Les Discrets ‐‐Review‐‐

2009年末にAlcestとスプリットを発売したことで話題を呼んだ3人組シューゲイザー・ブラックメタルバンド。元AmesoeursのメンバーFursy Teyssierが率いるこのバンドは、非常に繊細で幻想的なサウンドを奏でており、Alcestと同様に異型のブラックメタルとして独自の道を歩んでいる。

レビュー作品

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Ariettes Oubliees

Ariettes Oubliees(2012)

   Fursy Teyssier率いるポスト・ブラック・トリオの2年ぶりとなる2ndアルバム。物悲しくメランコリック、柔らかな浮遊感、陰りのある美しさを表現していた1stアルバムを経て、本作はさらにマイルドな味わいです。

 アートワークは前作よりも怖いが(苦笑)、Fursyの優しく艶やかなヴォーカリゼーションが温もりを増し、音像もシューゲイザー/ポストロック方面へとさらに歩みを進めたことで、おフランスらしい豊かなリリシズムと上品さが際立つ。アコギを効果的に配した哀切のメロディは心の芯に響き、シューゲ風のノイズ・ギターも柔らかな拡がりをみせ、それにAudrey嬢のコーラスも月明かりのように優しく照らす感じで情感溢れる作品を支えている。もちろん、ブラックメタル出自を忘れさせない粗暴でノイジーな部分やツーバス疾走も出てくるが、前作と同様にスパイス程度でしかない。全体を通しても哀しみを包み込むようなハートウォーミングな作風といえるだろうが、その耽美さの中で虚無感/孤独感が浮かび上がることもあり、映画のようなストーリー性を備えている。Alcestにも比肩する上品でロマンティックな美意識と叙情性に満ちた#2は本作でも屈指だし、アコギの染み入る様な旋律からドラマティックに発展した表題曲#4は、PVでも高いストーリー性を発揮。涙を誘発する慟哭のメロディが印象的な#6や幻想的な世界へと導く#7も大変良い。今年頭に出たAlcestの新作といい、Prophecy Productionsの素晴らしさを改めて認めさせるような秀作に仕上がっている。


Septembre Et Ses Dernieres Pensees

Septembre Et Ses Dernieres Pensees(2010)

   元AmesoeursのメンバーFursy Teyssierが率いるシューゲイザー・ブラックメタル3人組のデビュー作。前年暮れにはAlcestとのスプリット盤を発売しており、このデビュー作の前から大きな期待を集めていた。本作はその期待に確実に応える作品であるし、Alcest同様にジャンルを越境してファンを獲得する力を持っている。

 透き通る美しさを誇るアルペジオ、温かなトレモロとベースライン、情感豊かに歌い上げるヴォーカルが部分部分に煌く宝石を散りばめながら、儚くノスタルジックな世界観を造形していく。柔らかく肌を撫でるような風が吹き、儚く胸を打つこのサウンドに惹かれる人間は多いことだろう。うっすらと広がるシューゲイザー的なギターのレイヤーも耳を引くが、切なく感傷的なアコギの音色が特に楽曲をリード。そして、唄のよさを引き出したサウンドメイキングの妙も優れていて、きっちりと聴かせる内容で固めている印象。時には女性コーラスや可憐なフレーズなんかも挟みながら、より丹念により耽美に紡がれている。

 Prophecyから出ていることもあって、Alcestから続くポスト・ブラックメタルというイメージを浮かべる人も多いが、本作はポストロックの群像の方がイメージに近い。多少ザラっとしたリフやメタルっぽいパートが飛び出してくるけど、それはホンの隠し味にしか過ぎず、メタル色は薄い。ので、聴きやすいことは聴きやすい部類に入るが、温かみがありながらもサウンドの底にはモノクロで冷たい感触が存在しているし、そして哀切な余韻を心の底に残していくのはちょっと異質。優しく寄り添うかのようでありがなら、不思議と内省的に訴えかけるような感覚を持っている。それがなんだか個人的にはAlcestの1stと2ndの中間的なイメージに感じられたりもした。人間の奥深くに根ざす悲哀を刻々と浄化しながら、明々たる歓喜へと変えていく大河のような流れも見事で、全10曲40分超の内容はじっくり耳を傾けれる代物であると思う。

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