Battles ‐‐Review‐‐

元Don Caballeroのイアン・ウィリアムスや元Helmetのジョン・スタニアーが中心になって2003年に結成されたポストロック・マスロックバンド。既にEP3枚で話題になってしまうほど彼等のその有機的なサウンドに心奪われた人は多い。待望の1stアルバム「Mirrored」を2007年4月にリリースしたことを契機に、爆発的な人気を獲得。日本でも数度度来日公演を敢行しており、フジロックやエレクトラグライドなどのフェスにも出演。

レビュー作品

> La Di Da Di > Gloss Drop > Mirrored > EP C / B EP


 

battles2015

La Di Da Di(2015)

 柔よくマスロックを制す3人組の4年ぶり3作目。ゲイリー・ニューマンやカズ・マキノなどを招いて歌にフォーカスした前作を経て、「無敵のハードコア・アンサンブル」なるコピーが躍る本作。かつてを思わせるように全編がインストで綴られている。あからさまなポップには自分たちなりに線引したようで、実験的なアプローチの増量からは原点回帰に通ずるところでしょう。ぷよぷよで端の方に適当に積んで凄まじい大連鎖が奇跡的に起きる・・・そんなバクチは許さぬ理詰め勝負、技量勝負。

 初っ端のヤッバ・スクランブル#1「The Yabba」でご挨拶された後、バトルスのしなやかな自由律を堪能し続けられます。バトロスを吹き飛ばす快楽の音符昇降運動。歌が乗っかっていそうなイメージすら浮かぶファニーな#3「FF Bada」や#4「Summer Simmer」辺りは、聴いてて本当に心躍る。これまで発表した2枚のアルバムを咀嚼した上で、難解な展開の中にポップを上手く包んでいて、不思議と温かさと楽しさがにじむ。代表曲の「Atlas」で顕著だけど、やっぱり彼等はこうでなくちゃね。

 徹底したミニマリズム、3人のストイックな演奏の交歓がバンドの肝。歌を取り除いたことでの自由さが良い方向にユーモアとキャッチーさを出している気もします(前作は僕は好きでしたが)。ゴージャスな実験的インスト#6「Non-Violence」、トライバルなビートで腰をくねらせる#9「Tricentennial」等も満足。「タイヨンダイ脱退を乗り越えて」は前作よりも、むしろ本作にこそふさわしいコピーでしょう。納得の一枚。

 


 

Gloss Drop (WARPCD212)

Gloss Drop(2011)

    ソングライティングの鍵を握っていたタイヨンダイが脱退し、トリオ編成で制作された4年ぶりの2ndフルアルバム。とはいえ、僕等のイアン・ウィリアムス(ex-Don Caballero)はいるじゃないかと勝手に思っているが、随分とカラフルな色彩とポップ感を増したというのが第一印象か。前作でいう「Atlas」のテンションをより派手に盛り上げてくれている。

 マスロック的な精微で複雑な構成力は健在だが、自由な筆使いで楽しいバトルスを演出。メロディの美しさやユニークなリズム転調、陽気なヴォーカルが主導権を握り、ナチュラルな温かみと人懐っこい感覚が強まった。どこかでネジを外れたというパーツを緻密に組み合わせていながら、ポップで躍動感のある作風へと飛躍。可愛らしいという言葉も場面によっては浮かんでしまうほどだ。かつての無機質な印象を振り払うほどに全体的に明確に彩度を上げている。そこに、ブロンド・レッドヘッドのカズ・マキノ、ボアダムスのフロントマンのヤマツカアイ、ゲイリュー・ニューマンという個性派ゲストもまたポップさを加速させていて、聴きやすさは過去最高。その分、マイナス面でいえばドンキャバからの流れを汲んでたであろうEPの面影は薄まり、ストイックさやスリリングさがかなり減退したことだが、それよりも彼等は痛みを伴って違う場所を目指したという事か。

 ただ、多彩なアイデアの投下を力強いアンサンブルで持ってロック的ダイナミズムを表出する点はさすが。ジャンルという境界線を越えてバトルスという音像を自由に打ち立てていくところにこのバンドの肝があり、これからもまだ見ぬ進化を遂げてきそうである。個人的に今回の作品はあり。


Mirrored [解説・ボーナストラック付国内盤] (BRC174)

Mirrored(2007)

    3枚発売されたEPによって多くのファンを獲得していたバトルスの待望の1stアルバム。ここまで高度な音楽を展開しながら、ここまで親しみやすいのが驚きだし、精神にも肉体にも快楽をもたらしてくれる。変拍子満載の複雑な展開が随所に出てくるのだが、ポップが随分と顔を出していてそのサウンドに魅了され、また飲み込まれていく。心地よいリズムの反復とファンタジー性に溢れた#2「Atlas」なんて本当に最高。夢見心地であります。そして、#10「Tij」も気に入っていて、後半に進むにつれて脳を溶かすようなカタルシスにやられてしまう。マスロックなんて得てしてつかみづらいジャンルの音楽と思われがちだが、彼等はそれを知らぬ人間にもわかりやすくうまく昇華して伝えている連中だと思う。緻密に計算されたスペクタクルなサウンドと人々を快楽へといざなうそのポップさに新たな時代の波を感じた。

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