Gifts From Enola –Review–

運命の爆撃機という冠名を持つアメリカはヴァージニアのインストゥルメンタル・ロック・バンド。

レビュー作品

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Gifts from Enola

Gifts From Enola(2010)

   約1年ぶりという驚くべき短いスパンでのリリースとなったセルフタイトルの3作目。本作から再び4人編成へと戻っている。個人的にはCaspianと並んで轟音ポストロック新世代を担うバンドだと期待している存在だが、本作における破壊力には鳥肌が立つぐらいだ。ゆらめき輝く美しい旋律、品性を加える煌めいた電子音などは控えめになっていて、猛然と眼前を揺り動かす轟音山脈が肝。凍えるようなギターが爆発を予期させ、そのまま天地を揺り動かす轟音バーストによる激震が全身を襲う#1からして破壊力抜群。一点の曇りすらない研ぎ澄まされた音の塊が壮麗な空間を埋め尽くすように吐きだされている。可憐なフレーズやマス的なアプローチ、それに加えて#2における咆哮や酔っぱらってる感じの歌、#4におけるFrom Monument To Massesを思わせるループ・サンプリング手法もいいアクセントとして機能させてはいるのだが、かつて持っていた色んな要素を削ぎ落としてまで特化させた破壊力には、やはり特筆すべきものがある。荒々しく吹きすさぶ嵐のような、また大きく立ちはだかる巨大な壁のような音は圧巻の一言。寂寥感の漂う寒々しい大地から、流れうように連なるマッシヴな轟音が歓喜の丘へと導いていく。その中でもEITSばりのドラマティックな構成の妙でイマジネーションを喚起する#3のような名曲がまた力強く輝きを放っている。5曲約37分という短めの内容ではあるし、表現の幅やヴァリエーションといった点では前作よりも狭まっているのだが、厳選された骨のある佳曲だけが詰め合わさった本作は、アドレナリンの大量分泌を促す力作。それも涙まで誘ったりしてくれるおまけつき。ここまで”凄み”を感じさせるくらいにバンドが成長したことも嬉しい限りで、さらなる躍進と共に待望の初来日公演を大いに期待したい。


From Fathoms

From Fathoms(2009)

   約3年ぶりとなる2ndフルアルバム。いわゆる、耽美な響きを持った静から嵐のような轟音が炸裂する動へと遷移していくポストロックの王道パターンを持ち味の一つとしているわけだが、今作は前作に比べると随分と破壊力が増している印象。Pelican辺りを想起させるポストメタルばりの轟音が空を圧し、覆いつくしていく#1からして問答無用の強烈さで、心身に大きな揺さぶりをかけてくる(っつーかIsis, Converge, Caspian等を手がけている人がマスタリングしているらしい)。バンドの代名詞である静と動の骨格は、より鮮明で美しくダイナミックになっており、モグワイの壮大さでもって聴き手に迫ることに成功。滾るエモーションをギュッと濃縮しながら、動による荒々しい衝動、静による壮麗な音色を操り、劇的で美しい轟音シンフォニーを創生している。流麗なメロディラインやエレクトロニカの美しさといった静の部分に惹かれることが多かった前作からすると、本作は轟音バーストの煌きと混沌が増したことでのカタルシスが半端ないことに。個人的な嗜好でこういう炸裂感がある音楽には、ものの見事に心が傾いてしまう。いや、もちろん作品の力強さは言うまでもないんだけど、バンドとしてこれでもかというぐらい磨き上げられたのがよくわかる。

 王道ポストロックの展開美、果てないフィードバックの轟きがもたらす恍惚はやはり本作の肝。そのうえで、ノイジーな轟音の中で聴こえる雄叫びが脳内に激しい残響を残す場面や、ダンサブルな躍動感とどこかダークな詩情に胸打たれる#3、ナイーブで甘美な響きが切ない#5といったナンバーで聴き手の感覚を刺激していく。プログレシッヴな展開を見せる曲もあり、そういった柔軟性と技術の高さ、各ピースの使い方も巧みだ。多彩な音色をうまいこと同居させている印象を受ける。また、冷たい寂寥感と温かみが共存しあっているのも感性に効く。マスロックばりの性急な展開から脳髄を痺れさす轟音が炸裂する#7、恍惚感に満ちたクライマックスで締めくくる#8といった最後を飾る流れもまた、見事の一言。EITSのドラマティックさとポストメタルばりのヘヴィさと轟音を操るその手腕は、全然知名度が無いのが悲しいぐらいなので、是非とも本作を手にとってその存在を知ってもらいたい。ジャケットもかっこいいしね。


Loyal Eyes Betrayed the Mind

Loyal Eyes Betrayed The Mind(2006)

   運命の爆撃機を意味するというアメリカはヴァージニアのインストゥルメンタル・ロック4人組Gifts From Enolaのデビュー作。一聴した感じだと世にありがちのドラマティックなポストロックという印象を受けたが、何度も聴いているうちにそれが間違いだと思い知らされる。滑らかに静と動を往来して生まれる優美で繊細な音の調べは上品で清楚だと思えるし、凍てつくような悲壮的ムードをエモーショナルな熱を持った轟音が一気に飲み込んでいく様はもの凄く豪快。ダイナミズムに満ちたスケール感の大きさは強烈であり、エレクトロニカやストリングスで装飾された音の輝きもまた見事である。静寂の共有、空気を震わせるように轟く音のうねり、魂の解放、クレバーな楽曲展開。まるで新人とは思えないような深遠なサウンドスケープは真摯なドラマを演出、渦巻く音の粒子がドラマティックに躍動して七色の鮮やかな煌きを放ち、聴く者を虜にしていく。運命を切り開くには十分なデビュー作で、結構センチメンタルな気分に浸れます。

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