Emeralds ‐‐Review‐‐

ジョン・エリオット、スティーヴ・ハウシルト、マーク・マクガイアの3人で編成したバンド、Emeralds。20代半ばでありながらも既にCD-Rやカセット等で40以上もの作品を世に送り出しており、各個人の活動もかなり活発。オフィシャルものとしては4枚の作品を発表し、2010年に発売された『Dose It Look Like I’m Here?』はPitchforkにてBest New Musicを獲得するなど世界的な評価を獲得した。しかしながら、2013年初頭にかさかの解散を発表した。

レビュー作品

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Does It Look Like I'm Here?

Does It Look Like I’m Here?(2010)

   PITAことPeter Rehberg率いるEditions Megoより発売されたオフィシャルでは3rdアルバムとなる作品。個人的には先にギタリストのMark Macguireのアルバムを聴いて感銘を受けたのだけど、本家では3人の才能と密なる連携を軸にして出来上がる眩惑的サウンドスケープが体験した事のない恍惚感をもたらしてくれる。PITAさん曰く「クラスター、タンジェリン・ドリーム、マニュエル・ゲッチング等の70年代クラウトロックの現代的解釈」だそうだが、エメラルズの音楽の核心を突く言葉であるはず。クラウトロックの教典を資本にして、それを3人の知性・技術・連携によってモダンな発展系として昇華するに至っているようにも思える。刹那でも気を抜くとそのまま丸ごと持って行かれそうな陶酔型のサウンドスケープは、実に奥が深い。

 柔らかに拡散していく眩いアナログ・シンセとディレイのかかった流麗なギターが調和しながら、幻想的な小宇宙を奏でていく。基本的にはこの連携が軸となっていて、そこにドローンの波、アンビエント/ミニマルの快楽と恍惚感を的確に盛り込んで刺激的かつ心地よいリスニング空間を造形する。そのシンセの音色からはクラスターの気品が漂い、マーク・マクガイアのギター・プレイは『E2-E4』前後のマニュエル・ゲッチングを思い浮かべる人も多いだろう。例えるならまさしくクラウトロック聖地巡礼といった感じだろうか。美しい煌びやかさと空中を泳ぐような浮遊感を併せ持つ見事なサウンドが、自然と身も心も引き込んでいってしまう。百花の如きシンセ音と甘美なギターフレーズが有機的に交錯する#1で始まり、12分に及ぶ#5では電子音響によるコズミックなドラマで酔わせ、タイトルトラックの#7では攻撃的なシンセの音に感電しそうなほどの刺激を送る。コズミックなグルーヴを携えていたり、一部の曲では即興的に組み立てていく事でスリリングさをもたせたているのも特徴的だろう。そういったノイジーさも起伏を持たせる上で表出しつつも、メロウでゆったりとした曲調で本作は占められているので聴きやすくはある。また、うっとりとするような恍惚度も高い。国内盤のボーナストラック#13ではマーク・マクガイアのギターが前面に出ていて、小気味良い疾走感に最後の最後で一気に上げられるのも良いですね。

 個人的には、ギターとアナログシンセを使って巧妙に織り上げる世界にはかなり惹かれた。これ以前は10分超にも及ぶサイケ・ドローンやミニマルな曲調で瞑想的なサウンドでひたすら脳の深奥に迫ってきた事を思うと、ほとんどの楽曲が4分程度の尺のもので固められたのは、聴き手への寄りそいというのもあったろうし、自分たちの創造力への挑戦でもあっただろう。多様な要素を繋げ、現代的スパイスと個人の資質を盛り込むことで独特の煌びやかさと尖鋭性を湛えた彼等の音楽には称賛の声が集まっても何ら不思議はない。先陣への敬意を払いながら、音響の先端に光を当てていく挑戦的な彼等の姿勢・創作意欲は決して衰えることなく、もまだまだ見えない宇宙をこれからも探り続け、我々に見せてくれるだろう。各人のソロ活動含めて、個人的には注目していきたい(過去作も含めて)。


Emeralds

Emeralds(2009)

   アメリカ・オハイオ州クリーヴランドの音響エクスペリメンタル・トリオの09年作品。既にこの時点でカセット、CD-R、LP等の様々なフォーマットで40作品以上のリリースとなっているが、本作は公式に2作品目にあたるらしい。マスタリングはJames Plotkinが担当。

 まるで宇宙を漂っているかのようなコズミックなシンセの揺らめきに、ゲッチング先生風のギターが光を差し込み、ゆるやかなベース、淡い光を放つエレクトロニクスの交錯がクラウトロックを支点に様々な方向へと振れていく。ミニマル・ミュージックからアンビエント、ドローンを飲みこんでは肥大化し、創造性溢れる音楽を造形。細かな音の変化を生かすようなエクスペリメンタルな作風を貫いている。

 宇宙にある人工衛星と交信しているかのような小刻みに揺れるエレクトロニクスが印象的な#1に始まり、煌びやかなシンセとクラウトロック風のギターが豊かな音磁場を演出する#2、#3と作品は続く。聴いててもわかるとおりに電子音響が全面的に出てはいるのだが、所々で炸裂するマーク・マクガイアのギター・ソロは魂を震わせるものでもある。またアンビエントな演出で心地よい安らぎを提供してくれるのもポイント。そんな中、ジャケットのような淡い光を思わせるシンセにリードされて徐々に旋回し、そこにギターが折り重なっていき神秘の空間へと突き進んでいく18分越えのラストトラック#4「Passing Away」は圧巻の一言。幾つもの音の渦が集結したノイジーなクライマックスは鳥肌ものだ。極めて緻密な構築によるノイズ・ドローンからは覚醒と恍惚が訪れる。彼等の入り口としては最適な一枚であり、聴き手のイメージを大きくふくらませるような作品となっている。

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