God Is An Astronaut ‐‐Review‐‐

2002年に結成されたアイルランド・ダブリン出身のポストロックトリオ。現在までに4枚のアルバムをリリースし、徐々に頭角を現している。

レビュー作品

> Age of the Fifth Sun > God Is An Astronaut > Far From Refuge > The End of the Beginning


Age of the Fifth Sun

Age of the Fifth Sun(2010)

    1年半ぶりとなる5thフルアルバム。最新作『エイジ・オブ・ザ・フィフス・サン』における表情は3rdアルバムの『ファー・フロム・レフュージ』に近い印象を受ける。時折、厚みのあるアンサンブルで天空へとグイグイと引っ張って行く場面もあるが、全体的には静へとベクトルが向いている。繊細なメロディや美麗なハーモニーに重きを置き、丁寧に音を鳴らしながら意識の水面下から陶酔を促していく。それは、あらゆる感情を美に昇華したかのようなサウンドスケープ。 3rdアルバムを職人的にアップデートした感じといえるだろうか。故に、前作のような戦慄が走る豪快なダイナミズムを期待すると肩透かしを喰うだろうと思う。実際、僕も最初に聴いたときは、狂いも無く丁寧に包まれたかのようなサウンドに面食らってしまった。

 だが、波のようにゆるやかに迫りくるメランコリックな音粒子が造形していく、シリアスで厳かな世界観に惹かれるのも事実だ。鍵盤の上質な響きが優しく心を解きほぐし、シンセは奥行きを柔らかく広げていき、静かに稜線を描いていくギターも切なく聴き手に訴えかける。それもさらに神秘の色合いと端正な詩情を増した形で。いつものように豪腕とはいかないけれども、確かな腕前で変幻自在に楽曲を引っ張るドラムは柔らかい起伏をもたらし、独特な雰囲気を加味。即効性のある楽曲こそ少ないが、静・動パートによって浮かび上がる色彩的な濃淡も含めて、心への浸透度の高い楽曲が揃っている。

 個人的には、前作を力強く更新する作品を大きく期待していたのだが、元々の特徴や独自の美学をミリ単位で突き詰めたかのようなこの作品は深化を物語っていると思う。あらゆるジャンルの素養を生かしながら見事に結晶化した一枚であり、映画のサウンドトラックのように耽美で壮大な作風にはうっとりとするほか無い。


God Is An Astronaut

God Is An Astronaut(2008)

   前作から1年強という短いスパンでリリースされた、自身の名を冠した4thフルアルバム。そのことからも自信作といった印象を受けるが、これまでより一段と精悍さを増した前作から、またさらに高みに登り詰めてかなりのパワーアップが成されているのがこの作品。“まみれるたびに恍々とするような至福の轟音と美麗かつセンチメンタルな詩情を組み合わせて、かつてない桃源たる白昼夢へと聴き手を誘う作品” そう表現したくなるぐらいの力作に仕上がっている。

 ギターの美旋律による五月雨とメランコリックに紡がれるアルペジオに加え、リリカルなピアノやストリングスを絡めて大きくてふくよかな曲線を描くようなインストゥルメンタルという仕様自体はこれまでとそこまで大差は無いと思う。ただ、GYBE!辺りを思わせる凄まじいギターノイズや荒々しく打ち込まれるドラムだったりが前作以上に激しいダイナミズムを全面に打ち出しているのでその豪腕っぷりに改めて体に衝撃が走った。儚さを帯びたセンチメンタルなギターから、要所でパワフルなアンサンブルで轟音を炸裂させていく#1「Shadows」からして説得力が違う。

 その後も轟音ポストロックを地で行く曲を中心に、甘美な幻想を纏ったシューゲイザーから物憂げなアンビエントまで登場するが、いずれも熟成を重ねた深みが増しており、全体通しても精神への圧力と浸透度がこれまでにないぐらいのものを誇っていると感じた。世界観にしても、退廃を意識させるようなゴシック風モノクロ虚無世界を描いていたのが、蒼白い月光が闇夜に憂いだ色彩を与えているような印象があるのも特徴的で、淡い切なさが味わい深い余韻と共により引き立っているような印象を与えている。かと思えば、ストレートな勢いで持って昂揚感を掻き立ててくる#7「Zodiac」のような一撃必殺の爆裂インストもあり。そういった点を踏まえても、研ぎ澄まされた感性を発揮した彼等の集大成とも位置づけできる作品といえるだろう。胸打つ美しいハーモニーと豪快な炸裂感は完成の域に達したようにも思える。


Far From Refuge (2011 Remastered Edition)

Far From Refuge(2007)

   2ndアルバムを発表してからアンビエント寄りの5曲入りEP『A Moment of Stillness』を挟んで約2年ぶりとなる3rdフルアルバム。2ndはまだ聴けてないが、1stの頃のようなエレクトロニカに傾倒してた印象は本作からは強く受けない。ギター・ベース・ドラムのシンプルな構成から吹き飛ばされるような轟音の烈風を召喚する#1「Radau」から早くも強烈な昂揚感が体中に走る。その点からしてバンドとしてのパワフルなダイナミズムを打ち出して勝負をかけてきた印象がある。センチメンタルな詩情を徐々に天へと昇華していくような#2「Far From Refuge」にしてもラストの解放感が半端なく、掴みとして十分。胸打つハーモニーは彼等の深化をそのまま物語っている。ただ、しなやかな叙情を垂れ流すピアノが魅力的な#4以降の楽曲では、轟音に揺さぶられることは無いので全体的になんだか引っ込んでしまったなあという印象を受けてしまう。その辺りは以前からの持ち味である儚くも切ない感情を募らせる、仄暗い世界観を描写しているのかもしれない。圧倒的と表現して差し支えない序盤の轟音によるカタルシスと暗く美しいハーモニーを良いバランスで組み合わせて緩急をつけていたらなあと思うと少し残念。しかしながら、ポストロックの次世代を担うバンドとしての可能性を大きく感じる一枚に仕上がっているのは間違いないだろう。


End of the Beginning

The End of the Beginning(2003)

   アイルランドのポストロックトリオGod Is An Astronautのデビュー作。ギター、ベース、ドラムの三者がゆったりとしたリズムを奏でつつ、シンセやピアノを多用して静かな波打ち際を思わせるような、儚くも切ない雰囲気を醸しだしているインストゥルメンタルロック。ジャケット写真のように歪んだ爆発を引き起こしているような印象は無く、全体的に冷たくて仄暗く、妙に静かで淡々としている。モグワイやGYBE!の先人達のような終末に向かってカタルシスを引き起こすような轟音へと発展していくわけではないので、そういった静・動のダイナミズムを期待していると肩透かしを食らうことになるだろう。実際、自分もここまでシンセサイザーが強調されているとは露ほども思わず。ただ彼等が生み出す音というものは、BGMのように淡々と流れているようでドラマティックな軌道を描いており、深みと重さを感じさせる。エレクトロニカを大胆に取り入れながらも生楽器との共存による流麗なメランコリーが実に味わい深い。ダークな側面を強調した荘厳な佇まいもまた惹かれる要因の一つといえる。日常に寄り添うようなものではないが、自分の心の闇と向き合うときには迷わずセレクトしたい一枚かもしれない。

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