Cave In ‐‐Review‐‐

1995年にボストンで結成されたロックバンド。当時は変則的ハードコアをやっていたようだが、年を重ねるにつれポストロックの要素も取り入れた新たな変貌を遂げていく。2000年発表の「Jupiter」をリリースして一躍名を挙げる。おかげでその後メジャーレーベルより2003年「Antenna」をリリースした。次に見せたアクションはなんと古巣のハイドラヘッドレコーズに復帰、インディーズに出戻り2005年に通算5作目の「Perfect Picth Black」を発表したが、翌年には活動休止状態に。しかしながら、08年にオリジナル・ラインナップで完全復活し、2011年には6年ぶりとなる新作『White Silence』をリリースした。

レビュー作品

> White Silence > Perfect Pitch Black > Antenna > Until Heart Your Stops


White Silence

White Silence(2011)

   2008年にオリジナル・ラインナップで復活し、2010年にEPを発表して肩慣らししていたCave Inが遂に6年ぶりとなるオリジナル・アルバムを投下した。

 多彩な資質を身につけて一回り強くなったCave Inの帰還である。前作の『Perfeck Pitch Black』でも音楽性の揺り返しが見られたが、本作でも序盤から創初期のカオティック・ハードコアを召喚。けたたましい爆音とパワフルなリズムに牽引されて、荒野を突っ切っていく。憎悪剥き出しの絶叫に歪んだ重たいリフのコンボで、混沌が熱を帯びて渦巻く様は、鮮烈なインパクトを放ったあの頃を思い出して血が騒ぐ人も多いだろう。嵐のような#2、#4で聴き手の度肝を抜く痛快さ。さらにはスロウテンポで激重なリフを塗り重ねるNeurosisっぽい#3で攻める攻める。

 しかしながら、本作品は荒くれた力強さと混沌に満ちた序盤からメロディアスに歩みを進めていくのが特徴で、プログレ系ヘヴィロックを体現したような#6、メランコリックなUKポップ#7、アコースティック調からシューゲイザー風の拡がりある世界に包まれる#9といつになく多彩な味わい。ここには『Jupiter』や『Antenna』の頃の銀河のようなメロディが舞っており、それらの要素も現在へとしっかりと繋がっている事を伺わせる。そう、本作を聴く限りではこれまでを総決算し、さらにはそれ以上のものを血肉化する事に成功してCave Inの強さを示しているのだ。カオティック要素とメロディアスな要素の合算、そして多彩なバラエティ性と振れ幅が実に魅力的。物足らない部分もあるといえばあるが、結成10年を越えてヤツらは、やかましさも優しさも備えたハードコアを大きな自信と共に高らかに鳴らしている。


Perfect Pitch Black

Perfect Pitch Black(2005)

   メジャーデビューアルバム「Antenna」から約2年、原点に立ち返りハイドラヘッドレコーズと再契約して発売したのが通算5枚目となる本作「Perfect Pitch Black」だ。メンバー曰く「自分たちの音楽を自分たちの手に取り戻す」がコンセプトだそう。この作品で彼等を初めて聴いたが、ハードコア出身なだけあって破壊力はなかなか。それにポストロックを前作で取り入れたこともあって空間を躍動するような音、退廃的な感覚すらもたらす不協和音、多彩なアレンジなど個性は凄まじい。スロウながらも圧倒的な破壊力を誇る#2、激高するVoの強烈さに身もたじろぐ#4、退廃のサウンドから美しいメロディが身も心も内包していく#6などが個人的にお気に入り。デイブ・グロール(フー・ファイターズ)はかつて「ハードコアの未来を観じさせてくれる」と語っていたそうだが、それも納得の言葉だ。インディーズに戻ってまで己の個性を貫いたこの作品、彼等の念が心の奥底まで侵入してくる激情の1枚だ。


アンテナ

Antenna(2003)

   カオティック・ハードコアで活躍してきた彼等がいかようにしてこのような進化を遂げたのか?と不思議に思えてくる4thアルバム。前作の「Jupitar」でポストロック的要素も取り入れて、空間的なロックを展開していたそうだが、本作はメジャー発売ということもあってかその路線をさらに突き進んでいる。肉体を貫くかのごとく過激なハードコアとは決別したかのように、悠然としたヴォーカルに満天の星空のような美しきメロディが空間を彩る。しかしながら、こんなにも壮大で煌びやかな音世界は、メジャー進出によるメインストリームへの歩み寄りという一言では片付けられないものだ。暗闇から神秘の地へと解き放つ9分に及ぶ長編ナンバー#6や独特の世界観が鮮烈な覚醒をうながす#12など彼等の知性が爆発しているこれらの楽曲を聴けば、それがよくわかるだろう。単純なポップではない。ハードコアの前衛性を残しつつも、宇宙にも飛び出してしまいそうな浮遊感と美しいメロディを融合させたスペース・ロックの憧憬は本作で完全に結実したものといっていい作品だ。個人的にも本作にはかなり痺れさせられた。これぞロックンロール!と叫びたくなるほどドライヴ感が気持ちいい#1、#4、#7辺りも決まっていてとてもかっこいい。


Until Your Heart Stops

Until Your Heart Stops(1999)

   「Antenna」以降の作品から彼等を知ったために、この作品は正直驚いた。よもやこんなバンドだったとは。そう思わず口走ってしまうほどの衝撃を封じ込めたCave Inの1stは、鮮烈な蒼き炎に身を焼かれるような激烈カオティック・ハードコア。生命の灯を燃やしてまで表現する激動と静寂の前に太陽の光が差し込むことは全く無く、その刹那は激しく散って、強烈な衝撃となって脳裏に刻み込まれる。苛烈な音と音との正面衝突による咽びかえるような爆音、それが聴き手の感情を打ち砕き、魂を燃やしていくのである。#1「Moral Eclipse」が体内に入ってきた時点で酸欠ものの地獄へと突入。技巧派の楽器陣がうねるような轟音を不規則に繰り返して脳味噌に異常をきたしにかかる。その捻じ曲げられた音塊は理解という言葉の範疇を越えたもので、体への直接衝動というものが大きく、皮膚を抉り取られるような痛みを感じる。加えて、肉食獣のようなけたたましいスクリームは特に印象的で、混沌へ向かう推進力を一段と高めている。とはいえ、所々で緻密に計算されたスペーシーな音作いが、きらきらと星が瞬いている美しい宇宙空間を連想させるのは特筆すべき点だろう。ただ激しいといえば全てが解決するようなレベルではない。Convergeへの憧憬が本物といえる爆撃音にNeurosisが表現する宇宙的感覚も携えた、末恐ろしいバンドである。本作は殺伐感と混沌に満ちた初期衝動の塊といえる傑作。

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