UKのネオクラスト/ポストハードコア・バンド、Fall Of Efrafa。クラスト要素を交えながらもNeurosisライクに進化/深化を遂げていった音楽性で、アンダーグラウンド界では絶大な人気を誇った。2005年から2010年と活動期間は短かったが、残した3枚のフルアルバムはいずれもネオクラスト~ポストハードコア界において大きな影響を与えた。2010年に終焉を迎えた後、Vo.Alexが新バンド”Light Bearer”を結成し、その音楽的核を受け継いでさらに深化した音像で世界を揺るがしている。
レビュー作品
> Inle > Elil > Owsla
Inle(2009)
UKのネオクラスト/激情ハードコア・バンドの3rdアルバムにして最終作。リチャード・アダムス著の古典的小説『WATERSHIP DOWN』にインスピレーションを得て制作された、3部作の最終章である。やはり、強大な音の迫力と深遠なる物語性にただただひれ伏すのみ。徹底して表現を突き詰め、コンセプトを反映することでスピリチュアルな感覚をさらに引き出し、確実に震撼する作品を創り上げている。
音楽的には前作からの延長といえるものだが、研ぎ澄まされた感覚で洗練され、一層引き締まった作品に仕上がった。ハードコア~ネオクラストから、Neurosisの壮絶な絶対領域に進出し、さらにはISISやenvyやGodspeed You! Black Emperor等の音楽性と精神性を加味しながら、聴き手の核心を打つ。地底を揺るがす重厚なサウンドと鬼神の如き咆哮、そこにポストロック的なたおやかな旋律が織り込まれていく音像は脅威的で、7曲79分という長編スケールもさることながら、どの曲にも激情と叙情で綴られるドラマが凄まじい緊張感の中で息づいている。10分を超える5つの楽曲は、どれも圧倒的なスケールと共に完成度の高さを示し、未知の聴感とインパクトを叩きつけていくのだ。切迫とした音が積み重なり、極端な美と醜を配しながら物語を組み立てていくのはAmenraやLvmen、または近年のcorrupted辺りとも共振しているといえるだろう。暗黒渦巻くシリアスな悲壮感と重い美しさは群を抜いており、アンダーグラウンド界で孵化した音の激流に飲み込まれ、恍惚へと導かれる。バンドの最期を飾る文句なしの傑作。
多大なる影響を与えたバンドとしての功績はとても大きい。だが、既に彼等は解散という道を歩んでいる。しかしながら、その音楽的核を受け継いでさらに深化した新バンド”Light Bearer”を始動させ、世界を大きく揺るがしている。壮絶な音楽体験はまだまだ続くのだ。
Elil(2007)
1年の時を経てリリースされた3部作の2作目。1stアルバムと比べると大きな変化を遂げており、スラッジ~ポストメタル的な趣が顕著となっている。収録曲はたったの3曲だが、いずれも20分を超える大曲が並ぶ。
前作の後半の楽曲で顕著だったように、いわゆる静から動を行き交いながらドラマティックに昇華されていくスタイルとなり、スケールの大きな音塊を丹念に打ち立てていく。ハードコア~クラスト要素が強く出た激しい疾走パートは減退(完全に無くなったわけではない)。代わりにアコースティック・ギターや深遠なアルペジオを基調とした静パートの割合が、かなり増えている。とはいえ、地響きのような重いリフとリズムは健在だ。ヴォーカルもクリーン・ヴォイスを取り入れることなく、全身を震わせるような強烈な咆哮を叩きつけている。
激情、憤怒、怒号、哀愁、壮麗をまといながら哲学的/芸術的に飛躍を続ける楽曲はただただ凄まじい。NeurosisやIsisをも凌駕するような壮絶な音楽が生まれている。収録されている3曲は、いずれも空前絶後のスケール。哀しげなアコギの旋律から始まり、切ない響きを持ったメロディ、重厚なスラッジ・サウンド、激しいメタリック・クラストと幅広い音を発しながら豊かなストーリーを綴ったラスト#3「For El Ahraihrah To Cry」が特に印象的。この3部作は、最終作の『Inle』で完成系を見るわけだが、本作『Elil』も負けず劣らずの傑作と言えるだろう。
Owsla(2006)
記念すべき1stアルバム。リチャード・アダムスの小説『WATERSHIP DOWN』を彼等なりに解釈を加えた3部作の第1作となる。初期のこのころは、AmebixやHis Hero Is Gone、Tragedyなどのクラスト勢に大きな影響を受けた作風が印象的だ。けたたましいメタリックなクラスト・サウンドに、メロウさを絶妙に混成させて悲哀と激情を帯びて激走する。ハードコアの荒らさ・激しさが際立ち、さらにアレックスの咆哮も勇ましく重く響くかのようで、感情を強く奮い立たせていく。そこからテンポチェンジを交えた緩急のつけ方も絶妙で、envyやgantz、Funeral Diner等の影響下にあるような深遠な静パートも登場してくる。
前半の楽曲では、まさにTragedy直系のクラストという激しさと荒らさが強烈で、#2「Pity The Weak」でその破壊力に悶絶。#3「A Soul To Bare」ではイントロの叙情的なギターから撲殺にかかるリフと咆哮の連打に殺られる。そこから後半の楽曲では、2nd『Elil』や3rd『Inle』という後の作品につながっていくアーティスティックな芸術性が垣間見れる。特にバンド名を冠したラストトラック#6「The Fall Of Efrafa」には圧倒されることだろう。Tragedyがポストメタル化したかのような荘厳激情の15分超のこの楽曲は、ストリングスを交えながらあまりにもドラマティックに展開する。初期の代表曲のひとつといえるだろう。解散した今でも熱い支持を受け続ける彼らの源流がここに表現されている名作だ。
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