Especia ‐‐Review‐‐

シティポップやAOR、ディスコなどを基調に80’s~90’sテイストを散りばめた音楽で勝負をかけている、大阪・堀江のkawaiiヴェイパーウェイヴ・ガールズ。

レビュー作品

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CARTA ~Selection~

CARTA(2016)

 約1年9ヶ月ぶりの2ndフルアルバム(メジャー1stフルアルバム)。なぜかメジャーに行ってからのアルバムは、1曲目に著名人が作った問題のある曲(賛よりも否が多い)を置くという謎のノルマを課されていますが、本作でも大御所の藤井尚之氏と山根康広氏によるアメリカン産業ロック的な「Clover」を1曲目に配置。サビをシンガロンガする新境地に、ペシスト地蔵が新木場に大挙したという都市伝説が生まれたそうな・・・。

 そんな荒々しいうねりをもたらした#1「Clover」があるにせよ、Hi-Fi City(Schtein&Longer、PellyColoなど)がプロデュースする本作もEspeciaらしいツボを心得たつくりです。ブラックミュージックの濃度上昇、女性ヴォーカル・グループとしての成長を見せた1stミニアルバム『Primera』を経たからか、余計に渋い仕上がり。1stアルバム『GUSTO』と比べても玄人向け作品という印象を受けます。

 ジャズファンク+ドラムンベース的な新境地#4「Interstellar」、生バンドをフィーチャしたソウルフルで渋い#7「Rittenhouse Square」の2曲は、本作を初めて通して聴いた時に特に驚かされた楽曲です。シティ・ポップやAOR、R&B、ディスコなどなどの要素を活かし、ふくらませていったEspeciaとしての音楽的成熟の証。まるで玉露のように深いコクと上品な甘みがあります。また、ラップパートの積極活用、Especiaのこれからを大きく担う森絵莉加ちゃんの歌唱パートの増加はポイントにあげられる点でしょう。その上でサックスの鮮やかな響きが心地よく、表現力が豊がになった5人のハーモニーがあまりにも美しいのです。

 曲調はそんなこともないのに卒業の切なさと哀愁を香らせていく#2「Over Time」、分厚いシンセの彩りと冨永悠香・森絵莉加のヴォーカルが異様にドラマティックな#5「Saga」、Especiaを聴いたことがない人に真っ先に聴かせたい#8「Mistake」と楽曲の質はもちろんいずれも高い。曲からはかなり大人びた女性の雰囲気が感じられるようになったのも成長なのでしょう(大学デビューした女性が一気に落ち着いた感じある)。ラストはメジャーから初となるシングルであり、鯛のカマでお馴染みの#12「Aviator(CARTA Edit)」で綺羅びやかに締めくくり。ガールズ・グループとして特異な存在感を放つようになった彼女達の饒舌で渋いアルバムとして、本作は見事な出来栄えです。

 そんな成果はあのPitchforkにレビューが掲載される大事件にまで発展。Especiaが送った「手紙」がまさか日本を飛び出して世界にまで届くとは、世の中わからんものです(といっても寄稿者は日本在住のPitchforkライターであるが)。だからといって、Pitchforkも評価したから彼女達を聴け!と過剰に言うつもりはありません。ただ、僕としてはEspeciaを通して、その情報量の多い音楽性とヴェイパーウェイヴ・アイドルとしての振る舞いに、大いに楽しみましたし、学ばせていただきました。

 本作を置き土産にEspecia上京物語は始まります。それに伴う三ノ宮ちか、三瀬ちひろ、脇田もなりの卒業は、痛みを伴いすぎた改革としか言いようがありませんが、良い音楽を変わらずに残していってくれれば救われます。これまでの5人体制がEspecia=スパイスの黄金比ではなかったといえる大活躍を見られればなと。惜しむらくは『CARTA』が作品としての完成形は日の目を見ても、ステージでの完成形が見られなかったことでしょうかね。

 最後に一言つけくわえるなら、「メンバーそれぞれに幸あれ」です。

 

 

 


 

 

primavera05

Primavera(2015)

 Record Store Day限定500枚の12inch VINYL。当然のように即完売したことに対しての救済措置なのか、5月のクアトロ・ツアー期間中に限り、SoundCloudよりフリーDLすることができました。リリース・インフォから引っ張ってくると、「’12年のデビュー作『DULCE』から昨年の『GUSTO』までのインディー時代から選り抜き4曲を、サウンド・プロデューサーSchtein&Longerと、マセラティ渚のPellyColoがリミックス&リエディットしたエクスクルーシブな内容」とのこと。ちなみにヴォーカルは5人編成で全曲を再録しています。

 ファンシーなハウス感が増した#1「アバンチュール は銀色に(PellyColo Remix)」、長めのイントロ追加&カッティングギターが相変わらず冴え渡る#3「きらめきシーサイド(12″ Extended Ver)」、夕暮時の波打ち際のムード漂うメロウな#4「海辺のサティ(va Bien Edit)」。既存曲を引っ張ってきているのでもともと馴染みはあるとはいえ、いずれもが原曲の良さを残しつつ新たな魅力が引き出されている。もちろんそれには、彼女達のヴォーカルが以前と比べて大人びた魅力を放っていること点も大きい。

 個人的には#2「FOOLISH(12″ Extended Ver)」が凄くいい。スクラッチを追加してより綺羅びやかなダンストラックに仕上げていて素敵。これからもこういったリミックスでどんどん仕掛けていってほしいものです。


 

Primera(初回限定盤)

Primera(2015)

 ビクターエンタテインメント内レーベル、VERSIONMUSICからリリースされたメジャー・デビューとなる9曲入りミニアルバム。堀江KAWAiiがついに2年半をかけて、ついにメジャーの檜舞台へ。まず、そこが泣きながらダンシングするポイントでございます。ジャケットは映画でも話題の味園ユニバースのステージ。そして帯やライナーノーツ、CDの盤面は徹底してかつての洋楽の国内盤をオマージュしています。ちなみにライナーの執筆者は、ライト・メロウ・シリーズを監修している金澤寿和氏。

 思い出してみると、若旦那(湘南乃風)がプロデュースした#1「We Are Especia~泣きながらダンシング~」を初めて発表してからの数週間は、いろいろと荒れました。お涙頂戴の語りから始まり、メンバーコールも含んだこれまでにないほどのアゲアゲな曲調。みんなで築き上げてきたEspecia界隈⤴を若旦那とかいうオッサンが、フォロー外から失礼します!的にプロデュースした感じで批判は多かった。確かにこの曲を初めて聴いた時は、違和感があありました。有名人を借りだして宣伝効果を煽る、新人売り出しのメソッドといえばそうでしょう。まあ今ではみんなでゴッソ!ゴッソ!していますが(笑)。

 完全に狙ったそのギミックを用いつつも、持ち味のAOR~R&B~ディスコ・サウンドを本作では、黒く渋く磨きあげております。進化した5人のコーラスワークに華美で温かい生演奏が絡む#3「West Philly」、燻し銀のメロウなミッドチューン#4「Sweet Tactics」、ドバイのトイレを意識したMVからゴージャスな薫りが広がっていく感じのある#5「シークレット・ジャイヴ」。いずれも当然のように80’s~90’sを絶妙に意識させるものだが、他では決して味わえないEspeciaならではの味わい、お洒落でグルーヴィなサウンドを実現している。

 前述したように彼女達の歌唱力/表現力の向上から、より艶美さとアダルトな色合いが楽曲群に落とし込まれているのも良いですね。攻めるところは攻め、これまでにない冒険もしてますし。ちゃんとEspecia⤴たる所以の音が詰めこまれていると思います。僕としては、#8「Security Lucy」が、本作では一番好きですね。ツートップを張る冨永悠香様と脇田もなり様の掛け合いのようなサビがとても印象に残ります。

 インストの3曲を含むために実質は6曲といえますが、物足りなさはまるで無く、1stフルアルバム『GUSTO』よりも統一感のある仕上がり。本当にためらわずに彼女達の音楽に身を任せたくなる、そんな堂々たる完成度を誇る好盤。初回盤2枚目に収録されているリミックス集も相変わらず遊び心が満載で面白い。

 

 


 

Girl’s Life(Negipecia盤) [Analog]

Girl’s Life(2014)

 公私ともに交流が深いという新潟のアイドル・グループのNegiccoとコラボし、”Negipecia”として発売したシングル。甘酸っぱい青春のように一夏限定コラボです。CDとアナログで4形態発売されているのですが、僕が購入したのはEspecia盤でこれについて感想を書きます。

 表題曲「Girl’s Life」は作曲・編曲・プロデュースを後藤次利が担当。誰かと思えば、おニャン子クラブの楽曲を手がけたお偉いさんだが、僕は年代的に野猿の作曲家としての印象のほうが強い。「叫び」というアンセムでオレたちがどれだけWOW WOWしたことか(笑)。それはさておき、「Girl’s Life」は両者の個性を引き立たせるようなキラキラとしたシティポップで、それでいてタイトル通りに女子の日常感を表した歌詞を歌い上げるもの。80年代風味の懐かしさやアーバンなシンセを交えながら、ポップに上手くまとめあげている。なぜかドラムに村上”PONTA”秀一御大が参加し、新潟KAWAiiネギネギ+堀江KAWAiiの混成軍となれば、良いものに仕上がるのも当然だろう。

 続いては、Especiaが歌う#2「水着・浴衣・花火・背伸び」。ホーンやシンセをふんだんに使った華やかなアレンジは、彼女達のプロデューサーSchtein&Longerによるもので、安心の内容といえます。Negiccoの方はまたアレンジが違うらしいので、こういう試みも面白いなと(といっても両方を収録してくれよと思うが)。#2のインストである#3を挟んで、最後にconnieが手がけた#4「アバンチュールは銀色に(521 remix) 」を収録。原曲のカラフルな色味を抑え目にキックの音を強調したテクノ風味が好印象です。


GUSTO [CD]

GUSTO(2014)

 HARAJUKU KAWAii!! を飲み込む、大阪は堀江のKAWAiiガールズの1stフルアルバム。垂れ目系から家畜系まで6人(アルバム発売当時)のKAWAiiどころを取りそろえております。地道な活動から結成2年にして1stフルアルバムの発表ですが、完成度の高さには単純に驚かされました。既に多くの方々から太鼓判を押されていますが、シティポップやAOR、ディスコなどを基調とした少し懐かしめのテイストを持った音楽で勝負をかけています。情熱的なサックスやエレガントなシンセ等の華やかな音色を配したトラックが主体で、アーバンなメロウソウル#2「Bay Blues」から時計は逆進していく。

 それでも一番のスパイスとなっているのは、アイドルらしい可憐さやあどけなさの残った彼女達6人の歌。だからこそ、変にムード歌謡やアダルトちっくな印象に傾き過ぎず、柔らかなポップ感を持った形に仕上がっていて、風通しも耳馴染みも良い。

 カラフルなディスコ・ポップ#4「アバンチュールは銀色に」、メンバー三瀬ちひろが作詞したことに加えて軽やかに跳ねるリズムと眩いエレガンスが好印象の#5「Mount Up」、冒頭のサックスとカッティング・ギターが爽やかサマーを演出する#6「BEHIND YOU」と前半から中盤にかけての流れに自然と惹かれます。全16曲の中に新曲は9曲となってますが、既存発表曲もアルバムに合わせて最適かつユーモラスにリ・アレンジして収録。新たに音楽的楽しみを提供する制作陣からは、本気度が十二分に伝わってきます。

 あまりにも鮮やかなシティポップ#9「No1 Sweeper」で幕明ける後半も充実の内容。8分にも及ぶ小洒落たインスト#11「海辺のサティ」に驚かされ、#11「ミッドナイトConfusion」から#12「くるかな」の連続攻撃、そして名曲#14「アビス」の残す感傷。パワフルな管楽器の音色とグルーヴィな演奏でファンキーに暴れ回る#15「YA・ME・TE」という終盤の一撃も素晴らしい。懐かしい描写を中心に据えながらも洗練の施されたメロウでゴージャスな楽曲群は、聴けば聴くほどに『GUSTO=味』が出る。そんな堀江KAWAii万歳の佳作です。


AMARGA-Tarde-

AMARGA -Tarde-(2013)

 1st EP『DULCE』に続く2nd EPである。夕方を意味する『AMARGA -Tarde-』と夜を意味する『AMARGA -Noche-』の2枚同時リリース。ほぼ収録内容は同じながら4曲目と7曲目の収録曲が違っています。自分はジャケットの鮮やかさもあって、Tardeの方を購入。ちなみにNocheには山下達郎さんの「Midas Touch」のカバーを収録。

  80’s、シティポップ、AOR、ディスコといったキーワードが飛び交う作風は変わらない。もちろん、フュージョンやファンク、R&Bといった要素もふんだんに用いられていて、本作はちょっと大人びたムードを持っているように思います。それは彼女たちがちょっと背伸びしているというのもあるし、前作を踏まえてカッティングギターやサックス、リズムが良いバランスの上で熟成された響きを持ったように感じるってのもある。この黄昏哀愁ムードは、ゆるやかなテンポの上でしっとりと歌い上げる#2「トワイライト・パームビーチ」を起点にしていることが大きい。途中で挟まれるサックス・ソロも印象的で、アダルトチックな雰囲気を上手く引き立てています。

 それに華やかでバブリーなディスコ調サウンドが光る#6「パーラメント」も見事という他ない。Tardeのみ収録のきらびやかなポップス#7「オレンジ・ファストレーン」も個人的に好きですね。80’sというコンセプトのもとに集結した様々な要素が生み出すグルーヴの心地よさ、そしてポップ性の味わいの良さ。彼女たちの大きな特色である懐かしい味わいと新しい味わいも備わっており、本作も巧みなアイデアが結実した一枚といえるでしょろう。


dulce

DULCE(2012)

 

  2012年9月に発表したデビュー作。2012年12月に脱退したきのこ系女子・井立田優香を含む7人編成での唯一の作品です。iTunesによる配信や50本限定販売のカセット・テープを経て、時間をかけてCDとして全国流通(タワーレコードのみ)されました。

  結成当初から80’sを明確にコンセプトに掲げたシティポップは、今どきのHORIE KAWAiiの風情に乗せてモダンにアップデート。古き良き時代のファンキーなグルーヴ/R&Bテイストで初っ端から度肝を抜く#1「ナイトライダー」、#2「FunkyRock」と初っ端から度肝を抜かれる楽曲が続きます。これがAOR、シティ・ポップ、ファンクやソウルなどを華やかかつ現代的に仕上げてみせた、HORIE KAWAii MUSICなのかと。

 アイドルに楽曲派もクソもあるかという意見はあると思いますが、Shtein & Longerを中心に生み出される曲のクオリティは一様に高く、ある人には懐かしさを、またある人には新鮮味を持って響くものです。ギターのリズミカルな刻み、艶やかなホーンの音色、Especiaの面々がちょいと大人っぽく背伸びした感じの歌唱がマッチする#3「きらめきシーサイド」はやたらと心地よいし、トライバルなリズムと華やかさが一層強調された#4「Twinkle Emotion」での締めも良い。

  個人的には、AORやシティポップ、ソウル/ファンクといった音楽には疎いので、垂れ目系から家畜系まで揃うHORIE KAWAiiを通じ、70年代~80年代にアクセスするきっかけを与えてくれる存在だと思います。また逆にその時代を懐かしむ人にとっては、現在のアイドル /J-POP文化への橋渡しにもなることでしょう。今後に大期待。

 

この「DULCE」踊ってみたシリーズ、好きです。

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