今年も別名義含めて5作品ほどを世に送り出したBVDUBさん。こちらは今年2枚目となる作品になるわけですが、美麗アンビエン・テクノは、洗練を続けながらどこまでも続きます。作風としては『Then』に近いシューゲイズ・テイストを交えた仕上がりで、恍惚の桃源郷へと6曲77分かけて導きます。まあ、大きな変化はないけれども、聴いてるとやっぱり満足感と心地よさが得られるから、結局いいんだよなあ、この人の作品は。どこか儚くて、それでいて安らぎとホンの少しの快楽が癖になる。EAST OF OCEANSという名義ではもっとビートが効いた感じでノせ、Earth House Holdもなかなか良い感じでした。
バルト三国・ラトビアの秘宝、Tesaのタイトル通りの4枚目。レーベルメイトのRekaやYear Of No Light等に影響を受けた激情型ポストハードコア/ポストメタル・スタイルが特徴的で、インスト・パートに重きを置いて、より冷気と哀感がこもった音作り。重量感バッチリのポストメタル・スタイルで押し切る#1「Ⅰ」、冷たい旋律のリフレインからノイズ爆撃に見舞われる#2「Ⅱ」、そして荒涼とした雪景色が広がる18分超の「Ⅲ」という3曲を収録し、その存在感を示している。
いきなりシューゲイザー化したボストンの轟音トリオの5枚目。マイブラの「To Here Knows When」を強烈に意識した美しさを放つ#5「Beautiful」を聴いたときは、本格的なシューゲへの転身だと本気で思った。でも、いきなりってわけではないか。これまでもJesuを継承してきたような感じだったし(しかも前作はジャスティンがプロデュース)。もっと激しくエモーショナルに!と感じる部分はあるけれど、新境地へと突き進むシューゲイジング・オンパレードの本作で生まれ変わったConstantsを体感できる。
Grailsから、Emil AmosとAlex John Hallによる新ユニットのデビュー作。本家と共振しつつも違った色を出す事に成功した作品で、自らのサイケデリック要素を研ぎ澄まし、薄靄のかかった世界を陰鬱であるが豊かな曲調と共に案内していく。サンプリングや電子音を上手く用いながら、異国情緒、古めかしいホラー映画風の質感などの彼らならではの深みと渋みが本作でも行き渡っている。インスピレーションを刺激し、ゆるやかにその世界に心身を取り込んでいくような感覚を持つ本作は極めて独創的。
Tokyo Jupiterコンピへの参加や欧州ツアーなどで鍛錬し続けてきた、吉祥寺を拠点に活動する激情ハードコア4人組、nonremの4曲入り約30分の1st EP。envyやheaven in her armsに代表されるような感性、それに轟音ポストロック的なアプローチや欧州のソリッドな激情HCの要素までを上手く昇華した作風が持ち味でかなり良い。深遠なアルペジオや掠れ気味の声が光と希望を追い求め、劇的なストーリーを綴り、感情を揺り動かす激しいサウンドが畳み掛ける。揺るぎない自信に満ちた4曲が揃っているが、なかでも#2「無呼吸」があまりにもドラマティックで素晴らしい。
第38位 Lotus Plaza 『Spooky Action At A Distance』
Deerhunterのロケット君のソロ2枚目。当然、本隊のように柔らかなサイケデリアを広げていくなかで、軽やかなリズムで突き進み、メロディはさらにキラキラとした光沢がある。リヴァーヴのかかったギターが緩やかな波のように押し寄せては独特の浮遊感を生む中で、ロケット君のソフトな歌が甘く溶け込んでいく。現代的サイケデリアを表出させつつも、彼のバック・グラウンドの広さやソングライティングの確かさがこのソロ・プロジェクトではしっかりと表されているように感じる。涼やかでメロウなギターロック#7「Jet Out of the Tundra」が特にお気に入りの1曲ですね。
第37位 Between the Buried and Me 『Parallax II: Future Sequence』
第36位 Trachimbrod 『A Collection Of Hidden Sketches』
メンバー全員が1990年代生まれというスウェーデンの激情エモーショナル・ハードコア5人組の1stフルレングス。EITS~MONO系の壮大な轟音ポストロックだったこれまでからの変化として、ソリッドに激情ハードコア化。同郷のSuis La Luneを思わせる哀切メロディと蒼き感情が迸る絶叫が胸に刺さり、熱くする。繊細なアルペジオを中心とした美旋律で引き込む辺りは、前作から通じているものだが、鼓膜をぶち抜くような荒々しいパートが表面化してきたのは頼もしい。エモ~ポストロック~ハードコア界隈を越えて引き込んでいけるメロディの良さも強み。特に#3「Through Walls, Floors and More」があまりにドラマティックな展開で泣ける。
クトゥルフ神話に登場する魔導書「妖蛆の秘密」からタイトルを拝借した6枚目。前作のできを葬り去るような猛々しい粗暴さ、痺れるような重低音が合致しており、オープニングの#1「Serums Of Liao」から過去最高の破壊力を持って暴れ回り、#3「Ferile Green」まで全てを豪腕に薙ぎ倒しながら突っ走る。ドゥームからスラッシュまでを横断する自在のリズムはたくましく、漢泣きのギターソロも存在感を示し、マット・パイクの歌にしても迫力が違う。”4thアルバム『Death Is~』の実験性と3rdアルバム『Blessed Black Wings』が持つすさまじい邪悪さを合体させたような作品”とマット自らが語るほど。あるゆる面で過去を上回るハイパーな轟きが本作には封じ込められている。
“UKのPains of Being Pure at Heart” とも評されるexloversの1stアルバム。彼等に関しては、#1「Starlight, Starlight」でもう胸を撃ち抜かれてしまいまして、アルバムを結構聴きました(その曲は今でもよく聴いてる)。甘美さ、瑞々しさ、そしてナイーヴな歌心が結晶化する楽曲群に、ときめきを覚えるわけですよ。甘酸っぱい青春の煌きが音になったような感じ。マイブラやスマパンやエリオット・スミス等の影響をうまく溶け込ませながら、ノスタルジックで清涼感のあるサウンドを生みだしている。シューゲイザー・リバイバル的に語られることは多そうだが、今を生きるバンドとしての個性は十分に発揮しているはず。万人に勧められる良作。
第29位 Caspian 『Waking Season』
新世代轟音ポストロック・バンドの3作目。エレクトロ・サウンドを少し取り入れたりもしているが、大枠は彼等らしい。#1に代表されるようなドラマティックな静動の揺れ動きと、珠玉の轟音バースト。理屈抜きで結局これが最高なんです。Explosions In The SkyやMONOとも比肩するインストゥルメンタルがここにある。本作は特に#1「Waking Season」~#3「Gone In Bloom and Bough」の流れがとても良い。中国までは行ってるんだから、来年辺りに日本の池を踏んで欲しいものですね。
Gnaw Their Tonguesをはじめとして数多くのプロジェクトで活動するMaurice De Jongによるさらなるプロジェクト。 Gnawとは違い、目指す先は天界。アンビエントやシューゲイザーの要素が強く、”ドリーム・ノイズ”とも表現したくなるような壮麗な音塊に包まれていく。神々しく広がるシンセの音色、優美なヴォイス・サンプルが圧倒的なノイズ・ギターに巻き上げられ、異様なまでにドラマティックに展開。ブラックメタル風の激速ビートも各所に配置されており、スリリングさが煽る昂揚感も予想以上だ。Nadjaの荒涼とした世界に、シガー・ロスが表現する天上界のエモーショナル、さらにはWolves In The Throne Room辺りのポスト・ブラックメタルの要素が絶妙な融合を果たしている。改めて彼の才能を思い知る佳作。
MODERN LOVEの看板アーティスト、Andy Stottの最新作。衝撃度で言えば前年の『Passed Me By / We Stay Together』には個人的には及ばなかった。けれども漆黒のミニマル・ダブは、幽玄な女性ヴォーカルをフィーチャしながら、視界を歪ませ、脳内をかき混ぜてくる。その声がもたらす色彩と体熱がどす黒のグルーヴと相まって、独特な世界へと落とし込んでいく。もう抗えません。同レーベルのDemdike Stareの新作も好評だが、旧譜だけしかチェックできませんでした。
ex-ISIS,現mamifferのアーロン・ターナー、Convergeのネイト・ニュートン、Cave Inのケイラブ・スコフィールド、ZOZOBRAのサントス・モンターノというボストン・ハードコア人脈のオールスター群、Old Man Gloomの8年ぶりの復活作。エンジニアにConvergeのカート・バルー、マスタリングはジェイムズ・プロトキンという最強布陣で作り上げた尖鋭的ハードコアの逸品である。各々のメンバーが持つ諸要素の融合。そしてアドレナリンが出まくる扇情性の高いハードコア、スラッジの重苦しいヘヴィさと苛烈さ、奇妙なエレクトロニクスの緻密な交配が生む凄まじい衝撃力。来年の来日公演も楽しみだ。
カナダ・モントリオールの轟音ポストロック/激情ハードコア・バンドの2ndアルバム。前作でたどり着いた境地を経て、突き詰められた激しさと美しさをまとい、力強く織り上げるストーリーに心を衝き動かされる力作だ。繊細なアルペジオ、哀切のトレモロ・ギター、それに鼓膜を圧する凄まじいまでの轟音の洪水。さらにはレーベル史上最も美しいと表現されるに至る珠玉のメロディが光となり、希望の灯となる。さらに身を削るような激情の咆哮には興奮が体中を駆け巡ることだろう。また、スラッジ勢にも肉迫する重みを増したリズム隊、彼等を中心とした低くうねるヘヴィネスも本作では非常に強烈。ここでは、Explosions In The SkyやMONOのような静から動への過剰なまでにドラマティック展開に、激情を駆り立てるハードコアの魂が宿っている。
第8位 JK Flesh『Posthuman』
常に尖鋭的な音楽を探究し続ける孤高の天才Justin K Broadrickの新プロジェクト。 現在のメイン・プロジェクトのJesuが奏でる昇天の世界から、正反対ともいえる奈落に沈めるかのごとし驚異的な作品だ。無慈悲なヘヴィ・ギターと冷徹なマシーン・ビート、怒号のような叫びが炸裂する激重音楽。このようにインダストリアルの手法を用いているが、ダビーな音響アプローチやダブステップ風のビートも取り入れながら揺さぶりをかけていく。それでも感情を殺しにかかる苛烈なギター・リフの応酬は凄まじく、Godfleshを彷彿とさせる場面や別プロジェクトのThe Blood Of Heroesなどが頭をかすめることもある。インダストリアルから現代のベース・ミュージックのファンまでに刺さる要素が収められているといえるだろう。
1位に選出したのはAnathema『Weather Systems』。いろいろなサイトやブログの年間ベストで被ることはわかっておりましたが、これを挙げない訳にはいかない素晴らしい作品でした。気品高い美しさと清らかさ、労わる様な優しさと温かさ、聴けば聴くほどに染みる。前作と続けて万人の胸に響く感動が詰まっていると思う。本作では冒頭を飾る「Untouchable, Part 1」「Untouchable, Part 2」をまず聴いていただきたいところ。
順位づけはしないと最初に記述してあるけれども、個人的に一番衝撃のライヴは、leave them all behindの大トリを飾った初来日の”GODFLESH”であったかなあと思う。僕はJesuからジャスティン.K.ブロードリックの音楽に触れたこともあり、彼のプロジェクトではJesuが一番好きなんだけれども、それを覆すかのような激重のインダストリアル・サウンドが、時代を超えた凄みを持って炸裂していたのがとても印象的だった。今年のRoadburn Festivalのようにジャスティンが各々のプロジェクトを披露できるような機会がくればと切に思う。同日出演のenvyの『君の靴と未来』全曲演奏も格別。前日のSUNN O))))やBorisなどの全8組が繰り広げた代官山美轟重音祭は、素晴らしい体験であった。
フジロック組から結構選んでみたけど、なかでもRefusedを見れた奇跡が大きい。当然ライヴなんて一度も見たことありませんが、解散してたのか?と思えるぐらいの好演で、ベストアクトに数多くの人が選んでいたのは納得。そして、オーケストラとの共演を果たした2日目のMONO、苗場を美しい轟音で包み込んだExplosions In The Skyの2組も特に良かった。個人的には3日目が凄い良くて、ChthonicにFUCKED UP、真夜中のばけばけばー、そして最後の最後となったマクマナマンと楽しむことができた。
今年もまた奇跡を起こしてくれたいいにおい(というかVampillia)にも大きな拍手を送りたい。Nadjaを招聘した奇跡。Alcestを招聘した奇跡(まあ、アッティラ先生もだけど)。そして、GODFLESHと並んで極めつけのEarth初来日。もちろん、遠いベルギーから覚悟を決めてやってきたThe Black Heart Rebellionの鬼気迫るライヴも強く印象に残っている。
01. Uneven Structure『Februus』 02. Chelsea Wolfe『Apokalypsis』 03. Andy Stott『Passed Me By~』 04. Fall Of Efrafa『Elil』 05. Taken『Between Two Unseens』 06. Refused『The Shape of Punk to Come』 07. Mineral『Endserenading』 08. Sometree『Moleskine』 09. Compound Red『Always a Pleasure』 10. Sigirya『Return To Earth』
ここから今回分。4.Fall Of Efrafaは前述のLight Bearerの前身バンド。ようやく再発されたこの作品は20分以上の曲を3つ揃える漢気とドラマ性を兼ね備えた秀作。5.Takenはようやく入手できたけど、激烈なサウンドが透明感ある叙情性を加えることで進化を果たした作品だった。6.Refusedはフジロックが素晴らしかったので。7.Mineralもようやく聴いたという感じですかね(苦笑)。この辺の90’sエモの類はほとんど通ってこなかったけど、これはとにかくセンチメンタルなメロディと枯れた歌声がとにかくグッときた。これを境に色々と聞いてみたけど、奇跡の来日を果たした(行ってないけど)Penfoldは特に気に入ってる。