2011/05/26 いいにおいのするノワール @ 名古屋LOUNGE VIO

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 ブリストル音響派として、その名を馳せるマット・エリオットことThe Third Eye Foundation。重厚なブレイクビーツと背筋を凍らせる様な音響が交錯しながら、荘厳でダークな世界を創出して、数々の人々が闇に陥れては中毒者を増やしてきた。昨年には、10年ぶりとなる復活作『The Dark』をリリースして、さらに多くのファンの心を掴むに至った。また、00年代に入ってからはマット・エリオットのソロ名義でシンガー・ソングライターとしての才能も開花させたのも記憶に新しい。個人的には昨年のTTEFの復活アルバムで初めて彼の音楽に触れて虜になり、その後はTTEFとソロ音源を買って彼の音楽性に惹かれていった。そんなマット・エリオットが飛行機嫌い?とのうわさもあった中でこの度、関西のブルータル・オーケストラのVampilliaの招聘の元で初来日。今回は、本名名義のマット・エリオットの弾き語りとThe Third Eye FoundationのDJセットの2段構えでのライヴという事で、彼のファンにはたまらない内容となっている。

 ちなみに今回の会場のLOUNGE VIOって所は行くのが初めて。ので微妙に迷った(ダイアモンドホールの隣にあった)。なんとか会場に着いてみたらその時点では、DJなんちゃらさんが軽く回してる最中で、お客さんも10人ぐらいしかいない寂しい状況(最終的に30人弱ぐらい)。そんな寂しい中で、時計の針が進んでいく。

ランドリーで漂白を 透明なのか黒なのか

 20時過ぎにようやく1番手の赤い公園がステージへさっと上がる。女性4人組(現役女子高生を含む10代の少女達)で、ヴォーカル、ギター、ベース、ドラムというオーソドックスな編成に、全員が純白に統一した衣装をまとう。やってるのは耳に刺さる様なオルタナ・ロックが基本だけど、ポストロックやシューゲや微妙にパンクな部分もある。そして時折、箱庭に閉じ込められた少女の負の情感を曝け出したりもするし、和を感じさせる世界観も出てくる。というわけで、音自体は予想以上に激しく、繊細にメロディを鳴らしながらも轟音を掻き鳴らす場面が多々あって、ちょっぴり驚かされた。特にベースの女の子がゴリッとしたぶっとい音からメロディアスなベースラインまで繊細かつ大胆に楽曲を表情付けしていたのが印象的。ヴォーカルの子は淡々としている部分は淡々と歌い、凄く感情的に叫び狂って切迫した状況をつくりあげたりもしていた。時にはキーボードやトライアングルなどをつかって音に意匠を施している部分もあって、ひりひりした焦燥感の乗ったアグレッシヴな曲調が多い中で、細やかな気遣いや色味の加算などは結構計算されている。不思議と引きつけられるというか、謎の引力を持った女子バンドっていう雰囲気を持っていたと思う。会場の空気を掴んでさらにギアのかかってきた後半は、かなり激しい轟音を撒き散らしていて、思いのほかノせられてしまったし。そんな割にギターの女の子が「きしめん最高」みたいなこといっていて、微笑ましくも思ったり。

The Dark Ghost Little Lost Souls

 あまり間を開けずに2番手にマット・エリオットのThe Third Eye FoundationのDJセット。意外と整った顔立ちで、背がお高いのね、マット・エリオット先生。ラップトップとキーボードを使いながら、昨年に発表した10年ぶりの復活作『The Dark』の世界を抽出していく。ずっしりとした重いブレイクビーツに三半規管を揺らされ、オペラチックな女性ヴォイスとストリングスのサンプリングが恐怖を煽る。それが不穏なノイズと共にミニマルに展開され、恐ろしい異界の扉が開けては混沌が渦を巻く。セットは、『The Dark』の曲順そのままに「Anhedonia」→「Standard Deviation」→「Pareidolia」と続いていったが、所々でアレンジされていたのが印象的で、静寂を切り裂くようにうねりをあげる重低音もまた凄い強烈である。聴けば聴くほど、暗欝たる気分と昂揚感が身体の中で上昇していく感じがした。ハイライトとなる暗黒ドラムンベース『If You Treat Us All Like Terrorists We Will Become Terrorists』では、完璧に心身を痺れさせ、深淵たる闇の空間を見せつけられたような気がしたし。ラストにはもう1曲演奏し、こちらではもっと上下動のあるサウンドでフロアを揺らせて見せた。人によっては奈落の底が見えた・・・そんな一時であったことでしょう。

Alchemic Heart Sppears Rule the World + Deathtiny Land

 約20分ほど間を開けて、関西のブルータル・オーケストラVampilliaが登場。見るのは2回目で、前回見たのが09年12月のJarboeの来日公演の時だったのでちょうど1年半ぶりぐらい。大所帯のバンド故に当然、何人編成とか覚えてないけども、ヴォーカルがいつのまにか1人減って、2人になっていたのが今回印象に残ったことのひとつ。そして、ドラムが周りの風貌とあってないと思ってたら、今回は最強ドラマーのひとりの吉田達也氏が叩いていたので遅まきながら驚いた(ってかフライヤーに書いてあったけど、忘れてた)。ライヴ自体は前回見た時と同様に、凄まじい迫力を持った歌劇を見ているような感じで、大所帯が奏でる渾然一体となったサウンドに気圧される。何の曲やっているかはわからないけど、ファストにたたみかける所はスラッシュ・メタル的な曲から、ドローンの海で意識を押し流していく曲、ポストロックやオルタナ、ゴシックまで彼等流儀で自在に料理してステージ上から差しだしていく様はやっぱり凄い。美と醜の極限での交錯を存分に見せつけてくれる。重さと鋭さを持つギターにピアノやストリングスの物悲しくも繊細な色づけ、さらにオペラチックな女性歌唱と坊主頭の方のデス声の対比、そして吉田氏の尋常じゃないドラミングとそれぞれの個性をぶつけ合い、重なり合わせ、ひとつの大きな構成物に収束していく様は、彼等だからこそかと。しかし、25分ぐらいであっさり終わっちゃって少し消化不良だったかな。それでもインパクトは十分の内容であった。

The Broken Man Failed Songs Drinking Songs

 ラストはマット・エリオットのソロ。ブリストル音響派の雄から『Drinking Songs』『Failing Songs』『Howling Songs』という “絶望歌三部作”でシンガー・ソングライターとしての才能を世に認めさせた。アコースティック・ギターを片手に持ち、弾き語りがメインのライヴ・・・と思ったけど、これが一筋縄ではいかない。繊細に爪弾かれるアコギに乗せて、マットが語りかける様に歌っている事が多いけど、その場で多重録音しながら様々なフレーズや音色を加えて負の情感を募らせ、やがては洪水のようになって鼓膜と心に襲いかかってくる。流麗なメロディを奏でたり、華麗なフレーズを弾きこなしたり、ディストーション・ノイズを出してみたり、力強く弦を弾いたりと音の加算方法はいろいろ。

 さらにはリコーダーやピアニカも交え、The Third Eye Foundationのブレイクビーツに乗せた曲もあって、恐ろしく懐の深いライヴを展開。前を向くような勇ましいフレーズも出てくるけど、それすらも負のグルーヴが蹂躙してしまうのが印象的。そして、また彼の歌声からは情念の深さが滲み出ていて、聴いているとこちらの胸の奥までその想いに圧し潰されそうになる。その独特のハーモニーからは常に隣り合わせの闇と向き合いながら、狂気の沼の中で彼が戦い続けているのを感じさせた。ひどく内省的で、それでいて幽玄な美しさも漂う不思議なサウンド。この前のGY!BEの時のように世界の果てに佇んでいるような感覚を覚える事が何度もあった。そしてまた、マットの心の闇だけでなく、こちらの心の闇も味方につけて音楽を鳴らしているような瞬間に何度も出会う事があった。こういった体験にはそうそう巡り合えるものではないだろう。彼の張り上げる歌声が今でも強烈に思い出してしまうほど、深い深いライヴであった。

CA3F0411

 終演は23時過ぎ。物販では、The Third Eye Foundationのシャツを購入しました(他にもう1種類あり)。さらに帰りにマット・エリオットと鉢合わせしたので、サインをもらって写真を撮ってもらった。これも凄く良い記念(これは非公開にさせてもらう)。あれほどの暗い音楽を創っている人間からは、想像もできないぐらいにフレンドリーに接してくれたので、かなり驚き。もしかしたら、今回が最初で最後の来日公演になるかもしれないことも考えると、本当に一生の記念だ。とはいえ、彼が再び日本の地に来てくれる事を切に願っている。マジで。

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