The Dillinger Escape Plan ‐‐Review‐‐

97年に結成されたニュージャージー出身のカオティック・ハードコアバンド。その凄まじくも計算されつくされたサウンドはマス・メタルなどとも呼ばれている。99年に発売された1stアルバム「Calculating Infinity」ではコンヴァージを凌ぐほどのパワーを見せ付けてくれてます。その後、マイクパットンとの共演でも話題を呼んで2004年には2ndアルバム「Miss Machine」を発表。そして2007年についに待望の3rdアルバム「Ire Works」を発表しました。

レビュー作品

> Option Paralysis > Ire Works > Miss Machine > Calculating Infinity


Option Paralysis

Option Paralysis(2010)

   Relapseを離れ、自主レーベルから発表された2年半ぶりとなる4thフルアルバム(日本ではなんと、Daymareから国内盤が出ている)。いわゆるマスコアの始祖として激速激昂の複雑極まりない超絶的展開と破壊的な轟音とエモーショナルを繰り、メタル、ハードコア、パンクにジャズの要素までを掛け合わせて、変態的であり獰猛でありながらも常に前衛的であり続けてきたDEP。混沌とした世界観にキャッチーな花を随所で咲かるようになった前々作・前作に引き続いて、本作もその路線を踏襲している形といっていいだろう。

 突発的に爆発するエモーション、フック入れまくりの複雑極まりない展開と音符の高速乱れ打ちが呼び寄せる向こう岸の混沌はさすがの域。先行視聴の#1や#5を始めとして、全身を奮い立たせるような激音で痺れさせてくれる。その中でこれまでと違った感触をもたらしているのは、ピアノを大胆に取り入れることで妖しげなメロディがグルーヴに不穏さ、エレガントな質感までもを与えていることだろうか。前作でのインダストリアルな暗い色気も印象に残っているが、背筋から毒を忍ばせるような本作の趣もかなり新鮮だ。ヴォーカルにしてもファルセットを使ったり、味のあるキャッチーに歌い上げたりといった場面が増えており、その多彩な表現が曲のもつ空間的な奥行きを広げている。そうした静謐なパートや上品とも思えるポップなパートがここにきてようやく板についてきた印象。爆音×変態という彼等らしい公式に、妙に癖のあるキャッチーさがプラスされたことでの訴求力は確かなものだろう。

 そして、アルバムがこれまで以上のアート感覚をもった。DEPの従来の要素と新機軸が鬩ぎあいながら、カオスはさらに洗練されているご様子。ただ、瞬間瞬間を切り取ってみるとインパクトの大きさは凄いけど、ここ何作も続いているように全体として大きなインパクトに繋げられていないのは変わってないように思うところが惜しい。それでも彼等に対しての期待はやまないけども。


Ire Works

Ire Works(2007)

   2ndアルバム「Miss Machine」より3年ぶりとなった3rdアルバム。本作は2ndアルバムで聴かせたポップな要素を絡ませつつ持ち前のインテリジェンスとやかましさをより堅実にした作風といえるだろう。確かに#1,#2こそ1stから元来の持ち味である爆撃カオティックサウンドが痛烈無比に容赦なく襲う激烈ナンバーだが、その後は#3で混沌としたポップなナンバーが顔を出せば、#4,#7などの実験的なトラックや摩訶不思議なインスト#5が配置されていたり、#9ではかなりロックンロール色の強い彼等にしては異色の楽曲が聴けたりする。それはいつのまにか多彩なアプローチ術も磨かれていることを証明し、振り幅の大きいバンドとなっていたことを確信させる。だが裏を返せば、楽曲が混沌としているというよりはアルバム全体が混沌としている感じでその混沌は迷走という意味の方が強い気がする。確かに美しさは前以上に磨かれているし、バンドの生み出す狂乱と中毒性も変わっていない。しかし、うまく言い表せないが何かが足りない気がしてなりません。先鋭的なバンドでこれからも進化・変貌を続けていくだろうと思うが、元々不可能を可能にしてきたバンドなのでさらなる混沌を期待したい。


Miss Machine

Miss Machine(2004)

   パットン先生とのコラボEPを間に挟みつつ、1stからは実に4年半ぶりとなる2ndフル。卓越したテクニックから繰り放たれる音符の殴打につぐ殴打。獰猛に荒れ狂い、大地を荒廃させていくカオティック・サウンドを主体にメタル・インダストリアル・ジャズ・プログレなどを突発的につなぎ合わせて、目まぐるしくスリリングに展開していくその様はDEPそのものだろう。

 凶暴なカオスが2分強で大氾濫を起こす#1「Panasonic Youth」からして強烈なインパクトに気圧されてしまう。凄まじい混沌の中に身を放り出すことが快感に思えるぐらいだ。ヴォーカルが入れ替わったとはいえ、マイナス面は感じられない。これまで通りに音の隙間を何とか埋めてやろうと・何でもおもしろいと思ったアイデアは入れていく姿勢には相変わらず脱帽する。空間掌握術に長け、緻密に計算されつくした楽曲郡からマス・メタルなどとも呼ばれているが、その形容では説明できない”初期衝動”もまた変わらず魅力的である。

 とはいうものの、前作よりも顕著になったように思うのはわかりやすく惹きつけられるメロディが増えたこと。そして、打ち込みの音が増えたこと。これは本人達も語るように2年前に発表したEPでパットン先生から影響を受けたことが大きいとか。#3「Highway Robbery」ではみんなで気持ちよくシンガロンガもできたりするし、#10では電子音が有機的に広がっていったりと、今までからするとありえねー色を出している。それでもそういった新要素もしっかり機能させてくる辺りはさすがである。だけど、やっぱり#11「Perfect Design」のぶちキレっぷりが最高かと個人的には思っているけれども(笑)。ガンズとサバスのカバーの#12、#13もそれぞれカオスな調味料を塗して料理してしまっていて、それもデザート感覚で最後に楽しめる。初聴のインパクトと限界を越えた激烈性が魅力だった前作には及ばないと思ったけど、サウンドを紐解く楽しさは健在。本作は十分聴き応えのある作品だ。


Calculating Infinity

Calculating Infinity(1999)

   ニュージャージー出身のカオティック・ハードコアバンドのデビュー作。大木を次々と薙ぎ倒すブルドーザーのような突進型の轟音が猛威を振るう。そう、それは起これば全てを飲み込み吹き飛ばしてしまう竜巻のように強力。だが、ただ爆音の祭りがひたすら続くわけではなく、ロカビリー風のフレーズが混沌で支配された爆裂サウンドに一瞬の温和をもたらす。予測不可能・変幻自在の展開、それが昂揚感を掻き立てていく。全ての楽器が変態的なのだが、特にドラムスの爆音の塊を生み出す叩きっぷりに凄みを覚えるだろう。オープニングから身を八つ裂きにする強烈な楽曲のオンパレードで、人間離れしたアグレッションがひたすら鼓膜をすり減らす。特に、徐々に気持ちを焦らしていくタイトルトラックのインスト#8からカオスの極地へと意思を解き放つ#9の流れが好みです。

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