LITE ‐‐Review‐‐

世界のフェスティバルやツアーに参加し、その名を知らしめる日本を代表するインスト・バンドのひとつ。

レビュー作品

> CUBIC > Installation > past,present,future > For all the innocence > Illuminate > Turns Red EP > Phantasia > a tiny twofer > filmlets > LITE


CUBIC

CUBIC(2016)

 約3年5ヶ月ぶりとなる5thフルアルバム。原点回帰をテーマに掲げているそうですが、シンセの割合は極端に減っていて、4人の奏でる音にもっと焦点を絞っています。初期のように緊張感を持って刻一刻と移り変わり、精微にコントロールされた鋭利なマスロックとしての攻撃性は無し。それでも本作に投下されたユーモアやアイデアは自由な楽しみ方を聴き手に与えてくれます。リズム隊がしなやかな躍動感をもたらす中で、最小単位からフレーズひとつひとつを丁寧に配置。ツインギターが複雑な絡みをみせる専売特許の#1「Else」、武田さんが日本語詞で軽快に歌う#3「Warp」、えらくグルーヴを重視した演奏の上にタブゾンビがトランペットで夜のムードをつくる#7「D」、根本潤がヴォーカルとして参加して54-71のような狂った破壊力を押し上げる#10「Zero」と様々なインパクトがあります。その自由なアプローチからはジャズ~ファンク~ヒップホップ等への影響も垣間見れ、その辺りへの意識はtoeの昨年のアルバムを思い出させるところ。世界ツアーでの経験を活かした柔軟な音楽性は円熟の証明か。やはりLITEと唸らせる作品に仕上がっています。


Installation ※紙ジャケット仕様

Installation(2013)

 2年ぶりとなる通算4枚目。前作同様に三浦カオル氏を起用し、日米2カ国でレコーディング。昨年発表のミニアルバム『past,present,future』では、タイトル通りに過去・現在・未来を示す作風だったが、本作だともっと自然体といった印象が個人的には強いかな。

 アルバム紹介にもあるとおりに、電子音の装飾は減退させ、以前のようなマスロック風の火花散るインスト・バトルが所々で見られる。『For all the innocence』の時よりも時計の針が戻ったというべきでしょうか。#3「Hunger」では鋭いカッティングやファンキーなリズムを始点に、ミリ単位で練り上げられた構成が光るし、#6『Bond』における刹那の切れ味もかつての「Tomorrow」辺りを髣髴とさせる曲。この辺りは、昔からLITEを追っている自分としても嬉しいところ。かと思えば、#2「Echolocation」で前フルアルバムの正統進化とも表現すべき美しいインストが展開されるし、重いベース・ソロから始まる#4「Alter Ego」では、Skrillexでも意識したかのようなサウンドが入ってきたりするし、以前までのバンド・サウンドに回帰しているとはいえ、現在の彼等のモードもしっかりと感じ取れます。それに#5「Between Us」や#8「Starry Night」、#10「Nomad」といった涼やかで静謐なミニマル~エレクトロニカも心地よい。

 ただ、シンセを取り入れて以降の多彩な表現力とマスロック風の鋭角なインスト、その二つが高いレベルで結実した前作が完成系だっただけに、本作はベクトルが色々な方向に向いていることもあって、インパクトがやや弱いかな。華やかで切れ味鋭いインスト・サウンドではあるものの、かなり玄人好みの印象の作品。


past,present,future

past,present,future(2012)

 8カ月ぶりというハイペースで届けられた5曲入りミニアルバム。Mice ParadeのVoとしても活動し、D&DのOLIVIAの実妹とも知られるCarolineをバンド史上初のゲスト・ヴォーカルとして迎えて、新境地へ突き進んでいます。個人的な印象としては、”回帰と開拓”だろうか。前半の3曲(「Bond」「Circle」「8」)は、1st『Filmlets』や2nd『Phantasia』といったマスロック色が濃い仕上がり。キーボードをやや減退させつつ、ポリリズム等も交えた複雑なアンサンブルで畳みかける。とはいえ、陽性のメロディが鳴っており初期の頃と比べても聴きやすいですね。バンドとしての余裕が楽曲からも感じ取れる。#4「Time Machine」と#5「Arch」は前述したようにCarolineちゃんがゲスト・ヴォーカルとして参加。静空間を意識したエレクトロニカ的音響の使い方、さらにCarolineの透明感のあるVoを最大限に生かそうとする姿勢がしっかりと出ている。どこかジャズ的な味わいもある演奏で支え、繊細な光が差し込むようなキーボードとヴォーカルが重なり合う様は、もちろんこれまで無かった形でバンドの新しい未来の一ページを刻んだと言えるだろう。過去、現在、未来を示した全5曲。


For all the innocence

For all the innocence(2011)

 3年ぶりとなる3作目。2枚のEPで徐々に孵化してきた形が、ここにきて遂に大きく実を結んだ傑作です。大胆にメジャーコードを取り入れる事で、制約を完全に取り払った先行シングル#3″Rabbit”を始めとして、キレのある攻撃力としっとりとした叙情性が見事に親和。火花を散らし合うかのような楽器陣の苛烈なアンサンブルは、お互いの音色が有機的に絡み合うことで柔軟な拡がりと立体的なデザイン性をもたせています。キャッチーという部分にもギアを入れ、美しいギターとシンセの融合、さらに骨太のベースラインに運ばれ鮮やかな色彩感に包まれるクライマックスが印象的な#2、前述の#3、「The Sun Sank」のメインフレーズを大胆に用いて熱量をあげていく#4といった前半の曲は特にかっこいい。

 しかし、ゲーム・ミュージックのようなユーモラスな表現やアフロビートの心地よい振動、アニコレやギャング・ギャング・ダンスなどのブルックリン勢と共振している部分もあり、ポストロック/マスロック/プログレを基本軸に据えながらも、作品はボーダーレスで前衛的。ダンサブルなグルーヴの上で女性ヴォーカルのコーラスが飛び交う#6は、バンド自身の表現力を改めて思い知らされた曲でもあります。色彩感と曲調の幅で過去最高値を更新して、バラエティ性に富んではいるが、LITEらしさは全く損なわれていません。ストリングスと相まって広がっていく美しくファンタジックな世界観にバンドの持つ強さ、スリリングさ、エモーショナルが存分に詰め込まれた#10は、この新路線の完成系とも感じられた名曲。

 前作『Phantasia』を聴いた時もインストとしてここまでの世界を表現できるのかと驚くほどに傑作だと思ったが、その地点を彼等は違った形、新しい変化を遂げる事で超越してみせました。形骸化したジャンルに留まる事をよしとせず、勇ましく歩んだことで生まれた結晶。


Illuminate

Illuminate(2010)

 七夕の日に発売された約9ヶ月ぶりの新作となる全5曲収録のミニアルバム。シカゴ音響派の重鎮であるトータスのジョン・マッケンタイアを迎えて制作しています。本作ではシンセに限らず、パーカッションやマラカス、それにサンプリングにコーラスまでもが耳に飛び込んできます。硬質な金属音から美麗な響きまで備えたツインギター、自在に動き回って曲に豊かな音色とリズム感を加味するベース、鮮やかに明滅するシンセ、正確無比でリズミカルな躍動感を持つドラムに加えて、エレクトロニカっぽいアプローチやパーカッシヴなリズムを強調して迫力を出したり、前述のように感傷的なコーラスがひんやりとした空間に柔らかな広がりを持たせたり。今までにないスパイスが色々と入っています。

 雨音が悲しく滴り落ちていくような1曲目「Drops(ドロップス)」の始まりにも敏感に反応してしまうが、全体的に彩度と自由度が高くなった本作も変化を如実に感じる内容です。ダイナミックな攻撃性と詩的な叙情性を含みながら、タイトにコントロールされているというか。ジョン・マッケンタイアのプロデュースもあって、多種の楽器や機材を用いた空間デザインの精妙さが、これまでの作品と比べて抜きん出ていることも実感。エレクトロニカ・音響派と呼ばれる領域にまで勇んで足を踏み入れ、曲によってはトータスのような面持ちもジャズのような佇まいも感じられます。ここ2作続けて彼等は、自己解体と再構築の真っ只中ではあると思うが、手探りだった前作で発露した新たな形が、自信を持って本作へと還元されています。


Turns Red EP

Turn Red ep(2009)

 自身のレーベル”I WANT THE MOON”を立ち上げての3曲入りEP。J・ロビンス(ex. Jawbox)をエンジニアに迎え、USレコーディングを敢行している。『Phantasia』で自身の限界を極めたということで、シンセを導入しています。手探りですが、プログレッシヴな構成にそのシンセの美しい旋律を噛み合わせ、これまでになかったダンス・ミュージック的な昂揚を投げかけているのが特徴。リード曲となった#1「The Sun Sank」からしてチープなシンセがフロア寄りの色合いを示す中で、タイトでキレのあるグルーヴ感でまとめ上げる様はさすがといったところ。#3「Vermillion」にしても拡がりのある柔らかな音世界を描き出しています。もちろん、試験的な意味合いが強いためにまだまと感じる点もありますが、自己改革ということで本作の意義は大きいはず。


Phantasia

Phantasia(2008)

 2年ぶりの発表となった2ndフルアルバム。本作はエンジニアにtoeの美濃氏を起用。『a tiny twofer』は重厚で強靭な音とマスロック(数学的ロック)への接近を試みて、進化の跡を確実に残していました。本作においてもハードコア系の切れ味を増した鋭角的なアプローチ、研磨された美しく艶やかなメロディ、独特のイマジネーションが溢れており、さらに強力です。

 緻密なバンド・アンサンブルは変幻自在のうねりを生んでおり、予想もつかないほどのスリリングな展開にはただただ圧倒されるのみ。さながら激しく降りしきる音符の雨のようです。全体の構成としては海外で発売されることも視野にいれ、前半は#1、#2、#3のように殺伐としたハードコア系の楽曲で押し切る形。美しいアコースティックな小インスト#6を挟み、後半は幻想的な美しさが際立つ#7やアコースティックな音色がセンチメンタリズムを生んでいる#10など心にグッとくる楽曲でまとめています。混沌の螺旋の中に埋まっていくような#4、目まぐるしい展開の連続が生む破格のダイナミズムが強烈な#9は特に衝動を覚えた楽曲で本作でも重要な位置を占めている。加えて#11ではストリングスも導入し、新鮮な一面を披露しています。

溢れ出すインテリジェンス、そして豊かな感性によって生み出された本作は、インストゥルメンタル・ロック界だけにとどまらない衝撃を秘めた作品です。


A Tiny Twofer

a tiny twofer(2007)

 ポストロックバンドLITEとMIKE WATT による新ユニットFunanoriのスプリットEP。両者ともに3曲ずつ計6曲が収録されています。LITEの方だけ言及しますが、#2こそ7分の叙情派長編小説。けれども#1,#3を聴く限りではソリッドな攻撃性を増してさらにプログレシッヴになっています。ベースとツインギターの絡みがこれまで以上に強力な地盤を作り上げ、畳み掛けるようにドラムが襲ってくる。変拍子満載のテクニカルなフレーズのオンパレードで攻め立て、脳はトロトロ、心臓はバクバク。前作よりもかなり刺激的な楽曲を揃え、1stからの成長を感じさせてくれる。実際に#1,#3はライブでも重要な曲です。


filmlets

Filmlets(2006)

 LITEの1stフルアルバム。前作では彼等の叙情的なメロディに重きを置いた作品であったが、今作では全10曲が”filmlets = 短編映画集”通り、様々な風景で彩られたジャケット通りの作品に仕上がっています。際立ってきたのが前衛的であり肉体へ訴えかける衝動性。前作では静謐な楽曲ばかりのアプローチが多かったが、今作では楽曲のレンジが広がり、アグレッシブな楽曲とのバランスがしっかりと取れています。ツインギターが美しく重なり合って美麗な響きを聴かせたり、そこにベースが歌うようなメロディをつけ、時にはユニゾンで絡む。ドラムも非常にリズムカルかつタフで変幻自在。静と動をダイナミックに行き交う衝撃的な#2、スリリングでトリッキーなアッパーチューン#3、劇的なメロディが奏でる艶やかな世界が感動的なエンディングを演出する#10といった曲は特に印象的。繊細なタッチと卓越したテクニックと構成力、そして独特の感性で描かれる彩り鮮やかな美しい10のショートフィルムはきっと心に刻まれます。


LITE

LITE(2005)

 5曲入り1stEP。バンドは4人編成でオーソドックスにギター2本、ベース、ドラムという編成。本作を起点にマスロックという形容が似合うバンドに変貌を遂げていきますが、この初作では誌的な響きを持つ音色を重視。風景を奏でるようにツインギターがメロディを奏で、ベースが抑揚をつけ、ドラムがそれを束ねてエモーションを放つ。今作では#1こそダウナー系の仄暗いミッドナンバーで意表をつきますが、全体としては静謐で流麗な音が鳴っています。白眉である#5「Past Three Days」を聴くと感情がゆっくりとせせらいでいく、と同時に明媚な風景が燦然と輝いている様子を思い浮かべます。個人的には“静かな楽園”がそこにあるかのような音楽に思えた作品。

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

最新情報をお届けします

Twitter でGrumble Monsterをフォローしよう!