Don Caballero ‐‐Review‐‐

91年にピッツバーグで結成されて、90年代にムーブメントを築いたポストロック・マスロックバンド。2000年発表の「American Don」はまさしく彼等の最高傑作であり、マスロックの真髄を垣間見れる1枚となっています。その後惜しまれつつ解散をするも2006年に中心人物のドラマーDamon CHeによって復活「World Class Listening Problem」を発表し、翌2007年4月に初の来日公演を行いました。しかしながら今となってはBattlesのIan Williamsがいたバンドという評価にとどまっているのが残念だ。

レビュー作品

> Punkgasm > World Class Listening Problem > American Don > What Burns Never Returns


Punkgasm

Punkgasm(2008)

    今やBattlesの人気によってイアンが在籍してたバンドという評価にとどまっているのが何とも悲しいマスロックのパイオニアDon Caballeroの復活後第2作(通算6作目)。前作では4人編成だったが、今作より去年、来日公演を行ったトリオ編成になっている。

 代名詞ともいえる強靭かつ硬質なインスト・マスロックという基本的な姿勢はここに来て弱冠の変化アリ。本作は14曲収録ということでも驚きだが、5分を越えるのは9分にも及ぶ長編インストの#1のみ。他はかなりコンパクトな設計で1~2分の曲も数曲収録されているのにはさらに驚かされる。それが影響してか、彼ら独特の色は感じられず、ギター・ループによる酩酊も薄まってしまったような気がしないでもない。しかしながら、#1、#3、#8辺りの曲は、鋭角的なフレーズで切り込み、タイトに締め上げられたグルーヴと変拍子バリバリの音符の雨嵐が身体中に昂揚をもたらす。この辺りの曲からはさすがの貫禄を見せ付けられた。

 そして何といっても本作は “歌” という魔法を使ったことも特徴の一つといえるだろう。ラストの表題曲#14においては心地よいビートにのせてパンクバンドみたいに叫びまくっているところがまた深い印象を残す。なるほど、タイトルの”Punkgasm”とはこういう意味だったかと納得させられる。再結成2作目ということで少し余裕もできたので新たな挑戦に踏み切った、今までで最も実験的でレンジの広い作品といっていいでだろう。ただ、個人的には1曲1曲に深みと魅力があった前作の方が好みだったな。マスロックという殻を打ち破りたいという気概は伝わってくるが、広げすぎてしまった気がする。


World Class Listening Problem

World Class Listening Problem(2006)

    マスロック(数学のマスマティックスの意)の先駆者的存在のドン・キャバレロ(ドンキャバ)の6年ぶりの復活作品(通算5枚目)。ゆっくりと坂を駆け上がるとその先は急な崖であった・・・そんな複雑な展開が随所に登場する。

 センチメンタルなメロディと爆音が奏でる狂騒の不協和音はあまりにも新鮮で、まだ見ぬ大地をその眼に映し出すかのようだ。その音は躍動感に溢れ、上質であって、人々を引きつけるのに十分なポップさも持っており、非常に心地よい。微妙にツボを外す緩急の妙であったり、急にダイナミズムを増して襲い掛かってくる音の塊であったり、無情な思いにさせる繊細さであったり、本当に不思議なグルーブ感に包まれ、徐々に神経を焦がしていく。凄い鋭角的センスを持った人たちなんだろうなあと思う、そして言葉よりもはるかに伝わるものがこの作品の中には詰まっている。プログレッシブロックを現代的にやるとドンキャバのような形に成るんではなかろうか?そんな気さえする。


American Don

American Don(2000)

    2000年発表のドンキャバの通算4枚目の作品。より進化・深化した音世界は一層味わい深く上質なものとなっている。微に入り細を穿つほど細部までこだわった構成と時が止まるほどのゆるやかな展開から美と情念がシンクロし、ダイナミズムを増して襲い掛かる迫力と芸術性に富んだ楽曲の数々にもはや言葉を失う他ない。「万物は流転する」というヘラクレイトスの言葉があるが、まさにこの作品はその言葉が似合っている。ミニマルかつセンチメンタルな叙情フレーズから熱を帯びた爆音の粒子への流転や全く読めない音の喧騒への誘いなど、複雑怪奇に絡み合う音と重なり合う音の波状から一種の浮遊感を得ることができるだろう。特にオープニングの#1はセンチメンタルなフレーズのループから中間部で一転し、音が幾重にも重なって魅せる展開には鳥肌が立った(ライブで聴いた時は本当に凄かった)。しかし、ドンキャバはこの作品後にメンバー3人をつなぐ糸が切れたのか、解散という運びになってしまった。それほどこの作品を完成させるには神経が必要だったのでしょうね。


What Burns Never Returns

What Burns Never Returns(1998)

    1998年発表のDon Caballeroの3rdアルバム。たおやかに揺らめく音因子が変拍子に乗って自由自在に蠢く9分強の#1「Don Caballero 3」からまるでめくるめく迷宮のような独特の世界を卓越したテクニックで描写。2ndアルバムと違って本作はミニアルやジャズっぽい要素が増し、バンドとしての基盤を作り上げたと評されている。

 穏やかに粒子を紡ぎ楽曲に柔らかな表情を作ったかと思うと、鋭角的なアプローチとハードコア然としたメタリックなサウンドが灼熱の炎を撒き散らし、ギター、ベース、ドラムが立体的かつ複雑に交差し火花を散らすような狂騒は聴き手の熱を倍化させていく。音の緊張と弛緩が繰り返されることによって酩酊を高めるその術は素晴らしく他者の追随を全く許さない。予想外の展開や快楽指数を上げる炸裂感など三者のインテリジェンスの大盤振る舞いには舌を巻くし、ロックのダイナミズムの注入に脳もトロトロ。もうたまらーんっていいたくなる作品だ。

 本作はこの次に発表する「American Don」と並んで傑作とされている1枚。こちらを最高傑作に挙げている方も数多くいるのでもちろんチェックしてみて欲しい。先駆者である彼等の強烈なフィロソフィー(哲学)を感じさせる1枚といえるだろうから。

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