Ancestors ‐‐Review‐‐

ロサンゼルスのプログレ/ドゥーム/ポストメタル5人組。ドゥーム/ストーナー・ロックにキング・クリムゾンやピンク・フロイドを思わせるプログレッシヴ・ロック、ニューロシスやアイシスのポストメタルを混成した奇跡的な音色で、コアなファンを中心に人気を拡大中。

レビュー作品

> Invisible White > Of Sound Mind > Neptune With Fire


Invisible White

Invisible White(2011)

    約1年半ぶりにリリースされるのは、3曲入りの新EP。本作では前作の『Of Sound Mind』からさらに時代を遡っていったようで、70年代プログレ/サイケデリック・ロックの要素を存分に吸収し、これまで以上に音に反映した造り。各所に散りばめられたメロディによる懐古主義的な味わい、それに複雑ながらも泣きの要素をふんだんに織り上げていく楽曲構成に、プログレの浪漫を感じる人も少なくないのではないだろうか。野太い絶叫はなくて煙たいヘヴィさも控えめになっており、まろやかな歌い回しが。また、ノスタルジックな感性を呼び起こすアコースティック・ギターやメロトロンの旋律が胸に切なく訴えかけてくる本作では特徴的。それらが緻密なアンサンブルと構成力によって、長大な物語を引き立てていく。

 #1に登場する様なストリングスのアレンジもまた冴えわたる。故にヴィンテージな叙情感覚が強まった事を印象付けているように思う。細心の手つきで丁寧に織り上げられていく楽曲からは、柔らかな音の拡がりやハーモニーの美しさが際立っている。物悲しい響きを押し出したギター・ソロや空間的なシンセに演出もまた効果的に感傷を煽り、昂揚感を高めていく。特に本作最長14分の#3は情感あふれるメロディが貫かれた佳曲であり、ここぞという所で重厚なリフ・ワークとキーボードの艶やかな旋律が溶けあい、繊細かつ大胆に盛り上げていく所が素晴らしい。

 EPながらも叙情性の膨らみやレトロなプログレへの憧憬をはっきり感じさせる作風で、さらに皮が向けた印象の強い本作。ドゥーム/ストーナー/ポストメタル的な感性がずいぶんと薄まった。しかし、がっかりすることなく聴き通して心酔してしまったのは、雄大なスケール感と独特のロマンティシズムを強く感じさせる作品だったからだろう。全3曲で約30分、時計の針を逆に進めてプログレの要素を強化した意欲作として評価したい。


Of Sound Mind

Of Sound Mind(2009)

    昨年に引き続いての2ndアルバム。8曲で70分越え(本作は奇数曲が短めのインストで、偶数曲が全て10分を越える楽曲が並ぶのが特色)の長大なスケールと共に、ドゥーム/ストーナー・ロックから70sプログレ、ポストメタルを広域に横断する彼等の音楽性はさらに極まっている。複雑怪奇な構成の妙、それに伴った静と動の豊かな起伏を自在に創り上げ、完璧なるアンサンブルでもってしって深遠なるサウンドを生みだす。本作で一気に芸術の領域にまで飛躍したといっても過言ではないだろう。音のひとつひとつに古代から現代まで映し出すほどの含蓄がある。

 Sleepを思わせるディープな煙たさを放つギターと大地を揺るがす重厚なリズムを旗振り役にして、眩暈を覚えるかのようなめくるめく深い幻想世界を構築していく。そこに古色蒼然としたオルガンや柔和なヴォーカルが絡むことで、独特の浮遊感や叙情性を作品全体通して印象付けている。また、享楽的なトリップ感を煽る宇宙系シンセを挟んだりと、猛々しいコーラスワークが本能に訴えかけたりとアイデアの多彩さもインパクトを高める要因。加えて、前作よりも柔らかい歌い回しが増えたことやメロディの輪郭がさらに際立った事で、まろやかな味わいというのが個人的に生まれていると感じた。ドゥーム/ストーナー/ポストメタル系に重きを置いた人間達が、70年代のプログレッシヴ・ロックを蘇らせながら、現代的な筆使いで造形していく物語はそれだけで魅力的かもしれない。っが、それ以上に孤高の域に達している事を早くも示している辺りがこのバンドは凄いと思う。彼等の音楽は、キング・クリムゾンにも近づく迷宮があると感じるほど。そして、また前衛的でレトロな感触が強い分、プログレという言葉を恐れずに使える存在だと思う。そんな彼等の才覚は、冒頭の小インスト#1を挟み、シリアスな緊張感と叙情感を貫きながら豊かな起伏を流れ行く14分半にも及ぶ#2で窺い知れるはず。

 とはいえ、70年代のプログレ/ハードロックの旨味を存分に吸い上げるだけでなく、絶望の深淵を覗く事でNeurosisへと接近したり、Sleepの地鳴りと砂嵐によるマリファナ音絵巻の表現を試みたり、と本作が内包している要素は本当に数多に及ぶ。故に心が掴まれる場面は多い。泣きのギターとオルガンの共演から深い灰煙の中に飛び込んでいく#4には引き込まれるし、攻撃的なオルガンのインストがクラシックを聴いてるかのような緊張感で包む#7から、忘れていた疾走感という言葉を取り戻してディープな世界を創り上げていくラスト#8の流れも秀逸。冒頭にも述べたように、本当に彼等の音楽性が極まったことを確信させる1枚であるだろう。全てが一体となって繰り広げられる世界は、未知の感覚をも有している。


Neptune With Fire

Neptune With Fire(2008)

    ロサンゼルスのドゥーム/プログレ/ポストメタル5人組による1stアルバム。発売はTee Pee Recordsから。ブラック・サバス直系の引き摺る様なリフと野太い雄叫が暗黒の景観を奏でていくドゥーム/ストーナー・ロックを軸足に置きながらも、70年代のプログレの幽玄美を表出しているのが特徴といえるだろう。キング・クリムゾンやピンク・フロイドからの影響が見える展開の複雑さ、幻想性、さらにはスペーシーな音造りからはHawkwindの面影も垣間見える。Tee Peeに限らずドゥーム/ストーナー系統のバンドは、70’sハードロック等の影響が強いバンドが多いのだが、Ancestorsはよりプログレッシヴ・ロックの領域へ軽々と踏み込んでいて、その豊かな起伏ある展開に酔いしれてしまう。本作が約16分の#1と21分を超える#2という大作主義で制作されていることからもそれがわかると思う。

 両曲とも出だしで凶悪な音圧のドゥーム/ストーナーで圧倒したかと思えば、ブルージーなギターソロが登場したり、古めかしいオルガンが頻繁に登場して楽曲にノスタルジックな色と情緒を付け加えたり、艶めかしく呪術的な女性コーラスが誘惑したりもする。懐古的サイケデリックな味わいやストーリー性がしっかりしている点も印象的で、豪快かつ重厚でありつつもこの幻想的世界への誘いは、数多のファンを虜にしそう。ここぞで手数多めで畳みかけるドラム、メロディアスなフレーズで主張する事の多いベースのリズム隊による仕事も秀逸。所々ではNeurosisやISISといった面々からのはポストメタルと親和している部分も多く、モダンな音造りもまた自分達なりに昇華している。ドゥーム/ストーナー・ロックから、ここまでプログレ方面に広大に領域を広げている作品はあまり多く無いだろう。そういった所からもAncestorsは、個性派ぞろいのTee Peeに置いても、その存在感はズバ抜けている。

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