65daysofstatic ‐‐Review‐‐

イギリスはシェフィールド出身の4人組ポストロックバンド。現在までに4枚のアルバムをリリースしている。日本にもサマーソニック等で来日。絶妙なデジタルサウンドと美しいストリングス、轟音バーストのギターノイズが融合するその音楽は数多の人間を興奮へと導く。

レビュー作品

> Wlid Light > > Heavy Sky EP > We Were Exploding Anyway > The Destruction Of Small Ideas > One Time For All Time > The Fall of Math


Wild Light

Wild Light(2013)

 約3年ぶりとなる5thフルアルバム。本作も国内盤が引き続き、残響レコードより発売されている。”轟音人力エレクトロダンス”と評された前作『We Were Exploding Anyway』の変化は実に見事であり、直後に行われたメタモルフォーゼ’10や2011年1月の来日公演も、堂々としたパフォーマンスで強烈な印象が残っている。ただ、本作においては、前作ほどの躍動感を獲得しているものではないし、轟音ブレイクビーツの初期と比べても爆発力に欠ける。前作と比べても割とロック的な感触への揺り戻しがあったように感じるが、はっきり言ってしまえば、3rdアルバムとまではいかないにしても、彼等のキャリアの中では地味な方の部類に入る作品のように感じた。

 刹那の切れ味、絶妙なアンサンブル等でらしい要素を発揮しているように思うし、その上でのセンチメンタルなピアノやキラキラと光輝くシンセ等の有機的な混合は、流石というもの。特にリリカルな音色が積み重なり、銀河のような美しいパノラマが広がる#6「Taipei」にそれは顕著に表れている。ただ、前作の振り切れたアッパーなエレクトロ・ミュージックに衝撃を受けた僕としては、全体を通して物足りなさが残るかな。ミニマルな展開に脳が麻痺し、終盤で美しい重奏を聴かせる#2「Prisms」や初期のささくれた轟音ポストロック的な側面も見える#4「Blackspots」、#7「Unmake The Wild Light」等は印象深い楽曲だが、彼等がもたらしてくれる昂揚感というのはこんなもんじゃない。過度期というものかな、次作でこれ以上の発展を聴いてみたい。


Heavy Sky

Heavy Sky EP(2010)

 4枚目のフルアルバム『We Were Exploding Anyway』に続く7曲入りのEP。約半年という短い間隔でリリースされた本作は、アルバムと同時期に制作された音源を中心に収められており、彼等の意志の強さを感じさせた「Tiger Girl」の短縮バージョンも収録されている。というわけで、アルバム同様にエレクトロが中心で極彩色の電子音が楽曲を彩り、生演奏が過剰にロックのダイナミズムを与えていくという仕様は変わらない。クラブ寄りのダンス・ビートに激しい&麗しい打ち込みによる快感への先導、さらには彼等の培ってきた叙情センスや豪快な轟音を加えることで彼等の音楽としてしっかり息づいている。その中でもドラマティックな展開が重んじられていて、ポストロック的上昇アプローチが鼓動を徐々に高めていくのも巧い。ガラッと路線変えてもモノにしてきたなっていう印象は従来・新規の二つの要素が確実に結晶化されているからだろう。無機質な打ち込みから豪快に炸裂していく#2は印象的だし、#3や#4や#5のように叙情的に練り上げられていくドラマには心惹かれ、#6ではフライング・ロータス辺りへの意識が垣間見れる。ノイズの大洪水の中で意識が揺らめき遠のいていく10分越えのラストトラック#7のような実験的な曲で前衛的な姿勢も示していて、EPといえど決して侮れない作品だ。アルバムと相互補完することでより鮮明に良さが浮かび上がってくる。


We Were Exploding Anyway[日本限定盤]

We Were Exploding Anyway(2010)

 約3年ぶりとなる4thフルアルバム。これまで簡素だったジャケットがえらいロマンティックになってるけど、内容も相当の転換が図られている。残響レコードの紹介で”轟音人力エレクトロダンス”と表現されてる通りに、シーケンサーやシンセが鮮やかに彩る煌きの電子音をメインに据えており、トランシー&ダンサブルな昂揚感を高めた”ハイブリッド・ロック”ともいえそうな仕様。

 硬質なビートの強烈さといい、エレガントな装飾といい、かなりのクラブ・ダンス寄りのサウンドに最初は別バンドか!?という戸惑いはあったが、確信犯的に刺激的で踊れる作品を創り上げてきた。煽情的なギターが控えめになったのに寂しさを覚えてしまうけど、豪快に暴れまわるドラミングとそこに絡みつく脅威のベースラインが生み出す半端ない苛烈なダイナミズムには度肝を抜かれる。電子音を押し出したため、楽曲のスケール感は以前ほどでもないように感じられてしまうが、楽曲の焦点が定まったことで非常に快楽性に富んでいる印象だ。

 3rdアルバムは音質の失敗はあったにせよ、少しどっちつかずの面は否め無かった。だが、本作ではここまで大きく振り切って、なおかつそのロックらしいダイナミズムとダンス・ミュージックの快楽性を見事に同居させた新機軸は単純に気持ちよく、気分も高鳴る。ただならぬ興奮と中毒性。無論、彼等らしい叙事的なフレーズやリリカルで感傷的なメロディも健在で、静・動のコントラストで聴かせる感じではなくなったが、冷徹な空気が徐々に燃え上がって行くようなドラマティックなアレンジは胸を焦がしてくれる。地を這うようにうねるビートからラストに轟音が雄叫びを上げながら湧きでる#3″Dance Dance Dance”、鮮やかにアグレシッヴに快感を促す#5″Weak4″は最強。中盤では、ヴォーカル入りの曲もあるが、8,10分台という曲を入れているのも新要素。特に、初の10分越えの大曲となった#9″Tiger Girl”のミニマルな展開でクールに熱を帯びて行く様に惹かれます。新機軸が今までになかった魅力を引き出している作品で、これまで彼等を例える上でついて回った“MOGWAI+APHEX TWIN”という形容を置き去りにする秀作だと思います。


The Destruction Of Small Ideas

The Destruction Of Small Ideas(2007)

 前作より1年半という短いスパンでリリースされた3rdアルバム。 これまでの65daysofstaticといえば、轟音が生み出す凶暴な衝動性とピアノやストリングスによる心へ訴えかける叙情性の波状が持ち味だったと個人的に解釈している。前作のキラーチューン「Await Rescue」はまさにその極みといえる曲だった。だが、今作ではその凶暴性は牙が抜かれたといえるほど抑えられて、代わりに静的なアプローチに磨きがかかっていて、叙情性が増すと同時に壮大なドラマティックさを持つ楽曲が増えた。攻撃的な部分をも補えるほどのピアノのリリカルな響きはカタルシスをもたらしてくれるし、少し丸みを帯びた感もあるディストーションギターが以前ほどの尖った印象を与えず、すっきりした印象。もちろん、全体を支配する狂気的なモノトーンサウンドというのは健在で、そこに加味されたドラマ性というのが上質な印象をもたらしている。

 悲しみの憐憫が広がるイントロから一気にドラマティックなストーリーを展開していく#3「Don’t Go Down To Sorrow」を聴けば、バンドのベクトルが変わってしまったのかがわかる。“ダイナミックに拡散する音の粒子を浴びる音楽”から“意思を持った音を心で受け止める”ような変化。それは間違いではないと言えるだろうし、十分な魅力を持つほどの武器となっている。様々な音が交錯しあって形作られる劇的な楽曲の数々は初心者にも窓口を広げた美しい作品に仕上がっているといえるだろう。

 特に驚かされたのはラストに何と初のヴォーカル入り楽曲を収録している事。ザラついた荒々しさを感じさせ、おもしろみもあるが、どこか空を切っている印象が否めないのは事実か。それととにかく一番失敗しているのは音質で、楽曲は良いにしてもだいぶマイナスに作用しているのがもったいない。


One Time For All Time

One Time For All Time(2006)

 前作で旋風を巻き起こした65daysofstaticの2ndアルバム。1曲が様々に表情を変えていくその抑揚は今作も見事!さらに今作では攻撃性や悲壮感といった要素が前作より際立っており1曲で与えるインパクトの大きさが前作に比べて大きい名曲が多い。美しくも儚い旋律のリフレインで目頭を熱くさせる#1と空間を音の粒子が行き交い、灼熱の音が夢幻に拡散してダイナミックに躍動、理性を奪い強烈なカタルシスを誘発する#2の連続コンボには言葉を失ってしまう。前作よりも冷たい質感や荘厳さが全体を漂っているのだが、クライマックスのカタルシスはこちらの方が凄まじいといえそう。畳み掛けるように轟音ノイズと電子音が襲い掛かる展開には相変わらず舌を巻いてしまう。さらに実質のラスト#9の哀なるメロディの連鎖が憐憫なドラマの洪水の如く怒濤のように肉迫するさまには心を震わせずにはいられなくなってしまった。苦言を呈せば、もう少し全体にインパクトがあればよかったかなあとは思うんだけど(#1,#2,#9が文句ないだけにね)、前作にも負けない完成度の高い作品としてまあよしとしよう。


Fall of Math

The Fall of Math(2004)

 イギリスはシェフィールド出身のポストロックバンドの2004年発表のデビュー作。日本では本国より2年遅れの発売となった。冷たい空気が漂う空間に、響く電子音、美しくも切ないストリングスと轟音のギターノイズ、デジタルビーツが彩りを添えて耽美的ともいえる世界観を構築している。音の中に内包されている温かみがドラマ性を演出。必聴の#3や#9、ラストの#11は激動と美のコントラストが胸の動悸を高めてくれて、さながら桃源郷を思わせるサウンドスケープに酔いしれ、エレクトロニカドラマティック叙情詩とも呼びたいぐらいだ。特に#3には度肝を抜かれると同時に涙腺をかなり刺激された。しかしながらタイトルトラックの#6ではデジタルサウンドがダイナミックに躍動し、聴く者を圧倒する。新人らしからぬ飛び道具も引き出しに持っているのがなかなか心憎い。三次元に広がる音の粒子はワルツを踊り時に大胆に、時に繊細にリスナーに迫り来る。刹那の一音すら逃すことができない。デビュー作から芸術性の高い作品を世に送り出してきた彼らは末恐ろしく、この先の進化/深化がとても楽しみな存在だ。

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