Holy Other –Review–

NYのインディーレーベル、TRI ANGLEの第4弾リリースにマンチェスターの謎のアーティスト。

レビュー作品

> Held > With U


Held

held(2012)

   昨年の5曲入りEP『With U』に続く待望の1stフルアルバム。リリースは前作に引き続いてTri Angleからで、音楽的にもEPからの継続・強化路線のポスト・ダブステップ~ウィッチハウスの要素を強く感じさせるものである。重心の低いビートに深いリヴァーヴが視界を歪め、艶のあるR&Bっぽい歌とあどけない少女の声のヴォイス・サンプリングが軽やかに揺らめいて、海の底へ底へと徐々に引きずり込む。エレガントなシンセも散りばめられ、果てはゴシックな陰性の妖しさや幻想的なアンビエントも内包。それらがゆっくりと昂揚させ、甘い毒となってジトジトと効いてくる。オープニングの#1「(W)here」から煙たくもミステリアスな音像がここではないどこかへと連れて行かれることだろう。きらびやかな音色と小さな子どもの声がサンプリングされた#2「Tense Past」みたいにメロディからして馴染みやすい曲も含めている。それでも漂う寂寥感や孤独感が彼の作品が放つ陰の要素を強くしており、#5「U Now」辺りは特にダークなムードを醸し出しているように思う。なかでも#4「Love Some1」や#8「Held」でつくりあげる儚くも耽美な音世界は、特にHoly Otherの個性が発揮されているかと。Balam Acabと並んでTri Angleではチェックしておくアーティストである。


With U

With U(2011)

   Balam Acab、How To Dress Wellを送り出す注目のレーベルTri Angleの第4弾アーティストのEP。5曲入り約22分という短さではあるが、暗欝で茫洋としたサウンドに意識が自然と吸い込まれる。太くうねるベースラインを軸にゆっくりと進み、シンセが主張してはリヴァーブのかかったヴォーカル&サンプリングがミステリアスに鳴り響くのが大きな特徴。静謐の中で音数を絞って空間を上手く生かしており、暗く煙たい音の意匠が目立つ。James Blake以降の歌もの系ポスト・ダブステップを暗闇の中で醸成したのが印象的かな。まどろむという感覚はこちらの方が上で、現実と夢との狭間で揺れ動く感覚が強い。チルウェイヴとダブステップの組み合わせなどと評されてもいるようで、確かに#4を聴く限りでは優しいシンセと儚いサンプリングからは、そういった方面へ触手を伸ばしている事も理解できる。また作品の端々からはゴシック、トリップホップといった単語も浮かぶことだろう。しかし、より煙たく、暗い。そして妖しく幻想的である。硬質なビートの上でゴシック的なサンプリング・ヴォイスが幽玄の森へと誘う様な#1はそれこそオープニングとしてこの上ないし、深いリヴァーブが意識をより吸い寄せる#2にも迷わず拍手を送りたくなった。5曲ながらダークな音楽好きを揺り動かす要素は揃っている、申し分のないEP作品である。

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