Atlas Sound ‐‐Review‐‐

Deerhunterの中心人物、ブラッドフォード・コックスによるソロ・プロジェクト。本体よりもさらに旺盛な実験精神のうえで構築されるサウンドは、浮遊感と幻想性を増したまどろみの世界を築き上げる。

レビュー作品

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Parallax

Parallax 2011

 ディアハンターの頭脳であるブラッドフォード・コックスのソロ・プロジェクトの2年ぶり3作目。バンドとソロ、両方とも作品を出すごとにお互いの境目が無くなってるなあという印象を受けるのだけど(といってもこちらの方が自由度は高いし、霧が濃くなる)、本作では昨年の『Halcyon Digest』と共振するようなお得意のローファイ感と甘美なサイケを程よくしのばせ、さらにフォーキーな味わいと独特の浮遊感を持ったサウンドを構築。変わらずにどこか虚ろで閉塞的な感じを受ける部分もあるが、スティーヴ・ライヒを参照にしたというミニマルへの傾倒も曲によっては表れているし、シーンの最先端を突き進む創作意欲と実験精神を示している。

 しかも全体的に以前にも増して風通しが良いという印象を個人的には受けた。アコギの枯れた哀愁にヘロヘロなヴォーカルが物憂げに響き、柔らかなリヴァーブや拡がるシンセの音色が催眠的な心地よさを誘う。曲によってはハープの音色が飛び出してきて驚かされるし、MGMTの人をヴォーカルに起用した#6といったポップな飛び道具も完備。悦楽のアンビエントからベッドルーム・ミュージック、懐かしい哀愁を感じるアシッド・フォーク、それに明確な美しさに貫かれたポップにもの悲しげなバラードまで自在に繰り出す、そんな制約の無い曲の振り幅も魅力的だ。境目が無くなってきていると冒頭に述べたとはいえ、ディアハンターとは少し違う趣と味わいを随所で感じさせる辺りは流石。それでも本作でも宇宙のような彼の脳のまだ断片が表現されたに過ぎないだろう。やはりこれからも注目の存在だ。


Logos

Logos(2009)

 『Microcastle』の成功により、USインディー・ロック界で一段と上の輝きを放つことになったDeerhunterの中心人物、ブラッドフォード・コックスによるプロジェクトの2年ぶり2作目(前作は未聴)。普遍性と幻想性の狭間を巧く往来しているなあと感じた作品かな。シューゲイザーっぽいギターの音色とインディー・ロックの融合を果たしたディアハンターのきららかな水脈はこちらにも流れていて、それをさらに自由な精神で解体と構築を行っていると思う。

 ただ、アトラス・サウンドの方がエレクトロの音使いやノイズの陰影が楽しめるだろうか。アンビエントやドローンっぽい感触も少しあるし、Four Tetに似た音色も登場するなど輪郭のぼやけた世界を形成しているが、その形成している諸要素は多岐にわたっている印象。豪華でハッピーなサイケ・ポップを形成するアニコレとの共作#3、ドープなギターの鳴りによってまどろみの夢想空間を紡ぐステレオラヴとの共演もまた自由な振り幅に拍車をかける。ディアハンターの時よりも繊細で淡い表現が目立つブラッドフォードの歌声やアコギの柔らかくも枯れた感触は、実験的でありながらもポップを随分と内包している印象を与えるが、全体的にかけたリヴァーヴによってミステリアスな雰囲気が強調されている。けれども温かくも心地よい、それでもって脳には遅行性の毒素をゆるゆると送り込まれている感じは変わらずかな。浮遊感と幻想性も重視されていて、甘美な夢の空間に意識は迷い込む。ディアハンターもアトラス・サウンドも核となっているブラッドフォードの無邪気な自由精神ではあるし、土台は一緒だと思えるのだが、枝の先に咲いた花が違う所がおもしろい。

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