Explosions in the Sky ‐‐Review‐‐

1999年にテキサス州オースティンで結成されたインストゥルメンタル・ロック4人組。静から動への王道的なポストロックを伝家の宝刀として、世界各国から高く評価されている。その物語性の高い真摯なインストゥルメンタルは、万人の心を強く打つ。

レビュー作品

> The Wilderness > Take Care, Take Care, Take Care > All of a Sudden I Miss Everyone > How Strange, Innocence


Wilderness

The Wilderness(2016)

 実に5年ぶりとなる7thフルアルバム。間には3枚のサントラ作品に関わっていますが(僕が聴いてるのは1枚のみですが)、それが良いバカンスになった模様です。というのも自らが火付け役の一翼を担った伝家の宝刀「静寂から轟音へ」のパターンからは脱却。さらには曲をコンパクトに設計するなど、今までにない変化が聴けるのです。

 ビンテージ風のシンセや瑞々しいピアノの音色を有効活用し、そこに加算される彼等らしいメロディは優しさと温かさに満ちています。表題曲#1「Wilderness」や#3「Tangle Formations」を中心にそれは感じ取れるはず。前述したようにタメてのドッカーンは、ほぼありません。打ち込みの要素を昇華しながら、柔らかく情景が移ろっていくような新しいEITS像を確立しています。サントラを通した表現の拡張。そこには静パートへの探求があったのかもしれませんし、響きの重視があったのかもしれません。

 さらに#5「Disintegration Anxiety」や#7「Infinite Orbit」におけるミニマリズムからはBattlesの影響を感じたり。#8「Colors in Space」はクラウトロック~サイケ~プログレといった温故の産物と言った印象で、ラストを飾る#9「Landing Cliffs」は清冽かつのどかに最後を彩っています。全体を通せば少しシリアスで実験性を感じ取れるのですが、かつてのサントラで受けた控えめな印象を新しい表現を取り入れることで、豊かさに持っていく辺りは長年のバンドの積み重ねなんでしょう。

 ダイナミックな展開がなくても、デリケートゾーンまで徹底した精巧な音響の構築で楽曲間の連続性につなげ、じっくりと聴き入ってしまうような作品に仕上げる。そう、ここにあるのは空中爆発の先のお話なのです。


Prince Avalanche: An Original Motion Picture Soundtrack

O.S.T.  – Prince Avalanche -(2013)

 Ola Podridaというソロ・プロジェクトで活躍中のDavid Wingoとの共作による、デヴィッド・ゴードン・グリーン監督の「Prince Avalanche」のサウンド・トラック。EITSがサントラを手掛けるのは「Friday Night Lights」以来、実に9年ぶりのこと。

 さすがに共作&サントラということで、いつもの彼等の音楽というわけにはいかず。今年の頭の方に出たMogwaiのサントラもそうでしたが、静寂と叙情が紡いでいく穏やかな時間を心ゆくまでに嗜む作品であるといえるでしょう。アコースティック・ギターの柔らかな響きと優美なピアノのフレーズを軸に据えて、 丹念に編み上げていくことで全体を通して繊細なトーンでまとめています。

 David Wingoは自身のソロ・プロジェクトでフォーキーな唄ものをやっているそうですが、本作では彼の作風に寄りそう形で、そこにクラシカルな趣がプラスされている印象は強い。また、精霊のようなコーラスや電子音を取り入れた楽曲は、映画のイメージを膨らませるのに一役買っているし、黄昏の哀愁や淡い情緒が奥ゆかしく作品を彩っている点も良いですね。

 なかでもタイトなドラムを先導役にして、コーラスやホーンの音色を交えながら本作でも随一のダイナミックなサウンドを聴かせる#13「Join Me On My Avalanche」が特に印象的。1~2分台の曲が多いのも手伝って全15曲約38分の物語は滑らかに流れていきますが、上品で味わい深い作品であり、清冽とした音の余韻もまた美しい。


Take Care, Take Care, Take Care

Take Care, Take Care, Take Care(2011)

 前作から実に4年ぶりに帰還となる5thフルアルバム。先行披露された#3「Trembling Hands 」が3分半という時間の中に、力強さと優美さをソリッドに収録した曲だったので少し驚きました。ただ、こうして全貌を把握すると芯は何も変わっておりません。愚直なまでにワンパターンな静から動へと転換していく王道ポストロック/インストゥルメンタルです。これはもはや譲れない矜持であり、現在のシーンを牽引するいう貫禄さえ漂っています。

 ハッとするような美しいメロディを重ねながら荒野に花を咲かせ、少しずつ高度を上げていくかのような力強いリズムに牽引され、やがては珠玉の轟音が奏でる楽園へ。前述の#3を除くと全て7分~10分という時間をかけて、ドラマティックな物語をゆっくりと丁寧に丁寧に織り上げていきます。

 シンプルで正攻法なアプローチ。ですが、まさにこれだけを真摯に磨き上げてきた彼等だからこそ成せる劇的な音楽、優美で力強いダイナミズムが生まれています。ここまで純度の高い物語性を擁する作品を創り上げる辺りは、前作でも述べたように職人芸。丹念なアルペジオの旋律、たゆたい飛翔するトレモロが叙情の稜線を奏で、虚空に轟くフィードバックがストレートに心身に響きます。

 しかし、そういった中で本作ではコーラスを取り入れる事で定型外の挑戦も果たしています。逆に前作で取り入れた鍵盤は鳴りを潜めていて、4人が鳴らす生身の音に向き合い立ちかえったことで、より感情的に胸の深い部分にまで伝わってくる印象はありますね。伸びやかなギターフレーズと強いリズムの胎動が煌びやかな夜空を飛翔する#1から勇ましくも荘厳なラストトラック#6まで、彼等の魅力を存分に味わえる作品です。

 他のバンドが自らの領域を拡げていく中で、EITSは脇目も振らずに自身の武器を超一級品にまで磨きあげていく事を選び続けています。そうした姿勢を貫いた本作にもまた人々の悲しみを諭すような慈愛と優しさがあって、染みるのです。


All of a Sudden I Miss Everyone

All of a Sudden I Miss Everyone (2007)

 3年ぶりとなる4thアルバム。聴いてみた印象をいえば、ポストロックらしい静と動をゆるやかに行き来。そこから生まれる力強いダイナミズムが異次元へと感動を運ぶインストです。流麗なツインギターが互いに呼応し、精微なるリズム隊と歩調を合わせて、巧みに描きあげられる真摯な物語が絶品。

 楽曲の世界観は非常に明快で、”壮大で美しい” それを豊かなインスピレーションと緻密な構成で表現しきっています。どの曲も奇を衒った展開があるわけでもなく、難解でもなく。至極シンプルに静と動へとの移り変わりを描きます。しかし、所々で音を衝突・炸裂させつつも細部にまでこだわった美意識、静と動による濃淡のバランス感覚が非常に良いですね。

 儚き静寂から劇的に轟音が地平を切り開いていく#1、13分に渡って歓喜に満ちた光の洪水が押し寄せる#3、天へと登り詰めては拡散する音の粒子に圧倒される#5、ピアノのリリカルな調べによる切なくも美しいエンディング#6と感情に訴えかける曲ばかり。まだ4枚目とはいえ、本作はまさに精巧な職人が作った芸術に近いものを感じます。

 地を制圧し、空を制圧し、天を制圧する音の結晶。それは五感を強く刺激しつつ、言葉よりも雄弁に響きます。ややポストロックの定型に陥っている感はあるところですが、こんな真っ直ぐな音楽に真正面から向き合わせてくれたことに感謝したい。そう思わせてくれる作品でした。

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