Acid Black Cherry ‐‐Review‐‐

Janne Da Arcのヴォーカリストとして活躍するyasuのソロプロジェクト。ラウドミュージックからJ-POPや歌謡曲の交錯に、エロティシズムや愛を注入した音楽スタイルで絶大な人気を誇っている。2012年に発表した3rdアルバム『2012』ではキャリア初のチャート1位も記録。2015年には4thアルバム『L -エル-』をリリースした。

レビュー作品

> L -エル- >『2012』 > Q.E.D. > BLACK LIST


 

L-エル- (CD+DVD) (Project『Shangri-la』ドキュメント盤)

L -エル-(2015)

  キャリア初のオリコン1位を獲得した『2012』から約3年ぶりとなる4thフルアルバム。不惑を迎えた林保徳による、エル(ジャケットの女の子)という1人の女性の波乱の人生を綴ったコンセプト・アルバムとなっている。これまでの作品もコンセプト作であるとはいえ、本作は100pにも及ぶストーリーブックが同梱されていて、パッケージとしてかなり拘った作りだ。そういえばジャンヌ時代の4枚目のフルアルバム『ANOTHER STORY』では、同名のファンタジー小説を発売していたことを思い出す。4枚目への異様なこだわりがあるのか、ないのか。

 Project『Shangri-la』でリリースされた3枚のシングル「Greed Greed Greed」、「黒猫 〜Adult Black Cat〜」 「君がいない、あの日から…」に先行シングル「INCUBUS」を含めた全14曲をかけてエルの物語が描き出されていく。けれども、エルは周りに振り回されすぎじゃね?という感想に落ち着くのが想像力のまるでないわたくしです(汗)。ここまで太陽と絶縁したような夜感の強い女にしなくてもいいのに。まあ、これぐらい運命に翻弄されなきゃドラマにならんわけだけども。

 作品は冒頭を飾る#1「Round & Round」~#2「liar or LIAR?」~#3「エストエム」は、こういうの入れておけば喜ぶでしょ?と問いかけてくるハードロッキンな畳み掛け。特に重厚でスピーディな#3「エストエム」は有象無象を黙らす一撃だろう。さらにはそれぞれバラバラな個性をみせた4枚のシングルが要所でストーリーに深みを寄与。彼女の人生に大きく関与した男性・オヴェスからの視点を描いた#5「L-エル-」という曲を含め、いずれの楽曲もコンセプトとのリンク度は高く、14の曲を通じてエルの波瀾万丈の人生が明確に浮かんでいくことだろう。楽曲のテイストからはこれまでと大きな変化はないといえばないが、お馴染みのメンバーの他にもLeda神やROLLY(寺西)が参加していることでアンサンブルに広がりはもたらされている。

 ピアノとストリングスの静かな響きの上でyasuの美しい歌声が乗るバラード#13「LOVES」、小さな幸せを掴んだかのように華やかなエンディングを飾る#14「&you」と続いて、エルの物語は幕引き。いくら波瀾万丈とはいえ、最後はハッピーで愛のある終わり方を選択する辺りはyasuらしいですね。個人的にもスッとした安心感を覚える。

 何より、ここまで曲と物語の相互補完関係が強いのは、彼が今まで発表した作品の中で一番かも(ストーリーブックにある挿絵によって、イメージし易いことも大きい)。刺激が足りないと感じるところだが、それでも様々な人々に向けて響くだろうアルバムである。


 

『2012』

『2012』(2012)

  Janne Da Arc時代も成し遂げられなかったキャリア初のオリコン1位を記録した3rdアルバム。喉の治療からの復活となったシングル「Re:birth」から5カ月連続シングル最終章「イエス」まで、シングル7曲収録という荒技を披露しているが、しっかりと新曲も9曲入ってる。とはいえ、ジャンヌの『Another Story』を髣髴とさせるようにオープニング、中間、エンディングにそれぞれSEチックなものを3曲収録しているので、実質は6曲といえるか。メンバーはHIRO、SHUSE(共にLa’cryma Christi)、淳士(SIAM SHADE)、YUKI(DUSTAR-3)、AKIHIDE(BREAKERZ)などの実力派を起用。

 ”エロス”をコンセプトにエッジの立ったロック、メロディアスなポップスを展開するABCだが、本作はこれまで以上に勝負をかけた一作となっているのではないだろうか(2ndは聴いてないけど)。あの「GAIA」をダークかつ幻想的に仕立てた#2「Fallin’ Angel」でその世界観に引き込むと、#3「In The Mirror」から立て続けの疾走曲3連発でノセにノセてくる。特に#5「少女の祈りⅢ~『2012』ver~」が強烈で、詩は狙いすぎててアレだけど、ヘヴィかつ鋭い疾走感があって個人的に本作で一番のお気に入り。そして、アルバムの核といえる#6「Re:birth」へ繋がっていくのだが、これが冒頭のアルペジオから90’sヴィジュアル系の薫りを漂わせ、さらにキャッチーなサビを聴かせてくれるので、思わず歓喜を覚える。

 Janne Da Arcと付かず離れずのというか、もうこの人がやってる時点で差異はほとんど感じないんだけど、本家のあの曲みたいって感じさせつつも、ABC風にアップデートしてくる辺りはさすがである(これがyasu節なのかもしれませんが)。そして、ハードからメロディアスに幅広く振れながらバラエティに富んだラインナップが揃うのも彼らしい。メッセージ性の強い叙情的なバラード#10「その日が来るまで」、ジャズっぽく小洒落た感触を押しだしたV系歌謡#13「蝶」辺りは大きな存在感を放っているように思うしね。ストリングスを交えて壮大なアレンジを施した上に、テーマである『生きる』意味を強く訴える眩くポジティヴな#15「シャングリラ」に背中を押される人も多いだろう。

 シングル詰め込みすぎだろ!と数多の人がツッコミを入れるが(まあ、自分もだけど)、それぞれがアルバムのひとつのピースとしてしっかり機能しており、作品を通しても充実した内容に仕上がっている。ABCの名刺代わりに推したい一枚だ。

 冒頭にも述べたが、本作でキャリアを通じて初のオリコンチャート1位を記録しており、CDセールスが下降していってる時代にもかかわらず、ジャンヌ時代よりもセールスを伸ばしているのは単純に凄い。それもこれもバンドからソロへ形態を変えても良い曲を生んできた証だろう。周囲が納得する結果を彼等は出し続けている。

 


 

 

Q.E.D.

Q.E.D.(2008)

    約1年半ぶりとなる2ndフルアルバム。1940年代にアメリカで起こった殺人事件をモチーフに、「人は人を裁けるのか?」というコンセプトの下に製作されている。

 前作同様にオープニング曲から壮大なスタートを切るが、中身は彼らしいハードなS曲とポップなM曲の応酬。お得意のエロス成分は控えめに感じるが、アグレッシヴな曲だけなら本作の方が多い印象はある。#2「code name【JUSTICE】」や#8「I’m not a ghost」、#10「黒い太陽」と作品に陰りを落としつつ、ハートを狙い撃ち。どうしてもJanne Da Arcが聴いててチラつくのは、もう仕方のないことだろう。

 シングルとなった#5「眠り姫」や「優しい嘘」などの聴き入る曲の精度もさすがといったところ。しかし、JDA活動休止の不安をかき消した『BLACK LIST』ほどの衝撃は無いかなあというのが本音。コンセプト云々がやや伝わりづらい印象を受けるし、前作に比べて曲の切れ味が少し落ちるかなと。ただ、#6「チェリーチェリー」のように抜いた変化球のような遊び玉も投げてくるのは、おもしろい。そして、ラストの#12「20+∞Century Boys」で”夢を持たない事より 夢のために泣いて傷つく方がイイって” と高らかに歌う。yasuの背中を押してくれる優しさ、プライスレス。

 1stアルバムの完成度に本人が満足しているようで、やり方を変えるしか無かったと彼は語っているが、クオリティはもちろん高い。


 

BLACK LIST

BLACK LIST(2007)

    Acid Black Cherryの1stフル。特筆すべきはその豪華な演奏陣でしょう。YUKIやAKIHIDE、SHUSEに淳士を軸に、手数玉の異名を取る菅沼孝三にDAITA、三柴理、SUGIZOまで実力派で固められたバックは否が応でも期待したくなる。加えて、盟友のkiyoも華を添えている。

 そのAcid Black Cherryの音楽だが、初期Janne Da Arcのエッジの効いたハードロックと晩年の大衆迎合化したポップなロックが混成した内容という印象を受けた。もうこの作品は序盤の曲がとても良くて、#1~#3の素晴らしさには思わず唸ってしまったものだ。特に#1「sins」でヘヴィなギターリフに、流麗なピアノとストリングスの調べがドラマティック。

 #2「少女の祈り」#3「SPELL MAGIC」などはもろ初期ジャンヌを踏襲した疾走曲で、これらもかっこよい。メロディの良さもさることながらヘヴィ&ハードなアプローチを取り戻したのは、初期ジャンヌが好きな自分にとっては嬉しい限り。不思議とyasuがエロティシズムを表現すると曲が締まる印象があったりする。

 #4や#12のバラードにしても涙腺を刺激するし、シャッフルを取り入れたジャジーな#8はソロならではの腕の見せ所をしっかりと体現。後半の曲ではややパワーダウンの印象を残すが、ABCの持ち味を存分に見せつけたデビュー作である。

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