【アルバム紹介】Amorphis、フィンランド産メロデスの重鎮

 1990年から30年以上にわたって活動を続けるフィンランドのヘヴィメタル・バンド。メロディックデスメタルを基本線に、徐々に民族音楽や叙情性を融合させたスタイルへと移行。これまでに14作のフルアルバムを発表。

 本記事は8thアルバム『Silnet Waters』、9thアルバム『Skyforger』について書いています。

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アルバム紹介

Silnet Waters(2007)

 8thアルバム。全10曲約46分収録。暗闇を優しく照らす満月、静寂に包まれる湖畔に一羽の白鳥。見事なまでにそのジャケット写真とマッチした慟哭のメランコリックなサウンドが響き渡ります。メロデスなんて面影も無いほど、深く哀愁に満ちたメロディと壮大なドラマを演出する楽曲に心揺さぶられる。激しさや重さよりも叙情的なスタイルを上手くミックスさせているのがポイント。何度も聴いているうちにキーボードの音やギターフレーズが山脈から流れ落ちる清流みたいに感じるようになってくる。#3から始まる叙情メランコリック・メタルの連続ドラマに砕け散るほどの深い悲哀を刻み込んでいく。特にオススメしたいのは#3,#5,#7,#10の4曲。琴線に触れるサウンドが心拍数を高め、涙腺を緩めます。メタルというジャンルに留まらない個性があり、さすがに長年にわたって一線級をはっている実力者。叙情民謡フォークメタルのようでもあり、聴けば聴くほど締め付けられるものがあります。

Skyforger(2009)

 9thアルバム。全10曲約48分収録。フィンランドの民族叙事詩”カレワラ”をテーマに創り上げた作品です。前作『Silent Waters』の延長線上にある慟哭のメランコリック・メタルで、本作ではメロディがさらに洗練された印象があります。勇壮なメタルサウンドと激しい咆哮をも交えた獰猛さ、そこにリリカルな音色を巧みに奏でて切なく聴かせる叙情性。慟哭と煽情のうねりを帯びてどこまでも胸を締め上げる儚き哀愁。それらが絶妙なバランスで折り重なることで、美醜のコントラストを描き、この世のものともない翳りのある神秘的で美麗な世界を演出しています。デスの字が遠のくように激しさは抑えめですが、哀愁あるフレーズを弾くギターやしっとりとした歌メロがリードし、ピアノやフルートの音色が民族的な色合いをつけることで、聴かせるつくりがさらにうまくなっている。メロディはもちろんのことだが、激しい咆哮でさえもどこかしらの美しさを感じてしまいます。深層にまで訴えかけるような叙情性と多彩な表現力は説得力があり、この慟哭の哀歌は聴くほどに惹きつけられるのです。

アーティスト:Amorphis
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