DIR EN GREY ‐‐Review‐‐

1997年に大阪で結成された5人組ロック・バンド。ヴィジュアル系を出自に、1998年8月に発売されたシングル「I’ll」で当時のインディーズとしては最高位となる初登場7位を記録したのを機に、異常なまでのスピードでファンを獲得していき、同年11月には、インディーズにして武道館公演を行う快挙も達成した。1999年1月にYOSHIKIプロデュースの元、シングル3枚同時発売で華々しくメジャー・デビューを果たしてからも快進撃は続く。1stアルバム『GAUZE』、2ndアルバム『MACABRE』で着実に進化を遂げ、3rdアルバム『鬼葬』以降は、モダンヘヴィネス・ニューメタル的アプローチを取り入れて、新たなフェーズへと突入。2005年に発表の『Withering to death.』はその路線の完成形ともいえる独特のヘヴィロックを形成し、この作品を機に世界への進出も果たしていくことになる。これ以降も躍進は続き、2008年には大傑作の7thアルバム『UROBOROS』、2011年には重厚な8thアルバム『DUM SPIRO SPERO』をリリース。今や世界でも確かな支持を得ている。

レビュー作品

> ARCHE > THE UNRAVELING > DUM SPIRO SPERO > UROBOROS > THE MARROW OF A BONE > Withering to death. > VULGAR > six Ugly > 鬼葬 > MACABRE > GAUZE > MISSA


 

ARCHE(初回生産限定盤)

ARCHE(2014)

 約3年4ヶ月ぶりとなる9枚目。ミックス&マスタリングは、Tue Madsenが担当。

 先行シングルである#13「Sustain the untruth」がシンプルに削ぎ落とされた楽曲として結構な波紋を呼んだが、ようやくアルケミクス(あなたに激痛を送ります)の時が来た。重厚でメロウでポジティヴなメッセージ性も孕んだ#1「Un deux」を起点にしていることが大きいと思うが、印象としては歌とメロディに重点が置かれた作品だろう。1枚を通して聴くと精神が確実に摩耗するほどに、深すぎて重すぎた前作『DUM SPIRO SPIRO』でメンバー自身も行き着いたという感想を持ったそうだが、本作では憑き物が取れたかのようにDIR EN GREYの特性を残した上でシェイプアップされている。

 アルバムの感触としては中期といえる3rd『鬼葬』~5th『Withering  to death.』辺りの感触が強く、独立した各々の曲がアルバムの雰囲気を作り上げているように感じさせた(特に4th『VULGAR』が近いか)。前述の#1を始め、#2「咀嚼」や#6「濤声」等のミディアムテンポのメロディアスな曲が大半を占め、そこにはいい意味での故郷のヴィジュアル系っぽい味わいもある。「あの頃は ハッ!」なGAUZEツアーが8月にあったり、既に本作発売に伴ったツアーをリリース前の先月に体験したことで、大半の曲を既に聴いている状態ではあるが、近作にはない入りやすさがある。全16曲もあるとはいえ、長くとも5分に抑えて彼等なりのシンプルさで研ぎ澄まされている印象だ。

 しかし、キレイにまとまったわけではなく、尖った部分ももちろん表出。本作には過去2作の選曲会なら確実に弾かれるようなタイプの楽曲も入れたそうで、それらをきっちりとDIR EN GREY色に染めてくるのはバンド結成17年の重みと経験だろう。久しぶりなロックンロール調の曲やいつも通りの獰猛で攻撃的な曲、また前作に収録されていてもおかしくない構築美に富んだ曲も違和感なく並んでいる。そして、いずれの曲も急所を抉る威力を持つ。

 歌詩に関していえば、前作以上に日本語詩への拘りを強く感じさせる。京氏の詩感覚は、”アントニー佐々木ポッタリー”や”I LOVE レゲエ パピオン”の頃に戻っているかのようにも取れ(個人的には#2「咀嚼」や#7「輪郭」あたり)、そういう面も含めて過去の薫りが漂い、馴染みやすい。シャウトを中心とした攻撃的なヴォーカルも抑え目で、歌をじっくりと聴かせようという意識がはっきりと感じられるが、そこには自然とsukekiyoの効能が出ているのかなあとも思う。個人的には本作では美しいバラード#14『空谷の跫音』が一番好みで、#11「懐春」も素晴らしい。

 ギリシャ語で根源を意味するこの『ARCHE』は、近作のカタログでスバ抜けて入門編に推せる作品だろう。前述したようにメロディアスで聴きやすい。過去のテイストが強いとはいえ、それをヒントに生み出した新しいDIR EN GREYのスタートラインにふさわしい作品である。そして、昔から追って聴いてるほど馴染む作品なのかなあとも思う。プロモーションCMに出演したシャア・アズナブル(声優:池田秀一氏)も『アルケー、私を導いてくれ』と口から零す。キャリアでも屈指の一枚。

 


 

THE UNRAVELING(初回生産限定盤)(DVD付)

THE UNRAVELING(2013)

 

 

 新曲の「Unraveling」に、過去の再録曲で構成された全7曲のミニアルバム。通常盤、初回限定盤、完全限定盤という3種類が発売されており、僕は「MACABRE」の再録が収録されている完全限定盤を購入した(た、高い・・・)。

 「Unraveling」に関しては、彼等らしいヘヴィネス&メロディアスの感性に長けた楽曲に仕上がっている。複雑な展開を持ち、その中でシンセやシャウトなどで密教のような雰囲気を助長させ、大仰なスケールへと繋がっていく。コンパクトでありながらも、いくつものフックで聴き手を興奮状態に陥れるのは流石である。とはいえ、個人的には前シングルの「輪郭」の方が印象的な楽曲ではあったかな。

 そして、意外と賛否両論を巻き起こしている再構築の6曲である。ヴィジュアル大会時代の初期曲#2「業」や#6「Unknown.Despair.Lost」は割と大きな変化を伴ったリメイクで、「鬼葬」以降となる他4曲は意外にも原曲に沿った形で行われている印象。しかし、どの曲にも言えることは、やはり今のDIR EN GREYのモードとしての変化であること。デスメタリックに進化した#2「業」、ひたすらヘヴィネスが強調された#6「Unknown.Despair.Lost」は、約15年の歳月をかけて新たな魅力を引き出したと言える。なかでも好みなのは、#3「かすみ」の再録ver。あんまり変わってないという批評もあるが、メロディアスな面をさらに際立たせたツインギターの仕事ぶりが個人的には良いと思う。

 #4「鴉」も『鬼葬』時と比べると妖しさと悲劇的な感覚が増していて、ゾクゾクとする仕上がり。逆に#5「Bottom of the death valley」が原曲の方が好みかな。一番問題となっている「THE FINAL」のリメイクは僕はありです。『鬼葬』以降の曲は、やはり原曲の時点でしっかりと完結していることもあって、本作は賛否両論のようだが、個人的には懐かしさも覚えて満足できるものだった。

 後述。完全限定盤を買った人間のみの特権となるのがもったいないが、「MACABRE」の再録が何より素晴らしい。『UROBOROS』の感性を持って自らの過去・現在を行き来しながら、多彩なトーンを楽しませてくれる。


 

DUM SPIRO SPERO(完全生産限定盤)(DVD付)

DUM SPIRO SPERO(2011)

 

 2年半という歳月を経て、重い・強い・深いがより鍛錬して産み落とされた強力すぎるディルの8枚目のアルバムである。前作『UROBOROS』を経て、更に尋常ではない重さ/深さの追及。1曲1曲の身体・精神への圧力は恐ろしいほどで、全14曲約67分が深化した世界観が遥かなる重みを持って聴き手に迫る。

 OpethやToolといった深遠なる表現力とアート性を備えたバンドに傾倒していく深く入り組んだ構成は、京の千紫万紅の歌声によってさらに変化に富む。グロウル・ホイッスル・美声と数々の声楽器を用いているかのごとく豊かな歌声で独特の情緒を与えながら、楽曲に彩りを与えていく。それに呼応するように楽器隊もまたサウンドに暴風と狂気、耽美性を書き加える。デス勢へ対抗するバイオレンスな攻撃性はさすがだが、本作においては重みが二段階ぐらい増したのが特に印象的で、それはドゥームにも近似すると個人的に感じるほど。妖しく渦巻くダークネスが根底を流れている。

 また、メロディやクリーンなフレーズを加えて耽美性を整え、和の情緒や宗教的音楽性も加えながら作品を凝縮させ、強固な独創性を発揮した上で吐き出している。聴き通せば、彼等が孤高の領域へと旅立っているのが理解できるだろう。全体がひとつの壮大な画のようなスケール感を誇っていて、暗く重く美しい世界観に拍車がかかっている。強靭なヘヴィネスと美しい情緒が醸し出すメロディアスな#8「Lotus」からVinushkaには及ばないまでも孤高の音楽性と壮絶さが渦巻く10分近い#9「Diabolos」の流れが本作中で個人的に一番好きな流れ。鳥肌が立つようにアーティステックな感性が研ぎ澄まされた激しい/美しいエンディングを奏でる#13「Vanitas」 ~#14「流転の塔」の流れにもまた、潜在意識からひっくり返される。

 「息ある限り希望は捨てず」というタイトルとは相反する複雑な構成と濃厚すぎる中身、そして極限のカオスとダークネスが本作の肝だろう。だが、日本人らしいエッセンスやメロディアスなフレーズが散りばめられていてあくまで彼等らしい美意識が貫かれているのも特徴のひとつ。聴き終わった時の圧力は半端ないが、起伏の激しい物語の連続、そしてその楽曲がリンクしながらひとつの大きな画が造形される。UROBOROSとベクトルは同じようで、違う流れに行き着いている事は明白。ただ、正直いうとUROBOROSの方が作品の精度(1曲1曲があちらの方が個性があったように感じる)は高いと個人的には思うのだが、本作は周囲を黙らしてしまうほどの独自の感覚と息遣いがあり、圧倒的な威厳と重みを形にした傑作である。


 

UROBOROS[Remastered&Expanded]

UROBOROS(2008)

 

 

 1年9ヶ月ぶりの7thフルアルバム。メタルコアに傾倒した前作から、まさかここまでの作品を作ってくるとは。それほどまでにこの『UROBOROS』の進化/深化たるや凄まじい内容。本来の“DIR EN GREY系”ともいうべきカテゴライズ不能な己のアイデンティティに立ち返り、そこからさらに次のフェイズへと進んだ1枚といえる。なにより楽曲の奥深さがこれまでに無いほど深い。心理的な歪みを増長させて背筋をゾクゾクと震え上がらせる9分半にも及ぶ本作の白眉である#2「VINUSHKA」が聴こえてくれば、異世界を探求しているかの如き音楽に早くも魅せられる。

 前作であればその暴虐性から肉体的な快感を多分に擁していたと思うが、本作は激烈ではあるものの、精神への作用が比較にならないぐらい強い。先行シングル2枚での先入観からするとまるで優しくない作品だ。統一された暗さ、荘厳で重厚な雰囲気に包まれていて、どことなく官能的で宗教的な薫りも漂わせる。だが、ToolやOPETHなどに通ずる奥行きの深いスケール感と精神性を追求した前述の#2「VINUSHKA」やシングル#6「GLASSS KIN」を筆頭に楽曲は多彩。カオティック・コアの猛烈な衝動、デス・ブラックの残虐な凶暴さ、ゴシック的な耽美性、プログレの幽玄的な美が絡み合い、所々で妖しい呪術的フレーズが奇妙な輝きを放っている。

 そして、アコースティック・パートも随所に盛り込んだメロウな部分と猛獣の如き迫り来る激アグレッシヴな部分の押し引きはこれまで以上に複雑で巧み。独自の詩世界もさらに難解で哲学的だ。その言葉を感情剥きだしで吐き出すヴォーカルに至ってもさらに表現力を増している(本作ではヴォーカルより重厚な演奏を前に出してるけど)。

 2nd『MACABRE』にも通ずるような濃い世界が本作にはあると思う。けれども激しい感情を吐露する轟音と奇妙な恐怖感を覚える静寂を行き交って、美と醜という両極端なものを表現する負の螺旋はやや稚拙だったあの頃とは段違い。悲哀・虚無・欲望・憎悪・憤怒・情愛などが渦を巻きながら黒き濁流となって意識の淵を這いずりまわり、侵食していく。また、陰鬱で重苦しい幕開けを告げる#1『SA BIR』から僅かな希望を掴み取ったかのような#13『INCONVENIENT IDEAL』までの流れも拘りがあって、各楽曲同士が強い関連性を持っているように思う。故に本作は異形の美しさに満ちている。そんなUROBOROSなる異世界に足を踏み入れたのなら、きっと聴くもの自身の心にも何か大きくて重い塊を残すことになるだろう。

 5th『Withering to death.』と並ぶ、いやそれ以上の超傑作といえる内容だと個人的には思う。不思議な濃密さを内包する独自の世界観は、アンプラグドのボーナス・ディスクと一緒に聴くとより一層味が出ることだろう。それと、各所で”最狂”と言われているが、震撼型の作品というよりはむしろこの一音一音の丹念なこだわりから来る底なしの深さと世界観の方が特徴だと個人的には思った。己の存在意義に立ち帰り、音楽的にも激しく深く孵化した稀有な音楽性を示した個性的な一枚だ。

 なお本作は、2012年初頭にTue Madsenによってリマスタリングされ、さらに「BUGABOO RESPIRA」と「HYDRA -666-」が追加収録された完全無欠の大傑作として再発売。DIR EN GREYがなぜここまで支持されているのか。その理流が本作には詰まっている。


 

THE MARROW OF A BONE

THE MARROW OF A BONE(2007)

 

 

 大傑作『Withering to death.』から約2年ぶりとなる6thアルバム。シングルの「CLEVER SLEAZOID」や「AGITATED SCREAMS OF MAGGOTS」でその兆しは見られたが、ダークで激しい攻撃性を押し出した#2や全編シャウトで精神を狂わす#5等を収録した本作は、かなりメタルコア~デスコアに傾いた内容で攻めてきている。これは、2005年以降に海外へのツアーに積極的に出向き、Korn等のバンドと共演したことが影響しているのだろうか。「six ugly」時にも似た攻撃的な振る舞いに、非常に驚かされた。それゆえに彼等らしい耽美さやメロウネスが大きく減退しており、ファンの間でも賛否両論が分かれている。

 過去を上回る凶悪な#13「CLEVER SLEAZOID」もあるので、それが一概に良くないわけではないが、DIR EN GREYというバンドの個性を考えるとやはり首を傾げてしまうかな。前作がこれまでのDirのひとつの完成形ともいえる素晴らしい作品だっただけに、余計に物足りなく感じてしまう。ただその中でも、仄暗い闇の底から悲痛な歌と美しいメロディで胸を打つ#1「CONCEIVED SORROW」、ツインギターが奏でる綺麗な曲調の中で重い詩が響く#9「艶かしき安息、躊躇いに微笑み」、終盤のハイトーン・ヴォーカルが非常に印象的な「THE PLEDGE」といったメロディアスな楽曲が異様な存在感を放っている。押し引きでいえば、引きに属するだろうこれらの曲の方が精度が高く、印象に強く残るのは皮肉なとこ。この3曲は、限定盤のDISC2の方にも興味深いアレンジで収録されているのも好内容なので是非チェックして欲しいところ。

 次作に再び大傑作『UROBOROS』を生み出したことからもわかるように、彼等にとって進化/深化のために通過すべき必要な一枚だったことが今では理解できるかな。激しいのがとにかく好きという方には強く推薦できる作品だ。


 

Withering to Death (W/Dvd)

Withering to death.(2005)

 

 

 再び1年半の歳月を経ての5thフルアルバム。『VULGAR』の遥か先へ。シングルの「THE FINAL」や「朔 -saku-」からその予感はあったが、ついにここまで来たかと身震いするほどに完成度の高い作品である。ラウドロック/ニューメタルへの覚醒で手にした重い音色に、彼等が元来持つ特有のメロディセンスが融合を果たし、洗練という言葉で表すだけにとどまらない深みを増した楽曲で本作は固められた。和洋折衷という言葉が当てはまる魅力、そして自らを総括しながら到達した新次元。千紫万紅ともいえる声色を使い分ける京、激しく重いサウンドからメランコリックな曲調まで豊かな起伏を奏でる楽器隊、この5人が一体となって表現する精神的な重みと痛みを持つ世界観には圧倒される他ない。

 切れ味鋭いリフと疾走感に溢れる#2「C」、激しさと美しさの対比が絶妙な人気曲#3「朔 -saku-」、もの悲しさと儚さの同居したミッドチューン#5「愛しさは腐敗につき」、HIP HOP調のリズムも交えながら目まぐるしい変化と共に昂揚させてくれる#6「JESUS CHRIST R’N R」、激動のハードコア#7「GARBAGE」や#11「Beautiful Dirt」、涙腺を刺激してやまない死者への鎮魂歌#13「悲劇は目蓋を下ろした優しき鬱」、歌ものヘヴィロック完成系の#10「THE FINAL」、#14「鼓動」等を収録した全14曲。前作同様にコンパクトな作りであるがアイデアは豊富に散りばめられているし、耽美なメロディがしっかりと根を張っている。また、これまで以上にバラエティに富んでいて、決してどの曲も欠かすことのできない。なかでも、絶望を彷徨うようなイントロのアルペジオから一気に感情が爆発する#9「dead tree」は、過激かつドラマティックに”痛み”を表現しきった秀曲となっている。

 当時から本作の評価は非常に高かったが、現在でも『UROBOROS』と並んで最高傑作に挙げられる名盤だ。後続のヴィジュアル系に与えた影響の大きさはもちろんのこと、幅広いフィールドに与えた衝撃は大きい。また、本作をもって本格的に海外進出を果たすこととなり、DIR EN GREYの名は世界的に広く浸透していくこととなった。


 

VULGAR

VULGAR(2003)

 

 

 1年半ぶりとなる4thアルバム。『six Ugly』でのラウドロック/ニューメタル路線を本作でも軸に据えつつ、先行シングルとなった「DRAIN AWAY」や「かすみ」では、ヘヴィネス&メロディアス&和の情緒の融合を聴かせることに成功している。本作ではその流れを上手く引き継いでおり、美しさと激しさが伴った内容でテーマである”痛み”を表現。メッセージ性の強い歌詩と相まってのヘヴィネスは、ニューメタルを単純にヴィジュアル系フィールドに持ち込んだレベルではない確かな強度を誇り、多くの人の支持を得ると同時に新しい層へも波及した。

 そんな本作は、#2「THE ⅢD EMPIRE」や#14「CHILD PREY」のように問答無用で拳を振り上げる扇情的な楽曲から、ドロドロと毒を流すようなリフを中心に和の雰囲気を広げるミッドチューン#4「蝕紅」、クリアなメロディが際立つ#5「砂上の唄」、次々と表情を変えていくヴォーカルと曲調に振り回されるヘヴィな#8「MARMALADE CHAINSAW」、前述したシングル#9「かすみ」,#11「DRAIN AWAY」、儚くメロディアスに締めくくる#15「AMBER」まで多彩な楽曲が並んでいる。一貫してダークな雰囲気は、彼等らしい耽美さや和の情緒、痛みの表現が加えることで唯一無二の世界へと昇華。

 また、以前と比べると3~4分台の曲がほとんどで、長くても5分少々というコンパクトさだが(おそらくリンキンパークやスリップノットへの意識があったと思うが)、迫力と説得力は十分である。特にアルバムの核となっている#13「OBSCURE」は、7弦ギター&5弦ベースを導入して重量感たっぷりのリフを振りかざし、狂ったシャウトを繰り返しながら、サビでは和のメロウネスを聴かせるが圧巻の1曲となっている。世界的に飛躍を続ける現在のDir en greyの礎を築いたアルバムといっても過言ではないだろう。


 

six Ugly

six Ugly(2002)

 

 

   シングル「Child prey」と同時発売の6曲入りミニアルバム。前作『鬼葬』でも意識したモダンヘヴィネス~ニューメタル路線をさらに推し進めており、全6曲がライヴを意 識したアグレッシヴな楽曲に仕上がっている。持ち味であったメロディを影に追いやってでも、#1「Mr.NEWSMAN」からその攻撃性を示し、そこに過激さやグロさといった彼等らしいテイストを混合。重くチューンナップされた演奏隊に加え、京のシャウトも一層迫力を増していて、激しい曲が好きな方にはもってこいの内容となっている。

 なかでもヘヴィなサウンドの中でサビのコーラスとキャッチーな歌メロが盛り上げる#4「umbrella」が印象に強く残る1曲。また、リメイクされた#5「Children」と#6「秒「」深」も収録していて、特に#6がMISSA時代の何十倍も重く凶悪に進化し、当時のライヴでは欠かせない楽曲のひとつだった。また、前述したシングル「Child prey」は漢気溢れるコーラスとアグレッションが強力で、このシングルに「鬼眼-kigan」「Hydra」「羅刹国」のライヴ音源が収録されていたことからも、ライヴに対する意識が非常に強かったことを伺わせる。


 

鬼葬

鬼葬(2002)

 

 

 前作『MACABRE』、その完結編と位置づけたシングル「ain’t afraid to die」でひとつの極地に辿り付いた後に発表となった3rdアルバム。なんとオリコン・チャート3位を記録している。

 タイトル「鬼葬」からもわかるように“和”の要素が強まった本作では、また違った方向に舵を切っており、当時に流行していたモダン・ヘヴィネスやニューメタルを念頭に置いたつくり。ダウンチューニングを採用したことで、もともとのヘヴィな音像がより太くなっている。攻撃的なシャウトやコーラスを核とした冒頭の#1「鬼眼 -kigan-」からその変化を強く感じ取れることだろう。また、風俗、SM、近視相姦、虐待などを生々しく描写しているのも本作の特徴で、オブラートに包むことなく表現している。エログロさだったら彼等の歴代アルバムの中ではトップといえるだろう

 #2「ZOMBOID」なんて詩も音も過激すぎてよく収録できたものだし、よくシングルで切ったなと思える#4「FILTH」なんてサビ以外はテレビで流せるものでなく(性欲スープを召し上がれとか言ってるし)、発売前に詩を差し替えろとチェックが入った(実際に替えている)というシングル#6「embryo」は、本来の詩で収録されていて、あまりにも生々しく悲痛な表現の数々に戦慄を覚えてしまう。アコースティック・ナンバーの#10「undecided」や#11「蟲」にしてもただただ切なく、ただただ痛い。

 そういうあまりにもグロい作品ではあるのだが、意外にも曲調はバラエティに富んでいる。和モノデジロックといった趣の#8「逆上堪能ケロイドミルク」、「残 -ZAN-」にも迫る激烈曲#15「ピンクキラー」といった曲もあり、なかでも超キャッチーで爽快な疾走曲#13「JESSICA」は、個人的に彼等の中でもトップクラスに好きな楽曲だ。散漫だという意見もあるけれど、この生々しい表現力と中毒性は、ディル特有のものだと感じる個性を持った作品である。


 

MACABRE

MACABRE(2000)

 

 

   約1年2ヶ月ぶりとなる2ndアルバム。重々しいサウンドとロシア語詩で幕開けを飾る#1「Deity」からして呪術的な雰囲気に支配されていくが、詩にしても音にしても前作と比べるとさらに踏み込んだ表現を用いており、作品全体を通してディープで重厚な世界を構築している。

 妖しくダークで、時には目を背けたくなるような表現がたびたび登場しており、#3「理由」は自殺、#6「蛍火」は戦争(第二次世界大戦の日本かな)といった重いテーマを扱っている。女性視点で愛する人を失った悲しみと憎しみを綴ったもの哀しいバラード#12「ザクロ」は、聴いていると胸が痛くなるほど。前作と比べると心の内側を抉るように言葉のひとつひとつが刺さってくる。

 また、サウンド面での強化も感じられ、ライヴでもお馴染みで後に再録もされた#5「Hydra」と#11「羅刹国」はこの頃から強烈なインパクトを放っているし、深い闇の中へ潜行していくようなディル流プログレッシヴ・ロックの#9「MACABRE -蛹ノ夢ハ揚羽ノ羽-」もまた当時のディルの表現の深さを物語る。それにストリングスを用いて儚いまでの悲壮感を漂わせた#6「蛍火」や陰りを帯びたメロディが先行する#10「audrey」といった曲もまた良い味を出しているし、これまでの深い闇をこじ開けるように淡い光が差すポップな#13「太陽の碧」でラストを迎える構成も秀逸。彼等の実験精神とセンスが見事に噛み合った初期の代表作といえる重要な一枚だ。


 

GAUZE

GAUZE(1999)

 YOSHIKIプロデュースの#3「ゆらめき」、#11「残 -ZAN-」、#12「アクロの丘」というシングル3枚同時発売(全てチャートTOP10入り)で型破りのメジャー・デビュー。その後に発売したシングル#6「Cage」、#9「予感」でもヒットを飛ばし、満を持して発表した1stフルアルバム。

 ノストラダムスの予言に揺れた世紀末の1999年7月。この頃のディルは、まぎれもなくヴィジュアル系中のヴィジュアル系というルックスと音楽だった。主に黒夢を下地にした狂い咲く激しさ、特有の艶やかさを持つ耽美なメロディ。まさしく王道を突き進むそのサウンドは、激と美の両極端に振れながら、インディーズ期とは比べ物にならないほどのクオリティの高まりをみせている。メンバー自身の成長や録音環境も手伝って楽曲は随分と洗練され、展開やアレンジ面でセンスを発揮。メジャー仕様のポップ感を伴った#3「ゆらめき」や#9「予感」、ストリングスを取り入れた初期を代表するバラード#12 「アクロの丘」、初期の最凶曲である#11「残 -ZAN-」とシングルでその兆候は見せていたが、アルバム全体を通してディルらしいテイストや実験性が盛り込まれていて、表現力も多彩である。それに予想以上にバラエティ豊かに仕上がっていることに驚かされた。

 ただ、メジャーに移籍しても売れ線アルバムにしようとは微塵も思ってないようで、以前から追及している痛みや死生観、エロティシズム、グロテスクな表現が歌詩にも曲調にもしっかりと反映されている。ひたすらにエグく毒々しい#8「mazohyst of decadence」はその極みだし、鋭さを増しながらハードかつテンポよく畳みかける#2「Schweinの椅子」、儚くダークな曲調と共にバッドエンドへと向かう#5「304号室、白死の桜」やグロテスクな気色悪さをも晒す#7「密と唾」も印象的。この頃からディルは、他に無いやり方を貫き、我が道を進んでいる印象は強かった。まあ、初出演したミュージック・ステーションで凶悪な「残 -ZAN-」を披露し、眼を覆いたくなる首吊り&吐血の演出と過激なパフォーマンスを繰り広げて苦情殺到させたぐらいだから(笑)。

 当時からずっとリアルタイムで追っているわたくしは、本作を中学2年生の時に初めて聴いてかなり衝撃的を受けたものだ。しかしながら、今となってはこれを聴かねばディルは始まらないという作品ではない。また、大きなターニングポイントとなった4thアルバム『VULGAR』以降のファンにとっては、コテコテのヴィジュアル系過ぎて聴いていられないかもしれない。それでも本作は手探りだった『MISSA』よりも原点と呼べるアルバムだと思うし、闇の界隈に引きずり込むには十分すぎる耽美ゆえの毒気と魔力を備えている。

 ちなみに発売から15年経った現在(2014年)でも、この『GAUZE』がDIR EN GREYのアルバムの中で一番のセールスを記録した作品である。


 

MISSA

MISSA(1997)

 

 

   Dir en greyとして初めての音源となった6曲入りのミニアルバム。すでに前身バンドのLa:Sadie’sでそれなりに成功をおさめていた事もあり、既にこの頃からヴィジュアル系界隈ではかなりの人気があった模様。メンバーは20代前半だったかな。

 肝心の内容はというと、初期の黒夢フォロワーらしくコテコテのヴィジュアル系で、現在の世界的な成功を考えると信じられない人もいるだろう。清春に感化された京のVoとダークなサウンドを基調に組み立てられ、詩に関しても痛ましいものが多かった。とはいえ、刺々しい部分も持つけど、割とメロディに気を払っている。ヴィジュアル系の典型のような#5「GARDEN」であったり、初期の人気曲である#6「秒「」深」などを収録しているが、バンドとしては黒歴史になるんだろうなあ。聴き直してみても、やっぱりうーんとなってしまう。それでも、当時のヴィジュアル系の盛り上がりを考えるとこのサウンドは、ウケててセールスもそこそこよかったようだ。

 この翌年にシングル「Jealous」、そして当時のインディーズ記録であるオリコン7位を記録したシングル「I’ll」を立て続けにリリースし、急速に人気を獲得する。また、インディーズながら日本武道館公演を行う快挙も達成した。

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