Apparat ‐‐Review‐‐

ベルリン在住のSacha Ringによるプロジェクト。


Devil's Walk

Devil’s Walk(2011)

   叙情派ドリーミー・エレクトロニカから煌びやかなテクノ、優美なアンビエントまで行き来して美しく幻想的な空間を創り上げる職人、ApparatのMuteに移籍しての初のフルアルバム。傑作の呼び声高い『Walls』やナパーム弾となった『DJ-KICKS』シリーズへの参加などで忙しくしていた彼等から届けられたのは、驚くほどに”歌”を前面に出してきた作品だ。

 夏の終わりを思わせる甘美で儚いうわものに、清涼感のある歌声が泳ぐ。それが影響してかビートは以前よりもかなり抑制されていて、アコースティックな音色やストリングスを効果的に用いて、色彩豊かなシンセのループと共に楽曲を幻想的に彩っている。前作でのバラエティの豊かさとファンタジックなメロウさもまた素晴らしいものだけど、歌の機能性を有効活用した本作における美しい魔法は、さらに幅広い層に支持されそうな雰囲気を持っているように思う。また、曲によってはポスト・ダブステップ方面への趣も聴けるし、レディオヘッドのような奥深いサウンドプロダクションのように感じた人もいるかもしれない。独特の美意識が払われた音響の中で、美しい歌が響きわたっている。ゆったりとした4つ打ちにシューゲっぽい霧の音が拡散しては儚い歌が乗る#3は印象的だし、小さなオーケストラを思わせる荘厳なるサウンドに哀感ある歌声が折り重なる#6ではBon Iverの最新作を思わせる美しさを個人的には感じた。そして、本作では随一の躍動感あるビートに美しい音色が折り重なる#8、彼らしい遊び心の効いた#9を駆け抜けて、しっとりとした唄ものトラックの#10で締めくくる辺りも本作を象徴している。

 正直、最初聴いた時はこれがApparatか?とも思ったけど、歌による磁力とエレガンスな音響のオーガニックな結びつきは魅力十分。肩すかしを喰う人もいるかもしれないけど、これはこれで清涼感のある余韻があって個人的には気にいりました。

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