殻 ‐‐Review‐‐

acid androidのantz(渡辺清美)を中心に2004年に結成された5人組オルタナ・ポストロックバンド。


五月蠅 (さばえ)

五月蠅(2008)

 記念すべき1stフルアルバム!ではなく、バンド自身は本作を“0thアルバム”と評しているようだ。収録形態にしても歪で、ワントラックの中に6曲が入っている形で2曲55分という内容。この時点で既に殻というバンドの手のひらで転がされている感じがしてしまう。

 ゴシカルかつ耽美な薫りを漂わせながら、壮大な曲調と共に進行していくオルタナティヴ・ロック。ポストロック的要素も交錯しているが、ゴシック的な妖しげな闇の光が全体を包んでいる。基本的には楽器陣の重厚なサウンドを主軸にミドルテンポでじわじわと精神を追い詰めていく感じ。そこにもの悲しい旋律や透明感のある美しいフレーズ、神秘的な魅力をもった女性ヴォーカルの麗しき声が重なり合って、殻独特の世界観を構築する。既に自分達の立ち位置を把握しているようなその世界観はとても深くて濃厚。それでもキメ細やかにキャッチーな要素を加えているのであまり聴き苦しさを覚えることはない。静と動のメリハリをうまくつけて、仰々しすぎるほどドラマティックに展開している。だが彼等の音はダークな美意識が貫かれているため、精神に圧し掛かってくる物は重く、負の魔力による退廃的な闇に息苦しさを覚えてしまう。ただ、曲によっては幽玄めいた美が天へと魂の解放を行うことも。そういったことからちょっと前の夢中夢に似ているなあとも思うのだが、あそこまでじめじめとした陰鬱さはなく、もっと音が綺麗に整理されている印象。どことなく漂う悲壮感も精神にずっしりとくる。序章にも到っていないのに(0thという意味では)独自の美学が光る作品ではあるが、やはり2曲という構成なのが馴染みにくく、もったいない気がする。

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