Baths ‐‐Review‐‐

LA在住の若手トラック・メイカー、ウィル・ウィーゼンフェルドによるソロ・プロジェクト。Anticonからデビューを飾っている。

レビュー作品

> Obsidian > Cerulean


Obsidian

Obsidian(2013)

 デビュー作『Cerulean』で才能の片鱗を見せつけたウィル・ウィーゼンフェルドによるBathの3年ぶりとなる2ndアルバム。フライング・ロータスのマスタリングを務めた事でも知られるDaddy Kevがマスタリングを担当している。

 コンセプトは『apathy(無感情)』らしく、ジャケットまでもが一貫しているように陰鬱な作風を目指したという。古代~中世ヨーロッパで蔓延したペスト(黒死病)を 描いた絵に大きな影響を受けたとの事だが、対訳にある歌詞を読んでも非常に重い内容であることが伺え、ダークな要素を多分に孕んではいる。だが、その大らかな闇を超える様に『Cerulean』からの延長上にある叙情的で親しみやすいサウンドがここで鳴っているように思う。煌びやかなシンセとアブストラクトなビートは、彼らしい独特の揺らぎやロマンティックな詩情をもたらしているし、前作以上に力点が置かれた歌も絶品である。インディ・ロック勢に迫るだろうこの多彩なヴォーカル・ワークが、彼の音楽への入口にできるほどの機能性を持つ。センチメンタルなサウンドと共に甘美な夢を見る#3「Ironworks」を始めとした全10曲には、どこまでも豊かな情感を伴った、決して黒一色ではない夢見心地な世界がここに広がっている。作品を通して感じ取れる退廃的な美も素晴らしく、Bathsらしいポップさが上手く生かされている点も聴き所であると思う。アーティストとしての着実な進化/深化を示す充実の一枚。


CERULEAN

Cerulean(2010)

   別名義”Post-Foetus”での活躍も目覚ましいウィル・ウィーゼンフェルドによる新名義”Bath”での初作。あのanticonからデビューを飾っている。

 例えるのが難しいと感じるほど複雑なトラック・メイクが成されているけど、ここまで優しい、そして懐かしく胸を打つ作品に出合ったのも久々だ。甘美と郷愁が混じり合うメロディにひねくれた多彩なビート、様々な感傷が零れる多彩な歌・・・etc。それらの有機的な混合と緻密な構築性によって心地よい音色が鼓膜から心にすっと入りこんでいく。Flying Lotus~Madlib的なビートから、ドリーミーなエレクトロニカ~チルウェイヴまでを巡りながら、優美なサウンドを形成。ギターやピアノ、さらにはフィールド・レコーディングなどを取り入れながら、精妙に組み合わさっているのが印象的。なおかつそれは、アニコレやギャング・ギャング・ダンス的な資質までなどを感じさせる点から、現在のインディ・シーンとの共振も感じとれる。

 もう#1の儚い歌声と煌びやかな音の粒が降り注いできた所から、涙腺決壊。さらに激しいビートに切ないうわものと歌声が乗り、後半のピアノの感傷的な響きにも魅了される#2やグルーヴィーなサウンドにコミカルなタッチで音が加算される#3、リリカルなピアノから引き込まれる#4と序盤の流れは完璧に近い。また、子どもの声を多用に盛り込んだノスタルジックな#5も素晴らしいし、アブストラトながらファンタジックな色合いも表現された#12による締めくくりも憎い。陰陽のコントラストや多彩な資質の融合に成功した結果であるBathの音楽は、涼やかさと懐かしさと心地よさに満たされた仕上がり。anticonというカラーを失わずに、優美でポップな感覚を開けた功績は大きい。宝石箱を開けるときのようなワクワクがある作品で、前年に聴いてたら間違いなく個人的BESTに入れてただろう秀作です。

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