Boris ‐‐Review‐‐

1992年に結成された男2人女1人による無敵のロック・トリオ。ロックを中心にドゥーム、ストーナー、アンビエント、ノイズ、パンク、メタル、ポップスに現代音楽までの要素を交えた実験的ロックを追求しており、音楽の真髄を求め続けている。

レビュー作品

> NOISE > Heavy Rocks 2011 > Attention Please > New Album > Variations > SMILE(LIVE) > SMILE > PINK > feedbacker > あくまのうた > Heavy Rocks > Absolutego


NOISE (ALBUM+SINGLE)

NOISE(2014)

 世界を驚かせた2011年発表の『NEW ALBUM』に続いて、メジャーからリリースされた最新作。前作同様に成田忍氏をプロデューサーに起用している。

 『SMILE』以来6年ぶりとなる”BORIS”名義での作品となるが、ここには彼等なりにロックの中心を射抜こうとするBORISも、ロックの範疇を飛び越えて実験的な音響を生み出してきたborisも等しく集約されている。これまでのキャリアを総括する内容であり、集大成としての一枚。それはバンド自身がインタビューでも述べているようだが、普遍性とマニアックさが絶妙なバランスで共存している辺りに驚きと新鮮さを感じる。それ故に、Borisを語る上で欠かせないワードのひとつである『NOISE』がタイトルに使用されているのも妙に頷けてしまう。

 初音ミク~アニソンまで浸食した『NEW ALBUM』は、Boris文化の成れの果てとも言うべきものであると同時に、このバンドにタブーは無いことの証明でもあった。本作ではその流れを持つ#1「黒猫メロディ」を起点に始まっていくが、彼等流儀のヘヴィロックやサイケ、シューゲイザー、ストーナーといった要素を交えながら見事な形で構築。続く#2「Vanilla」にしてもポップネスを結びつけながら、疾走型サイケ・ロックの理想形を生み出している。もはやBorisにしかできない芸当であるというのが、この2曲だけでも十分に実感できるスタートだが、本作からは90年代ヴィジュアル系の要素を感じる部分が多々ある点も個人的には嬉しいところ。サイケデリックな音像を主体とした歌もの#3「あの人たち(Ghost Of Romance)」からは、昨年にDEAD ENDトリビュートに「冥合」で参加した上での収穫も感じさせる(曲名もDEAD ENDリスペクトを感じる)。

 それに加えてアルバム後半の流れには、思わず息を呑むほどだ。彼等の真骨頂といえる18分越えの#6『Angel』では、「feedbacker」と同様のドラマティックな流れを持ってサイケデリックの極北へ。かと思えば、「korosu」以上に殺される#7「Quicksilver」が全てをぶち破り、薙ぎ倒す、苛烈な猪突猛進ハードコアから耳を劈く暗黒ドローンに落とし込んでいく。この2曲に茫然としていると、昼寝を意味する#8「シエスタ」で穏やかな終末を迎えることになる。

 そんな様々な音楽にアクセスし、血肉化してきた彼等の音楽的自由さや多様性を感じる全8曲を用意しているのだが、全体を通すと普遍性を持った作品として聴こえてくるから不思議だ。バラバラなエレメントの集約と調和、それこそBorisマジックなるものが発動しているのかもしれないが、ひとつの総決算として見事な作品が生まれたことは事実である。ここが着地点だとも到底思えないし、今後もリスナーを手のひらで転がしてくるんだろうが、全方位に轟く名刺代わりの本作はこれからのキャリアを輝かせることだろう。傑作。

 メジャー・レーベルからリリースされた国内盤には、さらに4曲入りのボーナスディスクが付属。鉛の雨のように重厚なドローンの中に物悲しくも麗しいメロディが配された10分近い「Bit」、ヘヴィロック/ストーナー通過型のアニソン~J-Rockに昇華した疾走曲#2「君の行方」と#3「有視界Avenue」、一撃必殺のロックンロール・ワンダーランド#4「ディスチャージ」。アルバム『NOISE』の補完以上の役割を果たすこの4曲いずれもが、Borisのさらなる魅力を浮かび上がらせている。


Heavy Rocks 2011

Heavy Rocks 2011 (2011)

 3月にavexからメジャー・リリースした『New Album』の元ネタとなる(New Albumは同時発売の2枚の最新作からの抜粋&リ・アレンジされた作品)最新アルバムの片割れの1枚。こちらは02年に発表した『Heavy Rocks』と同タイトルを冠したものであるが、全くの新しい作品となる。

 同時発売のコンセプト作『Attention Please』ではBorisの新たな一面を覗かせていたが、こちらはタイトル通りに爆音を軸に据えている。とはいえ、勢いや殺傷力は以前の作品に遥かに及ばないのは先に記しておこう。では本作の肝は何かといえば、その前作品以降に多方向に振れていったBorisが現在の感覚で”Heavy Rocks”を再定義したものといえるだろう。パンク、ハードコア、サイケ、ドゥーム/ストーナー/に限らず、長年かけて懐に加えてきたアンビエント、ポストロック、ノイズ、現代音楽などなど様々なエレメントを利用しながら、決して轟音の括りに収まりきらない、今のヘヴィロックを鳴らしているのだ。爆音を掻き鳴らしての猪突猛進や煙たいヘヴィネスが渦巻いたと思ったら、リリカルなメロディが折り重なったり、静謐な場面ではアンビエントの領域へと侵入したり、ニュー・ウェイヴの趣までもを加味している。

 また、02年の前作と同様にゲストを多数招いて、当時を軽々と凌ぐ音楽的豊かさを表出。コアメンバーのひとりともいうべき栗原ミチオ氏に加え、前年にBXIで共作を創り上げたCultのイアン、そして外せない我らがアーロン・ターナー、さらにはサイトウケンスケ(9dw)、川喜多美子(D-Day)までが本作に貢献している。色艶あるイアンのヴォーカルがサイケデリックなサウンドの中で揺れ動く#1は始まりとして申し分ないし、アーロンとフェイス・コロッチャのMamifferコンビによる多様な音意匠で艶めかしく眩惑的なサウンドスケープが天上へと導いていく#9は本作でも特に輝きを放つ。たそがれたアンビエントな唄ものからSunn O)))ばりのノイズに振りきれていく#5も凄まじい。そういった点を踏まえるとBorisがいかに多くの要素を咀嚼し、独自のヘヴィロックとして昇華させてきたかがわかる。なぜかラストは、スレイヤーもどきのインストで終わって崩し/遊びを表現している所もおもしろい。

 本作は、彼等の王道であって王道ではない。しかしながら、”Heavy Rocks”というタイトルのもとに多方面に開けていたBorisの音楽性を収束した一作であることは間違いないだろう。


Attention Please

Attention Please (2011)

    3月にavexからメジャー・リリースした『New Album』の元ネタとなる(New Albumは2枚の最新作からの抜粋&リ・アレンジされた作品)最新アルバムの片割れである。

 本作ではギタリストのWataをフィーチャーしており、これまで数曲でしかヴォーカルを披露しなかった彼女の歌声を全曲で堪能できるコンセプト作。これは、初音ミクにヒントを得たというのだが、合わせて彼等らしい爆音を封印し、魔性の魅力を解き放っている。しかしながら、お得意のサイケデリックなテイストは健在で、ニュー・ウェイヴとの寄りそい合い、エレクトロな意匠、ミステリアスな奥ゆかしさまでもを自在に塗り分ける事で、あらゆる境界線を越えて揺さぶりをかけるなロックを提示している印象だ。いい意味で期待を裏切る静的な落ち着いたサウンドに、Wataの歌声を始めとして様々なコラージュが成される事で、斬新なイメージを植え付けている。それでいて、どこか冷たく暗い感触が低部を渦巻いていることにも驚かされるだろう。とはいえ、表面的には滑らかな聴き心地と浮遊感を実現していて、3月のアルバムにも収録された#2、#3、#9等が陽性の色合いを強めている。一方その裏では内省に訴えかけ、深淵に堕ちていくかのような#5、#6のような曲もしっかりと用意されていて、イメージを覆すコンセプトを用いながらも彼等の作品らしく一筋縄ではいかない毒素が入り混じっているのも特徴的。また、08年の『Smile』で打ち出した唄ものの黄昏感というのも感じ取れる。もちろん、こちらもお遊び・実験的という意味合いが強い。けれどもWataというキャラクターの魅力を引き出し、それに調和した幻想的なサウンドを鳴らせてみせた本作は、先頃の『NEW ALBUM』よりは個人的にはしっくりと来た。


New Album

New Album (2011)

    オリジナルアルバムとしては『SMILE』以来、2年ぶりとなる新作。まさかのどメジャー・レーベルのエイベックスヘの移籍にタイトルがそのまんまな『New Album』ってどんだけリスナーをおちょくるのかと思えば、内容も普段のファンなら卒倒してしまうほどのもの。プロデューサーに布袋寅泰やD’ELANGER、中野腐女シスターズなどを手掛けた成田忍氏を起用しての1作は”裏J-POP仕様”などと評されている通りに驚くほどポップである。

 出だしの#1「Party Boy」からこれがBorisなのか??という疑問が頭を駆け巡った方も多いだろう。ポップ&ロッキンオンなBorisが全開で、続けての「希望-Hope-」「フレア」にしてもかなりわかりやすい。全体としてもポップ&ロックの範疇でヴァリエーションが豊富、女性G&VoのWataさんのヴォーカルをメインとしていつになく多用、メロディも立っていてとても掴みやすい内容となっている。『SMILE』でもPYGのカヴァー等で意識的に歌ものを披露していたが、本作ではより明確にお茶の間を意識したというべきか。ラルクっぽいとかアニソンっぽいとか言われてはいたが、改めて驚いた次第だ。既にエイベックスの移籍する前から半分ぐらい曲はできていたらしいが、過去のファンをふるいにかけているか?そういった気さえするほど。

 ただ、彼等としてはポップな曲調も懐に収めておきたいということもあったろうし、これぐらいの事はできるという思いもあったろう。もちろん、らしい部分もあって薄らと拡がっていくアンビエント/サイケ感がどこか侘しさを募らせる#5「Pardon?」やなぜか前作の「隣のサターン」がフラッシュバックする#10「Looprider」など、ディープかつダークな彩色を付け加える事は決して忘れてない。しかしながら個人的にGOATBEDを思い出した#4「Black Angel」という飛び道具、謎の四つ打ちにサイケデリックなギターと歌が自由に泳いでノせていく#7「ジャクソン・ヘッド」辺りは逆にポジティヴな驚きがあった。賛否両論というか否が圧倒的に上回る内容であるのは想像に難くないが、”世界的にBorisがヤバイらしいから俺も聴いとこ!”的なこのタイミングでこんなポップなものをぶつけてくる辺り、さすがに狡猾である。

 おそらく同時発売のアナログではミックスが確実に違うだろうし(実際に別テイクを収録と記載)、4月には Sargent Houseから2枚のリリースも予定されており、そちらも本作の同名曲を収録しているが違う事になっていると予測できる。ただ、本作に関して言えば煙に巻かれたというのが本音か。ここからどういった奥地へと彼等は吸い寄せていくのか。謎は尽きないばかりだ・・・。


Variations+Live in Japan(DVD付)

Variations (2010)

 ヘヴィロックサイドに焦点を絞り選ばれたBorisのヘヴィロック・サイドベスト盤的内容の編集盤。栗原ミチオ氏をサポートに迎えた現在のライヴと同じ4人編成での新録5曲/日本初出4曲/初CD化ヴァージョン収録した全13曲入り。

 激震のドゥーム・メタル/ドローンのデビュー作『Absolutego』に始まった彼等の歴史は、ノイズ、アンビエント、メタル、ストーナー、歌謡曲まで多様な方向性を露わにし、数々のミュージシャンとのコラボも挟みながら大きく進化/深化を遂げてきたわけだが、本作はBoris流のヘヴィロックを全く薄めない形で集約しているので本当に入門編にもってこいの作品である。代表曲の「korosu」は前のバージョンの方が遥かにいいけども、ビルボードのシングルチャートで23位を記録し全米を激震させた「Statement」を始めとして、ミラクルなヘヴィ・ミュージックが詰まっているといえるだろう。中にはboris名義で発表した曲や新曲、さらには前述したとおりの再録曲なども含まれており、決して単純なベストで終わってないのが特徴。従来のファンも触手が伸びる仕上がりである。Wataさんのヴォーカルをフィーチャした薄闇のサイケデリック歌謡「虹が始まる時」や10分近い轟音サイケ・チューン「決別-Farewall-」など選曲は本当に見事で、数多の人々をBorisに振り向かせるのに最適な一枚であることは間違いない。

 初回盤付属のDVDには2008年12月に代官山Unitで行った10ヶ月間/20ヶ国/計100本にも及んだ『SMILE』ワールド・ツアーの最終日ワンマン公演の模様を完全収録。通常盤も価格が税込1890円と抑えらていて手に取りやすいのも嬉しい。


SMILE

SMILE(LIVE) 2008

 SMILEプロジェクトのラストを飾るのは2枚組のライブアルバム。2008年の8月1日のアメリカはWolf Creekでのマルチトラック・レコーディングを元にしたノーカット/フルドキュメント作品だ。ディスク1ではPYGのカヴァー曲「花・太陽・雨」が繊細かつ味のある歌ものとして機能している以外は、聴き手を爆音爆走でねじ伏せる楽曲を取り揃え、ディスク2では栗原ミチオさんを加えての4人体制でサイケデリックな粉を撒き散らせるという仕様。もう走るところは後先考えずに全速力でキメまくるし、ヘヴィなギターリフが様々な情景を描き出していくところは本当に圧巻だ。生々しい轟音の荒波はゾクゾクとするし、サイケデリックなギターによる妖しい光も妙な輝きを放っている。目が覚める、異形のヘヴィロック。これこそがボリスである。また、バンドの放つエネルギーの凄まじさにも触れなければならないだろう。特にディスク1の「BUZZ-IN」から「Statement」にかけてはガツンと打ちのめされ、発狂間違いなし。ディスク2の「君を傘をさしていた」辺りからは珍妙な神秘性すら感じさせ、よりコアな深化を遂げているのが伺える。まさに2種類のBorisがしっかり堪能できる作品といえるだろう。これから彼等を耳にする人に対してもこういった多面性があることを印象付けるものに仕上がっている。


Smile

Smile (2008)

 前作「PINK」が全世界で5万枚を越えるセールスを記録するなど、海外での躍進が目覚しいBORIS。そんな彼等がこのたび大文字BORIS名義としては2年4ヶ月ぶりとなる新作を発表した。タイトルはBORISには似つかわしくないといっちゃ失礼かもしれない「SMILE」。なんとプロデューサーに石原洋を迎えている。色も鮮やかなピンクだった前作に倣ってか、彼等がやるにはアンニュイな気がする黄色を基調としている。しかも真ん中にハートをくりぬいちまっていて、「これまでとは違う!」そんな様相がタイトルやジャケでも十分伝わってくる。

 『 な ん じ ゃ こ り ゃ ! 』

 この作品を聴いた正直な感想である。デジタルによって歪みまくったなんともアンバランスな#1「メッセージ」、PYGのカヴァー#4「花・太陽・雨」、やけに繊細な歌謡曲#5「となりのサターン」、朝生愛が楽曲を提供した静かで妖艶な#7「君を傘をさしていた」。これらの曲を聴いて、BORISに一体何が起きたんだろう?と何度もCDを再生し、その答えの意味を探った。・・・だがよくわからない。パワフルなアッパーチューン#2「BUZZ-IN」、音塊が空間を埋め尽くす#6「枯れ果てた先」を聴くとBORISだなあという感触を確かめられるが、今作はかなり掴みづらく、リスナーの意表をつくような仕上がりだ。それにBORIS名義としては珍しくゲストも招いている。栗原ミチオがギターで数曲に参加、さらにはヘヴィドローンな#8にはSunn O)))のStephen O’Malleyがゲスト参加して、フィードバックギターを轟かせている。かなり実験的な作品だが、彼等はこのSmileを「今の自分たちにとって一番新しいロック」と評している。だが、個人的には今作をBORSI名義として捉えるとちょっと違和感を覚えてしまう。BORISとboris、その壁はもう粉々に崩れ去ったのか?そうとも捉えられる。あらゆる概念、定義は彼らにとって壊すためにあるのかもしれない。

 BORISがJ-POP・歌謡曲を!それは確かに彼等自身の音楽の探求であるかもしれません。だけど少なくとも個人的にはそう感じなかった。“これを聴いて戸惑うリスナーの姿・表情を想像して、嘲笑う”。俺はそういった意味の「Smile」というひねくれた解釈の仕方をしてしまう・・・。BORISであってborisでない。今作で提示した意味とはなんなのか?まだまだ彼等の先進性に追いつけそうにはないです。たぶん、これまでにない情緒のあふれる作品に仕上がっているのでそのあたりの捉え方で評価が分かれそう。そんなわけで確かにこりゃあバンド史上に残る超問題作だと思います。

——————————————————————————————
 とまあ国内盤を聴いたときに↑のような否定的な印象を抱いてしまったわけだけど、Southern Loadから発売されたUS輸入盤を聴いてまたしても、『 な ん じ ゃ こ り ゃ ! 』という大きな驚きがあった。まるで曲順が違えば、音も違う。国内盤が皮を被った状態(Remixともいえそう)で、輸入盤がその本性を現したものだといえそう。もう完全に別物で、刺々しいBORISを堪能したい方は間違いなく輸入盤を購入した方がいいでしょう。ビルボード23位を記録したというバリバリなロックチューンのシングル#4「Statement」から前述したような哀愁漂う歌謡ナンバーの#1,#5まで本来の魅力を振りまいている。#2「Laser Beam(放て!)」はさらに進化して音が突き刺さってくる。クソー、かっこええ。完璧に騙されたー!!BORIS様おそれいりました。常識破りが本当にお好きなようで素敵です。

 目の前にはBORISの不敵な笑みが浮かぶ。そうか、Smileとはそういう意味だったのかと遅まきながら納得させられたのであった。。


PINK

PINK (2005)

 大文字BORISとしては約2年半ぶりとなった作品、その名もジャケまんまの「PINK」。海外でも2万枚以上のセールスを記録したという逸品。

 ヘヴィロック・・・いやロックの概念とは何なのか?BORISの目指したものはおそらくそこだろう。『BORIS』ではロックの衝動と醍醐味を感じさせる核の部分の表現と研磨、『boris』名義では実験的にロックの本質の追及をし続けてきた。その答えを探し続けてきた幾年もの時を経て今、BORISが考える一番新しいロックを具現化したのがこの「PINK」なのだ。

 ハードロックもヘヴィロックもドゥームもストーナーもアンビエントもノイズも、みな懐刀にしてきたBORIS。今回はそれら全てが我が物顔で顔を出してくる。バンドとしての振り幅の広さを見せつけながらもしっかりと取れている均整、全てを武器として使えるバンド自身の力、様々な要素がぶつかり合い生まれるケミストリー。ロックの醍醐味といえる衝動と獰猛さを持っていながら、どことなくたおやかで柔和な要素を持ちあわせていて奥深い。しかしながら音の粒子一つ一つに宿るカオス、それが耳を劈いて空間全てを埋め尽くす破壊ノイズとなり未知の世界を権化する。不思議なアンビエント空間に包まれる#1「決別」、BORISのロックを凝縮した#2「PINK」、爆音ロックが生み出す18分のカタルシス#11「俺を捨てたところ」、これら3曲には揺ぎ無いBORISの信念が乗り移っている名曲だ。特に「俺を捨てたところ」は曲が進むにつれてノイズの渦に巻き込まれていき、意識が飛んでいきそうだ

 ロックの確信犯(革新犯)となり、常に時代を切り開かんとする音の追求に勤しむ彼等。今作も現時点でのBORISの一つの答えを示したといえる。進化の跡を見せつけてくれた名作だ。ロックの向こう側とは果たして何なのか?この作品はそれを物語る。しかしながらここはまだBORISの終着点ではないだろう。彼等はまたこの作品を手がかりに新たな航海へと旅立つはずだ。


boris at last-feedbacker-

feedbacker (2003)

 3年ぶりとなる小文字boris名義で発表する一曲五部構成が起こす44分の奇跡。名義を変え、矢継ぎ早に数々の作品をリリースしてきた彼等の最高傑作とも称されるのが、この作品だ。全くの無音状態から音の生命は誕生し、呼吸と鼓動を始める。そこから延々と時を刻むフィードバックノイズが壮絶な軌跡を描いていく様は圧巻だ。徐々に膨らみながら、変幻自在の拡がりと深淵への侵食を行う。まるで意識とシンクロしながら静かに燃え上がっていく炎のようだ。気付けば独特の世界に入り込み、抜け出すことが不可能になっている。ジャンルでいうならノイズ、アンビエント、ドローンといったものが浮かんでくるが、ロックとしての側面の強さも感じずにはいられない。次元を裂くような轟音と締め付けるような緊張感が本作の肝ではあるのだが、合間には崇高な佇まいを感じさせる静寂も訪れ、儚さや美しさをかもし出しているからだ。繊細な歌もまた哀愁を漂わせ、独特のドラマ性を加味。そういった深みを与えながら、ロックを前人未到の地へと押し上げている。果てないフィードバックがみせる景色は宇宙空間のような暗闇か、または大空を流れる雲よりもさらに上の真っ白な桃源郷か。無我に達し、未知を肌で感じるヘヴィミュージックの極北。悟りにも近いこの世界は、”神秘”という言葉がよく似合う。


あくまのうた

あくまのうた (2003)

 出世作となった2002年発表の「Heavy Rocks」に続いて発表された今作「あくまのうた」は、全6曲約30分程度だが、バンド自身のエネルギーを爆発させてインパクトの高い作品に仕上がっている。

 特に今作で衝撃度が高いのは#2,#3だろう。四方八方から荒々しいテンションで襲ってくる爆撃爆走サウンドがあまりに凄まじい。特に#3「フリー」のかっこよさは悶絶級で個人的に今作で一番のお気に入り曲。ヘヴィミュージックを独自の哲学で追求しているような#5,#6といったお得意ナンバーもさることながら、往年のプログレ色が滲み出た12分の大曲#4「無き曲」も不穏な雰囲気をかもし出していて、凄みを覚える。前作「Heavy Rocks」では極太ヘヴィロックで激重地獄を味合わせていたみたいなのだが、「あくまのうた」ではロックのダイナミズムを封じ込めたような作品だと思える。彼等が自分達で原点を振り返っている様にも感じ、吸収してきた様々なジャンルの音楽性を凝縮したような作品だともいえましょう。


heavyrocks

Heavy Rocks (2002)

 「flood」に続いての4thアルバム。Borisを説明する際には、まず間違いなく代表作として挙げられるのが、有象無象を蹴散らす圧倒的なサウンドが生む44分の奇跡「feedbacker」とこの「Heavy Rocks」になるだろうと思う。本作は一言で表現するのであれば、『かっこいい』という言葉がまず頭に浮かぶ。そのヘヴィな音塊の凄まじさもそうだが、漲るエネルギーが尋常ではないのだ。

 タイトル通りのヘヴィロックにストーナー、サイケ、ドローン、ドゥーム、アンビエント、パンク、ハードコア、ハードロック、オルタナなど様々なジャンルを貪欲に取り込み、多様な音色と音風景を実現しながらも純然たるロックという形でストレートに昇華されている。時にはディストーションギターによる巨大な轟音壁が目の前に立ち塞がり、またある時は鋭いリフの応酬から天国まで激走ロックンロールしたり、凪いだアンビエントなインストと荒々しく炸裂するインストが交互に刺激しあったり、秋田昌美とのノイズ合戦が耳に突き刺さったり、と10曲が魅せる表情がことごとく別物。それでありながら、ロックの衝撃と醍醐味がぎっちりと凝縮されているのだ。特に重たすぎるスラッジからサイケデリックの妖しい彩りへと変遷する#1「Heavy Friends」からバンドの代表曲に挙げられる#2「korosu」の流れは鳥肌物のかっこよさである。ロックの中心を貫くストレートなかっこよさとマニアックさが共存して魅せるヘヴィロックの真髄。トリオ編成ながら圧倒的な音像が眼前に迫るその様はスリル満点で頭からケツまで痺れっぱなし。全10曲の宴が本当にたまらない衝撃の一枚だ。


Absolutego

Absolutego (1996)

 Borisの記念すべきデビュー作。これがデビュー作ながら極端な作品でとても驚く。約1時間のスロー・ヘヴィロック/ドゥーム・チューン1曲が収録されていて、この頃から志の高さと尖鋭的なセンスを見せつけている。重厚なリズムを下地にして異様にヘヴィなリフが炸裂し、フィードバックが全方位に轟きながら圧殺激重ドゥームが進行していく。そこからは巨大な壁にでも覆われるような感じで、反復する轟音が全てを遮っていくことになる。これには聴いていると自分の感覚というものがイカれてしまったという錯覚すら覚えてしまう。所々では意外とドラムが所々で躍動していたりもするし、陰惨な絶叫が入ったり、サイケデリックなギターが奏でられたりもするが、この轟音絵巻は全てを破壊するように60分の旅路を進めている所に恐ろしさがある。

 デビュー作に本当に似つかわしく無い、迎合する姿勢もまるで見えない。それほど尖ったセンスを発揮しているといえるだろう。ドゥームの礎が詰まっているし、ドローン/パワーアンビエントの素養も当然ながらあって、MelvinsやEarthを資本にして極端な音楽を作り上げてしまっている。しかしながら、ラストの15分程延々と続くギター・ノイズからは後の『feedbacker』に通ずるものがあって、当時からあらゆる可能性を内包していたといえなくもない。ひとつ言える事は甚大なエネルギーを秘めた作品であるということだ。Melvinsの大名曲「Boris」を冠した三人組の第一歩は全世界に大きな衝撃を与える事となった。なお、本作はSouthern Lordよりボーナス・トラック「Dronevil2」を収録して2001年にリマスター再発されている。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でGrumble Monsterをフォローしよう!

スポンサーリンク


▼ フォローする