カリフォルニア・ロサンゼルスで、結成されたポストメタルバンド4人組。元EXHUMED(エクジュームド)、PHOBIA(フォビア)、MOUTH OF THE ARCHITECTのメンバーが結成しただけあって、現在のポストメタルとはまた違った展開をみせている。
レビュー作品
> Valley of Smoke > Prehistoricisms > Void
Valley of Smoke(2010)
約2年ぶりとなる3rdアルバム(本作もCentury Mediaからリリース)。前作では、初期の紅く染まる様な暴力衝動を抑え目にポストメタル化を図ったわけだが、本作でもその路線を継続。Cynicを思わすテクニカルデス/プログレシッヴ要素にISISの轟音波動と展開美を組み合わせたかのようなサウンドで相変わらず強烈な印象を残す。
一撃で急所を突く殺傷力抜群のリフと俊敏かつ強烈なリズム隊が荒涼とした風景を描きゆく中で、唐突に凪いだ叙情が挟まれる、そんな複雑極まりない展開で攻め倒すのだが、静と動の緩急の精度が前作よりも高まっている。パーツ単位の吐き出し方がスムーズになったというか、動から静、静から動への無理矢理なサイドチェンジも鮮やかに行き来させている印象。憎悪の塊のような轟音、麗しく咲く叙情、強烈なアンサンブルによって研ぎ澄まされたグルーヴと、美と醜の対比にさらに大きな落差をつくることで冷やかな緊張感と鋭敏な刺激力がガツンと増した。むろん、それは磁石のように両極をくっつける微細に渡った音づくり、理知的な構築力が生きているからこそ。一部の隙もない、あくまでコアで引き締まった感覚がある。
MeshuggahやBetween The Buried And Meとも共振している部分は多いように思う。個人的にはRosettaをさらにプログレ化した印象が強かったりするが。また、複雑怪奇な展開を魅せる中でもドラマティックな色合いは前作より強まっている不思議さもある。おそらくそれは、けたたましい中で柔らかな浮遊感やウッドベースのふくよかな音色、滋味深いクリーンヴォイスの入れ方など、美に対しての肉付けが抜け目なく成されているからであろう。作品冒頭を飾る#1「Elegy」、#2「Above」等は特に彼等の進化/深化を物語る曲に仕上がっていると思う。前作同様にトライヴァルなリズムが強調されたタイトルトラック#7のような工夫もあり、休まる暇はなし。聴き進めるごとにインパクトを上塗りし、奥が深まっていくような感覚すら有す。凶悪でありながらも神秘的な薫りやコンセプチュアルな崇高さまで漂わせる本作は、バンドとしての前進を確かに感じさせる一枚といえるだろう。
Prehistoricisms(2008)
企画盤である「The Challenger」をはさみ、約2年ぶりに発表となった2ndアルバム。随所で炸裂しまくっていた轟音爆撃は今回控えめで、かなりポストメタルというジャンルに近づいているのがまず第一印象だろうか。漆黒と鮮血が空間を侵食していくかのようだったあの殺伐とした感覚、殺戮の音はかなり薄まっている。というのもある程度予想されたとおりにポストロック的な静寂と美を積極的に取り入れることで、ドラマティックな色合いを強めてきたからだ。かなりその静寂の部分やメロディの足回りに気を遣っている。それでも異常ともいえる混沌の吐き出しっぷりは前作同様で、とてつもくエグく殺意に満ちたサウンドが次々と畳み掛けてくる様にはやはり惹かれてしまう。そこに洗練されたメロディが絡むオーガニックな感覚は「Oceanic」辺りのISISを思わせる。動と静、美と醜の対比が前作よりもさらにはっきりと浮かび上がる内容となっていて、取っ付き易さは増した。ただ、これが良かったかというと、前作以上激のうねりを期待していた者からすると少し寂しい。所々では、トライバルなリズムやドラムソロなどのアイデアも駆使し、聞かせどころをしっかりつくっていておもしろいが、やはり暴力的で混沌としてた方がこのバンドらしいのかなというのが正直なところか。
Void(2006)
グラインドコアやハードコアを戦場にしているヤツラが集まって結成されたスラッジ/ポストメタルバンドの1stアルバム。”ポストメタルであれば、Intronautは外せない”というようなのを見て手にしてみたけど、なんだこれ。幕開けこそ壮大でこれから轟音と静寂による美しい物語が・・・と錯覚するのだが、不穏なギターリフが掻き鳴らされたのを合図に徹底的に汚れきった音塊が吐き出され、その紅黒い濁流が万物を最果てまで流していく。血反吐を吐くかのような憎悪に満ちた叫びに、重く濁っていて切れ味も抜群なリフ、時にはウッドベースも使用して隙間を絶妙に繋ぐベース、破壊的なドラムが描く荒涼とした世界はとことん危険である。激・醜の部分を全体的に強く押し出した構成で、非常に暴力的な印象だ。また、その極悪サウンドが矢継ぎ早に畳み掛けるような展開で次々と聴覚に迫り来るのも圧倒されてしまう。ポストメタルの先入観を打ち崩すような凄まじい轟音衝動がここには存在する。それがえらくかっこいい。しかしながら、完全に闇に沈む前に待ったをかけるべく、美麗な音の波が静かに交わり合う。ラウドな破壊力を尻目にその救いの一瞬がもたらすカタルシスもまた格別である。プログレ的な組み立てと高等技術の駆使、それにハードコアの狂った野蛮性を掛け合わせた超エグイサウンドに全感覚麻痺必至の一枚。知的ながら結局は押して押して押しまくるという激しさがたまらん。
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