清春 ‐‐Review‐‐

黒夢・sadsのヴォーカリストとして、ジャンルを超えて大きな影響を及ぼしてきたカリスマ。2003年にメジャーデビュー10周年の一環としてソロ・プロジェクトを始動させ、以降はコンスタントに作品をリリースしている。

レビュー作品

> VINNYBEACH ~架空の海岸~ > 官能ブギー > MELLOW > poetry


VINNYBEACH~架空の海岸~+2

VINNYBEACH ~架空の海岸~(2006)

 前作から何と7ヶ月というめちゃくちゃ短い期間で完成に至った4thフルアルバム。もろ変化球だった前作「官能ブギー」から元の路線に再び戻り、前々作の「MELLOW」をさらにロック的に発展をさせた感じでしょうか。SADSを髣髴とさせる#2「Dance」や#7「CLUB『HELL』」辺りを聴いてもわかるとおりに激しいロックテイストを取り入れている。

 とはいえ、甘美なミディアムチューンとアコースティックな手触りの温かい音色が心を揺り動かす、その従来の流れからは大きく変わっていない。清春の歌がそばに寄り添うようなムードにやられてしまう方は多いことだろう。美しいメロディが洪水のように押し寄せ、募る寂寥感が涙を誘うミディアムチューン#5「SLOW」や#13「君の事が」には感服してしまうし、星空を駆け抜けるような疾走感のある#8「星座の夜」も心地よい昂揚感に包まれる。詩にしても社会への憎しみに満ちたものではなく、愛について唄っているものが多い。未だに彼のキャリアを考えるとそのことを不思議に思えるのだが、年を重ねるにつれて無敵の愛に目覚めたのではなかろうか。忙しい日々を経験し、辿りついた結果がこうであったのかなと、この作品であったのかなと思う。

 全体を通しても熟練したカリスマの集大成といったところか。ただ、優しさと愛が詰まった作品ではあるが、求心力といった点では「MELLOW」の方が個人的には惹かれたかな。


官能ブギー+3

官能ブギー(2005)

 約8ヶ月というスパンでリリースされたソロ3作目。これまでの路線から外れ、グラムロックを主としたコンセプチャルなアルバムという印象で、全編に渡って耽美で妖艶なムードと退廃的な薫りが漂ってくる。アダルトチックなフェロモンがこれまで以上に強く出ている作品なので、かなり癖が強いかな。でも単純にグラムロックと呼べるわけではなく、ゴシックとも呼べるだろうし、ハードロックの趣だってある。ここは清春のセンスが発揮されているといっていいだろう。毒々しいストーリーが進むごとにその妖しい香が芳醇になっていき、官能の世界へと落ちていく。けれども一ついえることはクセは強いが、メロディが聴きにくいということはない。これは前2作の経験が生きている。前作「MELLOW」はもう早くも完成形という印象を抱いたのだが、今作は実験的といっても差し支えないはず(本人も完全に趣味で作ったと語っていたような記憶がある)。そういった意味ではコアなファン向けといえる内容かもしれない。ソロ作品の中でも特に一段とベクトルが反対方向に突き出ている作品かと思う。


MELLOW+2

MELLOW(2005)

 1年ぶりとなる2ndアルバム。闇を遮ることができるのは何か?それは圧倒的な光だけである。楽曲名にもつけてあるが、本作は前作とは対となる”光の作品”だろう。闇から解き放たれたメロディは胸に響き、経験によって深みを増した清春の独特な歌声は温かな陽の光となり、美しいロックを紡ぎだしている。前々から2作目が勝負と本人自身が語っていたが、その通りに音に対して全く迷いが無くなった。

 独特のロックンロールテイストを残しつつ、決してハードにもポップにも成り過ぎないバランスで歌謡ロックを体現している。温かみのあるサウンドに多幸感すら感じられるのが本作の特徴だろう。苦悩を昇華した末に手に入れた”慈愛と光”に本作は満ちている。打ち込みを使ったロックチューン#2「COME HOME」、切なげな歌声とポップなメロディが融和する#8「FAIDIA」、黒夢時から温めていたというとっておきの#9「LAST SONG」、最後に向かって燃え尽きていくような疾走感と躍動感がある#11「SLIDER」と佳曲揃い。

 その中でも特にシングル#6「HORIZON」のどこかもの悲しさを漂わせつつ、希望を掴み取ろうとするようなドラマティックな展開がグッとくる。個人的に清春ソロ作品の中では特に好きな一枚だ。黒夢の「feminism」が好きな人にはもってこいだと思う。


poetry+2

poetry(2004)

 人生において3度目のファーストアルバムであるソロ作品第一弾。シングル曲でも顕著だったがバンド時代(黒夢・SADS)とはまるでベクトルが違う。強いて言うならSADSの晩期にみられたアコースティックな傾向をそのまま受け継ぎ、よりムードによりダークに創り上げた美意識の高い大人のロックである。

 しかしながら本作は楽曲のタイトルにもあるが、もろ「闇」というのがキーワードであると思う。黒夢・SADSをやってきた後に等身大で自分自身をみつめなおしたときに、このキーワードに至ったかは定かではないが、鬱々としたものを楽曲の一つ一つから感じ取れる。作品からは清春の苦悩が積み重なったかのような印象もあったり。静かだが、深く胸に突き刺さってくる刃のような感情を中心に、ダークな世界観が造形される。また本作はL’Arc~en~CielのKen、佐藤タイジ、土屋公平、SUGIZO、MORRIE、森重樹一などオールスタークラスの豪華ゲスト演奏陣を迎えて製作。その中でもSUGIZO参加による美麗なヴァイオリンの旋律が月夜の優美さを醸し出している#5「MELANCHOLY」、森重樹一とのセクシーな男性ヴォーカリスト対決となった#11「REVOLVER」辺りがおもしろい。

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