Coheed and Cambria ‐‐Review‐‐

NY出身のプログレッシヴ・エモ・ロック4人組。壮大なSFストーリー『エイモスリーの戦い』というコンセプトに沿った作品をこれまで5枚発表。プログレ影響下の複雑な展開を志向しつつ、現代的なアプローチやエモ・オルタナで色づけした音楽性で孤高の存在感と人気を獲得している。


Year of the Black Rainbow

Years Of The Black Rainbow(2010)

   セールス面において今までにない好記録を叩き出したRoadrunnerへの移籍第一弾となる通算5作目(ビルボード初登場5位を記録) 。本作より元ディリンジャー・エスケイプ・プランのドラムであるクリス・ペニーが加入している。個人的には、3枚目のアルバムのみ聴いたことがあるのだが、エモとプログレの架け橋として名を馳せるそのサウンドには確かに惹かれるものがあった。本作でも彼等がデビューして一貫して描いているというSFストーリーの物語のひとつでこの5枚目の作品をもって、その物語は完結するとのこと。ただ、スターウォーズみたいに順番が飛ぶからややこしいけど(この作品は序章になるらしい)

 プログレ影響下の複雑な展開を基調とし、陽性の色を帯びたメロディや練り上げた独自のグルーヴが密接に交錯しながら壮大な世界を描くスタイルはそのままに、以前よりもメロディアスな潤いや柔らさが作品全体から感じられる。凝ったストーリーを作品全体で綴っている割に聴きやすくて、風通しが良い。情感豊かなハイトーンのヴォーカル、美しくも激しくも舞うギターの旋律、秒単位で小刻みに変相する音世界を支えるリズム隊の働きはさすがで、明暗、速遅、静動を巧く生かしながら全体をすんなりと聴きわたらせてくれる。

 作品の流れは、序盤はアップテンポの曲で確かな流れを作り、中盤ではバラードっぽいものやダークな感性を生かしたミドルテンポの曲などを挟み、終盤には壮大かつドラマティックな曲でコンセプトの奥行きを拡張しながら締めくくりという感じ。哀しく淀んだメロディが渦を巻きながら時空を越えて発展していくかのような#12からはスピリチュアルといった言葉が浮かんだりもする。それでもエモらしい突き抜けた部分やポップさが引き立っていて、#2や#3といったスピード感のある曲には思わず昂揚。展開の複雑さの中で埋没せずにしっかりとキャッチーに響くところは魅力的だ。現代版”RUSH”なる称号を軽々と飲み込むほどの、存在感とスケールを感じられるレベルになっている。要所要所の仕掛けもまた効果的に働いていて、ここぞというところでギターが壮大に泣き、メロディアスな音色が美しく駆け抜け、情熱的なヴォーカルが胸を焦がす。リズム隊が複雑な様式の中でうねりを与えるているのも見事で、さすがに元DEPのクリス・ペニーの活躍ぶりがプラスに作用している様子。かっこいい。

 5枚に渡って綴って行く物語の序章ということで、控えめになっている部分もある。だが、彼らのユニークな音世界は自由自在に揺らぎながら空間を覆いつくし、人々の感覚を掴み取っていく。楽曲には濃い情報量が詰まっているのに爽やかさや艶やかさを感じたりするのも好印象。この作品から提唱されている順に聴き進めていけば、壮大なSFストーリー「エイモリーの戦い」のコンセプトを紐解けることでしょう。というわけで俺もそのうち聴いていきたい(と思っている)。

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