2014年から活動しているベルギー・アントワープ出身のシューゲイザー・バンド。本記事は2024年3月にリリースされた最新作となる3rdアルバム『Temporary Light』について書いています。
アルバム紹介
Temporary Light(2024)
3rdアルバム。全8曲約41分収録。デビュー作を手掛けているThomas Valkiersを再びプロデューサーに起用し、スロウダイヴのサイモン・スコットがマスタリングを担当しています。アートワークはアメリカ人画家であるJanise Yntemaの『Morning Sky』という作品を使用している。
本作でNewmoonについて知りましたが、書くにあたって過去作を聴いてみたところ、1stアルバムではヘヴィ~オルタナ要素の強いシューゲイズ、2ndではインディー/エモ味を増した印象を受けました。
そしてパンデミック期間に起こったドラマー交代を経て、4年半ぶりに届けられたこの3rd。VENTS MAGAZINEのインタビューによると“死、物事の有限性、この世での限られた時間をどう過ごすかといったテーマが盛り込まれています”と話します。
音像としては”白昼夢”や”幽玄”といった言葉を当てたくなる漂白系シューゲイザー。リバーブやディストーションが加速させるふわふわとした雲のような抽象性に、メランコリックな音色が儚く響きます。生気の薄い歌声はその音像の上をたゆたってる。
スロウダイヴやコクトー・ツインズ、ザ・キュアーからニルヴァーナなどがNewmoonの影響元ですが、前述したように作風ごとに変化はあれど本作は前2バンドの色合いが濃いですね。
#1「Eternal Fall」から浮世離れした幻想的なレイヤーを成し、#3「Fading Phase」では透明感に満ちたクリーンな音色が後半でギターノイズの音壁が立ちはだかる。さらに#4「Liminal People」はまろやかなNothingのようでもあります。
作品全体で一貫しているのは夢想的なムード。ゆったりとしたテンポで生み出されていく重層的なサウンドは視聴覚と三半規管を優しく狂わせてきます。子守歌のような瞬間から耳をつんざく大音量までのダイナミクス、それをバランスを意識しながらシームレスにつなげている。その中でもせつなさに満ちた#5「Through the Glass」は必聴。
#3では”自分を忘れてしまうほど純粋な眠りの中で 霧が僕を包んでいる“と歌っていますが、雲や霧の中をゆらりと漂流するような感覚を本作は与えます。それでも美しさは決して手放さない。合法白昼夢。