Akron/Family ‐‐Review‐‐

ブルックリン出身の3人組ロックバンド。創造力とユーモアを自由に組み合わせたごった煮サウンドで人気を博している。09年には来日経験もあり。


S/TII:コズミック・バース・アンド・ジャーニー・オブ・シンジュ・TNT

Akron/Family II: the Cosmic Birth and Journey of Shinju TNT(2011)

   意味深なサブタイトルが引っ掛かるアクロン・ファミリーの通算5枚目。嘘か本当か北海道の雌阿寒岳の麓に立てられた山小屋で制作されたものしい。しかしながら、ハイテンションすぎる#1「Silly Bears」からして秀逸。パワフルなドラムを下地に雄叫びをあげるギターにピースフルなコーラス、さらには煌びやかなシンセにサイケデリックな装丁と有り余るエネルギーが爆発している。かと思えば続く#2では懐の深いメロディと歌でしみじみと綴っていき、#3では不穏な音色の上を意味深なコーラスワークと美しい歌で彩りを見せたりと、相変わらず曲の振り幅や自由度が凄い。

 ロックではあるが、定型を持とうとしない彼ら独自の表現力の巧さがにじみ出ている。フォーキーな手触りやインディー・ロックとしての佇まい、さらにいわゆるノイジーで轟音なロックまでの力強さとアニコレのようなサイケ・ポップ色、そしてファンクっぽいリズムやプログレのような精密さまでを引き出しから引っ張り出し、ユーモアを含みながら組み立てていく。形容されるように”ごった煮サウンド”といえるべきものだが、核として風情ある歌心、火山のようなエネルギーと稀有な創造力が密に結びついているからこそ見事な曲の表現へと繋がっている。中にはマリンバを使用したという#6や川のせせらぎや声をサンプリングした#11といった曲もあり、作品はかなりバラエティに富む内容。

 独特の混沌っぷりは達者な芸当を手中に収めているからこそで、高い構成力とハッとするようなメロディの美しさが作品に貫かれている辺りも物凄く惹かれる要因だ。その力強い演奏の躍動感と滋味深い歌の数々の味わいで聴き手を十分に惚れさせる力は十二分にあるし、いちいちツボを突くのを心得ている辺りも感心する。特にピアノの繊細な調べと優しい歌が泳ぐ美しいクライマックス#13は、絶品すぎてたまりません。

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