あらかじめ決められた恋人たちへ –Review–

池永正二を中心としたインストゥルメンタル・ダブ・ユニット。


DOCUMENT

DOCUMENT(2013)

 フルアルバムとしては約2年ぶりとなる新作。前作からバンド編成となり、一層の逞しさと力強さを手に入れた彼等だが、本作は前作からの順当なアップデートが成されている。鍵盤ハーモニカの哀愁と勇壮の響き、動物の叫びのようなテルミンの独特の音色が世界観を膨らませていく#1「カナタ」、眩い光の世界へ鮮やかに飛び込んでいく疾走曲#2「Res」。この冒頭2曲を聴いただけで、期待が確信へと変わるほどに好内容。

 強靭なグルーヴ、しみじみとした和の情緒、身を任せたくなる様な包容力など、あら恋らしい根幹の要素を見事に鍛え上げている。なかでも燻し銀の叙情性を下地に、流麗なピアノとダブがほのぼのとした夕暮れ気分を味あわせてくれる大曲#4「ヘヴン」は、彼等の特色が思う存分に発揮されているように思う。その上でBurialのような冷徹なビートの上に軽やかな上ものが乗る#3「Conflict」という攻めの一手を打ち、10分を超える#6「テン」では、プログラミング音を効果的に取り入れた轟音ダブを聴かせる中で、ドゥーミーな鈍重リフを振り下ろすといった新鮮な驚きも提供してくれている。ホーン・セクションの導入もそうだが、自らの幅を広げつつ的確にツボを突く曲作りの巧さは見事。さらに本作のテーマは『旅立ち』で、感傷的な別れや出会いを繰り返しながら明日に踏み出して生きていく事、それを円熟の表現力の基でドラマティックに奏でている。これでもかというぐらいに哀愁のハーモニーが印象的な#8「Fly」は明日への後押し。琴線に触れる旋律とポジティヴな躍動感の連続に心も体も動かされる逸品である。


CALLING

Calling(2011)

   池永正二を中心としたインストゥルメンタル・ダブ・ユニットの4thアルバム(過去作は未聴)。初のバンド編成で制作された作品となるそうだが、これが突き抜けた快楽と懐かしい郷愁を誘う好内容である。

 鍵盤ハーモニカの哀愁や根底に据えてきたレゲエ/ダブが本作でも基調となっているが、ポストロック的な空間の捉え方と上昇アプローチ、エレクトロニカの煌きと心地よさ、テクノ/トランス的な昂揚感までを集約したようなサウンドがとにかく印象的。バンド形態となった事での厚みのあるアンサンブルや肉体に訴えかける躍動感は凄まじいし、和を感じさせる豊かな情緒がほのぼのと響いてくる点にもまた琴線にふれる。インストでありつつもここまで歌心がある点も惹かれる要因だろう。哀愁の鍵盤ハーモニカとキラキラの電子音の瞬きからポストロック/シューゲ的轟音が交錯する#1「Back」、あら恋流儀に染められた高速ダンス・チューンの#2「ラセン」という冒頭の畳みかけに完璧にやられたし、ピアニカの旋律と共に宇宙の彼方を突き進んでいく#3「Nothing」も素晴らしいの一言。微笑ましい懐かしさと踊り狂える昂揚感の交錯はもちろんだが、弛緩と緊張を織り交ぜた展開と雰囲気の切り替えが本当に巧みだ。

 ダブ・トロニカといえそうな心地よい#4「ワカル」、ノイズの深淵を聴かせるようなダークな#6「Fire Glove」、アブストラクトな上ものと湧き上がるようなビートで徐々に変相していく#7「Out」といった飛び道具も華麗に繰り出し、あら恋ワールドを深めていく様にも惹かれてしまう。この楽曲の振り幅の広さと自由さが多くの人々への間口の開放へと繋がっているし、この極彩色のメロディが奏でる郷愁と躍動の物語は誰しもの心をときめかせる。最後に時空を超えてタイムスリップしてしまうかのような懐かしい音色で綴られたエンディング#10「Calling」がまた染みる様に響く。カラフルな多幸感と昂揚感で満たされる本作は、インスト好きには必聴の音が詰まっているはずだ。

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