【アルバム紹介】Frameworks、いつも隣にプライスレスな蒼い情熱。

 2011年にアメリカ・フロリダ州ゲインズビルで結成されたポストハードコア・バンド。2014年に1stアルバム『Loom』をTopshelf Recordsからリリースし、2016年に2ndアルバム『Smother』をDeathwishから発表。名の通った2つのレーベルと契約したように、懐かしさと新しさの同居したハードコアが胸を熱くします。

 本記事では2作品について紹介します。『Smother』以降、作品は発表されていないようです。

タップできる目次

アルバム紹介

Loom(2014)

 フロリダのポストハードコア・バンドのTopshelf Recordsよりリリースとなる1stフルアルバム。プロデュースには、Deafheavenを手掛けたことでも知られる、Jack Shirleyを起用しています。

 新鮮で活きの良さを感じさせるポストハードコアという点は間違いない。激情型のスクリームや小気味良く粗暴なサウンドを叩き出す、平均2分30秒台の楽曲が大いに昂揚感を煽っていく。それこそよく引き合いに出されるTouche AmoreやPianos Become The Teethといったバンドの影響が強く感じせるものです。

 しかしながら、前述のバンド達よりもシューゲイズ・テイストが随分と幅を効かせており、美しいメロディが引き立つ。表題曲である#2「Loom」を聴いてもアグレッシヴな躍動感に鮮やかな色味を足すギターの仕事ぶりが目立つ。手数多く組み立てるリズム隊も然り。ダイナミックな展開力にしても魅力のひとつ。

 美しいアルペジオをバックにヴォーカルが騒ぎたてる#3「Mutual Collision」や抜群の緩急を活かした#8「Affrodance」などを聴いてもわかる通りに押し引きのバランスに長け、蒼い初期衝動も十分に感じさせる。

 激と美、その鬩ぎ合いが見事であり、お互いの要素が引き立ってあっているように思う。その中で空間的な音響意匠の巧みさは、Jack Shirleyを起用したことが大きい。

 The Caution Childrenの新作も彼が尽力していたが、ギターを中心とした重層的なレイヤーが激しさの中に浮遊感をもたらしている。#7「Bright And New」の後半のように牧歌的なパートが挟まれたりもするし、唯一の4分台で最長曲#10「Agreeable Thoughts」での甘美なポストロックと壮絶なエモーションが大きく渦巻くラストも印象的。

 次世代を担うという気概も感じさせる1枚で、Topshelfが自信を持って送り出すのも頷ける充実作。

Smother(2016)

 TopshelfからDeathwishに転籍しての2年ぶり2作目。基本路線はそのままに、順当な進化の印象があります。

 閉塞感を打ち破る絶叫、忙しない疾走感が体温を上げる#1「Fear of Missing Out」や#3「Peculiar People」を始めとして、いつも隣にプライスレスな蒼い情熱を連れ添っています。

 速い曲であろうが、遅い曲であろうが、どんな場面だろうが、闘争心をむき出しにするヴォーカルを中心に生み出される熱が聴き手を大いに煽る。こちらの方がスマートな印象はあれど、The Caution Childrenは近しい存在なのかなと。

 そして、前作よりポストロック~シューゲイズ要素の編み込みが、密になっている感じは受けます。手の込んだ作業が増え、アルペジオやトレモロ等を使い分けるツインギターの活躍ぶりがますます顕著。

 #4「Purge」や#10「Tangled」辺りは新境地といえる内容の洗練されたミッド・テンポの曲。初めて通しで本作を聴いた時は、こういったタイプの曲の方がインパクトがありました。幻惑的なトーンの中で感情目一杯込めて叫ぶ#11「The New Narcissistic American Dream」もよろし。

 ただ、そういった踏み込んだ表現を会得しつつも、根幹のハードコアは揺らがない。それほど変わらぬエネルギーと勢いがあります。もちろん、エモいというワードもドンピシャで当てはまる。まさしくDeathwishという看板にふさわしい作品。

お読みいただきありがとうございました!
タップできる目次