La’cryma Christi ‐‐Review‐‐

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1994年に結成された5人組ヴィジュアル系ロックバンド。TV番組によくネタにされたバンド名は、”キリストの涙”という意。かつては、MALICE MIZER等と並んでヴィジュアル四天王の一角と称されていたが、ハードロックやプログレをベースとした複雑な楽曲構成の中で、異国情緒あふれるメロディと美しいハーモニーを同居させて生み出す幻想的な世界観に定評がある。時にミステリアスに、時にエキゾチックに聴かせる彼等の音楽は、かつてのヴィジュアル系ブームも手伝って多くの人々を魅了してきた。2007年1月に13年の活動に終止符を打つも、2009年のV-ROCK FESTIVAL ’09を機に定期的に復活を果たしている。彼等の残した作品の中でも「Sculpture of Time」「Lhasa」「magic theatre」という初期3枚の作品のクオリティは特に高く、是非とも耳にしてもらいたい作品だ。

レビュー作品

> WHERE THE EARTH IS ROTTING AWAY > ZEUS > DEEP SPACE SYNDICATE > &・U > Single Collection > magic theatre > Lhasa > Sculpture of Time > Dwellers of a Sandcastle


WHERE THE EARTH IS ROTTING AWAY

WHERE THE EARTH IS ROTTING AWAY(2006)

 ラストアルバムとなった7thフルアルバム。大まかには前作の流れを引き継いでハードロックしております。ただ、前作ほどマッチョ&暑苦しさは削ぎ落とされていて、メロディアスな情緒で補完。HR路線とはいえ、取っ付きやすさはアップしている。ポップ・センスがちゃんと滲んでいるといいますか。先行シングル#2「Breaking」はカッコいいリフやギターソロが聴けるかと思えば、TAKAの歌メロがしっかりとしていますしね。さらに#4「Long Distance」や#6「Soulful Day」といったロック・バラード的な曲が渋い味を出している。もう少し初期風味を加算できれば良かったと思うのですが、そうできないのはKOJIの脱退が効いてるのか。といっても#11「Fly to the moon」のような透明度の高いメロディが立った疾走曲が、ラストにあるのは頼もしい。ポップな味付けも施した彼等流のハードロックは志半ばという印象を残し、納得のラスト作という感じもありませんが、一定の成果はあげたといえるでしょう。初期は幻想的プログレ・ポップ、中期は売れ線ポップ・ロック、後期は古き良きハードロックと変遷したヴィジュアル系の中でも稀有なバンドだと改めて思います。しかし、彼等の未来航路に「復活」というのがあって良かった良かった。

 

 


ZEUS

ZEUS(2005)

 ギターのKOJI脱退という大事件を経て、4人編成で制作された6thアルバム。冷やし中華じゃなく、「ハードロック始めました」がコンセプトになると思う。変化を如実に感じたシングル#3「Hot Rod Circuit」や#7「CANNONBALL」で顕著だったが、アルバム全体でここまで振りきれるとは。教室の片隅でプラモデル作ってた子が、体育会系に変わったぐらいの変貌度ですが、これはこれでかっこいいんですよね。何より偉いのが、流行りのラウドロックに走らずに古き良きHRを鳴らしていること。ディープ・パープル、モトリー・クルー、ガンズ等が名前としてあがってくるが、自身のルーツを大事にしているのが伝わってきます。あの幻想系バンドが、#8「Don’ t Tell Me Lies」や#10「Same Old Shit!」みたいな暑苦しい曲で燃え上がらせるんだから、バンドっておもしろい。しかし、こうした骨太サウンドになってくると、TAKAのヴォーカルではしんどいという印象も。やっぱり彼の歌声には初期のサウンドが合ってると思いますしね。でも、迷走感のある前2作と比べても手応えはいい。東海林のり子の帯コメント「4人のHARD ROCKERが鮮やかにプレイする。凄くかっこいい!!」に、最敬礼。また、本作のリリースにともなってBURRN!!誌にてインタビューも掲載された。


DEEP SPACE SYNDICATE

DEEP SPACE SYNDICATE(2003)

 「風林火山な恋の行方も~♪」と歌ってしまった5thアルバム。タイトルにもあるスペーシーな感覚とグルーヴ感が意識されていて、前作よりは持ち直している。表題曲の#4や#5「Vampire Circus」辺りは、次作以降のHR路線への下地になっている感じもあります。特徴としては、SHUSEが作詞・作曲でイニシアチブを取っていること。ポップな曲調でもひねりが効いてるのは彼らしいところでしょうか。しかし、やっぱりラクリマはHIROの曲を中心に作品全体を肉付けしていった方が、幻想的な世界観が深まり/広がると感じますね。彼作曲の「HIRAMEKI」のカップリング曲「Missing Pieces」がオリエンタルな雰囲気を醸し出していて素晴らしかったので、本作にぜひ入れて欲しかった。そうは言っても#11「REVERSE」という初期のラクリマらしさが感じられる名曲が光る。また、アンビエントな#10「HAVEN」という曲の挑戦もおもしろい。迷走期のポップ路線ながら、前作からの上積みがある1枚です。

 


&・U

&・U(2002)

 前作『magic theatre』で精も根も尽き果てたのか。甘ったるいロック・ソングをお届けする普通のバンドになってしまった4thアルバム。いや、シングルで#8「Life」が発売されたときはそんなことは微塵も思わなかったが、続いて#5「JUMP!!」と#3「情熱の風」が順々にシングル発売されたときの寂しさときたら・・・。ラクリマの象徴的存在だったギタリストのHIRO大先生が髪を切って、普通のロック兄ちゃんみたいな感じでPOP JAMに出てたとき(情熱の風の頃だったかな)は、僕はこのバンドが本当に死んだと思いました(苦笑)。当時を振り返ればV系ブームが衰退して、ちょうど彼等は売上げが最盛期よりだいぶ落ちており、その沼に引きずり込まれていた時期。売れ線の曲をつくれと厳命されても仕方なかったのかも。ただ、情熱の風を吹かせてもファンには響かずという結果に終わったが。彼等の中で一番オススメできない作品と発売から10年以上経った今でも思う作品です。#6「Ash」や#7「カメレオン」、#10「Screaming」辺りは前作に収録されていてもおかしくない曲もありますけどね。「Life」のカップリング曲である変態曲「Down to Earth」こそ収録すべきだったのでは。


 

Single Collection

Single Collection(2000)

    メジャー・デビューシングルの#1「Ivory trees」から8thシングル「永遠」までのシングルとカップリングを収録したシングル・コレクション。それ故に”永遠までの道のり”とでも題せそうである。

 これまでの3枚のオリジナル・アルバムでは、ただのヴィジュアル系で片付けられない美意識と実験精神に溢れた作品で、少々とっつきにくさ(『Lhasa』の後半とか『magic theatre』は特に)があるのは事実。そのような方々には、「With-you」や「未来航路」のようなヒット・シングルが収められた本作は、入門編にはもってこいだろう。表層的にはポップでありながらも、豊かな表現力と緻密なアンサンブルを堪能できる作品であることも彼等らしい。

 前述のヒット曲はもちろんのこと、1stシングルのカップリングであった「偏西風」、大陸的な響きと民族音楽特有のノスタルジックさがより出てる「Lhasa」のアンプラグドVer、「FOREST」の再録である「IN FOREST」まで収録しており、シングル集とはいえ全15曲に彼等の魅力は十分に凝縮している。また、極限レベルまでこだわった『magic theatre』に収録されていない#13「Without You」や#15「永遠」等のオリコン初登場TOP10入りしたシングルも収録。ちなみにTAKAが連続ドラマに出演していたことはみなさん、ご存知ですよね。

 


 

Magic Theatre

magic theatre(2000)

 1stアルバム『Sculpture of Time』と並んで最高傑作に挙げられる、2000年にリリースの3rdアルバム(ここからV系ブーム衰退もあって、売上的に下降を辿ることになる)。

 11分11秒で幕開けを飾る表題曲「Magic Theatre」を聴いてもわかる通りに、前作『Lhasa』のOurサイドを更なる高みに引き上げた凄まじい作品である。彼等の卓越した演奏技術、豊かな表現力と創造性の融合はついに驚愕の境地にまで到達。”魔法の劇場”とも題された本作は、魔法のかかった至高の12曲が劇場で次々と上映され、最終的には一本の大作映画を見たかのような、空前絶後のカタルシスを得ることができる。

 その象徴となるのが#1「Magic Theatre」だろう。12弦アコースティック・ギターや壮大なコーラスを絡めながら、圧倒的なスケールで生命の誕生を表現する名曲である。7分過ぎからの怒涛の展開には、もはや悶絶する他ない。その他にも彼等らしいオリエンタルな情緒に溢れた楽曲や切ないラヴソング、カントリー調の軽やかな曲、ダークでシリアスな疾走曲と曲調はバラエティに富む。1stアルバムほどのポピュラリティは無いにしても、ポップス、プログレ、ハードロック、カントリー、ジャズ等々のエッセンスを凝縮して、独自の美意識で巧みにまとめあげている。

 各曲はバラバラといえるほどに個性的だが、不思議と統一感があるし、進行するごとにドラマティックな流れがある事に気づく。ラストを飾るセリフ付きの儚い美しさを持つインスト#12「Dear Natural」まで、究極のラクリマ・ワールドが堪能できるはずだ。個人的には、本作が彼等の最高傑作。こちらも1stと並んで邦楽史上に名を残すにふさわしい名盤である。


 

Lhasa

Lhasa(1998)

 2作続けてオリコン初登場8位を記録した、1年ぶりの2ndアルバム。ラクリマの作品の中で一番売れたアルバムになる。いやはやこんなマニアックな作品が売れるというんだから、当時が絶頂期といえるヴィジュアル系ブームとは凄いもの。

 本作はポップ/大衆性を意識した前半5曲の”Yours”、そしてラクリマ自身がが追求すべき音楽を徹底追求して掘り下げた後半5曲の”Ours”という2面性をみせた作品となっている。ヒット・シングル#1「未来航路」や#3「With-you」で獲得した新たなファンへの迎合という意味合いが強いYourサイドでは、当然ながらポップで馴染みよい楽曲が並ぶ。前述のシングルに加えて、#2「月の瞼」は爽快なドライヴ感があって心地よいしね。

 しかし、儚い鎮魂歌#5「Lhasa」を機にバンド本来の独創性と創造性が爆発する。Ourサイドでは、まるで異郷の地へ足を踏み入れたかのように世界が一変。サイケデリックな#6「Green」、妖しくダークな疾走曲#7「Psycho Stalker」、複雑なアンサンブル#8「Frozen Spring」、壮大な大陸サウンドをオーケストラとの共演で表現する#9「鳥になる日」など前半の曲はなんだったのか、と思えるぐらいのマニアックな楽曲が並ぶ。

 #10「Zambara」なんてどういう思考回路したら創れるんだ?と思えるぐらいに、全く読めない展開とサイケデリックな雰囲気に神々しさも兼ね備えた名曲。表層的にはポップでありながらも、角度を変えれば様々な要素が溢れ出る。大衆性と独自性の二面を限りなく追求したラクリマでしか成し得ない名作。


 

Sculpture of Time

Sculpture of Time(1997)

 オリコン初登場8位を記録したメジャー1stフルアルバム。インディーズ期のミニアルバムから順当にスケールアップを果たした作品で、オープニングの#1「Night Flight」からラクリマ流・音で具現化した世界旅行に誘われる。

 シングル曲の#4「Ivory Trees」や#9「The Scent」のような流麗でポップな楽曲から、タイトル通りの情緒に溢れた#2「南国」、あまりにもマニアックな構成と渋い哀愁を帯びた#3「Snaskrit Shower」、重苦しくダークな曲調とエキゾチックな雰囲気が融合する#5「Angolmois」、ラストを飾る#10「Blueberry Rain」まで全く無駄がない。変拍子混じり、ツインギターのコンビネーションで随所にプログレ系譜の実力派としての片鱗を伺わせつつ、幅広い個性を持った全10曲が鮮やかな風景を奏でている。

 シングル曲のイメージからすると信じられないぐらいに複雑な構成の楽曲がほとんどなのに、特有のオリエンタルな風情とミステリアスな輝きを増しながら、ここまでポップに構築できるのは彼等だからできることだろう。その中でも幻想的な美しさに満ちた代表曲#7「偏西風」が白眉。バンドの核となっているHIROとKOJIが奏でるツインギターのハーモニーは、ギタリストにこそ聴いていただきたいもの。

 イメージ先行で過小評価されがちな彼等だが、本作を聴けば彼等の技術と創造性の高い次元での融合が堪能できる。高級ワインのような上質さとロマンチシズム。最高傑作に挙げる人が多い邦楽史上に残る名盤である。


 

Dwellers of a sand castle

Dwellers of a Sandcastle(1996)

    インディーズ時代に発表されたミニアルバム「Warm Snow」が完売したため、新たにレコーディングをし直して発売された5曲入りミニアルバム。

 「Warm Snow」= 温かな雪と題された1曲目からラクリマ・ワールドに引き込まれていくこと必至。卓越した技術とセンスに裏打ちされた楽曲の見事な構成、妖艶かつ特有の透明感を持つメロディ、異国情緒漂うエキゾチックな世界観は、単なるヴィジュアル系で片付けられないオリジナリティを感じさせる。特徴的なハイトーン・ヴォーカルのTAKAには好みが分かれそうだが、幻想的でミステリアスな雰囲気を創造していく演奏隊の素晴らしさには舌を巻く。

 前述の#1もそうだが、代表曲のひとつ#2「Forest」は神秘的な美しさと疾走感が秀逸。HRを出自としている事がよくわかる、毒々しくハードな#5「Poison Rain」も印象的である。当時から自分達の音色というのを確立しており、独特の個性と実力を持ったバンドとして、他のヴィジュアル系とは一線を画していた。MALICE MIZER、SHAZNA、 FANATIC◇CRISISともにヴィジュアル四天王と呼ばれていたことが懐かしいですね。

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