Arcade Fire ‐‐Review‐‐

カナダのモントリオールの7人編成のオルタナティヴ・ロックバンド。2005年に発表した1stアルバム『Funeral』が世界的に大絶賛され、以降は世界的なバンドへと飛躍する。2010年に発表した3rdアルバム『The Suburbs』でグラミー賞の最優秀アルバム賞を受賞。2013年には、元LCDサウンドシステムのジェイムス・マーフィーをプロデューサーに迎えて4thアルバム『Reflektor』をリリースした。

レビュー作品

> Reflektor > The Suburbs > Neon Vible > Funeral


Reflektor

Reflektor(2013)

 グラミー賞の最優秀アルバム賞を受賞した3rdアルバム『The Suburbs』に続く3年ぶりとなるフルアルバムは、初の2枚組となる作品。プロデューサーにあのLCDサウンドシステムのジェイムス・マーフィーを起用している。ということもあって、わかりやすくダンス・アルバムへと接近。従来の牧歌的ながらオーケストラ風のスケールを持つサウンドと上手く融合を果たしながら、新しい次元に突入している。

 作品の幕開けとなる表題曲#1「Reflektor」を聴いた時は、別のバンドかと思ったほどだが、ダンス・ビートの心地よい揺さぶりと彼等特有の情緒やメロディがじわっと浸透。決して持ち味を失ったわけではなく、華やかなスケール感がどっしりと芯にある。グラミー賞を受賞しても、なおも尽きぬ探究心とともに自らの音楽をアップデートさせており、#4「Here Comes The Night Time」の後半におけるダンサブル&ハッピーな昂揚感はなかなか味わえるものではない。

 #7「Joan Of Arc」のようにパンキッシュな立ち上がりから驚きのフック満載の曲もあるし、DISC2の#5「Afterlife」のようにかなりLCDっぽい曲もあり、ダンスビートを生かしながらシリアスで聖性としたムードに帰結していく#6「Supersymmetry」という曲も揃えていて、2枚組約75分を豊かなバリエーションで楽しませてくれる。それがまた高い次元で結実している辺りがこのバンドの凄いところ。総じて、世界的に高い評価を獲得しているのも頷ける傑作かと。ただ、僕は前のアルバムの方が好きなんですよ(笑)。


Suburbs

The Suburbs(2010)

    約3年半ぶりとなるこの3rdアルバムには、穏やかでノスタルジックな曲調が耳からすっと染み入ってきて、まるで鮮やかな緑と柔らかな光が包み込んでいくかのような心地よさを覚えてしまう。遠いどこかの記憶を呼び起こし、様々な風景を脳内に喚起するほど、色とりどりに描かれる大らかな世界に心が強く傾きっぱなしだ。

 インディ・ロックとしての骨格にオルタナ、クラシック、シンフォニックといった趣を精微に組み込み、ストリングスやアコーディオンといった楽器が絢爛な装飾を施していく独自性の強い彼等の音楽。これまで一作ごとにガラッと違うコンセプトと世界観を提示して我々を驚かせてくれたが、本作でも新たな局面へと突入したことを伺わせる。前作の荘厳な世界をあっさりと振り払うかのような「ザ・サバーブス」でのスタートを皮切りに、牧歌的でリリカルな音色と軽やかな躍動感が心の闇を優しく解きほぐしていく。語りかけるように紡がれる音のひとつひとつが深い味わいを持っていて、それが実に心地よく響いてくるのだ。今までの作品と比べてもストレートな作風という印象を受け、風通しの良さと明るい曲調からは、歓びと温かさで胸がいっぱいになる。

 また、全16曲約1時間がバラエティ豊かな曲調で彩られているのも大きな特徴で、新鮮に感じさせてくれるところだろう。幽寂なフォーク・ソングで涙を誘ったり、多彩な楽器と精微なアンサンブルでドラマティックな音絵巻を紡いだり、血が騒ぐようなパンク衝動を纏って突っ走る曲、新機軸といえそうなニューウェイヴ風の曲までを取り揃え、繊細かつ緻密に積み上げながら見事な起伏を描く。それが前述したような様々な風景を脳内に映像化させている。しかしながら、曲調を広げながらも、ここまで統一感を出せるのは、底をたゆたうように流れるメランコリーの美しさの賜物で、バンドの表現力の巧さには改めて凄いと感嘆の声をあげてしまう。

 ストリングスを生かしたオーケストラ風の演奏は控えめになって音が整理された印象を受けるけど、それは本作が示すポップで素朴な中に壮大さや多彩な音色が収斂したとも捉える事ができるだろう。過去を見つめ直したことでの発見、また時間が磨き上げた表現力が新しい光を生んでいる。物語性の高い情景描写を施す叙事的な旋律や感傷に深みを与えるアンサンブル、楽曲に瑞々しく生命を吹き込む歌声がしっかりとした幹となり、男女ヴォーカルの清廉としたハーモニーにしても情感豊かに琴線をつつく。そんな彼等の音楽はやはり魅力的だ。前2作と比べると、素朴で軽妙な味のある作品に仕上がっていて、悠々たる物語の流れに自然と身を任せたくなってしまう。何年経っても色あせないような普遍的な魅力を携え、それでいてバンド自身の深さも示した、そんな作品である。2010年の重要作であることは間違いない。


Neon Bible

Neon Bible(2007)

    全世界から絶賛の嵐を受けた前作『Funeral』より約2年半ぶりとなる2ndフルアルバム。これまたガラっと変わったなあ。根幹となるオーケストラルな佇まいと牧歌的なバンド・サウンドは健在であれど、ストリングスやオルガンの厳かな響き、十戒のように重んじられた世界観が以前にも増してピンと張りつめた緊張の糸を張り巡らせている。

 特徴的なのは前に出てきた重厚なオーケストレーションで、これが本作の荘厳で神秘的な作風を決定づけている印象。本作は教会でレコーディングされたということもあるが、特別な力が圧し掛かってくるようにも感じられ、聖書から現出した宗教的かつ暗く重たいオーラを纏った世界観が荘厳な迫力を持って迫ってくる。けれども、繊細なメロディが琴線をつつき、バンド・サウンドが高らかに響き、男女ハーモニーが優しく包み込む。もちろん、オーケストラ・アレンジも前述したように精妙に濃厚に絡んでいる。とはいえ、どこか物悲しさや儚さを感じさせ、耽美でディープな音像を奏でているとはいえ、ポップをしのばせた根幹は全く揺らいでない。むしろ巧緻と熟成がより感傷的な深みを与えている印象すらある。沈み込むように感情を重たく表現した楽曲やクラシック並の迫力を伴った楽曲などが本作では目立つが、勇壮に疾走する曲や前作のように歓喜に溢れた楽曲も登場したりして、ある程度の振り幅は持たせているところも頼もしい。音楽に触れる歓びを全身で感じた前作からすると、畏怖の念すら覚えてしまうほどのスケールを持った本作は聴き手を選ぶようになったとは思うが、前作以上の耽美なアート感覚には惚れ惚れとする。聖書から現出した世界に連れ出されるようなこの感じも大変よろしい。ちなみにバンド側の意向で国内盤は発売されてない。


Funeral

Funeral(2004)

    04年発売のデビュー作。タイトルはレコーディング中に不幸が相次いだために”葬式”というタイトルになったそうだが、その死という虚無/退廃の闇に立ち向かうように人々の祝祭と歓喜が全身を包む珠玉の逸品であり、さらには全世界で絶賛の嵐を巻き起こして起こして00年代を代表する作品として語り継がれている。

 艶やかな光と凄まじい感動が全身で感じられる作品だと個人的にも思う。基本としては、インディ・ロックを軸に据えた作り。そこにオルタナ、クラシック、フォークといった素養が融和しあって独自の音風景を築きあげているのだが、その世界観は壮大であれど、素朴な味わいがある。繊細に紡がれる瑞々しいメロディは体中に染み込み、細いようで芯のしっかりとしたウィン・バトラーの歌声は滋味深く響き、美しい物語を描くようにアンサンブルが共振していく。さらにはピアノやストリングス、オルガン、アコーディオン、ハープ等の多様な楽器を用いて、しなやかかつ荘厳に世界を装飾。カナダからかつてないポジティヴで力強い光と温かく麗しい歓喜を降らせている。けれども、壮大神秘なシンフォニーのようにも轟く楽曲は、細部にまでこだわったアレンジで繊細な美しさやポップ性を湛えており、どんな人をも許容するような懐の深さがある印象。郷愁を誘う牧歌的な音色、悠久なドラマチシズムが彼等の独自の世界観にしっかりと落とし込まれていて、選び抜かれた音のひとつひとつに対してのこだわりも強く感じさせる。頬を緩ませる楽曲の数々はどれもが素晴らしいのだが、U2をも歓喜の渦に巻き込んだ至高の名曲#7「Wake Up」は人生で一度は耳にしてほしい名曲のひとつ。4曲ある「Neighborhood」にしてもどこまでも無限の広がりをみせる。音楽を聴くことの歓びを凝縮したかのような本作、聴けば聴くほどに素晴らしい限りだ。

かなりLCDっぽい

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