Caves of Glass(2013)
インターネットを通じてコラボレーションしたというポストロック・ミュージシャン6人による1stアルバム。アラスカ、マイアミ、イギリスと離れた土地に住むミュージシャン(Just Noise Musicに所属している面々が中心)が、ファイルのやり取りだけで完成に至った作品だとか。陣頭指揮をとったのが、トリップホップ~ポストロックな音楽のZoraというプロジェクトをやっているLarry Hansenという人物。冒頭に参加は6人と書いたけど、全曲に参加しているのはLarry、そしてQualiaというアンビエント・プロジェクトをやっているDan Leaderの2人だけである。
作品の方に話を移すと、これがまたアトモスフェリックな透明感、耽美な音世界を奏でる1枚で実にいい。9分半にも及ぶ#1「The Hollow」こそ、1stアルバムの頃のCold Body Radiationのようなブラック・ゲイズが空間も精神も捻じ曲げていくものだが、藍色の嵐はそれだけ。電子音楽~ポストロックを基盤とし、打ち込みのリズム、可憐なピアノの旋律、メランコリックなギターが立体的な音像を構築していく。その中で、エクスペリメンタルな趣向、ポストクラシカルの精微さと緊張感、ポストメタルばりの重厚さも併せ持っている。それぞれのミュージシャンは、割と静謐でメロウな作風を持ち味としているようだが、コラボレートという特性を生かした振り幅の広さを本作で聴かせている点はおもしろい。
鍵盤を基調とした繊細な音作りから、大空へと優雅に飛翔していくような#2「Gone From Oceania」では滑らかな展開が冴えわたり、#3「Mariana」では澄み切った音の粒が積み重なり、至福の時を演出している。ここには、American DollarやHeliosのような流麗な美しさがあり、Explosions In The Sky系の叙情派ポストロックへも繋がっていることを示す。
なかでも特筆すべきが12分を超える#4「Barren Earth」で、クリーン・トーンのギターのリフレインはやがて、ヘヴィ・リフへと移行し、緻密かつ重厚なポストメタルへと発展。ラストではドゥームばりの音圧と奇怪なサンプリングが、肉体的にも精神的にも響いてくる印象的な楽曲だ。そして、Ulrich Schnaussのような電子音響が幻想的な風景を広げる#5「The End」でしっとりと締めくくられる点も、余韻に浸れるようで良いと思う。全5曲約40分。躍動感といった点で物足りなさを覚える点はあれど、この壮麗なる音の調べは、とても美しい。
本作は、Bandcampにてフル試聴可。また、公式Facebookの方からフリー・ダウンロードのURLも掲載されているので、興味がある方はチェックして欲しい。バンドからの声明として是非とも共有し、レビューを書いてくださいとのことだ。
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