Horseback ‐‐Review‐‐

ノースカロライナを拠点に活動するソングライター/マルチ・インストゥルメンタリストのJenks Millerによるプロジェクト。ポストメタル/ブラックを基盤にアヴァン、ノイズ、クラウトロックまで行き交うそのサウンドは虚無の闇を広げるような世界観を有している。

レビュー作品

> The Gorgon Tongue > The Invisible Mountain


The Gorgon Tongue: Impale Golden Horn / Forbidden Planet

The Gorgon Tongue(2011)

    アメリカ・ノースカロライナ出身のマルチ・プレイヤーJenks Millerによるソロ・プロジェクトの2枚組アルバム。新作ではなく、07年発表『Impale Golden Horn』と10年発表の『Forbidden Planet』を合わせた再発盤になる。

 まずは『Impale Golden Horn』の方から言及するが、こちらは1stアルバムに該当するみたい。4曲約50分という大作志向の作品だが、こちらはブラックメタルに開眼する前のようで穏やかなアンビエントに全身が包まれる。17分にも及ぶ#1「Finale」から粒立ちの美しい音に優しく癒される。静に傾いたベクトルの中でギター、ピアノ、電子音をまぶしながら丁寧に織り上げていく。そして、時にはドラムや歌が入って躍動感と包容力を加味。その音に連れられ大地を飛び立ち、天空を優しく浮遊するような心地よさに終始満ちている。#4「Blood Fountain」ではまろやかな歌い回しとエレガントなピアノが美しさと浮遊感を醸し出しが親和し、ラストのドラムの蠢きが空へと意識を吸い寄せていく特に印象的な1曲だ。

 下記でもレビューしている2nd『Invisible Mountain』を挟んでリリースされた3rd『Forbidden Planet』では、その流れを汲んでダークなエレメントが散りばめられている。鼓膜を劈くノイジーなギター、呪術的なブラックメタル風の歌唱が乗り、アトモスフェリックな意匠も加えながら邪悪な空間性と独特の浮遊感を実現。神秘と暗黒をふらふらと行き来しながら、聴き手の内省に迫る作風になっている。また、徐々に膨れ上がる音圧が鼓膜に圧し掛かり、延々と続くノイズが神経の一本一本を鋭敏に刺激し続けるのが強烈。アンビエントという共通要素は存在するものの、1枚目と2枚目でまるで別人のような作品に仕上がっているので、聴いてて驚く人は多いのではないだろうか(聴いてる人は少ないが)。全6曲中#1~#5までにそこまで差異が無いのが気になったが、#6では血の気や感情が一気に引いたようにクールでアンビエンスな空間が広がるのが逆に印象に残ったりも。しかし、2ndからの地続きの順当な一手というのは理解できた。

 ちなみに本作はbandcampにて全曲試聴が可能。柔らかな空間の広がり、そしてブラックメタルの粒子を巧みに織り交ぜた新境地を開拓するこのアーティストの価値が理解できるはず。下記で記述している『The Invisble Mountain』も同様に全曲聴く事ができます。 http://horseback.bandcamp.com/


The Invisible Mountain

The Invisible Mountain(2009)

   ノースカロライナを拠点に活動するソングライター/マルチ・インストゥルメンタリストのJenks Millerによるプロジェクト、Horsebackの2ndアルバム(2009年発表でRelapseから2010年にリイシュー)。

 ただひたすらに虚無感を垂れ流す憂げたギターの音色と心地よく低音を響かせるベースライン、さらには引きしまったドラムが、ミッド~ロウテンポで輪郭を縁取りながら深遠なる物語を描くポストロック/ポストメタル系のサウンドスケープがまず耳をひく。それを最短7分、最長16分という長丁場の中でドラマティックに発展させていくのが基盤となっている。そんなバックの演奏だけとってみると情感豊かなフレーズで温かみや浮遊感を感じさせたり、哀愁あるメロディが背中をさすってくれるような場面もあって、それ系のリスナーに好まれる音を出していると思う。ただ、美しい世界観を思いっきり台無しにするブラックメタルの金切りヴォイスで喚くヴォーカルが異端さにさらに拍車をかけている。一切クリーンヴォイスは挟まずに黒々しい悪意を幽玄なるサウンドスケープに流し込むこと(しかしVoの録音レベルはかなり抑え気味)は結構、おもしろい。その点を考えるとAlcestやAltar Of Plaguesなどとは逆でポストロック/ポストメタルからブラック・メタルに接近していったという方が正しいのかもしれない。

 タイトルトラックの#3はここぞとばかりに美と醜のコントラストを極めたスラッジ/ポストメタル曲で、終盤のトレモロの海の先にある絶叫に神経は麻痺。16分越えの#4は優しく爪弾かれるギターの柔らかな音色とアトモスフェリックな淡いキーボードが映画のサウンドトラックのような美しい佇まいを形成しているものの、やはりヴォーカルが狂気を注入して台無しにする辺りに矜持がある。身体を真っ二つにするような醜の部分をヴォーカルと一部のスラッジ/ドゥーム要素で機能させている辺りも新鮮に思う。ISISが見え隠れする表現力も備えていて、暗い深海の奥から淡い光を抜き取っていくような美しさを感じさせてくれるのもまたよい。幽玄な世界を邪炎が駆ける不思議な作品である。

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