Bossk、揺れ動くポストメタルの波形

 2005年にUKケント州アシュフォードで結成されたポストメタル系バンド。数枚のEPリリースと200回を超える公演のち、2008年に活動の過酷さから燃え尽きるように一度、解散する。しかしながら2012年に再結成を果たし、精力的に活動していく。2016年にDeathwish Incから1stフルアルバム『Audio Noir』をリリース。Roadburn Festival 2019ではそのアルバムを完全再現するほどに評価を得ています。

 2021年には5年ぶりとなる2ndアルバム『Migration』を発表しています。日本のENDONとのコラボレーションやCult of LunaのJohannes Perssonをゲストヴォーカリストに迎えたことで、バンドは新たな局面へと向かっていることを示唆します。

 本記事では現在までに発表しているフルアルバム2枚について書いています。

目次

Audio Noir (2016)

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 1stフルアルバム。全7曲約45分収録。ポストメタル系には珍しく、Deathwish Incからのリリース。レーベルのジャンルを押し広げる、その役割をBosskは本作で果たしています。

 本作についてプレス・リリースによるバンドのコメントでは、「アルバムは1つの連続した音楽として書かれており、すべての曲が次の曲へと流れていきます。アルバムの終わりも、最初の曲の始まりに直接流れ込んでいます。まるで無限ループのように。」と述べています。ポストロック~ポストメタルを主領域にした楽曲の組み立てを施した上で、曲間はシームレスに繋がる。ひとつの物語を7つに細切れにしたという感覚があり、1曲の中でも明確な起伏が設けられています。

 クリーントーンのギターを主体にした#1「The Reverie」、暗鬱で内省的な#3「Relancer」では夢見心地や催眠的なアプローチを繰り広げる。一方で、スラッジメタル系の重音凶暴な咆哮やリフを効果的に使われ、#2「Heliopause」にて初期Earthの影響下にあるだろうヘヴィに翻弄されます。さらに#5「Atom Smasher」は逆に重・暴で支配していき、メロウな解放でもってカタルシスを得る作り。

 日本の地名なのか、はたまた私が最も愛したNBA選手なのかタイトルの由来はわかりませんが、#4「Kobe」はBosskを代表する曲として君臨します。水晶のように揺らめき煌めくギターのリフレインを中心に、リズム隊が徐々に迫力を加えていき、ポストメタル系の大爆発へとスイッチする。その雄大なコントラストは決して他バンドに引けを取らないものであり、全てを圧し忘却するラストは鳥肌もの。

 旅路のラストを飾る#7「The Reverie II」もまたダイナミックなレンジの中で彼等の美学を凝縮する。結成から11年越しのフルアルバムは、地道な鍛錬による積み重ねの結果。本作はRoadburn Festival 2019で完全再現されていますが、その時に載ったフェスの公式コメントが彼等へ最大限の賛辞を送っています。

「ポストメタル」と形容されるBosskは、そのジャンルの境界線を押し広げ、巧みな創意工夫で境界線を曖昧にする。時に催眠的で美しく、時に粉砕的な『Audio Noir』は、まさに旅のような作品だ

Roadburn Festival(https://roadburn.com/band/bossk/)

Migration (2021)

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 5年ぶりとなる2ndフルアルバム。全7曲約42分収録。引き続きDeathwish Incからのリリース。ジャケットが作品そのものを表すことは少なくありませんが、本作は前作よりもモノクロームの荒涼とした雰囲気が漂います。Veil of Soundのインタビューによると、『Migration』は”どこかへ移動するが、常に始まりの場所に戻ってくる”ということを表現しているそう。プレスリリースでは、”私たち全員が経験するその過酷な旅へのサウンドトラック”と本作を評す。

 ポストメタルの総本山、Cult of LunaからJohannes Perssonを召喚した#2「Menhir」における巨大なリフの殴打と強烈な咆哮は、このジャンルの特有の昂揚感を運ぶ。Palm ReaderのJosh McKeownをゲストVoに迎えた#4「HTV-3」では切迫したダイナミクスの渦に巻き込まれます。ヴォーカリストをゲスト外注したこの2曲は本作の目玉ですが、他5曲はインストで形成し、Bosskの新たな魅力をプレゼンしています。

 日本のエクストリーム・ノイズ集団のENDONから故・那倉悦生氏を含む3名が参加。妖しいエレクトロニクスがバンドが元来持つヘヴィネスと交じり合う。Year of No Lightの吹雪く重音が電子音やサンプリング等で魔改造されたような印象があって、全体を通してダークなサウンドコラージュが成されています。そして、シームレスに次曲へと橋渡ししていくのは変わりませんが、灰色から黒までの間でグラデーションが描かれているかのようなシックな装いです。

 #1「White Stoke」はトリップホップ的なニュアンスを持つうえで終盤に巨大なノイズが襲う。終盤の#6「Lira」と#7「Unberth」はそれこそバンドの変化を如実に示していて、希望が静止するような呪術的なレイヤーと不穏なグルーヴは、Bosskにしか出せない雰囲気を持ちます。ド派手な爆発に頼らなくとも揺らぎと残響に彼等の意志が内在する。

 本作はさらに実験的な内容となっていますが、いくつかのコラボレーションを経て、自らを更新する音を提示していることに間違いありません。荒涼とした鈍色、けれども豊かな響きが『Migration』にはある。

 

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