Aphex Twin ‐‐Review‐‐

リチャード・D・ジェームスのソロユニット。テクノ・アンビエント・エレクトロニカを縦断しながら独特の世界を描く奇才であり、その異端さと高いセンスから”テクノ・モーツァルト”と称されている。

レビュー作品

> Richard D. James Album > Classics > Selected Ambient Works 85-92


Richard D James Album

Richard D. James Album(1996)

    天衣無縫な音楽センスを持った孤高の天才が放つ究極の作品。自分の名を冠したタイトルに自分の顔のドアップを施したジャケにはおふざけ感が漂うが、CDを流すと尋常ではないインパクトを受けること必至である。

 彼の代名詞ともいえるドリルンベースが縦横無尽に暴れまわり、その上を幻想的で美しいメロディが深みと色合いを与えていくこの凄さ。刹那的な快楽を越えた所に存在するだろう、狂気と美の共存がものの見事に表現されている。不規則なリズムのもとでストリングスが効果的に叙情味を加味したり、突然ポップな曲調に変わったり、かと思えば冷たい電子音だけがノイジーに鳴ったりと化学反応を起こしたかのように次々と劇的な変化を遂げていく。もうそれはセンスだけで成しえた創意工夫と絶妙な手腕にもたらされたといっていいだろう。テクノらしい規則正しいトランス感覚を植えつけるわけでもなく、独創性に富んだ音響構築によって狂騒と静謐の狭間を行き交い、破壊と創造を繰り返しながら摩訶不思議な世界を築いている。それでいてやはり聴きやすいポップ性を宿しているところが、本作が評価されているゆえんではなかろうかと思う。ドリルンベースに浮遊感あるシンセが美しい空間を生み出す#1にはハッとするし、彼の代表曲のひとつに挙げられる#9『Girl/Boy Song』の無垢なメロディがさらす神秘的なノスタルジーも逸脱。Richardの生声が聴ける#11のユーモアもまた新鮮で、全体的にも千紫万紅な表情を持った楽曲の数々は天使と悪魔、両方の魅力を放っているといえよう。確実に底なしの音楽観に打ちのめされる。テクノという荒野に踏み入れるのに最適な一枚といわれているし、世界的にも数多のフォロワー(それもジャンルを越えて)を生み出したテクノの金字塔作品である。


Classics [解説付き国内盤 / ナイスプライス] (BRC238)

Classics(1994)

    1990~1992年にかけて発表したシングルなどをまとめた初期作品の編集盤。タイトル通りにアンビエント・テクノで時代を切り開いたアンビエント・ワークスの流れをぶったぎるように尋常じゃない暴力衝動が封じ込められたのがこの作品だ。破壊的かつ変態的なハードコア・テクノで時代に名を刻んだ#1「Digeridoo」からして凄い。爆音で襲い掛かってきたら一発でトリップしてしまうような威力抜群のテクノ・ドラッグソングである。その後も高速ブレイクビーツによる猛嵐が吹き荒れる凶暴なテクノが立て続けにエキサイティングな興奮を生み、いかれたトランス状態に持っていく。戦慄が走るほどの激しいビートと次元の違う狂気の猛りがここには存在しているのだ。本当にやりたい放題の強烈な内容で視界が歪むとはこのこと。フロアで聴いたら踊り狂えることは間違いないだろう。それでも澄んだメロディアスな波が広がる#5やアンビエントワークスに収められていそうな#8といった曲もあり、凶暴なハードコアで統一しながらも時に訪れる切なさを内包しているところに味がある。だからこそ彼の音楽により引き込まれるのだろう。

 ローリング・ストーン誌が”最もクールなレコード・ベスト50″、Q誌が”史上最もヘヴィーなアルバム・ベスト50″に選出するなど本作もまた彼の代表作の一つである。


Selected Ambient Works 85-92 [解説付き・国内盤] (BRC237)

Selected Ambient Works 85-92(1992)

    Richard D Jamesの名前を世界に轟かせた衝撃のデビュー作。タイトルにもあるように85年から92年にかけて製作されたアンビエント・テクノ集で、なかには彼が14歳のときに作った曲も含まれているんだとか。まずその事実に驚愕させられる。そんな本作は幻想と神秘が入り混じるアンビエントミュージックであり、世界に多大な影響を与えたといわれている傑作だ。美しい音の粒が内的宇宙に広がり、ミニマルな反復によって五臓六腑にリラクゼーションをもたらす至高の70分間。それはまるで静かに無に還っていくかのよう。淡いシンセが深く残響しながら、ゆったりとしたリズムに浸透して透明感のある幻想世界が汲みあがる。けれどもアンビエントかといえば、そうでもない。ロックよりのリズムが生きていたり、意識が開けていくような展開があったりとさすがに一筋縄でいくわけはない。本作以降のハードコア・テクノで暴れ狂えるってのがAFXに対しての俺のイメージだけど、聴いていてここまで安らぎを覚える作品ってのはそんなに多くはないと思う。音響面で詳しく語れるほど俺に知識は無いが、とてつもない底なしの深さを持った作品だということは肌で理解できる。また本作は、『テクノ3種の神器』といわれているほどの超名作であることも記しておこう。そして、未開の地を切り開いた歴史的な逸品なのである。

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