
前回のamazonプライムビデオで観る おすすめ邦画10選に引き続き、洋画10選です。
今回の選定基準は以下の通りです。紹介順は順位ではありません。
- わたしが映画館で鑑賞した作品であること(1作品だけ例外あり)
- amazonプライムビデオ見放題対象商品であること
- 洋画であること
- 新しめの作品であること(今回は2018年~2020年の作品を選出。年は日本での公開日より)
※ amazonプライムビデオの見放題対象商品は、時間が経つと入れ替わります。本記事は2021年6月20日時点のものです。
自分は大作ものはあまり観ません。主にヒューマンドラマを観ることが多いので、そこからの選出が多いです。
では、やっていきましょう。
イエスタデイ(2019)
事故ったけどなんとか生き延びて、目を覚ましたら、みんなビートルズの事を知らねえじゃん。よし、この曲もあの曲も完コピして披露しよう!という事で、記憶を辿って思い出せるだけビートルズの曲を思い出して(もちろん、スコアとかも無くなってるわけだから完全記憶勝負)、自分の曲として発表していく。最初は当然、見向きもされなかったが徐々に浸透。そしてエド・シーランに見出されて、主人公はスター街道を歩み始める
明快なストーリーでわかりやすい。それに設定もおもしろい。ビートルズがいなくて、付随してオアシスもいない。だけど、ローリング・ストーンズはいるし、デヴィッド・ボウイもいる。それからキラーズもいる、レディオヘッドもいる、フラテリスもいる。音楽以外ではペプシはあってコーラはない。タバコもない。それになぜかハリーポッターもいないことになっています。ぜひとも観てご確認いただければと思います。
エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ(2019)
中学最後の1週間を迎えた女の子、ケイラが自分を変えるためにとことんがんばっちゃう物語。端的に言えばそんな感じで劇的な何かは起こりません。人と話すことがうまくできなくて、友達はいないに等しい。しかも1番無口な子という称号まで得てしまう、イケてない女の子。こじらせていると言うよりは、理想の自分になれずもがいてる。
それでも自分を変えようと行動する。カースト上位の子の誕生会へ行ったり、YouTubeに投稿し始めたり、SNSを更新したり。キラキラを手に入れようとしても、手に入るのは黒歴史確定の惨敗の歴史だけ。そんな中で自分を見つめ直し、父との関係性も変わる。友達の数やフォロワー数、動画再生数だけが全てではない。でも、思春期の頃って何事もがんばりたくなるよなあと思い出しながら物語を楽しめます。
ビューティフル・ボーイ(2019)
父の著作『Beautiful Boy』、息子による著作『Tweak』、この2冊を基に制作された作品でタイトルはジョン・レノンの「ビューティフル・ボーイ」より。
成績優秀・スポーツ万能・容姿端麗な息子ニックが、ちょっとしたことでドラッグにはまってしまい、その快楽から抜けだせなくなってしまう。それから父をはじめとした家族の支えを受け、更生施設などにも行って薬物依存症と戦うが、ドラッグ地獄無限ループから全く抜け出せず・・・。愛情というのをこれでもかというぐらいに感じる作品であるけど、同時に薬物依存の恐ろしさを刻み付けるものでもあります。ラスト近くでようやく更生した、これでお涙頂戴の終わり・・・と思ったらまた地獄見せてきますし。美談で終わらせないって所に、作品の意地を感じます。
ちなみに冒頭から流れるモグワイの「Helicon 1」であったり、途中のシガーロスやエイフェックス・ツインだったり、音楽は好みのものが多く流れていました。デヴィッド・シェフは著名な音楽ライターで(ローリングストーンで仕事する姿が本作でも登場する)、生前最後のジョン・レノンのインタビューを行った人物だそう。彼の部屋(息子の部屋?)にMelvinsのポスターが2枚貼ってあるのがとにかく強烈でした。わたしはMelvinsを2009年のフジロックと2011年3月の来日で観ています。それ言ったら、モグワイもシガーロスもライブで観たことあるけども(笑)
アマンダと僕(2019)
誰にとってもゼロではない可能性で日常を、大切な人を奪われる。パリの無差別テロによって姉を亡くした24歳のダヴィッド、姉の娘である7歳のアマンダの物語。エルヴィス・プレスリーの曲にのせて無邪気に踊っていた母娘が、なぜショッキングな別れをしなければならないのか。両者ともにふとした瞬間に涙が出てくるほどにその哀しみは大きい。
しかしながら、ふたりが寄り添いながら生きていく。どう生きていけばいいのかわからない。それでも前を向いていく姿勢が見え、じんわりとくる作品でした。フランス映画の良さが濃縮還元されています。
そして、わたしの敬愛する日本のインストゥルメンタル・バンド、MONOの名曲『Moonlight』が使われていたのもグッときましたね(作中で1:05:45秒辺りから)。物静かで淡々と詩情を味わうような作品ですけど、MONOの曲が流れたときは、うお!ってなりました(笑)。
ウインド・リバー(2018)
2018年のベスト3に入る一本です。『ボーダーライン』の脚本をつとめたテイラー・シェリダン氏の初監督作。ネイティブ・アメリカンの保留地、ウインド・リバーで見つかった少女の死体が伝える負の真実。美しく思えるはずの雪景色が真逆の闇のようにも映る。
痛みとともに強く生きるジェレミー・レナーの演技が光ります。最近に観た作品の中でも非情かつ残酷に胸を刺す。極寒の地は全てを奪う、本物の強さを持った人間以外を。オススメと気軽に言えませんが、観るべき映画だと思います。
バハールの涙(2019)
先の『ウインド・リバー』よりもさらに重く、この10本の中では一番精神的に響く作品かなと思います。パターソンでアダム・ドライバーの妻を演じた、ゴルシフテ・ファラハニが主演。当たり前の日常が突然に奪われ、地獄の日々が始まる。子ども、女性というだけでどうしてこんな辛い目に遭わなければならないのか。
バハールを始めとしてその壮絶な日々は観ていて苦しくなります。今でも世界ではこんな事が起こってるのだと思うと辛い。「女、命、自由の時代」と歌い鼓舞する、女戦士たちの凛々しい姿が印象に残る。黒眼帯がトレードマークの戦場記者メリー・コルヴィンをモデルにした登場人物も出てきたりします。
ガーンジー島の読書会の秘密(2019)
本が繋ぐ人と人。第2次世界大戦のイギリスで唯一ドイツに占領されたガーンジー島という背景があり、その歴史の重みを痛感し、島の風景の美しさに目を奪われる作品であります。読書会にある秘密を含んだヒューマン・ドラマですが、運命というか人の生きざまというか、そういうのの残酷さであったり美しさであったりを感じさせる。手紙というアナログなやり取りの良さを思い起こさせる作品でもあります。
とにかく美しき作家を演じるリリー・ジェームズがやっぱり印象的。最初に紹介した『イエスタデイ』もそれに『ベイビー・ドライバー』の時も抜群に良かったわけです。チャーミングでとてもきれいな方ですよね。戦術リリー・ジェームズの有効性の高さ。
バーニング 劇場版(2019)
村上春樹氏が1983年に発表した短編小説『納屋を焼く』を韓国のイ・チャンドン監督が映画化。原作はわずか30ページ程度なのですが、これが150分にも及ぶ拡大が驚きです。
小説を読む → 映画鑑賞 → 小説再読という形式で作品に触れています。男2人に女1人という主設定はそのまま、重要なポイントでの発言は踏襲されてます。ミカンがあるのではなく、ないことを忘れるだとか。同時存在だとか。それにパントマイムとか。納屋ではないけど、ビニールハウスを燃やすという告白も。
現代の韓国に置き換わってストーリーはミステリーの要素が強めに。主人公のどこか斜めに構えた感じやいろいろ曖昧な部分が多いところが村上春樹さんっぽい気がする。あるものがなかったり、なかったものがあったり。結局、最後はあの解釈が正しかったのかもわからない。主演のひとりであるスティーヴン・ユァンは2021年3月公開の『ミナリ』の好演が記憶に新しい。
風をつかまえた少年(2019)
教養の一本です。”義務教育における推奨映画”ってレベルのもの。実話を基にした作品で、2001年にアフリカの貧国マラウイが大干ばつに見舞われる。それを主役である14歳のウィリアム少年が風力発電で救った話。知識はいろいろなことを助けるというのを思い知らされます。同時に教育の大切さも学べます。風力発電の製作過程にあまりスポットを当てず、家族の物語にフォーカスし、それが村の物語、ひいては世界の物語として繋がっていく。
どんな困難な状況でも諦めずに学ぶこと、それがどこかに活きる。とはいえ、アフリカの貧困問題がズシッとくる作品でもあります。飢餓による苦しみと混乱は観ていて辛かった。2001年を迎えてもアフリカは学べなかったり、人口の2%ほどしか電気が使えない状況だったことに驚きます。原作の著者であり、主役ウィリアム・カムクワンバさんは、アメリカの大学を卒業して発明家として活動しているそうです。
”民主主義は輸入した野菜と同じだ。すぐ腐る” というセリフが重く響いた。
サウンド・オブ・メタル ~聞こえるということ~ (2020)
これは劇場で観てませんけど、入れとくべきだと思いますので特別枠です。amazonオリジナル作品。
五感のうち、どれかが機能不全になることを想像しただけでも恐ろしい。五体満足もそうですが、まず考えさせられるのがその点です。そして、起因してこれまでの人生を諦めることになる。本作においてメタル・ドラマーとしての活動は序盤のみ。タイトルのメタルより”聞こえるということ”にフォーカスしており、主人公・ルーベンの一人称で物語を追い、聴覚障害となった聞こえ方を視聴者側に提示しています。彼を通したドキュメンタリーのようなつくり。
これまでとこれから。今まで通りの生活が送れない苛立ちの中で、ろう者のコミュニティーに入って生活を刷新していく。静寂が支配した世界で暮らす中で得た気づき。生まれる過去の日常を取り戻すべきか?の葛藤。その中でルーベンは自分にとって大切なものを得るべきか手放すべきかを考えながら行動していく。ラストのノイズと静寂の対比は、健常者である我々にとっても意味深い投げかけを行っています。
まとめ
2020年からは「サウンド・オブ・メタル」のみ。もっと選びたかったのですが、わたくしが観た映画で見放題対象はありませんでした。仕方がないので次回はいつやるのかわからないですけど、その時に新しいVersionとして新しく作れたらと考えています。邦画編も改めてよろしくお願いします。
