「ゼロからでも始められるアイドル運営」を読んで ~YURUiはKAWAiiを超える(多分)~

ゼロからでも始められるアイドル運営 楽曲制作からライブ物販まで素人でもできる! (コア新書)

 脱力系アイドル・グループ、ゆるめるモ!の総合プロデュースを務める田家大知氏が、超低い腰で伝播するアイドル・プロデュース指南書である。”あいどる☆ギョーカイ”にあんまり繋がりを持って無いらしい田家氏が、ももいろクローバーの「ピンキージョーンズ」という曲に触発されて「安西先生、アイドルをプロデュースしたいです」と勢いで作ってしまったのが彼女達。本書は、そのゆるめるモ!の生誕から現在までの歴史をひもときながら、アイドルを全く知らない人に対して、また「俺もアイドル・プロデュースして一旗あげるぜっ!」という人に対して、このギョーカイを伝える役割を果たしている。

 まずは、この田家氏について。氏は、元バンドマンでフリーライターという肩書だそうだが、好きな海外バンドを見に海外へ出ていぐらいには、活発な方であります(スコットランドのbisというバンドが特に好きな模様)。その彼が3.11の震災以降、何とか社会貢献できないかと考えて、こういったゆる~いアイドルを始めてみようと思ったのが発端である。ちなみに自分が歌うよりも、可愛い女の子が歌った方が「響くよねえぇ」とのこと。申し訳ないが、世の中はそうできているわけでして(笑)。

 それから、秋●康ばりの「俺、アイドルのプロデュースできまっせ」顔で怪しまれながらも、直接の声かけでメンバー探しに奔走し(ちなみに、けちょんは田家氏のことを似ているから本物のつぶやきシローだと思ってたらしい)、第1期メンバー4人を集めて、ゆるめるモ!がスタート。その後にメンバーの脱退や第2期メンバー乃加入などを経て、現在の8人体制となっている。

 当然ながら上記の思想から、ゆるめるモ!は、明確なコンセプトのもとにつくられている。それが「脱力支援アイドル」。つらい時は逃げればいいじゃん!と歌ってあげられる、そんなアイドルである。「いいじゃん!」とか言ってる物凄い外人ギタリストが今、日本に住んでいますけれども・・・。

 楽曲のコンセプトも明確で、『根底のテーマである「辛かったら逃げてもいいじゃん」を基に、ニューウェイヴ、エレクトロ、ヒップホップ、クラウトロック、ポストパンク辺りのトがった音楽をぶちこんで、雰囲気はゆる~く仕上げる」とのこと。具体的には、NEU!やこれまでにESGをゲフゲフしてきているのだが、キラキラの王道アイドル・ポップスで現実から逃げることを推奨するという、離れ業もやってのけている。俺も逃げてえ、ハゲあがった上司と社会から逃げてえ(苦笑)。ototoyさんのインタビューでは、『メジャー・フィールドの一般的な人たちも聴けるような楽曲がたくさんあるなかに、マニアックな楽曲もあるから意味がある。』との発言もあり、田家氏としてはメジャー志向の方が強い様だ。フジロックと紅白の出演を本気で狙っているとか、本当に頭のネジがゆるめるモんしちゃってる(笑)。

 その後もゆるめるモ!という実例を通しながら、楽曲制作から全国流通について、衣装やミュージックビデオ戦略、ライヴのブッキングから、「もうひとつの生命線」と記述するぐらいに大事な物販についてが具体的な形で記述されている。主流になりつつあるクラウドファンディングについても、活動初期(2013年)に採用。この辺りを読んでると、今をときめく”あいどる☆ギョーカイ”の実態、運営方法が少しは見えてくるのではないだろうかと思う。しかし、アイドルのライヴってノルマのないことが多いってことには、驚きましたね。それだけ人の入りが見込めるということか。あと、BELLRING少女ハートのプロデューサーの方が、楽器弾けないから鼻歌で歌ってアレンジャーの方に曲にしてもらうって話はおもしろかった。清春が昔は楽器弾けなくて鼻歌作曲だったことを思い出しましたね。

 後追いの自分としては、アイドル運営のノウハウだけでなく、ゆるめるモ!のこれまでの足跡をしっかりと辿れる内容になっているのも嬉しい。前述したように結成秘話、メンバーの脱退、2期メンバーの加入、節目となったライヴについてが丁寧に説明されている。その中でも、まだ4人だった頃に2人が体調不良で休みが続いた時に、しばらく残る2人でライヴを続けたという話には胸が熱くなったし、メンバーで一番人気があると思われる、あのちゃんが引きこもり気味の子だったって話には単純に驚いた。YURUiがコンセプトとはいえ、眉間のしわをゆるめて彼女達はなんとかしてきたわけだ。

  僕は、ゆるめるモ!の作品をほぼ全作チェックしていて(レビューはこちら)、 インストア・イベントに1回だけ足を運んでいる。松岡修三が「もっと熱くなれよ!」と説教したくなり、Jリーグカレーことラモスが激怒するぐらいにコンセプトの”ゆる~い”を貫いているわけなんだが、この雰囲気がたまらない人にはたまらないだろう。田家氏の柔らかい人柄や謙虚さが文章からも表れていて、 だからこそ彼女達にもこういう雰囲気が蔓延しているんだろうなあと感じる。彼がメンバーの子達にどれほど慕われているかは、巻末の「ゆるめるモ!初期メン バー座談会」で確認することができます。彼が記述する”アイドルは愛に溢れた世界”、それがこのグループからはヒシヒシと伝わってくる。

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 実際のところ、彼女達はゆるいといっても音源リリースやライヴに関してのサイクルは結構早い。今年になってからは、一流とも繋がっていきましょうよということで、JOJO広重氏も動員していることから、サブカル的な立ち位置も担おうとしている。あらゆる方面を攻めながらも、いつの間にかメインストリームにいる的なことを企んでいる気がしますね。そんなゆるめるモ!には「脱力レジスタンス」で道なき道を進んでいって欲しい。そう、三輪車で高速道路の路肩を走る感じで掻き乱してもらって(笑)。でも、それは岡本信人が雑草の魅力を延々と語るよりは迷惑じゃないでしょ、きっと。

 「安西先生、僕もアイドルがプロデュースしたいです」という人達が、本書を読んで何人ぐらい表れるかは知らないが、「今やアイドルは作る時代なのだ」っていうのを読んでみて一番に感じた次第です。ということで俺もポストメタル系アイドルを・・・(絶対に売れない)。 それに本書は、バンドをやっている人にも還元できるようなことが記述されているので、チェックしてみると面白いと思う。それで「ゆるめるモん」とかいう魔法にかかって、サイリウム振る様な人になっていても、僕は知りませんけど(笑)。とはいえ、これからもドアラのバック転をハラハラ見守るような感じで、僕も見守っていこうかなと思います。

  それにしても、本作で引用されているつんく♂(多分、イケオジ♂)の言葉が印象的だった。「曲を出すのは7~8割の状態でいい。そうしたら、あとはみんなが評価してくれる。7割を自分の中で9割にあげたところで、自分以外に誰も気づかない」という言葉にね。

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