Lilacs & Champagne ‐‐Review‐‐

GrailsのEmil AmosとAlex John Hallによる新ユニット。


Lilacs & Champagne

Lilacs & Champagne(2012)

   昨年リリースされた『Deep Politics』がThe Silent Balletの年間ベストアルバム第1位を記録したGrailsから、Emil AmosとAlex John Hallによる新ユニットのデビュー作。リリースはオシャレなリリースが続くMexican Summerより(ってのに個人的にかなり驚いた)。

 この二人はどこまで辺境の扉を開けていくつもりだろうかとまずは感心する。自らのサイケデリック要素を研ぎ澄まし、薄靄のかかった世界を陰鬱であるが豊かな曲調と共に案内していく。物憂げなギターの旋律を基軸にして、古めかしき映画から拝借したと思われるサンプリングやセリフなどが挟まれ、ダブの様に視界が霞む演出も見事に組み込む。それでいてメロディはどこか色鮮やかで艶やかでさえあり、キーボードやメロトロンの音色がダークでシネマティックな世界に彩りを添える。エレクトロやアメリカーナといった要素も引き継ぎ、Grailsと共振しつつも違った色を出す事に成功。さらに本隊を聴いてる時に感じられる、”深み”も明確に感じ取ることができるだろう。#3や#5辺りで顕著となるMadlib風のビートが冴えわたる点もポイントといえ、さらに#9では中華風のテイストが飛び出してきたりと、こちらでも異国情緒感が滲み出る仕上がり。その点も踏まえて彼等の芸域の広さにはやっぱり驚かざるを得ない。空気があまり重く暗くならないようなサンプリング・ヴォイスの使い方といい、ユニークな調味料のまぶし方といい、統一された世界観に落とし込みながらも空気と表情をコロコロと変化させる演出力の巧さといい、このバンドの凄さを実感する事ばかり。ゆるやかなビートとホラー映画的な演出と彼等の持つサイケデリックさが完璧に結合するラストトラックの#11も見事である。

 インスピレーションを刺激し、ゆるやかにその世界に心身を取り込んでいくような感覚を持つ本作は極めて独創的。Grailsのメンバーによるサイド・プロジェクトという評では終わらせない渋さと深さが存在している。

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