Gold Panda ‐‐Review‐‐

UKイースト・ロンドン出身のトラックメイカー/リミキサー。イギリスBBCや、アメリカの有力インディ・メディアPitchforkから「2010年期待の新人」と呼ばれて高い評価を獲得しており、エレクトロニカ~ヒップホップ~ミニマル~ダブステップを鮮やかに横断する新世代のトラックメイカーとして期待を集めている。自称・日本語検定2級を持っているそうで、かつては川崎市に長期間住んでいたとか。


ラッキー・シャイナー

Lucky Shiner(2010)

   “ポスト・ダブステップを切り拓くUK新世代のエレクトロニカ・クリエイター!”という国内盤帯の言葉に負けない傑作である。AFXが残した『セレクテッド・アンビエント・ワークス』の現代版とも評されているほどでもあり、BBCやピッチフォークで期待されているのも納得する内容だ。

 無垢な煌きを持ったシンセと人懐っこいメロディの柔らかな反復がダンスミュージックの快楽と躍動感と混ざり合って、とても自由で優雅な世界を形成している。インストのエレクトロニカでありながら非常に歌心を感じさせ、美しいサンプリングはセンチメンタルかつ温かく耳を包み込む。それにヒップホップ~ミニマル・テクノ~ダブステップを精微かつ巧みにブレンド、なおかつおもちゃ箱をひっくり返したような楽しさに溢れている。このファンタジックでオリエンタルなサウンド、アコースティック・ギターの音色がもたらす牧歌的な雰囲気、ゲーム・ミュージックのような感触、AFXを思わせる柔らかな電子音の揺らぎ、中華風のフレーズの駆使などアイデアの豊富さが自由自在に世界を拡張させているのが面白い。スタイリッシュな美しさを見せるしダンス・ミュージックの快楽もあれど、決して定型した枠組みに収まってない印象だ。

 冒頭の名曲”You”に本能の赴くままに引き込まれ、その後は美しいエレクトロニカ/ポスト・ダブステップの前にひたすら琴線をくすぐられては創り手の悪戯な遊び心に胸が弾む。ロマンもユーモアも兼ね備えた詩的なサウンドは、近年のテクノ・エレクトロニカと共振しながらも独自性と摩訶不思議な引力を持っている。国内盤のボーナス・トラック7曲という大盤振る舞いも嬉しい限りだ。

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