Fleeting Joys ‐‐Review‐‐

My Bloody Valentineの正当な後継者とも評されているアメリカ・カリフォルニア出身の夫婦シューゲイザー・ユニット。ジョン(ヴォーカル/ギター)とロリカ(ベース/ヴォーカル)の汲み上げるサウンドはかの名盤『LOVELESS』にバリバリ影響を受けたシューゲイザーで、それが逆に多くのファンを生み出す要因になっているとか。

レビュー作品

> Occult Radiance > Despondent Transponder


Occult Radiance

Occult Radiance(2009)

    前作でマイブラの正当な後継者として注目を集めたFleeting Joysの約2年半ぶりとなる2ndアルバム。前作のヒットでスタジオも流通もだいぶ良くなったらしいが、本作でもその大筋に変化は無い。揺れ惑う轟音フィードバックとロリカ嬢のウィスパー・ヴォイスという魅力的なパーツを幾重にも折り重ねていくシューゲイザーサウンドで、酩酊と恍惚を誘ってくる。うーん、思わずうっとり。それにシューゲに対する信念が相変わらず強いのにも惹かれる。どこか歪んだ美しさ、不可解な幻想性などを内包した彼等の世界は健在ながら、本作でポップさとサイケデリックさを増して聴き手に迫ってくるようになった。ギターのうねりやサイケ感が大きく波打ち、ゆらゆらと白昼夢の先を描いている。Rideのような瑞々しい疾走感が印象的な#1で始まるのがとても新鮮なんだけど、浮遊感に満ちたサイケデリアと儚げなメランコリーがゆらりと押し寄せる#2や起伏に富んだ轟音の中でとろけるような歌声にハッとする#3といった序盤から限りなく近づいた『LOVELESS』から少しばかし距離を置いた感じが出ている(とはいうものの、この作品でもマイブラへの憧憬を包み隠してない)。偉大な先人と共鳴しながらも自身の音像を模索しているのが伝わってくるのがいい。くぐもったサウンドスケープの中でロリカの甘い声が印象に残る#4、幻想的に揺らめき続ける#5、浮き上がるようなサイケな轟音に乗せられる7分超の#8、アンビエントな心象まで表現する#10など弱冠広がった間口もうれしい。1stの方が個人的には好みだけど、こちらも十分楽しめる作品。


Despondent Transponder

Despondent Transponder(2006)

   記念すべき1stアルバム。自主制作(サウンドのみならず、ジャケット制作やレーベル運営、流通も自分達でやってたとか)のため、すぐに市場から姿を消したことでも有名だそうな(2010年3月再発)。

 揺れ惑う轟音フィードバック、余りに甘美なメロディ、優しくささやく様に響くヴォーカル、それらが奇妙な歪みをもたらしつつも、幻想的なノイズの大海となって桃源へと連れ去っていく。オープニング#1から愚直なまでに正統派なシューゲイザー。これはもうそっくりどころかもろマイブラ、このサウンドスケープから想起するのは間違いなく『LOVELESS』そのものだろう。あの作品を聴いた事がある人なら思わずニヤけしてしまうぐらいだ。と同時にその再現度の高さに驚く。でも正直な話、新鮮味はそんなにない。とはいえ、物まねで片付けるには惜しい作品であるのには間違いない。完璧であったあの作品と比べるといい意味での隙があるし、甘みもある。宅録だからこその地に着いた普遍的なメロディが染みるし、ドリーミーな浮遊感の中でサイケデリックな要素がちょっとした毒々しさをもたらしているのが個人的にはおもしろく感じた。幽玄の彼方へ消えゆく#3、独特のサイケデリアのなかでドラムが異様に暴れる#4などの佳曲も耳をひく。自ら影響を彼等の遺伝子を受け継いで、自分達なりの『LOVELESS』をつくりあげているといえるのではないかと思う。うねる轟音ギターとロリカ嬢のどこまでも甘いウィスパー・ヴォイスのコンボはクセになる魅力を備えている。

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