COALTAR OF THE DEEPERS ‐‐Review‐‐

1991年にNARASAKIを中心に結成された日本のロックバンド。シューゲイザーやメタル、ハードコアを基点に様々なジャンルを見事に融合させて築き上げた独特のサウンドが、コアなファンに支持されている。また、NARASAKIは特撮への参加、ももいろクローバーZやBABYMETALへの楽曲提供など幅広く活動中。

レビュー作品

> Yukari Telepath > newave > NO THANK YOU > Come Over To The Deepend > THE BREAKSTROKE > SUBMERGE > THE VISITORS FROM DEEPSPACE


 

Yukari Telepath

Yukari Telepath(2007)

 

 前作『newave』から実に5年半ぶりとなる6thフルアルバム。スペーシー&SFをコンセプトに制作された作品で、ニューウェーヴ~テクノといった要素が押し出されており、前作と比べてもさらに電子音の割合が高くなっている。とはいえ、シューゲイザーやメタルを基点に様々なジャンルを集積しながら、バラエティ豊かという言葉では足りないぐらいの幅広さ、構築性の高い作品を作り上げているのは間違いないだろう。

 猛烈なデスメタルから清涼さすら感じるポップな面をも浮かび上がらせる#2「Zoei」はディーパーズならではだし、三味線を取り入れた嵐の轟音ナンバーとしてかなりの破壊力を持つ#3「Wipeout」にも衝撃を受ける。この重厚さと切れ味は5年という期間を空けようが、そのまま。一方で近未来感を演出するようなシンセがフィーチャーされている。鋭いギターリフの応酬からサビで神秘的なテクノが花開く#4「Water Bird」、ニューウェイヴ装飾と疾走感が心地よい#6「Aquarian Age」、宇宙と交信するような「Automation Structures」など、これまでとまた別の刺激を持った楽曲が並ぶ。

 さらには#8「Interlude」を挟んだ後半では、切ないギターポップ/ネオアコ#10「AOA」、ボサノヴァ風味の#12「Carnival」、80年代産業ロックに挑戦したという割にディーパーズらしさに彩られた#13「Evil Line」とさらなるごった煮ぶり。意表を突くようなフックの効いたとも言いたいけど、目まぐるしく曲調を変えていくこのカメレオンぶりには参る(笑)。締めくくりの#15「Deepless」はエレガンスなピアノを中心に静かに綴ったかと思ったら、終盤で男臭いコーラスワークの連呼で曲の表情そのものを上書きしてしまう。意図して色々とアイデアを入れる余裕ぶり。#14「Ribbon no kishi」なんてお遊びとしか思えないけど、彼等ならではの曲に仕上がっている。

 全15曲を通じて様々な世界を見せるが故に評価の別れる作品となっているが、多様性を持った彼等のサウンドは実験的でありながらもさらに練り上げられている。本作でもまた新たな一面を見せながら、前進した作品といえるだろう。


 

newave

newave(2002)

 

 前作『NO THANK YOU』からなんと僅か9ヶ月という短いスパンでリリースされた5thフルアルバム。しかもavexから発売されていることに驚き(まあ、この9年後にBorisをリリースするわけだが)。なお、イチマキは前作で脱退しており、3人体制での再出発となる。

  シューゲイザー・メタル/ヘヴィロックの極みといえた前作から比べると、本作はアグレッシヴな攻撃性や重量感が意図的に抑えられている。それ故に電子音の強化、さらには民族音楽の融合とまた新しい側面を打ち出してきた。民族的なパーカッションを下地にNARASAKIの気怠い歌声が電子音と共に浮遊する#1「downfall」から、ずいぶんと意表をついたオープニング。メジャー発売だろうが、マニアックな嗜好を貫いており、本作では遊び心を持って自由に新しきを追求しているような感じだろうか。デスメタル~シューゲイザー~エレクトロニカが次々と表出する#2「hyper velocity」、切なげなアルペジオとキラキラのシンセを交えた甘酸っぱい疾走ギターロック#3「without hesitation~」と彼等らしい攻め駒でまず序盤を進撃する。

 特色のひとつだった男女ツインヴォーカルという武器は失った。とはいえ、ポップなメロディや歌メロは変わらずに惹きつける魅力あるもので、電子音と生音とで編み上げるサウンドスケープも緻密に練り上げられている。中盤では、マイブラを彷彿とさせる轟音シューゲイズにラップが絡む#5「prophet proved」、幻想的なムードからトライバルなリズムが徐々に強さを増し、精霊のごときコーラスとともにカタルシスを生む#6「newave」と一癖も二癖も持った曲を配置。本職といえる甘美なシューゲイザーを響かせる#8「snow again」も実に効いている。

 驚きなのは、サンバとヘヴィロックとエレクトロニカを交錯させ、擬似リオのカーニバル開演の#10「sweet voyage」だろう。過去にはないハッピーで胸躍るラストに、NARASAKIの手のひらで弄ばれてるなあと改めて実感する他なかった。全体を通すとやや暗く内省的なムードで、静に重きをおいた印象はあるが、様々なジャンルを橋渡ししながらもあくまでディーパーズ色に染められた楽曲が並んでいる印象は強い。


No Thank you

NO THANK YOU(2001)

   前作より1年2ヶ月ぶりとなる4thフルアルバム。前作から女性ヴォーカルICHIMAKIが加入したことで、また新たな音楽性を提示したCOTDだが、本作では“LOVE & DEATH”をメインテーマに据えて製作されている。これがまた、彼等を語る上では欠かすことのできない傑作としてファンの中では語り継がれる結果に。

 荒々しいギターノイズとドラミングで紡ぎだす轟音ヘヴィネスをこれまで通りに継承しつつ、ポップス的な柔和さと涼感を出し、きらめくシンセとチープな打ち込みによってさらに重層的に彩られたテクスチャーとマイブラ風ツインヴォーカルで桃源郷を見せるという異形のスタイルが本作では特徴的。刹那すら切り裂く爆裂ギターの波が所狭しと暴れまわったかと思うと、途端に美しく光る音の粒子が男女の淡いヴォーカルに乗りながらキラキラと揺れている。

 凶暴性を剥き出しにしたメタルと幻想的シューゲイザーの合致を実践してきた彼等だが、ここにきて渋谷系 + マイブラにかなりビルドアップした感がある。それはNARASAKIとICHIMAKIさんの男女ツインヴォーカルが生む、とろけるような甘いメロウさからだろうか。破壊力もさることながら陶酔感の方が本作に関しては上回る。また、インダストリアルやテクノ、ニューウェイヴといった要素もごちゃ混ぜにして、境目など関係ないゴッタ煮の異形音楽を創り上げながら、実にハイブリッドである。瞬間的に切り替わるジェットコースター的展開によるスリルも快楽中枢を刺激してくれており、独創的な音色にひたすら酔うだけ。

 幻想的アンビエントの#1から始まって、#2「GOOD MORNING」~#4「STAR LOVE」の3連発においては渦巻くヘヴィネスと凶暴なデスの要素を随所に入れながらも、ICHIMAKIさんの明朗なヴォーカルや風通しの良いメロディの方を主張させて爽やかな清涼感を残す。この天使と悪魔のような二面性が巻き起こすミステリアスな心地よさと衝撃が聴き手の心を掴んで離さない。#7、#8辺りでは極悪な轟音を痛快に叩きつけたり、終盤ではゆるやかにうねる穏やかなギターロックに重きを置いたりと、所々にあるインタールードを挟んで曲がガラッと変化していく様子もこれまでと違って新鮮味に溢れている。

 その中でも特にタイトルトラックの#11「NO THANK YOU」のできは素晴らしく、本作の特徴を1曲でものの見事に体現している曲といえるだろう。一発で虜になってしまった。また、遊び心たっぷりのシークレットトラック(マイブラ「Sueisfine」をCOTD的に捻じ曲げてカヴァー)までも瑞々しいセンスを発揮。もうこうなりゃあ、甘いメロディによる陶酔感と切れ味抜群の疾走感に溺れて、極楽浄土へ向かってトリップするほかない。個人的には「THE BREASTROKE」のようにメタルっ気の強い方が好きだが、よりシューゲイザー方面に舵を切った本作に関しても傑作といえる内容だと思う。


Come Over to the Deepend

Come Over To The Deepend(2000)

 

 女性Vo/Gtのイチマキが加入し、新たにスタートを切ったディーパーズの3rdフルアルバム。その新体制をやけくそ気味のデスヴォイスを中心に猛々しく祝う#1「MARS ATTACK」には度肝を抜かれるが、全体を通すと洗練された音作りで新たなファン層を開拓した作品となるだろう。

 男女ツインヴォーカルとなったことでキャッチーさに磨きがかかり、メロディもそれに合わせて柔らかなものとなっている。重厚で立体的な音響は継続されているが、これまでと比べてもシンプルにポップさが追求されていて、風通しがずいぶんと良くなった印象。#2「UNLIMBER」にしろ#3「HARD REALITY」にしろ、タイトな演奏の上に澄んだメロディを効果的に配されている。また、軽やかで感傷的なサウンドに涼やかな男女ヴォーカルが乗る甘いポップ・チューン#4「TASTE」が桃源郷へと連れて行く。入門編にも向いたキャッチーな曲が並んでいることには少し驚きもあるが、ストレートなギターロックの良さを楽しむことができる。問答無用の大名曲#5「C/O/T/D」には何度、胸を熱くさせられたことか。

 濃霧のようなスペーシーな音響に艶やかなメロディが添えられる#8「AKI NO GYOUNINZAKA」で微睡みの世界を体感したかと思うと、ラストは妖しいヘヴィネスが鬱蒼とした樹林へ引きずり込む#9「SYNTHETIC SLIDE」の摩訶不思議な締めくくり。頭とケツの2曲のマニアックな表現には同じバンドがやってる音楽かと戸惑うが、一筋縄ではいかないのがやっぱり彼等らしい。転換期にあったとはいえ、見事に「答え」を出してみた快作かと思います。イチマキさんの加入は大きかった。

 


 

 

The Breastroke - The Best of Coaltar of the Deepers

THE BREAKSTROKE(1998)

   1991~1998年までに発表した楽曲の中から選りすぐった13の名曲を収録したCOALTAR OF THE DEEPERSの超ベストアルバム。この作品を始めとして初期の作品は長らく入手困難・廃盤となっていたが、2008年9月になぜか再発された。

 無数の幻世界が揺れ惑う49秒のマイブラ風インスト#1「Raising Slowly」から間髪入れずに突入した#2「My Speedy Sarah」が流れた瞬間、体の中を稲妻が駆け抜けて芯から骨抜きにされていた。白熱する怒涛のリフが耳に雪崩れ込んで悶絶し、淡いNARASAKIのヴォーカル(たまにデス声も)と揺らめくノイズが生む摩訶不思議な浮遊感に恍惚とする。冒頭からしてとてつもない衝撃、今までに無い凄さに『うお、かっこええ!!』と久々に聴いてて唸ってしまった。メタル・シューゲイザーを筆頭に、ハードコア、オルタナ、テクノ、アンビエント、インダストリアルなどなどの多種の要素を貪欲に飲み込み、独自のセンスと様々なアイデアを使って構築されたCOTDの音楽。その未知なる音楽体験には驚きを隠せず、思わず反応してしまうほどのかっこよさがあった。彼等が孤高と呼ばれていた所以をこの作品を通してまざまざと思い知らされたのだ。

 本作にいたってはもろ“スラッシュメタル meets マイブラ”といっても過言ではない。リフの質感はメタルそのもので、痺れるような疾走感と鮮烈なアグレッションを叩きつけながらも、シューゲイザーの甘美な芳香も漂わせている。前述した#2に続いて突き抜けるような昂揚感を生む#3「BLINK」、#4「SUBMERGE」の攻撃チューンも逸脱。そこにヘヴィメタル的なダサさやアクの強さは一切感じず、独創的なアイデアを駆使した近未来サウンドの異様な迫力と緊迫感に気圧される。#4にいたってはエヴァのセリフを途中に入れるという悪戯でユーモラスな一面も垣間見せている。

 インディ系ポップが心地よい#5に、轟音と静謐の波が絶えまなく押し寄せる#7、シューゲイザー的な幻想に包まれる#8、激しいリズムに揺さぶられる#9といった曲が並ぶ中盤では、COTDらしくジャンルの壁をぶっ壊して極彩色の花を大いに咲かせている。この辺りの楽曲を聴いているとこのバンドの奥深さに慄きすら感じてしまうほど。破壊力満点の轟音を操りながらも、琴線を擽るポップネスがとても刺激的である。#11「Amethyst」、#12「Cell」では暴力的なギターリフを武器に再加速し、爆発。ラスト#13「Sinking Slowly」では甘いノイズが悠久の白昼夢へと意識を誘い、恍惚としたまま11分が流れていく。アウトロで聴こえる波の音でようやく現実に立ち返ることだろう。

 メタルとシューゲイザーの融合に加え、多ジャンルを調味料としてブレンドさせながら、曲として完璧に昇華させている。実験的といえる曲ばかりだけど、隙の無い完成度の高さがとても魅力的だ。1998年といえば自分が真面目に音楽聴き始めた年なのですが、その時にこの作品に出会っていたらきっとまた違う人生を送っていたんだろうなあと。それぐらい素晴らしき傑作だと思う。もっと早くに出会うべき作品だった。


Submerge

SUBMERGE(1998)

 約4年ぶりとなる2ndフルアルバム。ハードコアやメタル、シューゲイザーを煮詰めた強靭なサウンドを軸にした破壊力満点の1stフルアルバムを経ての本作は、テクノやエレクトロニカ、ジャズ、ボサノヴァ等に手を出して音楽的拡張を図った作品となっている。

 鼓膜が痛くなるほどの轟音ヘヴィネスの炸裂からサーフロック調に移行する#1「The Breastroke」で幕を開けると、ジャジーで小洒落たインスト#4「Silver World」、ドラムンベース調の#6「dl++」、妖しくドゥーミーな#7「Tim」といった実験的な試みが耳を引く。前作にはなかった要素を加えて音響を丁寧に編み上げることで、バラエティ豊かになったのが本作の特色だろう。しかし、決して散漫な印象にならず、全体を通して一級品にまで昇華している辺りは安心と信頼のNARASAKIワークスである。

 分厚いギターの壁と可憐さも感じさせる儚いNARASAKIのヴォーカルが溶け合う#2「Receive Assimilation」、初期のキラー/チューンのひとつである疾走チューン#3「Cell」、甘美なメロディをまとうギターロック#5「Sazabi」といった曲ではポップでノイジーという彼等らしさを存分に発揮。この先に行人坂シリーズとして続いていく#9「Natsunogyouninzaka」の切なさと温かさにもホロッとくる。前作と比べて大人しく整然とした作りとなっているものの、親しみやすくなったメロディが聴き易さに通じているし、電子音の巧みな配置もまた揺るぎない世界観に寄与しているように思う。

 初期のキラー・チューンのひとつ#10「submerge」から物憂げなスロウ・ナンバーの#11「The Lifeblood」に心をさらわれて幕を閉じる流れも良く、深い余韻がいつまでも続く。そんな本作は、初期の集大成としてファンからも高く評価されている。


THE VISITORS FROM DEEPSPACE

THE VISITORS FROM DEEPSPACE(1994)

   名盤と謳われる「SINKING SLOWLY」など数枚のEPを精力的にリリースしてきた彼等が満を持して放つメジャーデビューとなる1stアルバム。のっけから原曲の面影すら感じさせぬTHE CUREのカヴァー「KILLING AN ARAB」がデスメタルばりの黒い狂気を発しながら炸裂。それは出合い頭に巨大な岩石を頭上に落とされたかのような驚愕の一撃であり、本作の性質を如実に主張しているかのようでもある。

 弾丸のような速度と衝撃を誇るスラッシュメタル、重厚なオルタナ、繊細で甘美なシューゲイザーといった要素を絶妙にミックスさせた、多彩な表情を見せてくれるヘヴィ・ミュージック。地球という天体を越えて宇宙までぶっ放す轟音ギターと爽快なまでのスピード感による最高のスリルで昂揚感を高め、美麗なメロディとNARASAKIの少年のようなあどけない唄声が至福にも似た安らぎを与える。代表曲に挙げられる「Amethyst」はその典型で、破壊と耽美が鬩ぎあうCOTDの美学を如実に表している。当時はまだ派手とは言えないまでも、多様なジャンルを装飾している彼等独自の音楽性。だが、本作で一番顕著なのは剥き出しなまでの暴力性/衝動性。所々でほんのりとした叙情味を加えつつも、楽曲からはメタル気質が色濃く出ており、鋭い切れ味と分厚い音圧を兼ね備えるギターリフと暴れ回るドラムがアグレッシヴに畳み掛けてくる印象が強い。抑えられぬものは抑えずに、勢いという名の力に。それはもはや暴走とまでいえるレベルだが、迫力満点で実にかっこいいのだ。

 前述した曲のほかに「Your Melody」「Summer Days」などの攻撃的な曲がズラリと並ぶ。特に津波のような轟音ギターと浮遊感あるメロディの絡み合いが絶妙な「Blink」は「Ametyst」と並んで抜きん出た名曲といっても過言ではないだろう。そんな中、透明感のある粒子が白銀の世界を形成していくミドルチューン「Snow」が荒々しいカオスに痺れた身体への憩いになっている。脳が破裂するんじゃないかってぐらいにとんでもないノイズが暴れ狂う「The Visitors」をラストに配する遊び心もまた彼等が愛される一つの要素といえる。全体的にあくまで即効性の高い衝動がメインだが、しっかり緩急を効かせた全8曲33分はさぞかし興奮に酔うことだろう。

 全く色褪せてないどころか、1994年に造ったとは思えないほどの革新性。当時としてはおそらくかなり異形だったのではないだろうか。本作は、カオスな狂気が充満するほど荒っぽいが、洗練された現在の音よりもこの頃の剥き出しの衝動を愛している方も多くいることだろう。破壊力とインパクトに長けた初期の傑作だ。本作は一般流通しているので手に入れることは可能です。

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