GOATBED ‐‐Review‐‐

cali≠gariのヴォーカリスト、石井秀仁によるサイドプロジェクトにとどまらないプロジェクト(2003年始動)。初期のポストロック、中期の80’s風ニューウェイヴ/エレポップの現代版アップデート期を抜け、現在はミニマルテクノを軸にクールでユニークなサウンドを志向してリスナーを驚かせている。

レビュー作品

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optimist

The optimist sees the doughnut, the pessimist sees the hole(2015)

  2014年にはTVアニメ『DRAMAtical Murder』の主題歌『SLIP ON THE PUMPS』で名を広めた、GOATBEDの約1年半ぶりとなるミニアルバム。ライヴ会場限定盤と店舗盤で別内容となっておりますが、わたくしは8年ぶりにライヴへ行き、ちゃんと会場限定盤をゲットしてきました(5000円也)。

 内容としては『HELLBLAU』から継続しての90’sテ クノ寄りの作風。Hardfloorをより華やかなミニマル・ダンストラックにしたような表題曲の#1、歌声を楽器のように配置しながらクラフトワークや YMOを思わせる楽曲に仕立てた#2「Poisonous red hair and melancholy fireworks」と横揺れの気持ちよさに浸れる曲が序盤に並ぶ。印象としては、石井兄弟編成になってからの趣向が強い。しかしながら、かつてのエレポップ風の涼やかな歌ものとして機能している#3「ROSE&GUN」や三上博史のカバー曲#4「BETY BLUE~Suffer Baby~」といった、ロマンティックな雰囲気ものも良い塩梅。

 #5~#7までの3曲は、店舗盤と収録内容が異なる。1文字違いの#5 「踊れない症候群」はアンビエント寄りであるけど、霞がかったノイズが心地よい。さらにはアニメ提供曲の#6「MANISH FIEND」と#7「天使たち」を再構築して収録。あくまで全体を通してお洒落すぎない感じに抑えているのが、今の彼等のモードでしょうか。

  会場限定盤はこの上にCD2枚とDVD1枚がプラス。CDの方には、昨年12月5日に新宿ReNYで行われたワンマン公演のアンコール前までの全18曲 が、2枚に分けて収録されている。クールなダンス空間を創生しつつ、セクシャルな石井さんの歌声がポップな響きをちゃんと加味してて、今のGOATBEDがしっかりパッケージされた作品かと思う。DVDはそのライヴのアンコールから1曲収録されています。

 ちなみに雰囲気の良い箱に入っているけれど、嫌がらせのようにケースが出しにくかったので、上部の取り出し口が破けてしまってた。泣きたい・・・。

 


 

ying&yang (TYPE A)

「」ying&yang(2013)

 

 80’sエレポップから見事な転身を遂げたGOATBEDのフルレングスとしては6年ぶりとなる新作。昨年に発売されたミニアルバム『HELLBLAU』からの延長線上にある作風で、編成も石井兄弟を継続している(といっても実質は、石井秀仁さんのソロと言える形)。

 抑制されたトーンのアンビエント~ミニマル・テクノ風の仕様は変わらずで、モノクロームに近いほど色彩感は控えめで、地を這う低音ビートの上に、楽器として使われている石井さんのセクシーなヴォイスが効果的に用いられている。#8「COSMOCALL FIELD」や#11「DRAEMON DREAMER」といった後半の楽曲では、それなりの派手さやポップさが乗っかってくるが、全体的にはダブステップの流行りも何のそのといった感じで、ひたすらストイックに90’s風のテクノをベースに彼らしく組み立てられている印象かな。前作での影響も顕著だったJeff MillsからMoodymann、Aphex Twinまでいろいろな要素が感じられる。

 その上での「Ying & Yang」におけるクールなかっこよさ、黒いグルーヴが押し寄せる#4「Riff-Raff」のディープな鳴り、ラストを飾る#12「in the OVAL」のエレガントさとユニークな味わい。前作から一段と磨きのかかったサウンドが心地よい快楽を生む。ヴォーカル・レスVerとなっているDISC-2もまた、声という素材無しでより無機質で低熱な仕上がりとなっている点もおもしろい。やはり、彼の才能は計り知れないということを思い知らせる1枚。

 


 

 

HELLBLAU(初回生産限定盤)(DVD付)

HELLBLAU(2012)

    cali≠gariの本格的活動再開、元MALICE MIZERのKoziを迎えての新プロジェクトのXA-VATと珍しく意欲的に活動する石井さんのプロジェクト、GOATBEDの3年半ぶりの新音源となるミニアルバム。そのGOATBEDはいつの間にやら、石井秀仁さんの実弟である石井ユウジさんとのデュオ編成になってたらしい(アートワーク周辺を担当しているとか)

 GOATBEDといえばニューウェイヴ/エレポップというジャンルに軸を置きながら、どこまでもその可能性を広げていってるわけですが今回はどうか。3年半の歳月も手伝ってか、ポップは控えめにしてミニマル・テクノ~ダンス・ミュージックとしての側面を押し出したつくりといえるでしょうか。四つ打ちを基調としたリズムに色鮮やかなシンセサイザーが引きつけ、ポップの調味料と化しているヴォコーダーを使った石井氏の歌声が絶妙なさじ加減で投下される。ゲームのサントラへの提供曲も含んでおり、そういった旨みも獲得しつつもクールなつくりがこれまでとは少し異質かなあと感じるところ。声をさらに楽器的に使っていて、インストの比重も大きいし。前作『V/A』の流れから考えると予想ができなくて、石井さんの遊びココロはやっぱり読めません(笑)。

 特にテクノへの影響がダイレクトに表れている#5「Hard Liminal」は、タイトルもそれっぽいけど、おもいっきり初期のJeff Millsリスペクトみたいなハード・ミニマルでアゲにかかってくる。それに#4はHardfloorにレイヴな感触が入ったような感じかなと個人的には。そのなかでも、美しいシンセのカーテンと特有の艶やかでセクシーな声で魅了する#6が一番つかみはいいかと思います。太いベース音に揺られつつもメランコリックなシンセが開放的に響く#2も心地良い。

 かつての『テクニコントラストロン2』よりもダンス・ミュージックにここまで向きあうとは驚き。しかしながら、やはり感嘆する内容に仕上がっていてさすがだなあと。タワレコで買うと本作収録曲を中心とした7曲入りのインストCDが特典でもらえたけど、こちらもおもしろいですよ。特にめちゃくちゃフロア仕様な#6「De Slash Inst」でガンガン盛り上げて、#7「Ai Catch Inst」で美しい魔法とともにさらに突っ走る締めくくりは最高。


 

V/A

V/A(2009)

   活動休止中なのに新作を届けるという荒業(ってか新作なのか?)。相変わらず世間をおちょくってるのかそれとも天然なのかよくわかんないけども、エレポップの奇才・石井秀仁はやることが違います。自由人というか・・・。ついこの間には、あ~ちゃんの妹をそそのかしたエレクトロユニットで、売名行為に出る抜け目ない戦略をとったことが幸いして、本作がいつになく売れているらしい。

 内容はこれまでにパッケージ化されていない曲を選りすぐって再録した楽曲集らしいけど、一応新録4曲+再録4曲という全8曲が収められている(前のスプリット盤は聴いてないのでどれが新しいのかは詳しくわからんが)。でもやっていることは相変わらずで#2「YOUNG VANING」からエレポップ石井節がお構いなしに炸裂。ニューウェイヴ・エレクトロニカなピコピコ具合は変わりようが無いけれども、狙いすましたダサさが軽~く抜け、より洗練されて小洒落た形になってきた印象を受ける。

 『シンセスピアンズ』と比べると程よく丸みを帯びている感じかな。キャラクターに似合わない明朗なポップさも変わらずで無機質なサウンドながら、歌メロの甘さがセクシーに決まっております。キラキラっぷりが癖になる#3「DECORATIBO」に#7「VOGUE MAN」はある意味で爽快だし、アンチテーゼ的な初期の「風穴」を想起させるマニアックな音響空間を創生する#4の特異な演出も存在感バッチリで、フレッシュな魅力や艶やかな色気と共に昂揚感を掻き立てる作品に仕上がっているかと思う。石井御大は一人になろうと、いい仕事してます。みなが忘れかかったときには、また新作をお願いします。


 

シンセスピアンズ

シンセスピアンズ(2006)

  ベスト盤の「GOATBED」を除けば1年半ぶりとなるアルバム(タイトルは前シングルと同名)。自分は、ライブ会場で買った石井さんのサイン付きのものだったりします。今作は聴いてみた感じ、アングラ臭のするサイバーチックな楽曲の多い#1~#6、弾けるような明快なポップさでガラッと変わる#7~#12という風に別れている印象を受けた。真っ黒だった世界が虹色を一面に広がるかの如くカラフルな世界へ様変わり。完全に狙っているだろといえるサウンドがきっちりと我々のハートを掴んできます。硬質なデジタルサウンドの強いダンスチューンの#5やどこか皮肉めいたエレクトロサウンドの#6が前半では好み。ポップさのリミットを越えた#8や#10なんてあまりの弾け具合に驚くも何故かはまってしまう。そして今作の目玉といえるだろう渡辺美里のカバー#11「恋したっていいじゃない」ではあまりの素晴らしさに顔から笑顔が消えませぬ。どうせリスナーのこういう姿もここのヴォーカルの方が想像して笑ってるんでしょうね。完全に確信犯(笑)


 

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シンセスピアンズ(2006)

    web限定発売シングル。久々の新曲「シンセスピアンズ」(そうでもなかったりする)はめちゃ打ち込み&ダンサブルな仕上がりのアッパーチューン。ヴォーカルも少し弾けている。5曲目に入っている過激なミックスバージョンはさらに歪みまくっていて、過激すぎるほどのアレンジ。余計に神経が侵されそうな感覚でマヒ症状みたいな感覚に陥るかも。あとはアルバム「ワーキングウォークマン」に収録されている曲のリ・レコーディングバージョン3曲を収録。大きくは変わっていないが、どの曲もダイナミズムを増したというか、スケールが大きくなったように感じる。#2「ツートンキラー」はカーチェイスするようなスリル度の高い楽曲で、前バージョンよりかなり刺激的。5曲とも粒が揃った楽曲ばかりなのでWeb限定でしか手に入れられないのは凄く残念だな。


 

GOATBED

GOATBED(2006)

    テクニコントラストロン01,02の曲のリ・メイクを中心としたベストアルバムともいえるリ・ニューアルバム。新曲も#1「エアロカッター」、#6「シャンバランバ」と2曲収録。ベーシストが抜けた影響からか、楽曲は80年代の薫りを包括しながらもより近未来を感じさせるサーバーチックに進化(本人曰く87.5%進化したそうです)。確信犯的に心を射止めるメロディであったり、相変わらずの石井さんの美声だったり、アレンジのきめ細やかさであったり、言葉のボキャブラリーであったり、それらの要素は人に確実な刺激をもたらす。

 過激なサウンドがしっかりと脳髄に刷り込まれるアッパーな#1から心地よい。無重力の宇宙空間に放り出されたかのように錯覚する#3「ロケットベイベー」,#4「アナーキックマジック」、さらに鮮度と輝きが増した#7「ウレイ・デイ・バイ・デイ」、#9「ウォー・ウォー・アイ・ニー」#10「ポップグルーヴ」など聴き所はたくさん。特に近未来へ繋がる高速道路を突っ切るサイバーチックな#13「ラジカルバーバリアン」、暗から光へという再構築を行いポップな息吹を吹き込んだ#15「アンガー」の2曲がお気に入りです。石井さんの多々或るセンスがせめぎあって生まれただろうこの作品。聴いてみたらなかなかいい時間が過ごせそうですよ?


 

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ワーキングウォークマン(2005)

  メジャー発売されたフルアルバム。10曲収録で2100円という価格設定からして優しいです。聴いてみた感じ、前作よりも色彩豊かな世界になったなという印象。派手になった?という感じかな。80’sニューウェイブを軸に今時の音楽をミックスさせ、独自の音楽を創り上げています。電子音のピコピコ感とポップなメロディが心地よい#1「ニューロマンサー」、抜群のドライヴ感が気持ちよい#4「ツートンキラー」、ゲームのBGMにも使われそうなインスト#6「テクニコントラストロン」など好き。特にラストの流れは心地よく気持ちよいビートを叩き込むダンサブルチューン#8「ジオデジオ」から「に人々の涙腺を刺激し感動へと導く#9「セッズセッズセッズ」、#10「ワーキングウォークマン」の流れが絶品。この人のセンスには本当に敬服。より刺激的でより感動的な作品を次回も作って欲しい。


 

モニカ

モニカ(2005)

    再メジャーデビューとなった2000枚限定シングル。cali≠gari時の所属レコード会社だったビクターから発売された。「モニカ」はあの吉川晃司のデビューシングルのカヴァー。原曲知らないからうまいこと表現できないが、これはこれでおもしろい。おそらく全然違う鮮度を持った楽曲になったと想像。カップリング曲はgoatbedの1stアルバムの「循環の音色」の再録(表記も「ジュンカンノネイロ」となってます)。打ち込みの音がより効果的に使われ、優しく包み込むような感じがとてもよく、素晴らしい仕上がりになっている。去年、俺が参戦したライブではこちらのバージョンであったような・・・ 。ともかくこの曲も「ワーキングウォークマン」に入れて欲しかった。ちなみにジャケットは「TO-Y」でお馴染みの上条敦士の書き下ろしデザイン。


 

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テクニコントラストロン02(2004)

    2ヶ月連続リリース第二弾。石井秀仁という人間が影響を受けてきた音楽がわかるのがこちらの02。楽曲の大半は打ち込みによるインストゥルメンタルに近い形(ヴォーカル収録曲は多いけど)で収録時間も10曲で約25分という短さですが、確実に満足できる内容。01とはまるで対極に位置してそうだが、曲を聴いていると2枚のアルバムのリンクというのを少なからず感じることができる。歌ものと思われるのは#8「アンガー」ぐらいであとはインストやそれに近いヴォーカルを合わせた感じに仕上げています。

 電撃ネットワーク的と本人も評していた#1からジャーマン・テクノサウンドの脳への痛烈な鉄槌を打ち込む#2「アナーキックマジック」のコンボはいつ聴いても刺激的。#2はGOATBEDの曲で一番好きだったりする。#5は敬愛するWIREの「Two People In a Room」のカバー。原曲とは違い随所に石井節が炸裂している。全部聴きとおしてもやはりリスナーは石井秀仁という男に支配されているなあと。この曲がお前たちにわかるか!などと挑戦的な面も感じる。01では彼のある種お仕事的な面も見受けられて僕もそっちの方がやっぱ性に合うので好きだが、石井のディープな面をパッケージにしたものは絶対にコチラ。彼の人生の教訓、影響その他諸々、顕著に出たのがこのアルバムです。


 

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テクニコントラストロン01(2004)

    2ヶ月連続リリース第一弾。02と対を成す作品であり、石井さんのポップなメロディセンスが爆発している1枚で非常に耳馴染みの良い楽曲が揃っている。思わずトキメキを覚えるメロディの良さ、耽美で甘いヴォーカル、効果的なエレクトロサウンド、どれも心の扉を開いてくれます。オープニングの#1「ウォー!ウォー・アイ・ニー」から穏やかな風がずっと吹いている感じ。 特にオルタナギターサウンドと打ち込みサウンドが絶妙に融合する#4「13レシオ」、中華風のメロディと癒し系のヴォーカルが涙腺を刺激する#7「夢縁のメタファーあるいは、ウタだけ」が好み。エレ・ポップ路線へと足を踏み出したのはこの作品からだろう。ボキャブラリーに溢れるタイトルや詩であったり、やはり我々の理解の範疇を超えた才能を彼は持っている。やはり“奇才”石井秀仁にはかないません。メロディ・メーカーとしての才能を如何なく発揮。実験段階を越したテクノ・ポップロックが心を奪う作品であり、ファンからも人気の高い作品です。


 

goatbed

goatbed(2003)

   カリガリ活動休止からわずか2か月半でリリースされたミニアルバム。枚数限定生産だったらしく(1,000枚とも3,000枚とも言われておりますが)手に入れることができて非常に幸運。(カリガリ活動休止により)自由に弧を描けるようになったことでcali≠gari時代よりもさらに幅を広げて、様々なタイプの楽曲が楽しめるようになった。歪んだギターサウンドと電子音を駆使していることに変わりないが、楽曲から普遍的な魅力を感じる。

 #1「テンプ」と言う曲は深海から宇宙までの広がりを感じさせ、目の前の真っ白なキャンパスを次々と描いていく楽曲。ポップさを包括しているところがまた聴きやすい。#5「風穴」は少しプログレテイストも感じさせる今作で一番凝っている曲で、風穴から時空を越えた風が吹き込んでくるような不思議な感覚をもたらせる。循環する音色がどこか浮遊感を生み出すポップな#7「循環の音色」が特に好みです。ラストの柔らかくも温かいサウンドでポストロック風のアプローチを試みている#8「ゴートゥベッド」もさすがと思える曲。今作はこれから発売される後の作品に比べてもとても実験的な作品だと思う。ジャケットみたいに最初は白、途中で様々に色を変えていくけれども、結局は純白に戻るような感じ。改めて聴いてもこの作品だけは答えが見つかりそうにもないな。実はgoatbedの中で一番凄いアルバムなんじゃねえ?と密かに思ったりもしている。

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