2010/12/02 Jonsi @ 名古屋クラブダイアモンドホール

jonsi

 静謐で澄んだ音色の連鎖から壮大なる風景を描き出すアイスランドの至宝、シガー・ロス。もはや説明不要の不動の地位を世界的に築いた存在であるが、その 中心人物であるフロントマン、ヨンシーのソロ・ライヴへと足を運んできた。今年4月に発表された初めてのソロ・アルバム『Go』の完成度の高さ、また8月 のサマーソニックでの評判がすこぶる良かったので(もちろん、シガー・ロスの時も現実を越えた夢世界へと連れてってくれると評判だった)、是非ともヨン シーの魔法を確かめたいと個人的に思っていた。聴くもの全てを恍惚へと導く美しいヴェールを生みだす彼の音楽は生で体験したら格別だろうという想いは常々 持っていたと言うのもある。ちなみに本隊のシガー・ロスはまだ一度も体験したことなかったり。

 開演15分前ぐらいにダイホに到着すると、かなりの人。期待の大きさを存分に感じさせる入り具合で、客層も随分と幅広いのが特徴である。年齢など関係な しに万人を虜にする美しい音楽、シガー・ロス/ヨンシーの存在の大きさを改めて思い知らされる。そんな数多くの人々が待ちわびる中、2分もフライングして ヨンシーともう一人のツアー・メンバーがまずステージに登場。ライヴは開演を告げる。

Go: Live (CD/DVD Combo) オープニングはヨンシーがアコギを弾き語りながらの「Stars In Still Water」で、静けさに覆われた中でヨンシーの歌声が凛と響き、優しく場内をほぐしていく。天から降り注ぐような歌声、1曲目にしてその形容を確信する には十分だろう。続いての「Hengilas」からツアー・メンバーが登場し、ステージの総勢5名で悲喜こもごもの物語が綴られていく。遥かなる重みを 持った数々の音が精微に連鎖・共鳴し、壮大なスケールを伴っていく様は圧巻。ヨンシーの脳内宇宙を完璧に具現化していくことで、他のアーティストを圧倒的 に凌駕するその世界が打ち立てられる。さらには、バックのスクリーンの映像が厳かに紡ぐ芸術に箔をつける。オオカミやアリ?といった動物たち、生い茂った 森、細かい雨や雪の描写などアイスランドの原風景を意識したであろうアートが曲のイメージに合わせながら写されていく。アルバム・リーフの時も思ったこと だけど、この音・映像の完璧すぎるほどのシンクロが視覚・聴覚を通して深層心理にまで揺さぶってくる。素晴らしい。

 ライヴの流れは昨日発売されたばかりのライヴ・アルバム『Go Live』そのままで、序盤から中盤にかけては、秋の終わりから冬のイメージといった静かな曲調で固められていた。心の澱を掬っていくような無垢の響きが 情感をつつき、映像と連鎖することで浮かび上がる儚くも重たい世界観の前にうっとり。もちろん、アイスランドの郷愁を滲ませて緻密に編まれていく曲が素晴 らしいというのもあるが、大地の胎動を思わせる力強いドラミングを合図にロック的ダイナミズムが存分に味わえるのもその要因だろう。深海のごとし静、迸る 炎のような動のアクセントがまた鮮やかなのである。曲の持つ情緒性、有機性を存分に引き出すライヴの巧さ、これには個人的に非常にポジティヴな驚きがあっ た。グロッケンの連なる打音と美しいメロディに引き寄せられ、雪解けの温かさが優しく優しく包み込んでいく「Sinking Friendships」は前半戦のハイライトだったように思う。

 ヨンシーの短いMCを挟んだ後、皆が待ちわびただろう陽のビートに彩れたポップで解放的な「Go Do」の演奏が始まってからは、春が訪れたかのように万物が色彩感を増し、場内の温度がグンと上がった。何しろ昂揚感が半端ではない、一気に世界が反転し たような感覚すら感じた。ここから温かさと華やぎと煌びやかさを湛えたナンバーが続き、瑞々しいピアノの調べと躍動感ある4つ打ちに乗せて多幸感が零れお ちていく「Boy Lilikoi」、虹色の光を帯びてヨンシーが解放的に歌の磁力を広げていく「Animal Arithmetic」の連続体験は至福と表現したくなるほど。この後、再び冬の静けさを取り戻すことになるが、神々しいまでの力強さで世界を切り開いて いく本編ラストの「Around Us」は、ヨンシーの表現力の美しさを見事に表していたように感じられた。

 アンコールではカラフルな羽帽子を被ったヨンシーが歓喜を最大限に表現する「Sticks And Stones」を演奏。跳ねるピアノとドラムを軸にした楽器陣のポジティヴなざわめきが、妖精が軽やかに戯れるような雰囲気を創り出していた。また、巻き 起こる手拍子に載せてどんどんと祝祭感が増していく様は素晴らしいという言葉に尽きる。そして、最後は『Grow Till Tall』。儚いファルセット・ヴォイスが無我の境地へと先導していく前半から、中盤で力強いドラミングが炸裂した後にはモグワイを思わせるホワイト・ノ イズの嵐とリズミカルに明滅する白光が極寒の吹雪のように会場を覆いつくす。絶対的な音とはこういう音の事を言うんだろう、この上ない轟音カタルシスが全 感覚を掻っ攫う圧巻の最後だった。

 これにてライヴは終了・・・と思ったら大きな拍手と歓声の前に再度メンバーが登場し、ステージ中央で肩を抱きあって5人で丁寧におじぎ。その後はしばし ファンサービスを行って、袖にはけていった。演奏時間は約1時間半、1枚のアルバムしか発表してない割に最大限のサービスをしてくれたといっていいだろ う。シガー・ロスを拝見した事がない自分がいうのもあれだが、明らかに違ったポジティヴなエネルギーに満ちたライヴといえるだろうし、ヨンシーがあそこま で動き回るのも新鮮だったはず。シガー・ロスと地続きのようでいて、極彩色に彩られた温かなファンタジーは、ヨンシーが新たな地点へと辿りついたことを証 明しているようにも感じた。そんな彼の魔法によってもたらされた素敵な時間に身も心も完璧に陶酔した。本当に素晴らしいライヴで、2010年のライヴの中 でも格別な至福を感じた一夜であった。

–setlist–
01.Stars In Still Water / 02.Hengilas / 03.Icicle Sleeves / 04.Kolnidur / 05.Tornado / 06.Sinking Friendships / 07.Saint Naive / 08.Go Do / 09.Boy Lilikoi / 10.Animal Arithmetic / 11.New Piano Song / 12.Around Us

en1.Sticks And Stones / en2.Grow Till Tall

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