抗えません。

 Luxury Problems

 第20位 Andy Stott 『Luxury Problems』

MODERN LOVEの看板アーティスト、Andy Stottの最新作。衝撃度で言えば前年の『Passed Me By / We Stay Together』には個人的には及ばなかった。けれども漆黒のミニマル・ダブは、幽玄な女性ヴォーカルをフィーチャしながら、視界を歪ませ、脳内をかき混ぜてくる。その声がもたらす色彩と体熱がどす黒のグルーヴと相まって、独特な世界へと落とし込んでいく。もう抗えません。同レーベルのDemdike Stareの新作も好評だが、旧譜だけしかチェックできませんでした。

 Attack On Memory

 第19位 Cloud Nothings 『Attack On Memory』  

スティーヴ・アルビニのプロデュースで完全に化けた2ndアルバム。これがとても良くて、遡って1stを聴いてみたらノリの良いインディー・ポップ・パンクといった感じでイマイチだった・・・。けれども世間で”化けた”という意味を思い知らされた形。90年代のオルタナティヴ・ロックやポストハードコアに通じそうな生々しいソリッドな音に鼓膜はヒリヒリ、胸がゾクゾクする。本作の象徴となっている9分超の#2「Wasted Days」は、全身が感電するほどのスリリングさと昂揚感に満ちていて、本当に痺れた。それでいて、前作からのあどけない面やメロディの甘さを残しつつ、絶妙なアルビニ・マジックが光る。蘇るオルタナティヴとはちょっと言い過ぎな気がするけど、90年代USからストロークス~アークティック・モンキーズ辺りのリスナーにまで刺さる要素を持っている作品だと思う。

 Har Nevo

 第18位 The Black Heart Rebellion 『Har Nevo』    

11月末の奇跡的な再来日で新たなスタートを切った、ベルギーの激情ハードコア/エクスペリメンタル・ロック・バンドの2ndフルレングス。美しさと激しさに彩られた激情ハードコア/ポストロックは、民族/宗教/現代音楽をミックスすることで独自の地平を切り拓くに至り、東洋風のメロディ、トライヴァルなリズム、読経風ヴォーカルなどが醸し出す妖しいまでの幽玄さに驚かされる。ハードコアやポストロックの要素がベースにあることは確かだが、前作との感触の違いは明らか。以前までの枠組を明らかに飛び出した本作は、別のインスピレーションを与える代物であり、あのOMやGrailsを彷彿とさせるような異国情緒や淡い煙たさに視界が歪む。進化/深化を長きにわたって追求した果てにこぎつけた、ハードコア通過型のエクスペリメンタル・ミュージックの真髄を大いにみせつけた作品。

 Yellow & Green

 第17位 Baroness 『Yellow & Green』

赤→青ときて、黄&緑の2色詰め合わせに挑んだアート・メタルバンドの3作目。男泣きのロマンとメロディが詰まったヘヴィロック、それがここに極まったかのような内容で、渋いぜバロネス! と当初聴いたときは感嘆したものです。サイケデリック~ストーナーの風情は残し、よりクラシックなロックの味が染み込ませ、アコースティックな要素を膨らませながら、叙情的な側面を強化した涙もろい作品に仕上げている。DISC2枚組で全18曲。漢の歌心と渋いメロディに裏打ちされたバロネスの新機軸には驚く程の説得力があると思う。これまでの作品の中でも一番じっくりと味わえる。

 Ariettes Oubliees

 第16位 Les Discrets『Ariettes Oubliees』   

2010年発売の1stはそこまで大きなインパクトは無かったんだけど、本作は非常にマイルドな味わいと幻想的な美しさが磨かれている。おフランスらしい豊かなリリシズムと上品さにFursyの優しく艶やかなヴォーカリゼーションが温もりを与え、音像もシューゲイザー/ポストロック方面へとさらに歩みを進めた。それにアコギを効果的に配した哀切のメロディは心に響き、シューゲ風のノイズ・ギターも柔らかな拡がりをみせ、Audrey嬢のコーラスも月明かりのように優しく照らす感じで情感溢れる作品を支えている。映画のようなストーリー性を備え、Alcestにも比肩するロマンティックな美意識と叙情性を感じることもあり。Alcestの新作よりもこちらを推す人が多いのも頷けます。

asour

第15位 Echotide 『As Our Floodlights Gave Way To Dawn』

オーストラリア・ブリスベンを拠点に活動するインスト・ポストロック3人組の初作。なめらかに弾かれる麗しい鍵盤が作品の核となっており、繊細なギターやエレクトロニクスとの重なりで、消え入るような儚さと幽玄の美を演出し、さらに麗しいストリングスやフィールド録音も加わる。ポスト・クラシカルからの影響やGY!BEっぽいダークな世界観を表出しつつ、豊かなストーリーを描き出すことに成功。静と動の見事な交錯、確固とした物語性、透徹とした美に本作は貫かれており、細部にまでこだわった構築からは作り手の信念を強く感じさせる。聴き進めるごとに感動が止まらない本作は、5年の歳月をかけて完成したという、7曲71分の一大叙情詩だ。

What Are You Doing In This Confusion]

第14位 fresh! 『What Are You Doing In This Confusion』

延々と続くビッグバン。話題になってるからチェックしてみたけど、とんでもない狂騒に巻き込まれてしまった。downyのメンバーを中心とした超絶技巧派バンドfresh!の8年目にして初CDアルバム。ロック~ジャズ~フュージョン~ファンクをぶったぎり、スリリングかつ鮮やかに空間を裂く。初っ端の#1「やさしさサヨナラ」から熱く烈しいサウンドが縦横無尽に暴れまわり、#2「どさくさに紛れて何すんねん」でさらなる加速。鋭いギター、情熱的なサックス、怒涛のリズムが衝撃的な瞬間を生み出し続け、息つく暇もなく終焉へ。downyの青木ロビンもゲスト参加した本作、一聴したときのインパクトは筆舌し難いほど凄いものがあった。

NO (ノー: +ボーナス・ディスク)

第13位 Old Man Gloom 『NO』

ex-ISIS,現mamifferのアーロン・ターナー、Convergeのネイト・ニュートン、Cave Inのケイラブ・スコフィールド、ZOZOBRAのサントス・モンターノというボストン・ハードコア人脈のオールスター群、Old Man Gloomの8年ぶりの復活作。エンジニアにConvergeのカート・バルー、マスタリングはジェイムズ・プロトキンという最強布陣で作り上げた尖鋭的ハードコアの逸品である。各々のメンバーが持つ諸要素の融合。そしてアドレナリンが出まくる扇情性の高いハードコア、スラッジの重苦しいヘヴィさと苛烈さ、奇妙なエレクトロニクスの緻密な交配が生む凄まじい衝撃力。来年の来日公演も楽しみだ。

All We Love We Leave Behind

第12位 Converge 『All We Love We Leave Behind』

ベテランなのにベテランの感じがまるでしない、カオティック・ハードコアの重鎮の9作目。アクセル全開でぶっ飛ばし、あらゆる障害を薙ぎ倒して突き進む様は痛快痛快。大傑作『Jane Doe』におごることなく、ストイックに理想を追い求め、作品を重ねる毎に新鮮な昂揚感で満たしてくれる。いい年齢に差し掛かっているにも関わらず、まるで衰え知らずだ。むしろ進化が続いている。音楽に向き合う姿勢、意欲と彼等には本当に頭が下がる。ただ、前作ほどではないかなあというのが個人的な感想ですね。それでも、多くのファンの期待を裏切らない納得の作品を送り出してくれたと思う。プログレッシヴな構成に抜群の勢いと破壊力が乗る#1「Aimless Arrow」やあまりに壮絶なクライマックスを迎えるタイトルトラックなど聴き応えは十分。

PHASE

第11位 ROVO『PHASE』

宇宙を創造し続ける人力ダンス・ミュージック集団、ROVOの通算10枚目。毎回毎回、安定したものを届けてくれる重鎮でございますが、本作は突き抜けた印象を受ける。静から動へゆっくりとカタルシスを得る手法が、銀河の疾走とも表現できそうな#3「D.D.E」等でもわかる通りにいきなり最高潮を迎える曲が登場。優雅で高らかに響くエレキ・ヴァイオリンと強靭なビートを軸にどこまでもどこまでも連れて行く。”この時代を生き抜くための力強さとポジティヴなメッセージに満ちた1枚”と表現するのも頷ける、個人的には近年で一番お気に入りの作品です。

Les Voyages de L'Âme

第10位 Alcest 『Les Voyages De L’ame』

夢の中にいるような温かい時間。自身の幼少の頃の神秘的体験をどこまでも美しく、どこまでもロマンティックな色調で彩っていくフランスのAlcest。待望の3rdアルバムとなる本作は、これまでの集大成であるとネージュ自身が発言しているが、確かにこれまでの作品を通した上で諸要素が絡み合い、様々なジャンルの音が鳴り響いている。ブラックメタル的要素を孕みながらも、耽美に幻想的にフォーカスしていくそのサウンドは、ポストブラックメタルの旗手として申し分ない。1stや2ndの方が評価は高いと思うが、名曲#1「Autre Temps」を中心にAlcestの魅力が十分に堪能できる作品となっている。

pris

第9位 Milanku 『Pris a` la gorge』

カナダ・モントリオールの轟音ポストロック/激情ハードコア・バンドの2ndアルバム。前作でたどり着いた境地を経て、突き詰められた激しさと美しさをまとい、力強く織り上げるストーリーに心を衝き動かされる力作だ。繊細なアルペジオ、哀切のトレモロ・ギター、それに鼓膜を圧する凄まじいまでの轟音の洪水。さらにはレーベル史上最も美しいと表現されるに至る珠玉のメロディが光となり、希望の灯となる。さらに身を削るような激情の咆哮には興奮が体中を駆け巡ることだろう。また、スラッジ勢にも肉迫する重みを増したリズム隊、彼等を中心とした低くうねるヘヴィネスも本作では非常に強烈。ここでは、Explosions In The SkyやMONOのような静から動への過剰なまでにドラマティック展開に、激情を駆り立てるハードコアの魂が宿っている。

POSTHUMAN (ポストヒューマン +ボーナス・ディスク)

第8位 JK Flesh『Posthuman』    

常に尖鋭的な音楽を探究し続ける孤高の天才Justin K Broadrickの新プロジェクト。 現在のメイン・プロジェクトのJesuが奏でる昇天の世界から、正反対ともいえる奈落に沈めるかのごとし驚異的な作品だ。無慈悲なヘヴィ・ギターと冷徹なマシーン・ビート、怒号のような叫びが炸裂する激重音楽。このようにインダストリアルの手法を用いているが、ダビーな音響アプローチやダブステップ風のビートも取り入れながら揺さぶりをかけていく。それでも感情を殺しにかかる苛烈なギター・リフの応酬は凄まじく、Godfleshを彷彿とさせる場面や別プロジェクトのThe Blood Of Heroesなどが頭をかすめることもある。インダストリアルから現代のベース・ミュージックのファンまでに刺さる要素が収められているといえるだろう。

11(通常盤)

第7位 cali≠gari 『11』

なんだかんだで復活作となる前作よりもはるかにこっちの方が好みだった。というわけで、賞味期限詐欺でフラフラし続けた可愛いオッサン達(禁句)による快作。石井さんと青さんの才能の煌きと融合の結晶、単なるありがとう再結成では終わらないクリエイティヴティとユーモア、そしてセンスの高さを見せつけております。いやもう、本当に素晴らしい。”アイは~、ユーにラヴしたんです”。全ての民へと届くべき作品です。

Mass V Vinyl Version

第6位 Amenra 『Mass Ⅴ』  

ベルギーの激情カオティック・ポストメタル最高峰、AmenraのNeurotに移籍しての新作。ゆっくりと奈落へと押し進む重いリズムと極端にヘヴィなリフの反復、怨念を込めてあまりにも悲痛に叫ぶヴォーカルが、視界そのものを黒で塗りつぶす。徹底して遅く重厚、そして暗鬱。一筋の光すら差し込む余地のない闇、そして身体的にも精神的にも圧倒的な重量感を伴って轟くこのサウンドは、変わらずにAmenraである。なお一層の深化を遂げた全4曲40分の激重暗黒音楽は、ベルギーが産み落とした怪物の新たな進撃の始まりと呼ぶのにふさわしい。Neurosisをも説き伏せた神秘の漆黒界がここに打ち立てられる。

Materials Science

第5位 DOIMOI 『Materials Science』

名古屋のエモーティブ・ナード・メタル・バンドの3枚目。HR/HM~グランジ、ストーナー・ロックにオルタナやエモまでを飲み込んで鍛え上げた強靭なサウンド、胸の内側にじわっと広がる伸びやかな感情的な歌が理想的な邂逅を果たす”DOIMOI流サウンド”がひとつの到達点に達した作品ではないかと思う。鼓膜にずしりと効く重みと破壊力を持つギター・リフ、変拍子を交えた精微なリズムによる練りに練った展開を繰り広げる本作も実に彼等らしい濃い密度。そのなかで日本人らしい情緒豊かな歌や美しいメロディが折り重なる。全体を通してもヘヴィかつ変則的であるにも関わらず、巧みに配されたキャッチーさが見事。ジャンルで括れない奥深さと独自性が魅力です。#2「円群」と#4「誓い(1stの「キレイな女には振り返る事を誓うよ」のリメイク版)」が特に素晴らしい。

For My Parents

第4位 MONO 『For My Parents』

世界中で一番聴かれている日本のバンドらしいMONOの通算6枚目。フル・オーケストラとの融合を果たし、あらゆる人種や国境を越えて人々の胸を打ったインストゥルメンタルは前作で頂点を極めた。そうした中で本作は、磐石のコンビだったアルビニの元を離れての継続路線。どこかもの悲しさを湛えた叙情的なクリーン・ギター、大らかなメロディ、大地を踏みしめるリズム、吹き荒ぶ吹雪のような轟音ノイズ。静から動へ、フル・オーケストラとバンド・サウンドで聴かせる、劇的でダイナミックなインストゥルメンタルである。結成当初から13年かけて培い、追求し、形にしてきたこれこそがMONOというサウンドを全編に渡って展開。一体化したバンド・サウンドとオーケストラが、光と希望の音色を高らかに鳴らしている。フジロックでのオーケストラとの共演ライヴは鳥肌が立つほどに感動した。

The Seer

第3位 Swans 『The Seer』

年季入ったオッサン達の復活2作目。本気の本気。CD2枚組11曲120分にも及ぶ超大作。円熟期を迎えたSwansというフィルターを通した楽曲の数々は、フォークからオルタナからノイズ、プログレ等をごった煮しながら一大暗黒巨編としてそびえ立つ。張り詰めた緊張感の中で悪夢を見せ、染み入るような哀愁を漂わせたり、シリアスに心の内をえぐったりもしてくる。さらにJarboeやKaren Oといったゲストが添える彩りもまた格別なもので、ミステリアスに綴られていく展開は、まるで一筋縄ではいかない。32分超えのタイトルトラックを始め、長きにわたって培ってきたSwansの集大成に平伏します。まさか、2年前の復活作から一気にここまで発展するとは驚くほかない。

Allelujah! Don't Bend! Ascend!

第2位 GODSPEED YOU! BLACK EMPEROR 『Allelujah! Don’t Bend! Ascend!』
   

10年ぶりとなる新作の発表に誰もが驚いたと思う。人間の一番深いところに届く重たいサウンドは、美と闇に満たされた芸術。4曲53分で構成された本作は、神格化されたインスト・ポストロックの雄が放つ、2012年のマストアイテムのひとつであることは間違いないかと思う。 異様な緊迫感が心身を締め付け、複雑な構成を取りながらも濃密なドラマ性を貫き、大所帯ゆえのオーケストラにも比肩する迫力とともに重厚なスケールを打ち立てる。年月をかけ、ストイックに求道した者だからこそ鳴らせる音。本作では、よりロックの方に振れている印象はあれど、終末感漂う闇をくぐり抜け、光と歓喜を手にするような瞬間のカタルシスは流石というほかない。他の追随を許さない孤高の1枚。

Weather Systems

第1位 Anathema 『Weather Systems』

前作に引き続いて、素晴らしい作品であった。やっぱり近年のAnathemaは本当に良い楽曲を作っていると思う。 清らかな音の調べが導く天上の世界。昨年のリ・アレンジ集第2弾『Falling Deeper』を挟んでリリースされたこの9thアルバムは、これまでの延長上にあるポスト・プログレッシヴを基調とした作風であるのは間違いないが、重ねた洗練とリ・アレンジ集で磨いたオーケストラ・アレンジが新たな昂ぶりと美しさを生んだ。聴けば聴くほどに心の芯を震わせ、深くにまで染み込んでいくこの細やかな表現には、熟練者ならではの味わいも感じとれるはず。力強い旋律と共に晴れ渡る空と神々しい光に吸い込まれていく。ジャンルという壁を越えて、万人の胸に響く感動を届けてくれる秀作。これが今年の第1位です。あの池田信夫氏も4位に挙げてましたね。

==感想==

 今年はゴジラ松井選手の引退に華を添える形で55枚選びました。というのは嘘でして(笑)。書いてる途中で入れるの忘れた!とかそういう理由で5枚プラスしています。例年に比べるとチェックした新譜の枚数は減っているんだけど、まあいつも通りという感じでご勘弁を。あと、今年はこのサイトっぽいなあという感じで、そんなにおもしろみはないランキングになっていると思う。

 1位に選出したのはAnathema『Weather Systems』。いろいろなサイトやブログの年間ベストで被ることはわかっておりましたが、これを挙げない訳にはいかない素晴らしい作品でした。気品高い美しさと清らかさ、労わる様な優しさと温かさ、聴けば聴くほどに染みる。前作と続けて万人の胸に響く感動が詰まっていると思う。本作では冒頭を飾る「Untouchable, Part 1」「Untouchable, Part 2」をまず聴いていただきたいところ。

 2位にGY!BEの10年ぶりの新作。こちらが1位でも良かったのですが、再生回数の関係で2位に。作品の方は20分の大曲2つを含む重厚なスケールを持つ芸術作で、活動休止してようが時代を超えていく凄さを思い知らされました。同じくSwansもそうですね。途中までずっと”はぁはぁ”言ってる曲には唖然としましたが、あらゆる感情を飲み込む円熟の暗黒ワールドが広がっており、キャリア最高傑作というGira先生の言葉に偽りなし。MONOはフジロック補正もあるけれど、アルビニの元を離れて自らの音楽をより高みへと昇華した佳作。名古屋代表DOIMOIにしても自己鍛錬を続け、さらに知的で強靭で感情的なサウンドを掻き鳴らした。あとは、やっぱりcali≠gariの復活2作目が予想以上に良かったので感動。以下は順位通り(って上位以外は気分で決まるけどw)。来年もたくさんの良い作品に巡り会いたいものですね。

         
uroborosr Ep's 1988-1991 LIVE I-VI (ライヴI-VI: 日本独占企画6CD) Temporal Live Recording 08.10.2011

 上記の作品は編集盤とかライヴアルバムで良かったもの。いろいろと挙げようとは思ったが、該当するものをほとんど聴かなかったので上半期で紹介したものが大半。そのなかで少しだけ言及すると、Lento『Live Recording 8.10.2011』は、奈落の底を見る激震の音楽として、上半期でもかなり大きな衝撃を受けた。Lentoは先月出た新作があまりよくなかったのもあって、なおさらこのライヴ作のリリースは重要だったなと思う。そして、絶対に外せないのがISIS(アイシス)から送られた2作品ですね。3月にリリースのLIVE BOXセットには大変お世話になりましたし、デモや未発表音源等を集めた編集盤『Temporal』もファン必携の内容で、ありがたい代物だった。


2012年BEST LIVE10選 + @

20121106_4

■ 01/28 Nadja / Vampillia / ENDON @ 渋谷O-NEST
■ 05/09 Mark McGuire / 青葉市子 / Shinji Masuko(BOREDOMS)@ 代官山UNIT
■ 05/17 Asobi Seksu @ 名古屋アポロシアター
■ 07/28 MONO @ FUJI ROCK FESTIVAL ’12
■ 07/29 EXPLOSIONS IN THE SKY @ FUJI ROCK FESTIVAL ’12
■ 07/29 Refused @ FUJI ROCK FESTIVAL ’12
■ 09/21 Earth & Mamiffer @ 名古屋池下CLUB UP SET
■ 09/28 Alcest & Vampillia @ 名古屋今池3STAR
■ 11/03~04 leave them all behind 2012 @ 代官山UNIT
■ 11/28 The Black Heart Rebellion & nonrem @ 吉祥寺WARP

※ 今年からは日付順表記で、順位付けは無し。

 東京酒吐座で幕開けた2012年のライヴ。今年は、奇跡的な来日がとにかく続いた年だったように思う。それはみなさんも異論はないはず。まずは1月末にカナダの轟音神秘ユニット、Nadjaが初めて日本の地を踏んだ。それからというもの、Mark McGuireにMamiffer、Deafheaven、Chelsea Wolfe、Alcest、極めつけは20年以上の時を経て初来日した巨人たちEarthとGODFLESHである。まさか!が立て続けに起こったことに関して、来日に尽力してくださった関係者に強く感謝したい。

 順位づけはしないと最初に記述してあるけれども、個人的に一番衝撃のライヴは、leave them all behindの大トリを飾った初来日の”GODFLESH”であったかなあと思う。僕はJesuからジャスティン.K.ブロードリックの音楽に触れたこともあり、彼のプロジェクトではJesuが一番好きなんだけれども、それを覆すかのような激重のインダストリアル・サウンドが、時代を超えた凄みを持って炸裂していたのがとても印象的だった。今年のRoadburn Festivalのようにジャスティンが各々のプロジェクトを披露できるような機会がくればと切に思う。同日出演のenvyの『君の靴と未来』全曲演奏も格別。前日のSUNN O))))やBorisなどの全8組が繰り広げた代官山美轟重音祭は、素晴らしい体験であった。

 フジロック組から結構選んでみたけど、なかでもRefusedを見れた奇跡が大きい。当然ライヴなんて一度も見たことありませんが、解散してたのか?と思えるぐらいの好演で、ベストアクトに数多くの人が選んでいたのは納得。そして、オーケストラとの共演を果たした2日目のMONO、苗場を美しい轟音で包み込んだExplosions In The Skyの2組も特に良かった。個人的には3日目が凄い良くて、ChthonicにFUCKED UP、真夜中のばけばけばー、そして最後の最後となったマクマナマンと楽しむことができた。

 今年もまた奇跡を起こしてくれたいいにおい(というかVampillia)にも大きな拍手を送りたい。Nadjaを招聘した奇跡。Alcestを招聘した奇跡(まあ、アッティラ先生もだけど)。そして、GODFLESHと並んで極めつけのEarth初来日。もちろん、遠いベルギーから覚悟を決めてやってきたThe Black Heart Rebellionの鬼気迫るライヴも強く印象に残っている。

 他にもROVOやbloodthirsty butchersにトクマルシューゴの国内勢のライヴは良かったし、初cali≠gariに5年ぶりのムックと楽しませていただいた。海外勢だと、客20人前後という辺境地・名古屋の魔力に苦しむ中、全身全霊のパフォーマンスが強烈だったDeafheavenが良かった(あのTorcheのライヴ時よりも客入り悲惨だったデフヘヴンには本当に申し訳ない)。今年もまた良い年であったといえるでしょう。


2012年 旧作BEST10

Februus Ἀποκάλυψις (APOKALYPSIS / アポカリプシス) Passed Me By / We Stay Together elil Between Two Unseens (Bonus Dvd)

Shape of Punk to Come Endserenading Moleskine Always a Pleasure Return to Earth

 2012年に聴いた2011年以前に発売されたアルバムを10枚選出(番号はついていますが、順位ではないです)。左上から右に向かって、順に紹介しますと・・・。

01. Uneven Structure『Februus』    
02. Chelsea Wolfe『Apokalypsis』
03. Andy Stott『Passed Me By~』     
04. Fall Of Efrafa『Elil』
05. Taken『Between Two Unseens』     
06. Refused『The Shape of Punk to Come』
07. Mineral『Endserenading』     
08. Sometree『Moleskine』
09. Compound Red『Always a Pleasure』     
10. Sigirya『Return To Earth』

 最初に挙げた3枚は、上半期BEST記事にも掲載。その中では特に1.Uneven Structureをよく聴いたし、去年聴いていればベストの上位に入れていたはず。”Meshuggah + Killswitch Engage + Rosetta”っぽい印象を受けるけど、独自のDjentスタイルを早くも確立したようで単純にすごい。2.Chelsea Wolfeは音源とライヴとのギャップを確認できたし、3.Andy Stottは最近出た新作も良かった。

 ここから今回分。4.Fall Of Efrafaは前述のLight Bearerの前身バンド。ようやく再発されたこの作品は20分以上の曲を3つ揃える漢気とドラマ性を兼ね備えた秀作。5.Takenはようやく入手できたけど、激烈なサウンドが透明感ある叙情性を加えることで進化を果たした作品だった。6.Refusedはフジロックが素晴らしかったので。7.Mineralもようやく聴いたという感じですかね(苦笑)。この辺の90’sエモの類はほとんど通ってこなかったけど、これはとにかくセンチメンタルなメロディと枯れた歌声がとにかくグッときた。これを境に色々と聞いてみたけど、奇跡の来日を果たした(行ってないけど)Penfoldは特に気に入ってる。

 あと、8.Sometreeもとてもよかった。轟音ポストロック系の展開にエモがいい感じでブレンドされた形だろうか(もともとはエモの要素の方が強かったようだが)。静と動が紡ぐ確固たる世界は、何よりも力強い。これ以降の作品ではポストロック化が顕著だけど、それも円熟味があるから成せるのかなあと。9.Compound Redも90’sエモ。これは運良く中古で拾ったけど、初期エモが好きな人はチェックしてみるべきだと思います。最後の10.Sigiriyaは元Acrimonyの4/5人が在籍するヘヴィサイケ/ストーナー/ドゥーム・バンドで、相変わらずラリってるわ重いわ煙たいわで、脳内にお花畑が広がる(笑)。


2012年を振り返り・・・

 まずは今年1年お付き合いいただき、ありがとうございました。みなさまの支えがあって、なんとかがんばれています。1月5日で9周年を迎えるわけなんですが、あと1年は必ず続けようと決めています。10年はなんとか迎えたいと個人的にも思っていますので。これまで通りにサイトに足を運んでいただければ嬉しいですね。更新には波があって申し訳ないですけど、改善できるかなあ・・・。

 さて、今年は粛々とレビューを更新する中でも2本インタビューを行ってみました。以下その2本です。

 ■ 国産ポストメタル新世代 juki インタビュー
 ■ ネオクラストを中心に良質音楽をお届けするディストロ、LongLegsLongArms (3LA)インタビュー

 jukiも3LAさんもどこの馬の骨ともわからん自分の申し出を快くお受けくださいました。両者とも自分が強く伝えたいと思っていたし、どこにもインタビュー記事なんて無いので、実現できたことに深く感謝しています。jukiは国産ポストメタルとしての新しい息吹を感じるバンドだと思うし、3LAさんはネオクラスト~ハードコアを中心に情熱を持って運営されている。まだまだ未熟者ではあるし、改善すべき点は多いけど、今やれることをやって両者をフィーチャできたかなあとは感じています。インタビューはこれからも継続的に行っていこうと思っています。とはいえ、次は誰になるのやら。あと、インタビューと年間ベスト以外に特集記事ができるかは課題ですね。うーむ、がんばります。

 また、僕がちょっとした物書きとして関わっているサイトでは、Daymare Recordingsの総帥にleave them all behindについてのインタビューも行うことができました。凄い貴重な体験をいただきまして、とても勉強になりました。今年はこれが一番大きかったかな。今後の糧にしていきたいですね。

 長々と綴ってきましたが、今年もよろしくお願いします。

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