Butterfly Explosion ‐‐Review‐‐

マイブラと同じアイルランド・ダブリン出身のポストロック/シューゲイザー4人組。ゴッド・イズ・アン・アストロノウトのトルステン・キンセラがプロデュースを手掛けるそのサウンドはステンドグラスのような美しさとシューゲ・ファンにツボの幻想的なハーモニーが混じり合い、独特の麗しさと響きを持って世界中を陶酔させにかかっている。


Lost Trails

Lost Trails(2010)

   これまでに2枚のEPをリリースしてきたバタフライ・エクスプロージョンがそのEPから実に4年ぶりとなる待望の1stフルアルバムを満を持してリリース。プロデュースは同郷であるゴッド・イズ・アン・アストロノウトのトルステン・キンセラが担当している。

 端的にいえばその師であるゴッド・イズ・アン・アストロノウトを思わす澄んだ美しいサウンドスケープにマイブラの遺伝子を受け継いだシューゲ風の物憂げなヴォーカルや轟音が緻密に重なるといえば、彼等の音楽の大まかな特徴はわかっていただけるだろうか。麗しい叙情的なフレーズから驚くほどの音圧へと上昇するフィードバックまで轟かせるギター、曲に確かな輪郭と精微な躍動感を与えていくリズム隊、男性の囁きヴォーカルに女性コーラスの甘い響き、とポストロック/シューゲイザーらしい因子を散りばめながら彼等のサウンドは構築される。聴き手に無垢の昂揚感を灯すメランコリックで幽玄な響き、これにはなんという美しさだろうかと息をのむ。滑らかに音が遷移・循環を果たし、まるでステンドグラスのような気品高いハーモニーを奏でているのが最大の特徴である。叙事的な旋律と歌声が綴る切なく儚いサウンドスケープはスロウダイヴ辺りを髣髴とさせる部分もあるが、現代のポストロックと親和している部分は非常も多く、メリハリをきっちりつけてドラマティックに作品を彩っていく辺りはEITSのファンに訴えかける要素も持っている。そこに優雅な輝きを灯していくキーボードもまた麗しい。深海を思わせる静けさが目立つ中でゴッド・イズ・アン・アストロノウトと共振してマッシヴなグルーヴを炸裂させる場面もあり、どこか陰りを帯びたテイストも交えながら、明暗や静動の綺麗な弧を描くコントラストには惹かれる人も多いことだろう。また美しく均整のとれた全体像の中で備わった幻想性と浮遊感、冷やかな静謐の中に潜むエモーションにも心が靡く。

 その中でも箍が外れたかのようにモグワイばりの猛烈な轟音が吹雪く#8「Carpark」による衝撃は飛びぬけて凄まじい。UK音楽誌 MOJOの”トップ10 プレイリスト!にも選出されたというのも頷ける名曲で圧倒的な音圧で持って景色を塗り替えてしてしまう。またギターが美しい静謐の波紋を広げながら、爆音へと発展し、聴き手の感情を巻き込み呑みこんでいく#5「Automatic」という本作の決定打ともいうべき名曲も従えている。静と動のダイナミズム、過剰な物語性を宿したこの曲を聴けば、数多いるポストロックバンドから一歩抜きんでていることを証明しているようにも思えてしまう。ホント、最近のポストロック/シューゲイザー界隈の作品では特に印象に残った堂々たるデビュー作である。様々な音が流麗に重ねられた壮麗な音絵巻は耽美と幻想の異郷へと導いてくれるはずだ。

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