Corrupted ‐‐Review‐‐

大阪を拠点に地球上を絶望で埋め尽くす4人組。虚無の中を大航海しているそのサウンドはまさに唯一無二。1999年に発表したCD2枚組・三部構成1曲120分の超大作「Llenandes de gusanos」が代表作として聴く者を陶酔させている。また、05年発表の72分にも及ぶ『El Mund Frio』においてもその世界の重みを痛感する結果となった。2011年には久々の新作『Garten Der Unbewusstheit』を発表。

レビュー作品

> Garten Der Unbewusstheit > El Mundo Frio > Paso Inferior


garten

Garten Der Unbewusstheit(2011)

    大阪より極北の音楽を鳴らし続ける激重神、corruptedの6年ぶりのフルアルバム。作品を発表するごとに重く深く進化/深化を遂げているバンドであるが、本作でも極端に重く美しい世界観により磨きがかかっている。内省を深く深くえぐる音の群れは健在。得体の知れない緊張感と緊迫感に圧倒され、振りかざす重々しい轟音が全身の感覚という感覚をかき乱す。そして、筆舌しがたいカタルシスへと導かれる。

 全3曲で63分、そのアート感覚も湛えた激重の旅路はcorruptedにしか成し得ないことだ。28分にも及ぶ#1「Garten」は穏やかであるが緊張感のある冷えた静寂を紡ぎ、そこから時間をかけて音圧を増して巨大な音壁を築き上げていく。まさしくここ近年の彼等のスタイルを踏襲しているが、耽美や芸術的感覚がさらに増した緻密な音造りが印象的だ。メロディに包容力があり、Heviの語りにもまたその音楽が紡ぐ風景に引き込んでいくような力がある。重みと深みが桁違いの轟音の破壊力/一閃する猛烈なグロウルは言わずもがなだが、その静と動の交錯はポストメタル的な感覚にまで研ぎ澄まされている。しかし、17年間にも渡って積み上げてきた激重の轟きは、あらゆる世界を逆転させてしまうほどに他とは違う孤高の存在感を放つ。

 そして、アコースティック・ギターの音色が虚空に静かに消えていく4分半の#2「Against the Darkest Days」を経て、地続きで#3「Gekkou no Daichi」へ突入していく。30分を超えるこの曲は、かつての作品に収録された「月光の大地」の新Verとも捉えられる楽曲であるが、アコギの反復から地響きのような力強いリズムを合図に混沌渦巻く轟音が炸裂する。重く美しく力強く推進していき、脅威的な音圧が世界を丸ごと呑みこむクライマックスは特に圧巻だ。組曲形式で繋がっている全3曲が大いなる力を持って意識の深層に迫りくる。絶望、悲哀、孤独、憂鬱、恐怖・・・そういったたくさんの感情の渦巻きから昂揚、感動へと至るドラマティックな構成は本作において一つの到達点にまで達したと言っていいだろう。孤高のヘヴィ・ミュージックはあらゆる概念を越えて、人間の深い部分に圧し掛かってくる。

 アンダーグランドな場所で切磋琢磨し続け、自らの音楽を力強く昇華させていく姿勢が『El Mundo Frio』をも超越しようとせんこの秀作を生んだ。本作を持ってオリジナル・メンバーのHevi、Talbotはバンドを脱退したが、この作品は放つ存在感はいつまでも色褪せる事はない。


elmundofrio

El Mundo Frio(2005)

     大阪から全世界に住む人間の尊厳を破壊しにかかる唯一無二の存在・Corrupted(コラプテッド)。本作はそんな彼等の4枚目にあたる作品だ。1999年に発表したCD2枚組・三部構成1曲120分の人智を超えた超大作「Llenandes de gusanos」が代表作として君臨している(というものの未聴)が、本作「El Mundo Frio」も1曲で1時間11分39秒(71分39秒)という長い長い大作だ。

 破壊と混沌を繰り返し、漆黒の聖域へ・・・

 ここに表現されている世界は限りなく重くて深い。アルバムタイトル「El Mundo Frio」はスペイン語で“冷えた世界”を意味するようだ。確かに、ひどく全身に寒さが伝わってくる吹雪の様な冷たい静寂パートが大半を占めている。だが、このCDを流している時間だけは濃密な時の流れの中に自分がいるという自覚だけは持てるはず。聴き終わったときにはきっと厭世の念に支配され、魂が抜けたような状態になっていることだろう。それほどまでに人間の全てを奪っていく作品だ。

 最初は2分程無音状態が続き、そこから大地を踏み締めるようにギターが美しく鳴らされていく。その状態がしばし続いたら10分過ぎに爆音が悲鳴をあげ、一転して激遅激重のスラッジ地獄に陥れる。唄が始まるまでおよそ22分もかかる。だがこの緊張感が肉体と精神の締め付けを繰り返す。まだ前半なのに気付いたら激情の渦に放り込まれているではないか。それに先ほど唄と軽々しく言ってしまったが、心に激痛が走る詩の数々を淡々と朗読していることもあれば、地獄の果てで叫ぶ猛獣のような唸り声が耳に深い怨恨を残してくる。その声を聴いているだけでも痛さが伝わってくるのだ。その後も長き静寂と轟音をゆっくりと交錯させて、絶望の世界が切り開かれていく。10分以上続く静かなアウトロも狂気の淵でもがいているかのようだ。人間の深部にまで音が入り込んでくる。そして、生命が震えるような不思議な恍惚感の中で闇の奥底に魂が沈んでいく・・・

 虚無の大海を彷徨い、負の感情が激流となって心の中を蝕む。今時の見掛け倒しの重量感とは比べものにならないほどの凄まじい重さ、そして底が全く見えない未曾有の深さがここには存在している。体感的にも精神的にも重さの伴ったヘヴィ・ミュージックといえるだろう。それは、ムックの「葬ラ謳」が赤子に思えるほど。また本作は人間の無力さを突きつけられているようでもあり、産声をあげる美しい未来が闇でどす黒く塗り替えられていく。本作からは美しさや感動なんてものは感じない。この絶望の中で自分自身の存在意義を戒める、そんな作品のように思う。


paso

Paso Inferior(1997)

   残虐な死体の山が見せるのは、無数の魂が悲惨に蠢く地獄。

 Corruptedはこの作品から既に他を圧倒していたのだろうか? その音に触れただけで気分が滅入る。1曲41分という嫌がらせのようなつくりだが、中身も嫌がらせに近い。ひたすら激しくて重い爆音が渦巻き、地底からは猛獣の叫びが悲痛に響く激遅激重のスラッジコア。超尺ながら特に大きな展開をするわけでもなく、じわじわと精神を痛めつけてくるので拷問と表現した方がいいだろうか。ひたすらうねりと音圧を上げながら深層深部を破壊しにかかる。とかく免疫の無い人なら3分で停止ボタンを押すほどにどす黒い邪念が強烈だ。色彩という言葉が浮かばないほどの漆黒に、時間の経過とともに閉じ込められていく。精神的に圧し掛かってくる重さ・暗さというものが今までに味わったことが無いぐらいに壮絶だ。呼吸が困難になるほど、空気が重たく感じられるようになる。全く光など見えやしない。聴き終わった後は、頭の中が”重”ということばで埋め尽くされ、崩壊していってしまう。1回聴いただけでも1日の生きるエネルギーを全部消費、鬱屈としたままその日を過ごすはめになるので注意が必要だ。ちなみに1997年に発売された後に廃盤となっていたが、2008年になってついに再発された(若干オリジナルとは一部ジャケやマスタリングが違うそうだ)。ドゥーム・スラッジが好きな方でこの国産バンドを聴かないのはもったいないので、ぜひとも抑えておいて欲しい。

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