Amesoeurs ‐‐Review‐‐

AlcestのNeige氏が率いるフレンチ・ポストブラックメタルバンド4人組、Amesoeurs(アメスール)。2009年に1stアルバムにして最終作となる「Amesoeurs」を遺作とし、活動を終了してしまっているのが非常に惜しい存在だ。


Amesoeurs

Amesoeurs(2009)

    Amesoeurs(アメスール)の1stアルバムにして最終作。Alcest(アルセ)ではシューゲイザーと郷愁を主成分にしてブラックメタルを新たな切り口から(ってかブラックメタルじゃねえけど)表現してくれたが、このアメスールも人間の内側から傷薬を塗り、心に積み重なった闇を解きほぐすかのような音楽である。真っ直ぐに胸を打つメランコリー、切なく響く数々の音、神秘的な美しさ。どれもがネージュ総帥の主導の下で創り上げた、混沌が入り乱れたメルヘン世界が広がっている。

 リリカルなアルペジオや美しいフレージングによる琴線の鷲づかみもさることながら、ほどんどの曲でヴォーカルを務める女性ヴォーカリストのオードリー(アルセにもゲスト参加)の歌の切なくも叙情的な手触り、それがより心を震わせ、眼に涙を溜めていく。核心はその壊れそうなぐらいの繊細さと儚い美、そして言葉にならない郷愁とセンチメンタリズム。ここまでだとAlcestとの違いがわかりにくいが、アメスールはネージュ総帥によるBurzumの如き凄まじい絶叫で痛切に胸を切り刻んだり、強烈なブラストをかましたり、意表をつく激走をするなど、穏やかな情景を一瞬で崩壊させ、永遠に続く雪原へと変えてしまう。このような猛々しい爆発を時折挟むのが特徴的だ。さらにいえば、仄暗い鬱々としたものが渦巻いている感じで全編に渡って薄闇のようなトーンで覆われている。透明感のある作風ながらどこか負の力による汚れを感じるのだ。押し寄せる澄みきったメロディの洪水が心を洗っているようで、なぜか孤独感や荒涼感を剥きだしにしていくような不思議な感覚を覚えてしまう。撫でるような労わりを持った叙情性と絶対的な優しさ、その中に潜む狂気。本作が過剰なドラマ性に満ちている理由はそこにある。気付けば全身のありとあらゆるところが泣いてしまっていた。彼等の最初で最後の作品は、広がる感動の泉に全てを捧げることをもいとわない名作だ。

 これにて残念ながら美しくメロウなブラックメタルのある意味究極系・Amesoeursは終焉を迎えてしまう。ただ、最終曲の長い空白の後に現れるインダストリアルが何かの余震だと思い、活動再開を待ちたい。

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