Altar of Plagues ‐‐Review‐‐

James Kellyを中心に2006年に結成されたアイルランドのポスト・ブラック・メタルバンド、Altar Of Plagues。2枚の自主制作EPを発表後の2009年に1stアルバム『White Tomb』をリリースし、アンビエント~シューゲイザーを内包したブラックメタルとして脚光を浴びる。2011年には2ndアルバム『Mammal』の発表後はさらに注目度を集め、音楽的に大きな変化を伴った2013年発表の3rdアルバム『Teethed Glory and Injury』はDaymareから国内盤もリリースされるほどに。しかしながら同年7月に解散を発表し、その歴史に幕を閉じた。

レビュー作品

> Teethed Glory and Injury > Mammal > White Tomb


Teeth Glory and Injury

Teethed Glory and Injury(2013)

 アイルランドの重要ポスト・ブラックメタル・バンドの約2年ぶりとなる3rdアルバム。邪悪な海峡を渡り行く。いわゆるポスト・ブラックメタルといわれる様式を確立したバンドのひとつである。Wolves In The Throne Roomと同様に10分以上の長尺の中で静から動への転換の繰り返し、またその中に粗暴なブラックメタルからポストロック~シューゲイズ、ゴシック等を絡ませながら荒涼とした世界を描ききっていたのが印象的だろう。

 だが、本作ではポスト・ブラックメタルの様式から大きく逸脱。まず驚くは4~6分台にまとめられた楽曲の数々(最長で8分44秒)で、トータルでも9曲で約49分に収められている。サウンドの方もスラッジ/ドゥーム方面へと接近しており(といってもスラッジ/ドゥームという表現もしにくかったりするが)、ブラックメタルらしい冷感や凄惨な残虐性、疾走感を随所に残しつつも、ゆっくりとどす黒いものを吐き出して精神を痛めつける様な作風へと変化を遂げた。断末魔の如き呻き声を散りばめながら、黒く重い音圧が鼓膜をすり潰していく。ここでは緊張感がピンと張り詰める密教めいた雰囲気、アンビエントの哀切、インダストリアルの無機質さ、エクスペリメンタルな実験性などを積み上げながら、何とも形容しがたい音楽が轟いている。個人的な印象を言えば、ポストメタルとの親和性もある。

 彼等にどのような心境の変化があったのかはわからないが、常に前衛的なもの追い続けていたバンドだからこそ、本作では必然の変化を伴ったのかもしれない。荒れ狂うブラックメタルの海に葬られる#2、精神的に蝕まれていくような光の入る余地のない巨大な闇が広がる#5、#6など、聴けば聴くほどにこの音楽の前では平衡感覚が狂う。そんな本作で聴かせた変化には、賛否両論集まっているのだが、批判すらもこの漆黒が無効化するかのよう。既に時代は、ポスト・ブラックのその先へ向かっている。その先人がAltar Of Plaguesなのだ・・・と締めようと思ったら2013年7月に解散を発表。こうしてコアな分野で一時代を築いた彼等の旅路は、あっけなく終焉を迎えてしまったのだった。


Mammal

 Mammal(2011)

    フルアルバムとしては2年ぶりとなる2nd。その間には『Tides』というEP作品もリリースしていた模様。本作はお馴染みのカナダのProfound Loreに加えて、UKではCandlelight Recordsからも発売しており、ジャケットが異なっている。

 神秘性と残虐性を併せ持ち、シューゲイザーの要素も内包したポスト・ブラックメタル。また、全4曲で約52分という作品構成。そのことからもお分かりいただけるように、基本的には前作を踏まえてきちんと延長線上に立つ作品を制作してきてる。ミドルテンポ~ブラストビートによる疾走、儚い哀感を残すアルペジオに正邪の両要素を空間に押し広げていくトレモロ、禍々しい絶叫~クリーンヴォイス、薄靄のかかったキーボードなど、対比的な構造と緩急を巧みに利用しながら、長い時間をかけて独自の世界観を押し広げていく。

 18分超えの#1から鬱鬱とした闇の海と幻想的な森の世界が交互に現れるほど、ドラマティックな展開力と手に汗握る様な緊張感が引き立っている。それは、10分を超える曲がほとんどなのを感じさせないほどに、物語性の高さを緩急と構成の妙で構築しきっているからだろう。楽曲の精度自体も前作と比べてかなり高まっているように思う。加えて、丁寧に叙情性を織り込む事で、終盤に向けて泣きの要素が強まっていくのもポイントにあげられる。特に、シューゲイジング・ブラックとしての感性を存分に開花させた#4でそれが顕著だ。また、前作ではMinskのような密教ドゥーム/スラッジ的な楽曲も取り入れていたが、本作では神聖かつゴシカルな女性の聖歌っぽいものを入れるなどの工夫もある。確実な進化を遂げているといえるだろう。

 ブラックメタルとしての粗暴さや残忍さを確実に打ち鳴らしながらも、柔らかな音の層を成すポストロック/シューゲイザーをいい塩梅でブレンドし、前述した儚げな神秘性も十分すぎるほど感じさせてくれる一作。Fenよりもブラックメタルに沿ったアグレッションを発揮している分、そういったファンにもアピールのできるのではないだろうか(というが、個人的にはFenの方が好きだが)。


White Tomb

White Tomb(2009)

    2007年、2008年と立て続けにEPを発表してきて、いよいよと発売となった1stフルアルバム。ポストロックのwikiに載っていることもあり、ちょっとした震源になっているかもしれない彼等のサウンドは、全4曲約50分にも及ぶ時間、深遠なる静と動を行き交うポスト・ブラックメタルそのもの。

 残忍な凶暴性と鮮血を見る苛烈さをノイジー疾走パートで叩きつけ、メランコリックなパートではシューゲ/ポストロックからの影響を包み隠さずに還元し、儚くノスタルジックなメロディを紡いで潤いを与える。悲劇的なドラマ性を湛えた10分越えの楽曲が続き、神経がズタボロにされていく中で、そのメロディがじわーっと胸の奥に広がっていくから困ったもんだ。急所を軽~く貫く攻撃力を保持しつつ、思わず耽溺してしまうような美しい質感を装うことで、独特の幻想性と浮遊感にも繋がっている。ポストロックに系譜する叙情性を完全に懐刀に収めており、薄ーく広がっていく暗澹としたシンセの音色からはアンビエント方面へと触手を伸ばしていることも伺えると思う。

 近似しているのはWolves In The Throne Roomだが、仄暗い印象を与える密教パートやドゥームに通ずる重苦しさ、さらにはアコギによる柔らかく繊細な場面が登場することからもダークな緊迫感をより強く感じる仕上がり。故に静と動の振り幅は大きい印象を受けるし、神秘的な雰囲気を助長しているのも押し引きのバランスに長けた構成・展開が後押ししているからだと思う。怒気を発散するノイジーなリフ、3曲目に出てくるひたすら不謹慎な絶叫にしてもおぞましい臨場感を加味している。バンドの特性を凝縮した#1は聴き応え十分だし、禍々しい濁流とMinsk辺りに通じそうな密教ムードがひたすら黒を塗り重ねていく#4の寒々しい世界にも震えを覚えてしまう。特に本作では、シューゲイザー・ブラックメタルの惨劇と儚さが津波のように襲い、儚い余韻を残す#2がベスト。

 全編は走ってないがシューゲ風トレモロが炸裂する点ではKrallice、アトモスフェリックな世界観も十二分に示している点でFenを髣髴させてもくれる。間違いなく、その手のファンには避けて通れない代物だろう。

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